回復気味。

まだ微妙ですが。
友人に連れ出されてマジアカしてくる辺り終わってるな自分よ。
寝ろ、俺。ふらふらですわ。
 
以下、web拍手レスです。
気の利いたことかけないのはきっと風邪のせいだ・・・。
 
>フェイト×エリオなんて犯罪的な組み合わせはどうでしょうか…
よし、じゃあ書いてみようか。楽しみに待っている。
 
>どうも初めまして。いつも楽しく拝見しております。ところでなのはSts2話昨日ようやく見ました。確かにあれはそう取れますよね;ですが主人公補正もあるのでたぶん大丈夫なのではないかな〜っと思います。故に僕は考えた!!あれは死亡フラグではなく、出来ちゃった婚フラグではないかと!!いや、仮にそうでなかったとしても病気で引退くらいかと。………個人的にはやっぱさっきの方g(ryもしも予想通りなら、相手はY・S………やっぱり彼は淫獣wん?この辺やけに明るいようn(ジュ
焼かれたか……だが無駄死にではないぞ。
と、まあ。その方向が一番和みそうな物議を醸し出しそうな予感(どっちさ
 
>妊娠してるんで生理がきてない方向でw 
それもまた一興。
 
はい、さて。
趣味云々〜とか一昨日ほざいてましたが、
連載中のよりもそれよりも、ふとはじめた過去作の加筆のほうが先に済んでしまった罠。
 
去年の第一回なのフェスで出した本に収録した、フェイトの話。
はやて本のほうは再販できましたがこちらはできなかったので、加筆を加えて。
最後の部分は別物になってます。
 
では、どうぞ。
 
↓↓↓↓
 
 
 
何故、それが目に入ったのかはわからない。
ただなんとなく上空から辺りを見回していて、そこにあって、気になっただけ。
 
「…ああ、あれか?あれは確か、レティ提督の知人が──」
 
小さな円筒が三つ並んでくっついたような外観は、停泊するアースラの船窓からも、生い茂った森の中にぽつりとあるのがはっきりと確認できた。
 
「気になるのか?なら行ってくるといい。このところ忙しかったし、丁度いい休暇だろ?残りは僕一人でもやれるから。もう2、3日はこっちで退屈な事後観測しなきゃならないしね。あ、一応レティ提督にも話をつけておいたほうがいいか」
 
五つ年上の兄は少女の問いに、わかりやすく答えてくれて。
気兼ねなく行けるよう、色々と配慮してくれた。
 
ありがとう、お兄ちゃん。
兄の気遣いに感謝し、そうお礼を言った彼女は数日間の休暇をもらい、今こうして建物の門の前にいる。
 
箒で落ち葉を集めながら、少女を微笑で迎えてくれる初老の女性。
彼女が園長を勤めるこの場所には、たくさんの子供達がいる。
 
そう──ここはとある次元世界の、とある辺境の場所にある。
 
小さな小さな、孤児院。
 
日本の晩秋にも似た不思議な匂いの風に、目を細めながら。
子犬の姿のアルフを連れ、長い金髪を二つに結んだ少女──フェイト・テスタロッサ=ハラオウンはイエローに塗り替えられたばかりの、向こうから賑やかな声の聞こえてくる門をくぐった。
靴底で踏んだ落ち葉が砕け、乾燥した音を立てて粉々になっていった。
 
 
魔法少女リリカルなのはA’s to strikers
 
〜群衆の中の猫〜
 
 
「園長先生、誰?その子。新入り?」
 
白髪の女性に連れられて室内に入ってきたフェイトに最初に気付いたのは、数人の年下の女の子だった。
身長や年齢は大体、はやてのところのヴィータと同じくらいだろうか、フェイトよりも一、二回りほど身長が小さい。
園長先生はそんな彼女達に首を横に振り、連れてきた少女が知人の知り合いの子である旨を告げる。
管理局の関係者とか、そういったことには一切触れぬままに。
 
