nocturne加筆中。

 
六課関連で確定情報待ちの部分は保留してですが。
それでも多いなぁ・・・。
また、書き下ろしとしてエピローグも執筆中。
こちらでのエピローグ掲載時のものの、なのはとユーノサイドでの出来事を扱ったものになる予定。
 
てなわけでしばし手抜き更新になると思われます。
せいぜい連載物を時折ちまっと更新するくらい。
Web拍手レスは明日に。
 
そのかわり今日は以前Web拍手お礼ssとして載せたものをちょっくら加筆いたしまして。
いつくさんのところのウエディングシグナムを見てて載せてみるか、と思った話。
 
↓↓↓↓
 
 
 

魔法少女リリカルなのはstrikers if
 
〜紅いドレスの剣士〜
 
 
朝の部隊長室は、香ばしいコーヒーの匂いに満ちていた。
カーテンの開け放たれた窓からは日光が燦々と差し、部屋の主がマグカップ片手に目を通す書類の上を照らしている。
 
「会食ですか?それは別にかまいませんが……」
 
呼び出されたシグナムはいささか拍子抜けした気分で、首を傾げた。
縦に頷くような。かといってまっすぐかというと微妙に疑問の色が混ざって少しばかりずれたような、そんな角度で。
 
カップを置いて、彼女の主たるこの機動六課の部隊長は顔を上げる。
もう一方の手にしていた書類も、目を通し終えたのか脇へと除けた。
 
「いや、会食というか。どっちかゆーと立食パーティーやね」
 
そう言うとはやてはデスクの引き出しを開き、一枚の招待状を差し出してみせる。
受け取って眺めたその招待状というよりもチケットのような紙片の差出人の社名には、シグナムも見覚えがあった。
 
ディアブロ重工……というと」
「そ。うちの課の機材で本局のお下がり以外のやつを、大体卸してくれとるとこや。新製品の発表会兼ねたパーティーするからって、こんなんきたんはえーけど……」
 
机上のモニターに、スケジュールを呼び出す。
流石は部隊長というべきか、みっちりと予定が殆ど隙間なく詰め込まれている。
 
これではとてもパーティーへの出席など、できるはずもない。
 
「お断りになられては?」
「んー。ここと話つけてくれたん、カリムとレティ提督なんよね。やからそう無下にするわけにもいかんっていうか」
「……お二人の顔を潰すことにもなりかねない、というわけですか……」
「そそ、要するにそゆことや。もー少しはよ送ってくれれば出られたんやけどなぁ」
 
二人には六課設立時から、後見人として多くの苦労をかけさせてしまっている。
また課としても設備を卸してくれるスポンサーとの関係を損なうわけにもいかない。
 
「ですが、それならテスタロッサやなのはのほうが適任ではないのですか?」
 
ならばと、シグナムは思ったことを口にする。
 
部隊長であるはやての出席が不都合ならば、その名代としては階級的にも地位的にも、分隊長を務める彼女達二人のどちらかが行くべきだろう。
もしくは、彼女の副官を務めるグリフィスか。もっとも彼の場合は階級的に一枚落ちることになるから、やはり相応しいのは二人のうちのどちらかということになるだろう。
 
「私もそれはまず考えた。せやけどなぁ」
「?……二人とも、都合が悪いのですか?」
「ま、そうなるかなぁ。フェイトちゃんには今一個調べてもろとることがあるし」
 
だから今朝は、朝一で本局の無限書庫のほうに行ってもらっている。
状況次第で、そのまま出張ということもあり得る。
 
はやてに言われ、そういえば昨日の隊長クラスの集うミーティングでそんなことを言っていたなとシグナムは思い出す。
 
「では、なのはは?……っと、失礼。ならば彼女にはここに詰めておいてもらわないと、ですか」
「ん、そういうこと」
 
続けて尋ねようとして、シグナムも気付いた。
流石に隊長が二人とも、何かしら重要な任務でも重なっているならともかく、部隊を留守にするというのはまずかろう。
 
となると残るは自分を含む副隊長二名の何れかが候補として挙がってくるが──……。
 
「……確かに、ヴィータでは若干不安ですね」
「あはは……うん、まあ。てわけで、頼めんやろか?埋め合わせは後々するし」
 
苦笑いしつつも、深く追及せずはやては頷いた。
礼儀作法は一通り、局入り以来身につけてはきているものの、ヴィータでは如何せん外見的に問題がある。
この線もNG、残ったのはシグナム一人。
そして主の頼みである以上、その守護騎士であるシグナムが断れるはずもない。
 
「わかりました。不肖このシグナム、部隊長八神はやてに代わり出席させていただきます」
 
*   *   *  
 
──それが、今朝のこと。
 
「いやー、にしても羨ましいっすねー、パーティなんて。うまいもんとか色々、出るんでしょ?」
 
運転席には、珍しくスーツなど着込んだヴァイスの姿があった。
鼻の穴には、丸められたティッシュペーパー。目元には青タン。
そしてその左頬には赤い鉄拳の痕が生々しくついている。
せっかくばっちりと決めた服装が台無しだ。
 
