メビウス終了。

 
よかったと思います、うん。
なんか終わったんだなーと思うと心にぽっかり穴が開いた感じですが。
A’s最終話以来だなぁ、こんな気分は。
まあなのはの場合はそのあともメガミの漫画やらなんやらがあったしstrikersの製作決定の報も割とすぐだったんで意外と総合的なダメージは大きくなかったんですけれども。
 
これでしばらくウルトラマンとはお別れかー、と思うと物心ついた頃からのウルトラファンとしてはしんみりなってしまうのですよ。
ミライくんといいメビウスといい出演者のみなさんといい、一年間いいもん見させてもらいました、ほんと。
 
リュウがヒカリに変身し、フェニックスブレイブに皆で変身したのは円谷的には
青の入ったウルトラマン=人間ウルトラマンということなのかなぁ、と思ってみたり。
まぁサコっちもゾフィーと一体化してたけど、あれはタロウに兄弟揃って客演した際と同じようなもんですしww
 
GAYSメンバーとミライの後日談とか見たいなぁ。
戦いはいらないから純粋に再会を中心に据えて。
何年でも待つからやってほしいと思います。
 
 
・・・と、ここで話題を変えまして。
おそくなりました、なのユー話「nocturne」第八話を更新します。
エイプリルフール話はもう少しお待ちくださいorz
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers −nocturne−
 
第八話 Crystal Letter
 
 
サイドでひとつに纏めた髪を振り乱し、息を切らせながら少女は走る、走る。
 
運動を不得手としていたかつての自分ならばともかく、本来ならば体力的にも身体能力的にもまったく問題にもならないような距離を、暴走寸前のエンジンのように息せき切って、心をかき乱して。
 
心臓が早鐘を打つのは酸素を求めているからだけではない。
今にも悲鳴をあげそうなほど、その思いの内が不安に満たされているからだ。
 
目指す場所はもう、すぐそこだった。
自動ドアが開くと同時に滑り込み、突き当りにある木製の古めかしい扉に乱暴に手をかける。
 
その先は、二人で慣れ親しんだ司書長室。
親しき「彼」とともに語らい、笑い。
ある時は見るに耐えないほど散らかり、またあるときは多少なりと整頓されていたそこは、かつてはなのはにとって自分の所属する部隊とあまり変わりがないほどの時間を過ごした場所だった。
 
「ユーノく……っ……!?」
 
部屋には彼の匂いが、部屋そのものの発する独特の香りに混じって、確かにあった。
 
ただ、彼とともにあった匂いそれだけがそこに。
 
「ユーノ……くん……?」
 
他には一切、なにもない。
 
机に堆く積まれていた書類や資料本の山は、忽然と姿を消し。
壁一面の本棚に、全て彼の私物であったという膨大な量の書物は一冊たりとも残っていない。
なにもかもが、本来あるべきその部屋から消失しているのだ。
 
「そんなこと!!」
 
木の地肌を晒す机へと駆け寄り、引き出しを力任せに上から順に引き、開け放っていく。
 
一段目。二段目。三段目。
どれだけ願おうと、祈ろうと、やはり彼女の目には安物のボールペン一本、見つかりはしなかった。
 
「もう、やめり」
 
一番下の段がやはりもぬけの空の中身を曝け出したのと、親友兼上司の声が聞こえたのは、同時であったように思う。
 
「……あ」
「人事のレティ提督と……寮のほうにも問い合わせてみたんやけど」
「ユーノくんは!?ねえ、ユーノくんは家にいたの!?」
 
開かれたドアの縁に右手を添えて立つはやてに、なのはは飛びついた。
 
きっと頷いてくれる。これもなにかの間違いだと言ってくれると祈って。
目の前にある光景を瞳に否応なくはっきりと映してさえ、なおも信じたいと思う自分がいる。
 
そんな彼女の気持ちは、当然のごとく左右に振られたはやての頭によって打ち消されるだけだった。
 
「今朝、早く。寮を引き払って出てったそうや。レティ提督も辞表を受け取った言うとった」
「嘘!!そんなこと、絶対……!!」
「こないな嘘、つかへんよ。お願いやから落ち着いて。現実を見るんやなのはちゃん」
 