自分が管理局に勤める執務官候補生であるということを、フェイトは黙っておいてもらうよう予め彼女にお願いしていた。
余計な情報や先入観は、抜きにしたかった。
 
フェイトが少女達への自己紹介を済ませると、人見知りをしないのか彼女達はまるで気心の知れた姉に対するかのように、喜び勇んで擦り寄ってくる。
戸惑いながらもフェイトは彼女達の身体を抱き止め、その頭を交互に撫でてやる。
亡きアリシアや義兄クロノ、それにエイミィ。局でも新参の彼女は接する人間の大半が年上の人々だ。
姉であり妹であるという点では使い魔のアルフが妹だと言えないこともなかったが、どちらかといえば妹として庇護され、愛される「受け手」であることが多かった彼女には、あまりない体験である。
ヴィータというみんなの妹分的な存在もいるが、彼女はここの少女達のようにフェイトには(というよりはやて以外の人間には)素直に甘えてはくれない。
 
くすぐったがっているように笑い、はしゃぐ少女達の様子に、フェイトもまた自然と顔を綻ばせる。
 
「……あら?」
「?」
 
緩んだ顔をふと上げると、老園長が誰かを探すようにきょろきょろと部屋を見回していた。
大体のメンバーは外に遊びに出ていると事前に歩きながら聞いていたから、残っているのはこの子たちだけだと思っていたのだが。
 
どうも、違うらしい。
 
園長の様子とその意味に気付いたのか、フェイトの腰の辺りにしっかり抱きついたまま一人の女の子が一言、部屋に戻ると言っていた、と呟くような小さな声で彼女に伝える。
  
ああ、そうだったの。老人は頷くと少女達に囲まれっぱなしのフェイトに、ついてくるよう促す。
二人のやりとりは主語がなかったせいでフェイトにはよく飲み込めなかったけれど。
園長がわざわざついてこいと言っているのだから、きっと自分に会わせておきたい人間なんだろう。
そう考えたフェイトはすぐ戻ってくると約束し、少女達から離れ彼女の後を追う。
 
「……いい子達、ですね」
 
偽りのない感想を老女の背中へと投げかける。
軽く振り向き、横顔に微笑する園長を見て彼女の心に蘇るのは、出掛けの娘へと投げられた母の言葉。
 
『……みんな、次元災害やロストロギア関連の事件で親を失った子達なのよ』
 
リンディ提督──この園長と直接の知人であるレティ提督を友人に持つ母は、休暇申請を持っていったとき、そのように言っていた。
どうも、彼女も母やレティと同じく、局員として幹部への道を歩んでいた人物らしい。
 
『少し辛い思いもするかもしれないけど……フェイトにとって貴重な体験にもなるだろうし、ね。いいわ。いってきなさい』
 
彼女は笑顔で、フェイトがつい先ほどまで少女達にしていたのと同じように頭を撫でて送り出してくれた。
 
──ロストロギア関連の事件で親を失った子達。
 
それはすなわち、かつてのフェイトと同じ子供達であるということ。
いや、一歩間違えれば直接的ではないにしてもフェイト自身の手によってそういった子らを生み、増やしていたかもしれないのだ。
 
けっして無関係と思える子供達ではない。
 
アルフを抱きかかえるその胸が、少しだけちくりと、痛む。
 
話によるとほとんどが自分より年下の、幼い子達。
自分は新たな家族を得ることができたが、あの子達にはいない。
家族と呼べるのは、寄り添うようにして暮らすこの施設の仲間達だけ。
 
フェイトがそのことに罪悪感を持つ必要などないはずなのに、彼女の心はそんな彼らへの後ろめたさをどうしても感じてしまう。
 
彼女達がフェイトの境遇を知ったら、怨むだろうか。妬むだろうか。
あるいは、許してくれるのだろうか。受け入れてくれるのだろうか。
 
目的の部屋に着いたのか、先導していた園長の足が止まった。
我に返り慌ててフェイトも足の踏み出す動きをストップする。
彼女は軽く扉をノックして、ノブを回し──本局やアースラと違ってここは、機械化があまりなされていない──、二組の二段ベッドといくつかの机、そして数冊の雑誌の散らかっている部屋へとフェイトを招き入れた。
 
