間に合いませんでしたorz

 
諦めてうちで細々と公開するか・・・orz
今週中には書き上がるはずだ、うん。
 
以下、Web拍手レスです。
 
>シグナム「今までは私が早朝に振らされてとんでもないのを引いてきたんだ。今日こそはこのボードで殴る」
スバルとヴィータのチームびっくり人間にシグナム・フェイトのチームライトニングで対決列島やらせようかしら。battle of sweetsならぬbattle of iceで。
 
 
 
さて、んでわ喪失辞書第十二話ー。
細かい校正と加筆加えてる現段階がひじょーに眠いので、変な追加でgdgdになってる可能性あり。
これ終わったら寝ます。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
 
──返事が。
 
威勢のいいつっけんどんな声で返ってくるはずの返事が、聞こえなかった。
 
ヴィータ……ちゃん……?」
 
紅の騎士甲冑は、早贄だった。
 
啄ばむ鳥もいなければその身を貫くのは枝でもない、暴力へと屈した証としての贄。
微動だにしない小柄な肉体を、天高く突き上げられた男の右腕が貫通している。
およそ力強い男らしさなどとは無縁の節ばった筋肉の少ない、細い優男の腕が。
 
彼女の体内をまっすぐに通り、魔力光を放つリンカーコアを高々とそのやんわりと緩く握られた掌中に収めているのだ。
力なくだらりと垂れ下がった右手から零れ落ちた鉄の伯爵が、男のもう一方の手によって奪われる。
 
最初の一声は信じ難いが故。
言えば少女がきっと返してくれると、そんな現実逃避の念、無謀な願いから口を衝いて発せられた言葉。
そして。
 
ヴィータちゃんっ!!」
 
今度のものは、少女のリンカーコアが男の手の内に完全に消えたが故の悲鳴。
 
愛する友を傷つけられたことに対する怒りとやるせなさがない交ぜになった、張り裂けるような喉の奥からの叫びであった。
 
 
魔法少女リリカルなのは 〜the lost encyclopedia〜
 
第十二話 友の矛先にあるもの
 
 
ヴィータちゃんっ!!』
 
スピーカーに拾われるなのはの叫びに、弾かれるように。
 
通信管制の補助席からシートの椅子をがたんと跳ね飛ばし、立ち上がる影がひとつ。
 
「はやて、どこへ行く」
 
彼女に、祝福の風も付き従いブリッジをあとにしようとする。
呼び止めるクロノの声に振り向くことなく、両拳を握り締めはやては応える。
 
「決まってます。ヴィータとなのはちゃんを助けに」
「ダメだ、戻れ。奴らの狙いは君なんだぞ」
「せやけど、ヴィータが!!なのはちゃんだって万全じゃないんやで!!一人じゃ、相手は!!」
 
狙いは自分。そんなことは百も承知している。
だがそのために家族が倒れ、友を窮地に追いやっているのだ。
見過ごしてなどおけない、行かなくては。
 
「しかし……!?」
「だめ、なのはちゃん!!それは!!」
 
二人のやりとりを遮ったのは、エイミィの切迫した声。
 
レイジングハート……エクセリオンモード、ドライブッ!!』
「「!?」」
 
引き止める側と振り払う側、共に目を見開いてモニターを見上げる。
 
桜色に激しく燃え上がる強大な魔力の光に、黄金の穂先を持つ長槍へと形を変えていく魔導の杖。
久々に見るその光景に、二人揃い息を呑まずにはいられない。
 
レイジングハートエクセリオンエクセリオンモード。
それは出力を制御するリミッターを完全に解除したレイジングハート最強の姿であり、使用者の肉体へと大きな負担を強いる諸刃の剣。
あの事故以来自ら使用を封印し、使われることのなかったその形態の愛機を、なのはは手にしていた。
 
「なのは!!無茶だ、今の万全じゃない体調でエクセリオンモードなんて使ったら!!」
「そや!!今わたしが行く!!やからっ……!!」
『……大丈夫、だから。このくらい……っ』
 
