の席でもあまり飲めない私。

 
弱いのよ。梅酒一杯で頭痛発動さorz
 
・・・ま、隣で講師の先生がカルピスソーダ飲みまくってたけどね。
車通勤は大変だ。
 
メガミを見て思ったのだが、新キャラたち結構ツボです。
スバル、かなり好きかも試練(漫画での初登場時は微妙な感じしたんですが)。
 
ぱっと見ボクっこだけどそうじゃないのがいいねえ。
 
さてさて。
喪失辞書(絶対定着しないなこの呼称)、第二話できあがりました。
web拍手のssも同時に更新しましたので、よかったらそちらもどうぞ。
 
↓↓↓↓
 
 
その人は、またやってきた。
リインの元に、彼女と同じ色の長い髪を靡かせて。
 
「あなたは、誰なんですか?」
 
切れ長の目を持つ女性は、答えない。
全ての言葉を忘れ去ったかのようにただ目を細め、彼女を静かに見つめるのみ。
リインの望む答えが得られることはないのだ。いつも、いつも。
 
もう何度目になるだろうか、この夢を見るのは。
これが夢だということは、もう彼女の姿を見た瞬間、わかるくらいに繰り返されたやりとりであった。
 
彼女は、けっして答えはしない。
毎度のように、たった一言の言葉をリインへと残し、消えていく。
 
『主を守れ、リインフォース
 
いつも、その一言が耳に残響する。ただ、それだけ。
その一言が、リインにとっての目覚めの合図となるのだ。
 
『頼む……』
 
頼まれたって、困る。
当然気持ちのいい目覚めなど、期待できるわけもない。
女性のあとを追い、リインは手を伸ばし。
 
伸ばした手が空を切って、ようやく目覚める。
 
そして目覚めるとそこには決まって、まだ眠りこける主の寝顔が、
安らかな寝息を立てて待っているのである。
 
 
魔法少女リリカルなのは 〜the lost encyclopedia〜
 
第二話 二人の少女が触れるとき
 
 
だから、リインは眠かった。
 
その日は前日の誕生会ではしゃいだ疲れもあり、尚更。
 
「リイン、そろそろ起きりー」
「んあっ?」
 
ぐっすりと眠っていたところにシュベルトクロイツのペンダントヘッドを揺すられて、リインフォースが目を覚ます。
瞼の裏の色だけだった世界が開けていき、様々な色をもって彼女を迎え入れた。
 
三つの光点が、空を駆ける。
 
白き光は、高く疾く。
稲妻の如き黄金が、それに追いすがり。
つかず離れず、緋色の流星も追従する。
 
「フェイトちゃん、バルディッシュないんやろ?よかったんか?」
 
前方を飛行するはやてが、振り返って言った。
 
一年ほど前から愛用している、深い紺色のバリアジャケット。
それを纏った身を包む、白い外套を風に揺らせて少女は頷く。
 
「うん。このところ出動続きで、あの子もちょうど細かいオーバーホールが必要だったし。それに───……」
 
頷いて、黒い台座に納まった宝石を二つ、振ってみせるフェイト。
調整に出している愛機の代わりに彼女は、彼の弟分たちをこの任務に持参してきていた。
 
「───それに、今日はこの子たちがいるし。マリーにも運用テストを実地で、って言われてたから」
「ふむ。しかしそれではいざという時、対応しきれなくなるのでは?」
 
少し下方を飛ぶシグナムが、言葉を繋いだ。
やっと目覚めたのか、リインフォースもはやての肩で目を擦りながら、大きく伸びをしている。
 
「まあ、このメンバーですから。そうそうなにかあるってこともないでしょう。そうならないのが一番ですし」
「それもそうだが……」
『はいはい、三人とも雑談はそのくらいにねー』
 
一応任務中だというのに、呑気なものである。
そんな彼女達を戒めるように、男の声が通信を介して割り込んでくる。
 
話の腰を折られた形で、三人は前方に向き直った。
彼女達三人は、ロストロギアの回収・護送任務のため、聖王教会へと向かい飛んでいる。
 
現場の責任者に、執務官のフェイトが。
発見されたロストロギアが古代ベルカの産物ということで、移送の担当にはやてが就き、
彼女の護衛にということで陸士部隊からシグナムがまわされている。
 
そして、総合的な指揮と監督の役割を担うのは、割り込んできた通信の声の主こと。
 
「あー、ロッサ。そっちはどないやー」
 
ヴェロッサ・アコース
 
アースラに待機中のヴェロッサへの反応は、三者三様。
はやては親しい友人である彼に、いつもながらの気安い感じで返し。
生真面目な性格からして、彼の軽薄を装ったそれとはそりが合わないのだろう、シグナムは無言で押し黙る。
 