「彼」は右側の二段ベッドの下段に、何をするでもなく寝転がっていた。
 
園長の呼ぶ声に顔を挙げた少年は金髪の少女の姿を確認し、首を捻って訝しむような表情を彼女へと向けてくる。
 
──歓迎されてないな。フェイトは直感でそう感じ、身体をわずかに縮こまらせた。
 
老女に促され面倒臭そうに立ち上がる少年の背は先ほどの少女達とは逆に、フェイトよりもわずかに高い。
フェイト自身クラスの女子の中ではここ最近伸びてきたおかげで若干高いほうだから、おそらく同い年か少し上下するくらいか。
少年へと紹介され、フェイトははじめの少女たちにそうしたように、よろしくと小さく頭を下げる。
短く刈り込んだ頭と、健康的に焼けた肌が印象的な男の子だった。およそ日中に部屋の中でこのようにじっとしている姿など、似つかわしくはない。
 
彼は気のない様子でフェイトを見、ぼそりと名前だけつぶやくと、そのままベッドの上へと戻っていく。
殆ど聞き取れるか聞き取れないかというような、小さなものだった。
 
「あ……」
「?」
 
思わず引き止めそうになるが、何を言えばいいのかもわからない。
声にわずかに反応し、怪訝そうにちらと振り向いた彼は何も言わないフェイトに興味を持たないのか、ベッドに寝そべるとこちらに背を向けたままじっとしている。
園長の呼ぶ言葉も右から左。完全に無視の状態で。
悪意でもなく、敵意でもなく。嫌悪の混じった、無関心という名の拒絶だった。
 
結局何も彼とは話せないまま、フェイトはそこを立ち去ることとなった。
 
 *     *     *
 
少年がここの子供達のリーダー格だということを知ったのは、一同で一つのテーブルを囲んで食べる夕食の時だった。
管理局からの補助金がありながらもこの小さな孤児院の経営がけっして恵まれたものでないということをフェイトは知っていたから、遠慮してアースラに戻るつもりだったのだが。
 
小さな子供達の知らない(世間的に見ればフェイトも十分「子供」の範疇に入る年齢ではあるが)様々な世界のことを体験し知っているフェイトは彼女たちに泊まっていくようせがまれ、ことわりきれなかったのだ。
夕食の時間までに全員の姿を把握していたわけではないけれど、皆が揃うはずの食卓にはフェイトと園長、世話役の中年女性を除けば、遥かに幼い幼年・幼女ばかりだったのである。
 
そんな中、昼間見た「彼」の姿だけが見当たらなくて。
子供達が自慢げに話す、そのまとめ役の「彼」だけがどこにもいなくて。
並んで座る子供達の間にぽっかりと、一つだけ席が開いていた。
  
もう一度だけ見落としているのではないかと周囲を確認してから、園長へと彼の所在を聞いてみる。
彼女は困ったように笑いながらフェイトに、気にする必要はないと言う。
 
今日は少し体調と──機嫌があまり優れないだけだから、と。
 
その言葉に、フェイトは理解する。
 
やはり彼は余所者の自分、あるいは家族を持っていながらわざわざ彼らの中にやってきた自分に対して良い気を持っていないのだ。
気にするなと言われても気にしないわけにはいかない。
小さな子供達と囲む賑やかな食卓も、そう思うとなんだか寂しいような気がした。
子供達にもみくちゃにされ目を回すアルフを見て苦笑するのが、そのときはやっとだった。
 
*     *     *
 
いくら休暇を取ったとはいえ、時空管理局の局員でありアースラに所属する魔導師であるフェイトが滞在できる期間はごく短い。
アースラはもうすぐこの地を離れるし、生活の拠点となる海鳴での小学生としての日常だってある。
だから夜はしっかり寝て、与えられたわずかな時間を十分活用できるように早起きしないといけないというのに。
 
それなのにその夜、フェイトは眠れなかった。
二段ベッドの空いた下段のひとつで毛布にくるまり、一緒に寝るといって聞かない、一番よく懐いてきた女の子が寝息を立てている横で、じっと物思いに耽る。
 
(──次元災害やロストロギア関連の事件で親を失った子達)
 
昼間思い出した言葉を、ベッド上でもう一度、反芻してみる。
それはつまり、管理局が救いきれなかった命、それまでの日々を護ってもらえなかった子供達ということ。
 
(そんな子たちを、私は増やしていたかもしれないんだ……)
 
母だと思っていた女性を失い、天涯孤独となったことのあるフェイトには、その苦しみが痛いほどにわかる。
 
だから清算したはずの過去を思い、深く苦悩する。
ただ母に従い行っていた行為が、どれほどの危険を孕んでいたのかということを。
隣で眠る幼子も、笑えるようになるまでどのくらいの時間がかかったのだろうか。
 
