なのユーステーションにつきまして。

 
実は『PUNPKING』の紅夢様からのご好意で、サイトを持っていない方の作品についてもフォローをすることが可能になりました。
そこで募集期間の延長及び、第二陣の募集を行いたいと思います。期間は一週間。来週の日曜日、23時59分まで。
今回はサイト持ちかどうかに関しての規定はありません。
サイトを持たない方も
・作品名
・作者名
・作品紹介コメント
を明記したメールに作品のファイルを添付してお送りください。送り先のメールアドレスはこれまでと同じです。
また、サイト持ちの方々も引き続き参加可能です故。こちらの規定は今までどおり。→こちら
 
(22時30分頃追記)
 
Web拍手にて『なのユーステーションに入るとウイルスバスターが危険サイト認識する』というコメントが寄せられました。今の段階で閲覧の際の異常は確認できずいまのところ問題はないようなのですが、なにか問題など起こりましたらWeb拍手またはメールでお知らせください。
 
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んで、今日はちょっとした短編を。
うちで数の子が出てくるのって初めてじゃね?
ってな感じの前編。
ケインさんがラジオで『戦闘書くのを見てみたい』なんてゆーからいかんとです。
乗せられやすい馬鹿、それが俺。
そんな前編。
 
↓↓↓↓
 
 
ジェイル・スカリエッティの名を知ったのは執務官になって、少ししてからのことだ。
 
とある研究施設から、エリオを保護して。そこで行われていた研究や様々なアンダーグラウンドとの?がりを調べていく上で捜査線上に浮かび上がってきたのが、彼の名前だった。
その存在だけは、私が知る以前から局の捜査員たちの中でもそれなりに有名であったらしい。
 
狂気の科学者、歪んだ天才。
そのようにあだ名される次元犯罪者の目的はわからない。
けれど彼が日の当たらない場所を歩み続ける上での最大の武器となる技術力、それは既に明白だった。
 
それは、私やエリオを生み出した禁忌の技術。
人の命、それそのものを研究対象とし弄ぶ──人造生命の培養技術に他ならない。
 
ユーノに頼んだ資料や、ひとつひとつ捜査の上で発見していった情報は、けっして見過ごしてはおけないその事実を私に教えてくれた。
 
許せない、と思った。止めなくちゃ、と思った。
でも出来ることならば、更生させたいとも私の心は願っていた。
自ら、生命を生み出すほどの技術者なのだ。
その頭脳さえ正しく使われたならば、どれだけの人間が救えるだろう。
 
だから、私は追っていた。機動六課が影も形も──はやての構想にすらあったかどうかもわからないような、その頃からずっと。
 
彼の生み出した技術によって造られた、ひとつの作品としてではなく。
時空管理局執務官、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンとして。
 
 
魔法少女リリカルなのはA’s to Strikers 
 
雷の意志−secret ambition− 前編
 
 
−六年前−
 
テスタロッサ・ハラオウン執務官。現在地の送信をお願いします』
 
それはさっきやった。一体何度目だろうか、こう噛み合わないタイミングと、ナビゲートの声が送られてくるのは。
廃墟となった研究所跡の暗がりで、フェイトは少しばかり苛立っていた。
言い返すのも億劫なので、もう一度無言で自分の位置情報を送ってやる。
そうすれば先ほどの分も合わせて二つ、現在位置を告げる発信を受けていることに相手も気付くことだろう。
 
そろそろ、信頼できる補佐官を見つけるべきなのかもしれない。
ひび割れた床の砂埃を靴底で踏みしめて前進しながら、フェイトは思う。
今回のようにアースラを離れ、慣れ親しんだオペレーター陣のサポートのない状況ともなればなおさらに。
 
アルフが隣にいれば、その煩わしさももう少し改善されたのだろうが。
最近は自分と彼女は別行動であることのほうが多い。そのうち完全に前線を退くつもりだと言っていた自身の使い魔の意思を、フェイトは尊重したかった。
なかなか執務官補佐を勤める人間として目に留まる人材とは、いないものだ。
 
バルディッシュ。くるよ」
『yes,sir』
 
思考をしている最中であっても、気を抜くことはない。
前方から接近してくるいくつかの金属反応は既に捕捉済みだ。
 
「一気に──」
『sonic move』
 
無機質な機械の塊が、暗闇から姿を現した直後には、
 
「抜く」
 
それらはもはやフェイトの視界にない。
叩き砕かれ、斬り捨てられ。スクラップと化して背後に落ちる。
この程度ならばハーケンもカートリッジも不要。
アサルトのままで魔力斬撃、打撃を叩き込むだけで十分だ。話にもならない。
 
だがこの程度の相手しかいないからこそ、この場所にあまり期待は出来ないだろうとフェイトは予想する。
明らかな廃棄戦力、見捨てられた防衛システムたち。
追い求める相手はもはやこの場所にはおらず、既に有用なデータや証拠は殆ど残されていまい。
踏み込んですぐに雰囲気である程度予測できたことではあるが、それでも落胆は隠せない。
 