そして、フェイトはというと───……。
 
『急に駆り出して済まなかったね。生憎、執務官クラスのいる艦で動けるのが君達しかいなかったもんだから』
「い、いえそんな。全然迷惑とかそんなんじゃないですし」
 
頬を赤らめ、彼の一言一言を嬉しそうに聞いている。
その様子は、冷静な現場指揮者としての執務官というよりも、完全に年頃の女の子。
 
テスタロッサ。速度が落ちているぞ、集中しろ」
「え?わ、ほんとだ」
 
苛立ったシグナムの声に気付き、慌てて軌道を修正する。
そんな好敵手の様子に、シグナムは深々と溜息をついた。執務官ともあろうものが、情けない。
 
「フェイトちゃんもロッサと何回か会っとるんやっけ?」
「え、あ、うん」
 
主たるはやてがあの軽い男に懐いているというのも、シグナムはどうも気に入らなかった。
 
そりゃあ、あれがただ軽いだけの人間でないことくらい、シグナムにだってわかる。
でなければあの堅物のクロノが彼のことを親友などと呼ぶはずがない。
 
だがその上っ面に見せている部分が、あまりにも軽薄すぎる。
 
そのような男のせいでフェイトが腑抜けてしまう(とシグナムとしては思っている)ということが、
彼女にはどうにも我慢ならなかった。
 
一体、どうしたというのだ、まったく。
二人の会話を極力聞かないように、憮然とした表情を下方の森に向ける。
 
「お兄ちゃんとの関係で……えと、何度か、ね。ご飯、一緒させてもらったり」
「そかそか。がんばりぃや」
「……う、うん。がんばる」
 
何を?と思っていたのは、シグナムだけだったろう。
 
はやてにはにかんだ微笑を返すフェイト。はやてのほうも承知した様子で微笑み返す。
しかし色恋の沙汰に疎いシグナムは残念ながら、そこに含まれる彼女の感情にまで、気付くことはなかった。
 
彼女たちの進行方向に、教会の荘厳なつくりをした建物が見えてきていた。
 
*   *   *
 
「アコース査察官、艦長。無限書庫のスクライア司書長から通信です」
「繋いでくれ」

アレックスの声に、クロノは鷹揚に頷いた。
ほどなくしてモニターの向こうに、よく知った顔の少年が姿を現す。
 
「久しぶりだな。髪、随分と伸びたんじゃないのか?」
『……忙しいからね、誰かさんのせいで。アコース査察官も、はじめまして』
 
ユーノとクロノはいつもそうであるように、開口一番憎まれ口をたたきあう。
それはもはや二人にとってはお約束の儀式。咎める者が、いるわけもない。
 
続けて自分のほうに頭を下げてきた彼に、ヴェロッサも会釈を返す。

「どうだった?資料のほうは」
 
彼の単刀直入な問いに、眼鏡の奥の瞳がやや翳る。そして肩を竦め、小さく首を振る。
残念ながら、横に。
 
「そうか……」
『調べてはいるんだけど、今のところ目新しいものはなにも。はやてたちには少し悪いけど、
 形状の類似している夜天の書周辺からの調査に切り替えてるところ。昔の調査データも残ってるしね』
「ふむ」
 
形が似ているというのは、一見単純な着眼点だ。
 
だが、ロストロギアというものは千差万別、種々多様、星の数ほどその形状や性質が存在し、
なにか類似した形状をもつものが存在するということのほうが稀である。
 
そんな代物であるからこそ、類似した形状のものは逆に、なんらかの関連性がある可能性が高い。
そこが突破口となって調査に光が見えるということだって十分にありえるのだ。
ユーノの判断は、ロストロギアの調査において一種のセオリーともいえた。
 
『とにかく、もう少しこっちも時間がかかりそうだよ』
「わかった、頼む」
 
少年の顔が、モニターの黒い色に消えた。小さく溜息をつき、クロノはヴェロッサに目を向ける。
 
「なにはともあれ、はやて達が何事もなく任務を終えてくれるのを祈るしかないってわけか」
「ああ、そうらしいな。情報が少ないのは不安だが」
 
アースラの艦首の先には、彼女たちの向かった聖王教会がある。
距離的に肉眼で捉えることはできないが、そろそろ一行はロストロギアと対面した頃だろうか。
 
「そういえば、彼女……エイミィくんは?」
「管制司令への昇任試験だよ。明日には戻ってくる」
「そっかそっか。帰ってきたら大事にしてやんなよ?」
「……やめてくれ、仕事中だ」
 
