作業いたしまして。

 
日付変わるぐらいには完了して、一時前後にはなのユーステーション、上げたいと思っています。
けっこう参加者の方々、集まっておられますので。
形式は九月一日分のエントリーにそのままリンクをぽんしてリンク集にするだけではありますが、すみませぬ。
 
※日付変わってから追記※
順調に遅延中AHAHAHA
あ、ちなみに九月一日中は引き続き受け付け続けてますんで。
ひとまず作業開始→公開の形が今夜はじめ、ということで。九月二日を完成した状態で迎える予定、ということで。
 
とりあえずWeb拍手レス。
 
>シグナム姐さんカッケー、レティ提督も良いね。武装隊の制服というとあの白青制服になるのかな?見たいなぁ
空隊なんであれでしょうねー。最初窮屈だって言ってたんで着せてみました。
 
>そ、そうきたかー!キャラメルミルク飲みてー!
いや実際、ぐぐるとうまそうなんですよキャラメルミルク。ホットだけでなくアイスでも。出てくるわ出てくるわ。
 
>ほの甘い感じがいいですね。
もっと甘い話もそのうち書きますよー。sts終了後にではありますが。
 
>甘々というよりほのぼのでしたね。こういうお話はかなり好きです
甘甘でえちぃ話書きたいなぁ・・・。
 
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んで、羽根の光の更新を。あとでまとめも更新しなきゃ。
↓↓↓↓
 
 
 
寝苦しい、夜だった。
尤もあの事故から目覚めて以来、真に自然な形で安らぎ眠ることなど、今までなかったのだけれど。
 
寝返りも打てず、痛み止めなしには睡眠中のちょっとした身体の動きにすら、激しい痛みに意識を呼び戻される。
 
今夜の目覚めも、時間の経過で痛み止めの効力が弱まってきたが故の全身の痛み故。
 
「っ……く」
 
首を捻るとベッドに突っ伏したまま並んで眠りに落ちている、フェイトとヴィータの顔があった。
二人の肩から背中には毛布がかけられ、その後方の椅子にはユーノが腰掛け舟をこいでいる。
おそらくは毛布を彼女たちに回したのだろう、彼のほうは着の身着のまま眠りこけていた。
 
つきっきりで、自分が眠ってからも見守っていてくれたんだなと思う。
なのははひたすらに、三人に対してすまない思いでいっぱいだった。
 
喉が、渇いていた。
反対側を向くとサイドテーブルに、フェイトの用意してくれた水筒があった。
手を──左腕を少し布団から出せば届く距離。
 
だが、今のなのはには届かない。
伸ばしたくても、伸ばせない。1ミリたりとも腕が、びくともしないから。
 
くやしかった。たったそれだけの行為すら出来ぬ自分が、その身体が。
ただ、どうしようもなくくやしかった。
  
 
魔法少女リリカルなのはStrikers another9th −羽根の光−
 
第七話 今は前だけ、見ればいい
  
 
リハビリなんて、なければいいのに。
友の苦痛の声を聞き、表情を目にするたび思うのはそんなことばかり。
 
未だ全身を包帯で覆われた少女はたった片腕、自分の利き腕すら曲げることさえ出来ず。
苦悶に濁った声と共に歯を食いしばり、先の見えない己が身体との戦いに挑んでいく。
 
「なの……っ」
 
見ているだけでも、こちらが苦しい。
親友の苦痛に歪む顔が、とても見ていられない。
止められるものならば、止めたい。
その思いは多分、今こうやってフェイトを制止しているユーノも同じ。
道を塞ぐ左手も、固く握り締められた右拳もわなわなと震えている。
 
「あ……あああぁぁぁっ!!」
 
一際甲高い彼女の悲鳴に、耐え切れずフェイトは目を閉じた。
もちろん目を塞いだところで、音が消えるわけもない。
もういい、もういいから。そう言ってやることができれば、どんなに楽だろう。
彼女だけでなく、見守る自分にとっても。
 
目だけではなく左右の耳も両手で覆い、遂にフェイトの膝は折れた。
閉じた瞼の隙間から流れ出るのは熱い涙。彼女が苦痛に目尻へと浮かべるそれよりも、フェイトの目からとめどなく溢れていく。
 
「ぐ、く、ううぅぅぅっ!!!」
 
まだ始まったばかりだというのに、それ以上フェイトになのはの叫びを聞き続けることは出来なかった。
情報を遮断して、ただ耐え続けることだけが、彼女に残された道であった。
  