荒い呼吸混じりに返ってくる怒気を孕んだなのはの声が、彼女の体調を窺わせると共に否応なしに二人にあの雪の日のことを連想させる。
やはり、エクセリオンモードの負担に耐えられるような状態ではないのだ。
一瞬目を移したサブモニターにある彼女の身体状況を示す数値も、それを裏付けている。
 
「くっ!!」
「はやて!!行くな!!」
「ごめん、クロノくん!!いくでリイン!!」
「はいです!!」
 
命令違反は、承知していた。
しかし今だけは。
なのはの抱える爆弾ともいうべき不調が暴発してしまわないうちに、ヴィータを共に助け二人を連れて帰る。
たったそれだけのことなのだ、無茶はしない。
 
リインを連れ、はやては駆け出す。
 
──けれど、それは開いた扉の向こうにあった障害物に阻まれて。
 
「っ!?」
「わっ!?」
 
それは、息せき切って駆けつけた少年の胸。
眼鏡の顔がこちらを見返している。
なのはにとっても、自分にとっても大切な友人がそこにはいた。
 
「ユーノ君!?どうしてここに……」
「行っちゃダメだ、はやて」
「え?」
「きみたちは、行っちゃいけない」
 
*   *   *
 
「ああああっ!!!」
 
──このくらい。
 
相変わらずの嫌悪感が、左腕をとりまいていた。
だが、慣れてきた。痛覚も幸か不幸か、麻痺しているおかげで今は感じない。
 
「主。ここは私に」
ヴィータちゃんを、離してっ!!」
 
友を吊るし上げる男に、なのはは挑みかかった。
それを妨げるべく立ちふさがる女騎士に向かい叫び、黄金の槍を打ち据える。
振られた剣の刃に、セイクリッドモードのロングスカートの裾がさかれようとも。
槍の先端に出力した魔力刃──ストライクフレームで受け止め、斬り結ぶ。
 
相手の間合いに踏み込むことや、本来の自分のレンジなどとかまってはおれない。
彼らの手の内に、友が捕らわれている以上は。
 
この手で、助け出す。
 
「退いてください!!邪魔しないでっ!!」
「だーめ。通りたいなら実力でどうぞ」
 
旧知の騎士に瓜二つの敵の太刀筋は、彼女の知るそれよりも遥かに鋭かった。
手数だけは負けじとレイジングハートを振るい突き出すも、いいようにあしらわれ続ける。
 
焦りと苛立ちが募り、消えかけていた冷静さが一層加速度を増し脳裏から奪われていく。
 
「このおおっ!!そこを……通してっ!!」
 
エクセリオンモードの、更にフルドライブ。
桜色の翼を二対出力し、急加速で近距離から至近、そして零距離へと踏み込む。
近接戦がダメなら、疾さに勝るこれで。この距離ならば、こちらの突撃は避けられないはず。
接触状態からの砲撃を一発叩き込んで、その隙に。
 
レイジングハート!!エクセリオンバスター!!」
『A.C.S』
 
しかし脈絡がついているように自分では思えたその奇襲戦術は、血が上った頭の鈍った思考回路による、短絡なものでしかなく。
 
「残念。スピードもっと乗せないとだめよ、そういうの」
 
万全の状態ならばまだ、違っていたのかもしれない。
だが精神的に追い込まれた焦りと、不完全な状態の肉体はその戦法に期待していただけのスピードも結果も、与えることはできなかった。
 
その破壊力を強化すべき魔力も、十分に穂先の刃へと伝達されきっていない。
加速も魔力も、彼女の攻撃に騎士へ一矢報いるほどの破壊力を付加し向上させることは到底できなかったのだ。
 
「!!」
 
三角形のベルカ式魔法陣を模したシールドがなのはの一撃を防ぎ、それを発動した騎士は即座にその場を離脱する。
砲撃を警戒したから?いや──違う。
魔力刃を受け止めた光の盾はその輝きを増し、内に込められていた魔力を解放するがごとく増大させていく。
 