本気で嫌そうな顔をしたクロノの肩を、ヴェロッサは茶化すように叩いた。
 
*   *   *
 
「ふあぁ……」
 
はやてに抱き上げられた状態で、リインが大きな欠伸をした。
一同の歩く足音しかしない廊下では、その声は非常によく響く。
案内役のシャッハがちらとジト目を向けるが、幼き祝福の風は気付かず、眠たげに目尻に浮かんだ涙を拭っていた。
 
「リイン、寝不足?」
 
静けさに包まれた教会内だからか、フェイトは小声で尋ねた。
 
天気は、よい。
晴れ渡った空の下にある古風な造りの教会というのは、神秘的でありながら美しく。
 
小さな中庭を望む保管所への道は、日光に照らされていて暖かい。
別に声を小さくする義務はないのだが、今のシャッハの反応を見るに、そうしておいたほうが無難であろう。
 
「わかんないですー……。最近、眠りが浅いみたいで」
「ふうん。どこか悪いの?診てもらった?」
 
また、欠伸をひとつ。目を擦る彼女の代わりに、はやてが苦笑交じりに答える。
 
「なんか、ずーっと同じ夢ばっか見るんやって。他におかしいとこはないし、様子みとるんやけど」
「夢?」
 
言ったところで、一同は突き当たりの古めかしい扉の前にやってきていた。
彼女たちの私語を嗜めるように小さく咳払いをして、先頭の修道女は扉に手をかける。
 
「ここです」
 
重厚な扉を、ゆっくりと押し開いていく。
 
霊安室のように薄暗く、広い部屋の中心に、
それは何重にも、厳重な封印の鎖に巻かれた状態で。
 
静かに、安置されていた。
 
*   *   *
 
同じ頃。
 
───びしり、と左腕が嫌な音を立てた気がした。
 
「ッ!?」
「隊長?」
 
突然蹲った少女に、遥かに年上ながら副官を務める部下が怪訝そうな表情を向ける。
 
「……だ、大丈夫。なんでもないから」
 
無理矢理に笑顔をつくって言うが、誤魔化し切れてはいまい。
自分でも分かるほどに顔色は酷いことになっているし、額には嫌な汗が浮いている。
とても大丈夫には見えないはずだ。
 
「どこかお体の具合でも……」
「違う、から」
 
痛みとは違う。
 
古傷が、痛むのではない。
古傷が、何かを伝えようとしているのだ。
 
そうとでも思わなければやっていられないほど、左腕を中心に全身を駆け巡る不快感と圧迫感は強烈だった。
だが、一体何を?
 
「ほ、ほんとになんでもないの。それより、部隊の展開は?」
 
痺れに満たされる左腕を押さえたまま、なのはは立ち上がる。
気分はもう、最悪だった。仕事に没頭して紛らわすより、他にない。
部隊を指揮する立場上、ここを離れるわけにいかないからには。
 
演習のため整列した武装隊員たちの姿が、なのはのいるこの場所からでも見て取れた。
 
頭に浮かんだ古傷の意味を思考の片隅へと追いやり、簡易的な術式を右掌に紡ぐ。
 
(これ……一体?)
 
ぐずぐずしているわけにもいかない。
 
「っく」
 
左腕の神経には、麻痺性の追加効果を持った電撃の魔力を撃ち込んで誤魔化す。
 
フェイトに以前微細なコントロールを教わっておいて、よかった。
その一方で、シャマルに先日の診察の際鎮痛剤だけでももらっておけばよかったと、
今更になって後悔する。それならばもっと、楽にやれたであろうに。
 
(フェイトちゃんは……はやてちゃんたちとロストロギアの回収任務だっけ)
 
聖王教会、だったか。
自分はまだ行ったことがないが、はやてやクロノたちと親しい人々がいると聞いている。
 
(リインも、一緒……なんだよね、やっぱり)
 
撃ち込んだ魔力がようやく効いてきたらしい。
右手で押さえた左腕がすっと軽くなっていくのを感じながら、なのはは銀髪の少女のことを思い浮かべた。
 
不思議と、必ずはやてとワンセットで行動するはずのリインの顔が頭に浮かんだのだ。
考えるまでもなく、二人は一緒にいるはずなのに。そんな当たり前のことが、何ゆえか急に。
さらには何故だか、今は亡き先代のリインフォースのことも。
 