*   *   *
  
そして。
 
なのはのリハビリがはじまってから、二週間ほどが経とうとしていた。
砕けていた両足もようやく完治し、ギプスがとれ、ついに歩行練習までもがメニューに追加されるようになり。
ここまで、一ヶ月半。それでもなのはの肉体は一向に回復の兆しを見せることはない。
 
歩くどころか。その手を伸ばしものを拾い上げることすらもまだ。
 
「……もう……やめよう、よ……」
  
入院生活で筋力の落ちた身体に、毎日続く厳しいリハビリのスケジュール。
それらは重傷患者であるなのはにとって当然の如く楽なものではなく。
一日のメニューをこなした彼女は食事もそこそこに、ベッドの上の人となる。
処方されている痛み止めを飲んでしまえば眠りに落ちるのに、五分とはかからない。
 
すうすうと規則的な寝息を立てて、彼女はよく眠っていた。
 
「もう……いいじゃない……こんな……」
 
付き添う三人のうちで、フェイトがぽつりと口を開いた。
ユーノが振り向き、ヴィータは無言のままなのはの寝顔を見守り続ける。
 
「フェイト」
「だって!!こんなリハビリが大変なんて!!もう私……見てるのが……」
 
彼女の両手は、膝の上に重ねられていた。
その甲に、ぽたぽたと涙の雫が滴り落ちていく。
 
「見てるの……耐えられない……」
 
友の先が見えない苦しみを、代わってやることができない。見ているしか出来ない。
たったそれだけしかできないということが、こんなにも辛かったなんて。
歩行訓練が始まって以来、その念は一層に強まるばかり。
 
苦痛を堪えながら支えに縋り、立ち上がり。
不自由な左手──利き腕なしの右腕を頼りに足を踏み出しては数センチも持ち上がらず崩れ落ちる。
受身などとれるはずもなく、何度も何度も。痛む身体を引き摺っては立ち上がり、這い蹲る。
一ミリでも動かせば痛む身体を押しての歩行訓練の激痛など、想像できるものではない。
 
リハビリの意味を考えれば、助けに入ることなど以ての外だった。
故に手出し無用、この日もまたそういった痛々しい光景をまざまざと見せ付けられたばかり。
それでも自分たちの食べさせる食事を美味しいと笑う彼女、心配をかけてごめんと困ったように謝る彼女が、あまりに痛々しくて。
もう、我慢がならなかった。
 
「……だったら出てけよ」
 
そんなフェイトに、ヴィータが無感動に言葉を投げつけた。
ハッと顔をあげた彼女も、気遣う様子で肩に手を置いたユーノも一瞬、動きを止めて硬直する。
 
「ヴィー、タ……?」
「見たくねーんなら見んなよ。騒がれるとなのはが起きちまう。静かに眠れねーだろ」
 
吐くのは、徹底して正論。
だがそれ故、癇に障る。感情的になったフェイトには看過しておくことはできなかった。
 
「でも!!」
「なのはがリハビリして復帰するって決めたんだ。邪魔するんじゃねーよ」
「邪魔……っ!?」
 
邪魔。今、邪魔だといったのか。
自分がなのはの、邪魔をしていると。
思わずフェイトは乱暴に立ち上がり、ヴィータに詰め寄る。
 
「なのはが治すっていってんだ。だったら……」
「そんなの、わかってる!!わかってるよ!!けどっ……!!」
 
自分だって、なのはがリハビリに専念して復帰を目指すと言った時は応援すると誓った。
はやてから彼女の身体にまだ回復の望みがあると聞いたときは、素直に嬉しかった。
  
でも。実際に彼女が苦しむ姿を見てしまっている。
そしてそれらの苦痛が全て無駄かもしれないということも、知っているのだ。
いや、その可能性のほうがむしろ高いということも。
 
「はやてのときとは、違うんだよ……っ!?」
 
そう、はやてが闇の書事件の後両足の機能回復に行っていたそれとは、わけが違う。
彼女のときは治ることがはじめに当然の前提としてあった。
はやての足を繋いでいた鎖はもう、なにもなかったのだから。
 
でも、なのはは。なのはの身体は。
そのような前提、どこにもない。むしろ回復の可能性のほうが少ないのに。
 
苦しんだって何も変わらないかもしれない。
だったらもう、このまま。魔導師に戻らなくたっていい。これ以上辛い思いをしてほしくはない。
もともとなのはは、魔法のある世界の出身でもない。ただの一人の少女でしかないのだ。
その分自分たちが彼女の分まで頑張れば──……彼女がそれを望まないであろうことをわかっていながら言いかけたフェイトの頬を、鈍い衝撃が襲う。
 
