フェイトのカップリング相手を模索中。

クロノが公式設定でエイミィになっちゃったからねい。
今んとこだと兄の親友ですか、やっぱ。
え?はやて?はやてはレティ息子とじゃだめですか?
(名前はメガミ未読者の人のために伏せておきますが)
 
さて、she&me修正版、第八話でございます。
スレ投下版17、18話に相当。
 
  
魔法少女リリカルなのは〜She & Me〜
 
第八話 自問
 
 
「久しぶりね、フェイト」
 
少女達の前に降り立った女性は、大した感傷もなさそうにそう言った。
 
「……母さん……どうして」
 
それは、生きていたことに対する疑問か、リニスを使い自分を狙っていたことにたいするものか。
あるいは、その両方か。
だがかつて娘であった少女の問いかけに、漆黒の魔女が答えることはない。
 
「リニス、下がりなさい」
「はっ」
 
有無を言わさぬ声でプレシアは、隣に控えるリニスに命じる。
 
あくまで、厳格な主従関係で。
そこにはかつてフェイトをめぐって起きたような、意見の相違や対立は存在し得ない。
 
「なぜだ……なぜ、あなたが生きている……」
「何故私が生きているのかなどどうでもいいこと。ただ、事実として私はここにいる。……そして」
「ッ!?」
 
S2Uを支えに起き上がりかけていたクロノの両腕が、突如上に向けて光の輪に固定される。
負傷した腕を急激に捻り上げられ、彼の顔が苦痛に歪む。
 
「く、バインド……!!」
「あなたもいる以上、たっぷりとお礼はしないといけないわねぇ、クロノ・ハラオウン
 
回避も、抵抗もする暇もない。
プレシアの右手が、クロノの頭部を鷲掴みにする。
それだけでもう、フェイトには彼女が何をしようとしているのかがわかった。いや、わかってしまった。
 
「だめ……母さん、お兄ちゃんを……やめて……!!」
 
母は、クロノを殺そうとしている。
気付いたフェイトは、震える声で必死に懇願する。
 
「母さんっ……!!」
 
しかし、それは無意味なものでしかない。
フェイトの声を聞き届けることなく、プレシアは右手へと魔力を込めていく。
このまま解き放てば─────彼女の魔力なら、クロノの頭部など容易くふっとぶだろう。
 
「お前たち親子さえいなければ、私はアルハザードに行けた……アリシアの身体と共に……!!」
「なん……だ、と……?」
「死んで償え、アリシアを奪った罪を……」
 
クロノを──兄を助けなければ。
母の姿に恐怖し怯え竦む身体に鞭打ち、フェイトは立ち上がる。
 
「だめ……!!」
『divine shooter』
「なのは!?」
 
だが、それよりも早く。
フェイトがクロノを助けようと飛び出すより先に、なのはが魔法を放っていた。
接近する魔力弾に、プレシアの矛先が変わる。
 
「ち」
 
クロノを掴んでいた手を離し、その魔力の篭った拳を持ってディバインシューターを叩き落す。
鬱陶しい、邪魔をするなといわんばかりにいとも簡単に。
  
「そんな、素手で!?」
 
いくら魔力のほとんどない状態で放ったとは言え、それでもなのはの魔法ならば並の術者以上の威力はあるはず。
それを、シールドもつかわず素手ではじくなんて。
 
「そういえば……お前もいたわね」
「!!」
「お前がフェイトによけいなことを吹きこまなければ、こんなことにはならなかったのよ……高町なのは
「そんな!!それは!!」
「だまりなさい!!丁度いいわ。フェイトを手に入れる前にお前達二人、まとめてその罪を贖わせてあげる」
 
プレシアの顔は既に鬼の形相と化していた。その狂気と力を止めることのできる者はこの場に誰一人、いない。
醜悪ですらある鬼女の仮面を被ったまま、残酷に口元を歪めプレシアは告げる。
 