なのはが彼女にそうしているように、はやてもまたなのはの二の腕をしっかりと握り返して静かに言った。
 
「そんなっ……どうして……」
「なのはちゃん、しっかり」
 
それは、今にも崩れそうに膝を震わせる彼女を支えるため。
自身の見た現実へと拒絶反応を起こしたなのはの顔は血の気が引き、色を失い白くなっていく。
 
はやてが支えてくれていなければ膝から崩れ落ちていたに違いないほどに、彼女の狼狽の度合いは大きかった。
 
「どうして……?ねえ、どうして……」
 
うわ言のようにただそれだけを繰り返すなのはに、はやてが解答を与えられるわけがなかった。
彼女はユーノではない。ユーノはここに、いないのだから。
いない人物のことを、答えられようはずもない。
 
「なのはちゃんっ」
 
はやての腕の中から、なのはの身体が引き摺られるように落ちていく。
他人に支えられてなお、彼女は自分の体重に耐えられない。
 
完全に地面へと落着した腰を曲げて、呟きの中になのはは求めた。
 
ユーノのいなくなった理由を。
そして、彼の姿を。
 
*   *   *
 
「そんな……なんでユーノは突然、そんなこと」
 
何故、どうして。
その疑問はけっしてなのはだけのものではない。
 
キャロとの出先ではやてからの連絡を受けたフェイトも、意図のつかめないユーノの行動に、首を傾げざるをえなかった。
同時に、親友のことが心配であった。
 
「なのはは、大丈夫なの?」
『今はシャマルから薬をもらって横になっとる。スターズ分隊の二人がヴィータと側についとるから心配せんでええ』
 
落ち着いている、との言葉にいくぶん安堵するフェイト。
無論、今のままでいいというわけではないが。
少なくとも今は無事だと聞いて、安心するのは友であるからには当然のことだ。
 
『というか、連絡した理由はそれだけじゃないんよ』
「え?」
 
代わりにやってくるのは、別の疑問にして、別の不安。
 
『寝言……うわ言ていうたほうが正しいんかな?なのはちゃんが言うとったから』
「?」
『フェイトちゃんにユーノくんのこと、知らせなきゃ、って。ベッドの上で言うとったんよ、なのはちゃん』
 
はやての伝えたなのはの言葉の意味を理解できず、フェイトは困惑する。
 
何故そこで、自分がでてくる?
 
ユーノのことを自分に伝えて、なのははどうしたいのだ?
彼が姿を消して一番傷ついているのは、当のなのはのほうだろうに。
自分に報せようとする、意図や理由がわからない。
 
まるでそれでは、自分がなのはよりユーノと────。
 
「……まさか」
『フェイトちゃん?』
 
大まかに考えて思い当たる節は、ひとつだけだった。
 
先日の、無限書庫での一件。
ユーノとの間に起きたあの些細なアクシデントを見られていた、それくらいしか思いつかない。
 
思えば、あの事故の次の日からなのはの態度は意固地に一変していた気がする。
急激に彼女の気持ちがお見合いの方向へと流れていったのも頷けるし、あれを見たなのはが勘違いしてしまったのだとしたら、辻褄はあうように思える。
 
だとしたら、なんてことだ。自分がなのはとユーノの間の障害になってしまうなんて。
 
「フェイトさーん」
「あ、キャロが戻ってきた。またあとでこっちから連絡しなおすから」
『わかった。とりあえずうちらのほうでもユーノくんのこと調べられるだけ調べとくわ』
 
あまり、子供に聞かせるような話題ではない。
ル・ルシエの村に到着して挨拶回りを終えるなり早速族長のもとに呼ばれていた少女が
姿を見せたことで、やむを得ず話題は打ち切られる。
内心の忸怩たる思いを悟られないよう、フェイトは言葉を捜した。
 
「れ?通信ですか?」
「うん、ちょっとはやてからね」
 
自分の養女に嘘を吐く気にはなれないが、かといって本当のことを話すことも憚られた。
故に肝心な部分を曖昧にしてぼかして伝える。
 
──でも、もし本当に自分とユーノのことを見てなのはが勘違いしたのならば、そのことで動揺したというのならば。
 
(……やっぱりなのはは……)
 