(──そしてこれから、増やしていくのかもしれない……)
 
そして執務官を目指すということは、彼女達のような子供達をこれ以上生み出すことのないよう、守るための力となるということ。
 
ただし、少しでも、という限定符付きで。
己の手の届く範囲のみで、と言い換えてもいい。
 
誰かを守ることは、できるけれど。
同時に、手の届かない場所にいる誰かは変わらず、悲しみや苦痛に晒される。
それぞれの、兄の言葉を借りるなら「こんなはずじゃない」人生に。
どんなに頑張っても、助けられる者と助けられない者がいる。
 
自分は、その取捨選択を迫られる。
 
悲しみを減らす一方で、増やしてもいく。
それはけっしてマイナスをプラスにしていく作業では、ない。
ゼロに近づくことはあっても、負が正になるということは、絶対にありえない仕事。
 
頭では分かっているつもりだった。執務官を目指すということが、どういうことなのか。
執務官であるからこそできること、できないこと。
その責任の重さと、妥協せねばならない部分が存在することも、自分なりに理解したつもりになっていた。
 
──重いよ、クロノ。
 
全てが救えるわけでないことくらい、分かっていたはずだった。
 
だけど実際に見せられた現実は、遥かに重くて。執務官という立場に伴う責任と業は、想像よりも遥かに。
 
こんなに、重かったなんて。
昼間の少年の態度や、ここにいる子供達の数を見て、改めて痛感させられていた。
 
もし、自分が執務官になって、事件を担当して。
力が及ばずに、そのために犠牲者を出してしまったら。
 
それを想像するのは、恐い。すごく、すごく。
 
(──クロノは、強いん……だね)
 
その力だけでなく、心が。
 
フェイトが管理局の人間だと彼らに知られたら、彼らはどう思うだろう。
彼ら、彼女らを助けてくれなかった管理局の、執務官候補生だということが、知られてしまったら。
 
非難するだろうか、拒絶するだろうか。
きっと、昼間のあの少年のように、嫌悪すると思う。フェイト自身の境遇を聞くより、ずっと。
無視か、あるいは面と向かってかはわからないが、拒否され、嫌われてしまうだろう。
 
初老の園長に伏せておいてくれるよう頼んだ自分は臆病で、卑怯だと思う。
けれどその卑怯な選択をした自分はどこか、知られずにいることにほっとしていて。
もし明かされていたら、と思いかすかに身震いを感じるのも事実であった。
 
(──私、そんなに……強く、ない。強く……、なれるのかな……?)
 
彼女はまだ兄のようには、強くはなれていない。
まだ幼いフェイトにその選択肢は、重すぎた。
 
己の志す、夢の重さは。
 
*     *     *
 
結局、フェイトがあまり眠れなかった翌日も、少年はフェイトを避け続けた。
フェイトに懐いていた幼い子供達も、少年の異変と翳りがちな彼女の表情に流石に気付きはじめていて。
不思議そうにしながらもフェイトを慰めようと周りに寄ってきてくれる子供達が、心に痛かった。
 
──ごめんなさい。
 
フェイトは密かに彼ら、彼女らから離れ、老園長へと頭を下げた。
気にするなとは言ってくれたけれど、やはりこの状況には、自分の責任があると思ったから。
 
彼女は、笑いながらフェイトの両肩にやさしく手を置いて。
再び、それは違うと言った。彼は、少し意地を張っているだけなのだ、と。
きっと、大丈夫。心配げにこちらにきたアルフを抱き上げ、老女は微笑んだ。
 
 *     *     *
 
昼食を終え、明日の午前中には艦に戻る旨をアースラに連絡した後でフェイトは子供達から携帯を触らせてくれるようせがまれていた。
相変わらず少年は姿を見せなかったし、園長の慰めを完全に納得したわけではないけれど。
見つからないようにもっとこっそり連絡すればよかったかな、と思う彼女は、殺到する小さな子達のおかげか、なんとか笑えていた。
 
余所者の自分が彼女達に囲まれ笑っていて、本来まとめ役のあの少年が居場所なく部屋に閉じこもっている現状がおかしいということも、無論解っていたけれど。
 
そんな折だった。
 
少女の甲高い悲鳴が、森に隣接している庭のほうから空気を切り裂いて、聞こえた。
何事かと、フェイトを含む一同は声のしたほうに向かい、そして目撃した。
 
昨日から全然姿を見せなかったあの少年と一人の幼い女の子が抱き合い、森の入り口付近にそびえ立つ大きな木の下で巨大な獅子の姿にも似た、肉食の野生動物の群れに囲まれているのを。
 
──……!!
 