魔導書の化身たる二人の姿が交差し、重なり。頭からこびりついて離れなかった。
 
それは彼女の親友とその従者が、喪われた魔導の器と対面を果たした、丁度同時刻のことであった。
 
*   *   *
 
「……あんま、気分のええもんやないな」
 
鎖に縛り上げられるようにしてそこにある、一冊の魔導書。
それは大きさも色も、在りし日の「彼女」に実にそっくりで。
 
はやては、つい苦い顔をシャッハへと向ける。
 
「すいません。ですがはやて、このロストロギアは」
「わかっとるって。これなら確かにロッサやシャッハがわたしを呼んだんもわかるわ」
 
表紙に何も装飾がないのを除けば、厚みも大きさも、色さえも瓜二つ。
結界を覗き込むはやては、気にするなという風に苦く笑う。
 
護送対象となるのは、古代ベルカの希少なロストロギア
万全の体制で臨まねばならないのははやてとて、重々承知している。
ほんの少し、心の奥底に残っているかつての愛機の微笑が思い出されて、ちくりと痛んだだけだ。
  
「アースラ。こちら、護送部隊。これよりロストロギアの検分、及び護送作業に入ります」
『了解』
 
通信を切ったフェイトが頷いたのを受け、はやてもリインとアイコンタクトを交わす。
パネルを操作して開いた結界の内に入り、二人は呼吸を合わせる。
 
「いくで、リイン」
「はいっ!!」
 
意識は、二つ。
心は───……ひとつに。
 
「「ユニゾンインッ!!」」
 
ミッド式ならばまだしも、古代ベルカのロストロギアを詳しく調べるような装備を、
偶然に発見したような発掘隊が持ち合わせているわけもない。
 
故に、検分はこの場でする必要がある。
 
暴走の危険性がないか。
一体、どういった性質のものか。
相手はロストロギア、何が起こってもおかしくはないのだから。
 
「お願い、はやて」
 
極力刺激を与えぬよう、慎重に。
ベルカ式にはベルカ式、同じ術体系で。
 
「ええか、リイン」
『はい!!』
 
鎖に拘束され魔力を切断されたロストロギアに、手を伸ばす。
 
「魔力切断、解除してください」
 
わずかに淡い光を放っていた鎖から、輝きが消える。
今魔導書を縛り付けているのはもう、ただの鎖に過ぎない。
 
はやてはそっと、表紙に触れた。
掌からは鼓動にも似た、魔導書の息吹きが感じられる。
つまりはまだ、このロストロギアは「生きている」ということ。
 
ほっとした気分になりながらも、気を引き締める。
まだ稼動状態にあるならば、取り扱いには細心の注意を払わなければ。
 
「……いきます」
 
ゆっくりと魔力を送り込んでいく。
リインがその流れる具合で、このロストロギアの構造を掴んでくれるはずだ。
構造さえ掴めれば、輸送に封印が必要か必要でないか。
その封印の規模はどの程度必要か把握できる。
 
(マイスター、もうちょっと魔力お願いできますかー?)
「ん、わかった」
 
リインに促され、右手から放出する魔力を更に強める。
はやての魔力量からいえば、なんでもない量の魔力だ。
 
「どうや?」
(うーん……えーと……)
 
二人の少女は、それぞれに集中していた。
 
はやては、魔力の放出と、それを常に一定量に保ち魔導書全体に行き渡らせることに。
リインは、魔導書の構造を読み取る、ただその一点に。
魔導書を起動させてしまわぬよう、暴走させぬよう、気を張り詰めて。
 
故に、それは覚醒することができた。
二人に、気付かれずに。
 
『ありがとう。手間が省けた』
「!?」
 
例えるならば、砂漠で涸れて死んでしまいそうな人間に与えられた一杯の水。
得られれば、復活する。
 
魔力と言う名の、極上に甘いそれは、魔導の器にとっては最高の活力。
 
(はやてちゃん!?)
「これっ!?」
 
いつの間にか放出は、吸収に変わっていた。
もちろんはやてが、ではない。行動の主語も、彼女から掌の触れる魔導書へと移り。
 
「はやて!!」
「主!!」
 
止まらない。
右手が吸いつけられたように、離れてくれない。
 
身を翻そうとしたはやての異変に、フェイトとシグナムが気付いた直後。
急激に意識が遠のいていく。
 
掌が魔導書の表紙を滑り、同時にリインが分離していくのは理解できた。
そこでおしまい。
彼女の体内にある魔力全て、欠片も残すことなく吸い尽くされていく。

だから、はやては崩れ落ちた。
直後、魔導書を拘束していた鎖が粉々に、砕け散った。

閉じられていた書のページが、開け放たれた。
 
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更新しますた。感想批評もバッチコーイつweb拍手