「かわいがってあげるわ……お仕置きの時間よ……」
 
*   *   *
 
それはもう、戦いなんてものじゃなかった。
 
「……やめて」
 
力の差はあまりに一方的で。
 
「やめて……母さん……」
 
兄が、友が。虐待され。
実の母の手によっていたぶられる様を、見ていることしかできない。
 
己の最も大切な者たちが、ずたずたに引き裂かれていく様を。
 
「お願い……お願い……」
 
吹き飛び、転がり。
地面に横たわるなのはとクロノは、ぴくりともせず。
 
「お願い、だから……」
 
そんな状態の二人に対してなおプレシアは光弾を浴びせ続けている。
満身創痍の身体が爆風によって硬いブロック塀へと激突しても、二人は声ひとつあげなかった。
 
意識すら、既に失っているのだ。
 
「私……母さんについていくから……」
 
二人に走りより母へと懇願するフェイトの声には、涙が混じっていた。
抱え起こし膝に抱いたなのはの血と泥にまみれた姿が、一層心を軋ませる。
 
「だから、もうやめて……」
 
アリサ達との約束をやぶることになるが、仕方ない。
このままでは二人の命が危ないのだから、素直に従う以外にない。
 
自分に、彼女を止める力はなく。
また、母と戦うことなどできようはずもないのだから。
なにより、自分の目の前で大切な人たちがこんな目に遭うということが、耐えられない。
 
だが。
その彼女の願いは聞き入れられず。
光弾を撃つプレシアの手が、一旦下がる。
 
「だめよ。こいつらをどうするかに関係なくあなたの身体は頂いていくのだから」
「そん、な……」
「あなたの身体は必要条件ではあっても、十分条件ではないのよ、フェイト」
「……」
 
フェイトを攫っていくということは、プレシアにとっては確定事項に過ぎないのだ。
自分の置かれた立場を認識させられ、フェイトは言葉を失う。
 
「わかったら、そこからどきなさい。必要なあなたの肉体を破壊するわけにはいかない」
 
二人への攻撃を再開しようと、再び魔力を右手に収束させるプレシア。
 
「待って!!母さん!!」
「無駄よ。こいつらの罪は、重い」
「違う!!」
 
───そうじゃない。
 
「違う……今度は」
 
声も、身体も震えていた。
怖い。その思いを押さえつけ、意を決し、フェイトは母へと尋ねる。
 
「……今度は私に、何をさせるつもりなの……!?」
 
時間稼ぎができれば、という僅かな思いもあった。せめてどちらかが意識を取り戻してくれれば。
少しでも時間を稼がなくてはという思いと、母の目的が一体何なのかという疑問がフェイトの意思の中に同居する。
それでも、面と向かいこうして反抗するのに際し、フェイトは竦み怯える。
 
「あなたが知る必要はないわ。ただだまってその身体をアリシアに差し出せばいい」
「……アリシア、に?」
 
だからって。だったらなおのこと、二人を傷つけても無意味だ。
この人の目的は、そこにはないはずだ。
 
「お願い……お兄ちゃん達にひどいことするの、やめて……」
「言ったでしょう、ダメよ」
 
それは、理屈でなく、怨嗟によるもの。
言葉では決して解くことはできない、幼児のわがままにも似た代物だった。
 
「それにフェイト。あなたもいけないのよ」
「え?」
 
プレシアの意外な言葉に、フェイトは顔をあげた。
 
「そもそもあなた、アリシアの出来損ないの分際で本当に───」
 
そして気付く。母が何を言おうとしているのか。
だめだ。それ以上は、どうか。言わないで。
声にならない声で、フェイトは母親に訴えかける。
 
そんなもの、何の役にも立たないと知りながら。
 
「───家族や友達なんてものが作れるなんて思ってたの?」
「それ、は……!!」
 
私には兄さんが、なのはがいる。大切な家族も、友達も。ちゃんといるよ。
そう言い返したかった。けれど、できなかった。
なぜなら、それは繰り返しフェイトが自分自身へと、心の奥底で問い続けてきたことだったから。
 
言って欲しくないことを言われ、反論できなかった。
 
本来ならいるはずのない存在である自分。
母や、アリシア、リニスといった犠牲の上に生きている自分。
そして、周囲の人間を危険に巻き込んでしまう自分。
 
いつだってみんな、やさしくしてくれた。
もちろんそれはうれしかった。クロノやリンディのことも、当然家族だと思っている。
けれど、その度にフェイトは密かに悩んでいた。
 
自分は、ここにいてよいのだろうか、と。彼らと共に過ごすことを、赦されているのだろうかと。
 
自問自答を幾度と無く重ねていたから。
 
優しい世界に罪深い自分がいて、本当にいいのだろうか、と。