確かに自然の多いこの土地には、このような生物も多数いる。
だが、この孤児院の周りには結界が完備され、森とは隔絶してあったはずだ。
レティ提督の後見する、管理局出資の補助金で経営されている場所であるからこそなおさら、そういった設備はしっかりとしたものが備え付けられているはずなのに。
 
だから自分から結界の外に出ない限り、襲われる心配はまずない。フェイトはそう聞かされていた。
しかし現に、彼女の目の前には襲われている二名の人間がいる。
おそらくはどちらかが誤ってか故意か、外に出てしまったのだろう。
 
(どうする、フェイト?)
 
アルフから、念話がくる。
彼らを助けること自体はさほど難しくない。
フェイトとアルフが飛び込んでいけば、数体の肉食野生動物を撃退するくらい、造作もないだろう。
 
(──助けなきゃ。だけど……)
 
恐い。
あの肉食獣達が、ではない。懐いてくれた子達に自分の正体を晒すのが、恐い。
知られればきっとみんな、フェイトのことを嫌悪するから。
管理局魔導師にけっして、彼らはいい気持ちを持っていないだろうから。
 
異質なものを見る目へと、皆のそのまなざしはきっと変貌する。
 
もちろん愚図愚図、考えている暇はない。
この場に居る者のうちで二人を助けられるのはフェイトだけなのだ。
他の者が行ったところで噛み殺されるのが落ちだろう。
 
怯え、フェイトのスカートにしがみつく少女達を見回す。
一様に青ざめた彼女達は、ただひたすらに木の根元で抱き合う少年少女を凝視している。
 
(──……!!)
 
そして、はっとする。
 
この子たちにとってきっとあの二人は、失いたくない存在。
失ってはならない、大切な。
きっとこの場にいる誰もが、助けられるものなら助けに行きたいと思っているにきまっている。
 
それを、私は何を迷っている。
 
私は、何のために執務官を目指しているのだ?
 
こういった子供達を、これ以上悲しませたくなかったからではないのか?
ここで二人に何かあったらそれは彼らにとって、「こんなはずじゃない」出来事なのではないか?
 
(フェイト……?)
 
──私、は。
 
傷つくことを恐れ、躊躇している場合ではない。
 
別に傷ついたって、いいではないか。
みんながみんな、救えなくたっていい。そのことで蔑まれ、憎まれたっていい。
せめて、目の前にいる人間くらいは、助けたい。自分には、その力があるのだ。
 
眼前で虚空に消えていった母、プレシア・テスタロッサ
夢の中で自分と抱き合い消えていった姉、アリシアテスタロッサ
自らの手で天へと送った祝福の風、リインフォース
 
(そうだ……私は……)
 
あの時のようなことは、もうたくさんなんだ。
 
手の届く範囲、それでいいではないか。
 
届く範囲すら救えなかった、過去の自分の非力を悔やみ。
故に誰かを、目の前にいる誰かを、守れるようになりたかった。
それで自分は執務官を目指したのではなかったか。
 
そして今、手の届くところに助けを求めている人がいる。
 
ならば、決まっている。することは一つではないか。
 
救えない人が、たくさんいるのなら。
せめて自分の目の前でだけは、だれも「こんなはずじゃない」ことにはならないように。
 
救えない人のことを思い苦悩するよりも、目の前の人を。
 
やれることを、精一杯やろう。悩む前に、助けよう。
他の誰でもない、それこそが私の願い。立脚点なのだから。
 
今、ここにいる。
ひとりの時空管理局執務官候補生、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンとしての望みとして。
 