結局、気づいていないだけなんじゃないか、自分自身の気持ちに。
彼女に対し申し訳なく思うと同時に、そんなことが頭に浮かんだ。
 
「フェイトさん?」
「なんでもないよ。それで族長さんはなんだって?」
「はい、なんでも交流のある部族に新しい……」
 
だとしたら、どうやって気付かせてやることができるだろう。
十年間、まったく本人が自覚することのなかったその気持ちを。
 
キャロの頭を撫でてやりながら、考える。
 
保護者としてついてきておきながら心ここにあらずで少女の言葉を聞き流し、おまけにその理由となる事実も誤魔化している。
少し、自分は子供にとって卑怯な大人なのかもしれないと思った。
 
簡素なベッドが二つ並ぶ部屋の石造りの壁が、ふと目に留まった。
辺境にある少数民族の村というだけあって、お世辞にも手入れが行き届いているとは言いがたい。
そこには二つの染みが目立つ位置に拳大ほどに大きく広がっていて、その端と端とがくっついていた。
 
構造材の石のヒビに分かたれてなお、けっして断ち切られることなく。
しっかりと二つの模様は、重なり合っていた。
 
*   *   *
 
どうやら少し、眠ってしまったらしい。
 
自室のベッドから身体を起こしたなのはは、薬による睡眠のせいか、はたまたその睡眠が中途半端だったせいかやや重い感じのする頭を押さえた。
副作用のないものだと聞いたから、おそらく後者だろう。
 
腕時計の時間だと、あれから二時間弱といったところか。
 
それまでの記憶の糸を辿り──いや、辿りかけて、やめる。
 
眠る前にあった記憶にある出来事から、意識して目を逸らす。
幸いにしてひと時の睡眠は彼女に、それができる程度の余裕を運んできてくれていた。
 
「え、っと」
 
代わりに他愛もないことを考えつつ静かな室内を見回す。
 
昼寝なんて、いつ以来だったっけ。
着たまま寝ていたおかげで、茶色の制服には若干ではあるがシワがついてしまっている。
今日はこのままでいるより仕方がないが。
 
ベッドサイドのテーブルには、重石代わりに携帯が載せられた、一枚の書き置き。
丸っこい字で一言、「頭は冷えた?」とある。
字の隣のウインクをした、ポップな似顔絵からして、はやてのものだろう。
 
「……戻らなきゃ」
 
その筆跡に、なのはは自分のすべき仕事を放り出したままだということを思い出す。
 
紙面を通じて尋ねられるまでもなく、時を置いたおかげで頭は随分と落ち着いていた。
というよりもどちらかといえば、睡眠が目の前にあった光景や耳にした言葉から現実感を奪ってくれたといったほうが正しい。
 
大丈夫、デスクワークくらいならできる。
深く考えはじめる前に、仕事に戻ってすることを済ませるべきだ。
 
自身の状態をそう判断したなのはは、部下や友人たちに任せっきりになってしまっているであろう業務に戻るべく、ベッドから抜け出る。
このところプライベートに割く時間が多かったから、書類もそれなりに溜まっている。
作業の指示役を代行するヴィータは今頃、てんてこまいになっているかもしれない。
 
靴を履き、携帯電話を机上から取り上げて分隊室へと急ぐ。
 
開くことなくそのままポケットにねじこんだから、寝ている間にメールの着信があったことを彼女が知ったのは、その日の業務が滞りなく終了したあとであった。
 
それは、返事を求めない。また必要としない、送信者の意思ただそれだけを載せたほんの三十字程度にも満たない、短い文章。
 
件名はなく、前置きもない。
本文に、すべてが詰まっている。
 
その意味はなのはが待ち焦がれ、そして見失った少年からの言葉を届けるためにあり。
 
 <<明後日の日曜、ミッド都心の海浜公園で待ってる。  ユーノ>>
 
 
たったそれだけの用件を伝えるがために遣わされた、回線の海原を越えやってきた一通の手紙だった。
 
(つづく)
 
 
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