「く!!」
 
爆発する。ストライクフレームへの魔力をカット、前面にプロテクションを展開。
 
「バリアバースト!!」
『なのはちゃん!!』
 
相手の爆発に合わせ、こちらもプロテクションを爆破し威力を相殺する。
エイミィの声にも応えていられない。
 
「くうううっ!!」
 
もうもうと湧き上がる爆煙が、視界を覆った。
 
*   *   *
 
なにかが、自分の「中」を駆け巡っていく。
 
光より速く、それでいてプログラムに編まれた細胞ひとつひとつ、余すことなく確実に。
何者かが、自分を満たしていく。侵食していくのが感じられる。
 
いくな、と声が聞こえた気がした。
自分を違う色に染め上げていく「それ」がやってきたのとは、正反対の方向から。
 
──悪い。ひっぱってくれないと無理みたいだ。
 
声だけでは、身体が動いてくれない。
祝福の風の、そのそよぐ音だけでは、とても。
 
次第に、引き止める声は遠ざかっていった。
と、同時に。
 
目の前にいたのは、もうひとりの自分だった。
 
……はて。
 
祝福の風とは一体、誰だったのだろうか。
 
*   *   *
 
通信は非常用の強力な出力を持つ機材のそれを以ってしても、繋ぐことはできなかった。
故の緊急手段、苦肉の策。
転移可能な地点まで可能な限り近付いて、直接艦へと乗り込む。
それなりの距離を飛行せねばならないというのは、無限書庫に篭りがちで鈍っている身体には少々堪えた。
 
だがそれでも伝えねばならないことがあった。彼女たちを止めねばならなかった。
 
「なのはちゃん!!なのはちゃん!?」
「……なん、だと?」
 
エイミィが必死に呼びかける、なのはのことよりも。
彼女たちを……奪われるわけにはいかない。
もしそうなればとても、今の戦力だけでは到底手に負えないのだから。
 
「闇の書の闇を生み出した張本人……そう言った、のか?」
「ッ……!!」
「はやてちゃん!?」
 
クロノの呟きの後、同い年の少女のものとは思えないほど荒々しく胸倉を掴まれ、壁に押し付けられた。
自分を押さえつけているその両腕の震えが怒りによるものなのか、困惑によるものなのかは、ユーノにもわからない。
 
「……どういうことなん……?夜天の書に関する資料は去年までの無限書庫の整理作業で、出尽くしたんと違うんか……?」
 
俯いた顔の、目の焦点は合っていなかったろう。
だが、事実はやての言うとおりだったのだ。
今日この日、フェイトに渡された一冊の資料本に目を通すまで、ユーノ自身そう思っていた。
 
「そう……全部、見つけたんだ。でもそれと入れ替わるように……これが発見された」
 
はやてに抵抗することなく、ユーノは手にした一冊の書物を示す。
 
それが無限書庫へと持ち込まれたのは、書庫の整理作業も完了しようかという、慌しい混乱期。
更にその上、司書長として新たな無限書庫のシステムについて説明すべく各所へユーノが飛び回っていた時期に、それは行われたのである。
 
だから仕方なかった、とは言わない。
もっと注意深く書庫への資料の出入りを把握しておけば、その時点で掴めたことなのだ。
ただほんの少しの、些細な事務手続き上のタイムラグの重なりが、ユーノにこの事実を知らせる資料を見落とさせた。
 
「この書によれば……シグナムさんの言っていた通り、あれは夜天の書のプロトタイプ」
 
そしてあの女騎士は、間違いなくヴォルケンリッターたちの前身として僅かに早い時期生み出された、守護騎士プログラムの雛形。
 
「あの騎士が主と呼ぶ以上、その後ろの彼は。あの男は──……」
 
──“夜天はその名に相応しく、闇に染まる”。書の一節にあった言葉を、再度飲み込む。
 
「あの男こそが夜天の書を含めた二冊の魔導書を作った研究者の一人であり──悪意ある改変を行った張本人だ」
 
ユーノとて、完全に資料に目を通しているわけではない。
だが鑑定も、年代測定の結果も完璧だった。贋作の可能性はない。
ならば信じないわけには行かない。なにしろ今自分が持っているこれは、モニターの向こうにいるあの人物そのものが書き残したものなのだから。
 