「フェイト!!」 
 
椅子をひっかけて倒しながら、フェイトはもんどりをうって崩れ落ちた。
がたりと、耳障りな音が床を打った。
  
「関係、ねえよ」
  
平手ではなく、ヴィータの固めた拳が彼女の頬に吸い込まれたのだ。
頬を押さえ見上げるフェイトを、ヴィータは肩を上下させながら厳しい目で見下ろしていた。
 
「関係ねえ……なのはが治すって決めた。なら治るまで、あたしはあいつについててやる。いつまでだって」
 
それが守れなかったあたしの、責任だ。あたしがしなきゃいけないことなんだ。
拳を固めたまま、ヴィータは再び腰を下ろす。
もう床にくずおれるフェイトには、見向きもせずに。
 
「わかって……るよ……なのはが……なのはが、きめた……こと、だもん……」
「フェイト。ちょっと外、出よう」
 
呟きながら、フェイトは泣き崩れる。
ユーノに連れられ、支えながら彼女は部屋の外へと出て行った。
 
「……あたしは、絶対あきらめねーからな」
 
閉まった扉の音に、一言背中越しにヴィータは投げた。
  
*   *   *
 
その夜のこと。とすん、と軽い音がしてユーノは目覚めた。
どのみち座ったままでの浅い眠りだ、意識が覚醒するまでさほど時間はかからない。
腕組みをした、睡眠の姿勢で目を開くと、床に毛布が転がっている。
 
更に視線を移すと、ベッドに体重を預け眠っているヴィータがずり落ちそうになっていた。
 
──やれやれ。小さく苦笑したユーノは、彼女の姿勢をもとに戻してやるべく腰をあげる。
 
「ユーノ、くん?」
「……あ、ごめん。起こしちゃった?」
 
毛布を拾い上げたところで、なのはがこちらを見ていることに気付く。
彼女は軽く首を振ると、寝顔が完全にベッドに埋もれているヴィータに目を遣る。
 
「ごめんね。みんなにこんな、迷惑かけちゃって」
「迷惑だなんて」
 
そんなことない。それは本心からの言葉であったけれど、なのはは首を横に振る。
たったそれだけの動作が、なのはの出来る精一杯の動き。
 
「ユーノくん、ヴィータちゃんをベッドにつれてってあげて。大分……疲れてるみたいだから」
「でも」
「わたしなら大丈夫。ユーノくんも眠って。なにかあったら念話で呼ぶから……ね?」
 
すぐにわかる嘘を、なのはは吐いていた。
なのはの身体はその筋肉、骨と同じように。魔力を身体中へと伝達するその神経構造までもが重傷のために殆ど機能しなくなっているのだから。
爆発とそれに伴う裂傷や骨折が、そういった神経をずたずたに引き裂いてしまっているというのに、魔法など使えるわけがない。
今の彼女では念話どころか、体内にある魔力を感じ取ることすら困難であろうに。
 
嘘を吐いて、彼女は笑っていた。心配することなんてないから、と。
わかりきった嘘で、二人のことを気遣って。
 
「……わかった」
 
ユーノは、彼女の言葉に従った。
 
「あとで……また、見にくるよ。少し、仮眠してくる」
 
寝息を立てるヴィータを抱え上げ、告げる。
フェイトのいる仮眠室へと、彼女も連れて行こう。
 
「うん……ありがと」
 
ヴィータを背中へと背負いなおすと、微かに赤毛の少女は揺れに唸った。
だが起きることはなく、そのままユーノの背に身を預け、眠り続ける。
 
「それじゃ……おやすみ」
「うん、ユーノくんも。おやすみなさい」
 
後ろ手に、ユーノは扉を閉めた。
  
夜の病棟は──彼の目の前に広がる道は明かりも殆どなく、真っ暗だった。
不可視の真っ暗な廊下が、どこまでも続いているようにさえ、見えた。
 
「……よせよ、情けない」
 
黒を黒以上の暗闇に見せたのは自分の感傷だと、彼は己を罵る。
きっと背中に載せた少女が起きていれば、そう言われていただろうから。
 
「進んでいくしか、ないんだ」
 
それが、なのはの願いなのだ。
諦めとも決意ともつかぬ口調で呟き、静寂の闇へとユーノは足を踏み出した。
やっぱり、すぐ戻ってこよう。そう考えながら。
 
(つづく)
 
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