「……黙って前を見て運転していろ。もう一発叩き込まれたいか」
 
その背後。
彼の真後ろの後部座席に、着飾った女性の姿がひとつ、不満げに口を尖らせながら存在していた。
 
「んな、ヘソ曲げないでくださいよぉ。似合ってますよ?意外と……」
「斬るぞ」
 
身を包む深紅のイブニングドレスは、肩と首元が大きく開かれ露出する、大胆なデザインだった。
 
その胸元を、何もつけないでは寂しいからと渡され渋々身につけた銀のシンプルなネックレスが飾る。
艶やかな髪は結い上げられることも、纏められることもなくまっすぐと背中に流されていた。
 
空気の直接触れる素肌の感触が心許ないのか、肩からかけたショールを、女は被るようにきつく胸元へと引き寄せる。それでも白い肌が露出する面積は広い。
 
無論それが誰かと聞かれれば言うまでもなく、パーティ会場へと向かう機動六課ライトニング分隊副隊長こと、剣の騎士・シグナムその人である。
 
「なんで私が……」
 
口から出てくるのは不満、愚痴ばかり。
寡黙な彼女からすれば珍しいほどに饒舌に、文句ばかりが流れ出る。
 
「そんなに嫌なら、断ればよかったのに」
「できればとっくにそうしている!!こんな格好をせねばならんとわかっていたなら!!」
 
身に着けたドレスと同じように真っ赤になりながら、ハイヒールのパンプスでがすがす運転席を後ろから蹴りまくる。
普段ブーツを愛用する彼女である、ヒールの高いそれは歩きにくいことこの上ない。
だが流石操縦のプロというべきか、そのくらいではヴァイスの運転は殆ど乱れることはないが。
  
「明日から部下たちにどんな顔をして会えというんだ……」
「でもほんと、似合ってますって。シグナム姐さん」
「……」
 
ヴァイスのフォローも、フォローに感じない。
 
……嵌められた。誰にかといえば、主にはやてとシャマルの二人に。
 
シグナムは、今朝のやりとりを思い出す。
 
こちらがこの頼みを引き受けた途端、主であり部隊長でもある人物は、満面の笑みを浮かべて内線を取り。
わずかな間も置かずその呼び出しを待っていたかのように、これまた新しい玩具を買ってもらった子供のごとき笑顔で入ってきたのは、守護騎士の同僚。
 
ブロンドの藪医者の差し出したこの衣装に事態をようやく飲み込んだと思ったら次の瞬間、バインドされた。
昔なのはから蒐集したレストリクトロックをあんなことに使わないでいただきたい。
 
「……訴えたら勝てるんじゃないか?これは」
 
局の管理課とかに。
抵抗するとかしないとか、そういう問題ではなかった。
 
なんというか、目が本気だった。
 
あっという間に脱がされ、着替えさせられ。
おまけに三人並んで、記念写真まで何故か一枚。
 
そして制服を没収され着替え禁止を厳命された上で自室に返され、現在に至るというわけだ。
裸かこれか。今思い返してもひどいもんだ、まったく。
 
「やー、最初見たときゃ、びっくりしましたよ。見違えましたし」
 
そりゃあそうだろう。
廊下で自分の姿を見たヴィータなど、腹を抱えて笑い転げていたのだから。
こっそり笑いを堪えていたフェイトやティアナとあわせて、もちろんしっかりと鉄拳制裁は加えておいたけれども。
 
他のスターズやライトニングのメンバーは似合っていると褒めてくれたが、実際のところどうだろう、と懐疑的にならざるを得ない。
 
「っと、もうすぐ着きます。時間は大丈夫で?」
「ん、ああ。問題ない。十五分も前に着けば上等だろう」
 
クラナガン中心に位置する豪奢なホテルへと、車が横付けされる。
自分と同じように着飾った女性、あるいはそのような女性を連れた男ばかりが行き交うロビーの様子に、入る前から辟易する思いだった。
 
玄関に到着した車を目ざとく見つけたボーイが寄ってきたので、仕方なくシグナムも降りる準備をする。
手荷物といえばシャマルから借りた(というか持たされた)、小さなハンドバッグひとつきりだが。
 
前髪の具合をもう一度バックミラーで確認し、ため息をひとつ漏らして決意を固めた。
 
「……行ってくる」
「はいはーい、お気をつけて」
 
今夜は、肩が凝る一夜になりそうだ。
半ば諦観の念と共に、彼女はボーイの開いたドアを降りた。
 
*   *   *
 
ちなみに、この朝彼女がはやてたちによって撮らされた写真。
そしていつの間にか撮影されていた、ドレス姿で隊舎内を闊歩する様子も含め。
 
何故か大量に存在していたそれらは、航空隊・陸士隊双方にに名の知れる、常に沈着冷静な機動六課鬼の副隊長の意外な一面を示す貴重な一枚として、後々何者か(と、いうことにしておこう)によって焼き増しされ高値で流通することになるのだが。
 
それはまあ、別のお話ということで黙っておくとしよう。
 
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シグナム姐さんのキャラ壊すのって結構楽しいんですよ、実際。つWeb拍手