何故彼がこの時代に、しかも魔導書からという形で蘇ったのかはわからない。
せめてその瞬間を実際にこの目で見ていればなんらかの情報は得られたのかもしれないが、時既に遅い。
 
けれどなのはとの戦闘を継続しているあの男、今は爆風に消え姿を直接に視認することはできない男、本人が夜天の書へ詰め込んだ災厄のことを認めている。
己が遺した、手記において。
 
「はやて、ヴィータをなんとかして戻せないか。主としての強制召還とか、なにか」
 
過去に改変が可能であったならば、現在もそうでないとは言い切れない。
無理だということをわかっていながら、ユーノははやてに問う。
このままなのはに一人で戦わせ続けるわけにも、はやてとリインを出すわけにもいかない。
 
『……そう。あの、人が……』
「「「!!」」」
 
ノイズだらけのひどく乱れた声。
三人のみならず、ブリッジの皆の目がモニターに釘付けになる。
直後、あちこちに焼け焦げた黒い痕をつけた白いバリアジャケットが、爆煙の中から躍り出た。
 
*  *   *
 
『バイタル確認……なのはちゃん、健在!!』
『当たり前だ!!見れば判る!!なのは、状態は!!』
「思ってたより……ダメージ、大きい……けど……っ」
 
騎士の設置した呪文は、流石は烈火の将すら上回る炎熱系の使い手というべきか、万全ではないとはいえなのはの硬い防御を十二分に抜いていた。
バリアジャケットの損傷も激しいし、魔力もごっそり削られた。
カートリッジをロードし、奪われた分の魔力を強引に補充する。
 
「まだ、いける……!!」
 
全身の痛みは、逆にプラスだ。
おかげで左腕の状態を自分に誤魔化せる。
 
『なのはちゃん、気をつけて。今の爆発で広範囲に魔力散布されてて、相手を探知できない』
「わかってます……くっ」
 
なのはも爆風に視界を奪われ、魔力探知という行動を塞がれてはうかつに動くことはできなかった。
結界が抜かれていないのは確かだから、逃げられてはいないはず。
 
(逃がさない……ヴィータちゃんを助けないと……!!)
 
彼らの明確な正体を聞いた今となっては、なおさら逃がすわけにはいかない。
あのまま逃がしては、何をされるか。
ヴィータを助け出す。そして二人を……いや、あの男ひとりでいい。彼を行動不能にし、捕縛する。
彼さえ抑えれば、彼を主と慕うレクサスは手を出せないはず。
 
そして、はやてたちのもとへ連れて行く。
彼こそが四年前彼女たちを苦しめた元凶なのだから。
ゆるせない、となのはは思った。
 
この状況で闇雲につっこんでいっては、狙い撃ちにされるだけ。
なのははじっと、爆風が晴れるのを待つ。
 
「──え?」
 
その晴れた先にいる、予想だにしない敵の姿に息を呑むことになるとも知らず。
 
敵は、二人ではなかった。
二対一で、一人押さえればいい。まだなんとかやれる。
その考えが、脆くも崩れ去ったということが、なのはには理解できなかった。
 
灰色の煙を割って現れたのは、つい先ほどまで自分の横で振るわれていた、鋼色のハンマーヘッド
認識が追いつく間もなく、反射的に防御して。
 
左腕の弱まった魔力の状態では、起動した防壁の出力が不十分であるのは道理。
互角近い能力の騎士の一撃を、受けきれるわけがない。
真正面の最上段からの一撃に、なすすべなくなのはの身体はバリアごと叩き落とされて。
 
岩の地面へと落下する彼女の姿を、それを打ち落とした紅の鉄騎の瞳が、澱んだ色で見下ろしていた。
 
答えは──三対一。
 
(つづく)
 
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