──いくよ、アルフ。
 
側らにいた少女達の肩を押して引き離し、フェイトは静かに前に出る。
 
どう思われたっていい。だって、目の前の人を助ける。助けられる者を助ける。自分の力の及ぶ限り。
そんな当たり前のことが、彼女の願いであり、決断だったのだから。
その先にどんなことが待っていようと、それはそうなってから考えればいい。
後悔は、後でするものだ。もちろん毛頭、する気はないが。
 
はじめから迷う必要なんて、なかったのだ。
 
答えは動機の時点で、決まっていた。自分の力の使い道は、自分で決めていたのだ。
 
バルディッシュ・アサルト……セットアップ……!!」
 
*     *     *
 
暗い部屋の中、フェイトは昨日と同じベッドの上で、一人横になっていた。
 
バリアジャケットに換装し、アルフとともに獣達を撃退して、襲われそうになっている二人を助けた。
 
泣きじゃくる少女を抱き寄せ、戸惑いの表情を浮かべる少年に手をさしのべたその直後から、ずっと。
 
彼らの前で自分が魔導師であることをばらしたのに、後悔はしていない。
ちゃんと二人のことを助けられた、それが何よりだから。
 
「フェイト……」
「……うん、わかってたけど……やっぱり、恐いね……」
 
けれどこれが、逃避というやつなのだろう。
 
子供達と改めて顔を突き合わせるのが、恐い。だからこうやって一人、じっとしている。
拒絶、嫌悪、罵声。彼らが自分の正体を知ってどう思っても、それは仕方のないことだと思う。
そう覚悟した上で彼女は管理局魔導師としての自分を、彼らの前で曝け出したのだ。
だけどやっぱり、不安だし、恐い。あの子供達が何を思おうと、感情が向けられる自分が管理局の一員である以上、彼らにはそうする権利がある。
何と思われ言われようと、正当なのだ。だからなおさらにだった。
 
「クロノは……ずっとこんな気持ちに耐えてたんだよね……」
 
事件の、被害者達から。あるいは、犠牲となった人々の家族から。
なんて、強いんだろう。今だからこそ実感を持ってそう言える。
やっぱりあの兄には、いつまでたっても敵わないのではないだろうか。
 
「アルフ……おなか、空いてるんじゃない?大丈夫?」
「ん……平気。フェイトこそ」
「大丈夫……」
 
薄暗い中、目を凝らして見た時計は、もう夕食の時間を指していた。
そろそろ、皆の団欒が始まる頃だろう。
 
「早いけど帰ろうか……?アースラに……」
「……フェイトが、それでいいってんなら……」
「…………」
 
──コンコン。ドアをノックする音にフェイトはびくりと反応し、身体を起こす。
 
案の定というべきか、食事の報せだった。
 
どんな顔をして出て行けばいいというのか。
そう思い、老女の夕食を告げる声に答えないでいると、ドアの向こうの彼女はただ、穏やかに事実を述べて去っていった。
『みんな、待っている』と。
 
その声は一つではなく、年若い少年の声も確かにひとつ、混ざっていた。
  
*     *     *
 
ミッドチルダ中央・クラナガン−
 
「こじいん??」
 
後部座席のチャイルドシートには、赤毛の少年。
むしろ少年というにもまだ幼すぎる、小さな男の子が一人、ちょこんと座っている。
 
おそらくは言葉の意味も、よくはわかっていまい。
その頭を撫でてやる少女の金髪が、走行する車の振動に、さらさらと揺れる。
 
「こわく、ないの?」
 
少年の名前は、エリオ・モンディアル
まだ二歳の少年に、家族はいない。
 
いや、これからできるのだ。
空港へと向かう車を運転する兄のほうに向き直りながら、フェイトは頷く。
 
「怖くなんかないよ。みんな、すごくいい人たちだから」
 
安心させるように微笑んだフェイトに、小さな少年は無邪気な笑顔を返した。
 
──空いた助手席には、畳まれた今朝の新聞が無造作にあって。
 
そこにあるセピア色の写真と特集記事が、運転手の方に被写体たちの笑顔を届けている。
 
写るのは今、後部座席に座る少女と、年代を問わず彼女の周囲でにこやかにカメラに向かう子供たち。
その中にはかつての面影を伺わせる青年の姿もあり。
 
記事の見出しは、簡潔かつ明瞭だった。
 
『森の中の、小さな孤児院』──と。
 
 
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