「……ん?」
 
自らの墜としたスクラップの中に、何かが見えたような気がしてフェイトはしゃがみこんだ。
装甲の破片やケーブルの塊を掻き分けた先に、中枢回路と思われる基盤が見えてくる。
 
「ッ……!!」
 
そこには、署名があった。
誰の?無論、そんなものひとつしかあり得ない。
──“Jail Scaglietti”。すなわちジェイル・スカリエッティ本人による、本人の署名。
思わずフェイトはその名の刻まれた基盤を、強く握り締めた。
奴は知っている。わかっているのだ。自分を追う者がいること。自分を追う者がここへやってきたということが。
わかっていて、こちらの鼻先で舌を出し、姿をくらましてみせる。
 
『sir』
「……何?バルディッシュ
『As for this power, the motor formally adopted in Administrative Bureau is used.』(この動力には、管理局正式採用のものが流用されているようです)
「!!」
 
基盤を投げ捨て、残骸から動力部を引きずり出す。
確かにそこには局の支給デバイスや装備全般に使用されている高出力モーターがはめ込まれていて。
 
(ジャンク品として生産ラインから流れたものを使った……?いや、それとも……)
 
それとも、局や製造元からの横流しで。
前者ならばともかく、もし後者だとするならば問題だ。
犯罪者を支援する者が、身内──時空管理局そのものにいるということなのだから。
 
バルディッシュ、先を急ごう。なるべく現れる敵全部、動力部は残して撃墜するように気をつけて」
『yes,sir』
 
資料となるものは多いに越したことはない。
手の内のジャンクを置き、フェイトは立ち上がった。
 
単なる放棄された戦力とはいっても、数そのものはまだそれなりに残っている。
新たな反応が、既に近付きつつあった。
 
*   *   *
 
そして。両手で数え切れぬほどの敵を、いなし、斬り捨て、叩き潰し。
 
辿り着いた研究施設の最深部に、その人物はいた。
 
「……おや」
 
スカリエッティでは、ない。
それは一人の女性。
深い蒼の髪に、冷たい金色の鋭い目。それでいて振り向く仕草は流れるように、ひどく柔和だった。
 
「管理局の魔導師……以外に早かったですね。生きている防衛システムだけで十分かと思っていましたが」
 
口元には笑みさえ浮かべ、フェイトを見つめる。
──この笑みに、騙されてはいけない。背中を汗が伝っていく。
この人は、できる。しかもかなりの実力者だ。
身のこなしだけで、すぐにわかる。
 
伊達に、一対一戦闘のスペシャリストたるシグナムと模擬の戦闘を繰り返してきているわけではない。
その勘が、告げている。
彼女はエース……あるいはストライカー級。それも一人で圧倒的な戦力の差を覆すことができるほどの戦闘者だ。
 
無意識に、バルディッシュを構えていた。
相手が危害を加える素振りも、なにもないというのに。呼びかけるよりもはやく。
 
「……時空管理局次元航行部隊所属、テスタロッサ・ハラオウン執務官です。所属と、姓名を」
テスタロッサ……?はて……」
「そして、ここにいる理由を。この場所は局によって立ち入り禁止区域に指定されているはずです」
  
果たして、女性はフェイトの呼びかけを真面目に聞いていたのか、否か。
微笑みの上から、更に軽く笑い。
 
「……“ウーノ”。ジェイル・スカリエッティの身内の者……といえばおわかりでしょうか、フェイトお嬢様?」
「!?」
 
どうして私の名を、と思うのとどっちが早かっただろう。
女性は、僅かにまだ光るコンソールパネルへと何かを打ち込んでいたはずだった。
だが今は、フェイトの眼前にいる。
 
はやい──とっさに差し出したバルディッシュを、女性の拳が打つ。
 
「ふむ……IS“ライドインパルス”……未完成とはいえ、悪くない」
「ぐっ……たあああぁぁっ!!」
 
押し込まれてばかりもいられない。
ウーノと名乗った女性の拳を振り払い、フェイトもまたアサルトの打突を彼女へと見舞う。
 
「私との相性はいまひとつのようだけれど……あの子なら使いこなせるでしょう」
「何を……言っている?」
 
やはり私は戦闘向きではないか。
女性は、ぶつぶつとなにやら呟いていた。
フェイトの問いかけに、ようやくこちらに気付いたように顔をあげ応じる。
 
「ああ、これは失礼。フェイトお嬢様。なにぶんこの身体も試験運用中の身でして」
「どうして……どうして私の名を……っ!!」
 
この狭さでは、ザンバーは使えない。
スカリエッティがこの場にいないとわかった以上、むやみやたらと手がかりになる現場を傷つけるわけには。
ならばとフェイトはバルディッシュをハーケンへと変形させ、彼女に向ける。
 
「よく存じ上げておりますとも。あなたも私も……ドクターによって造られた存在ですから」
「っ……!?私が……だって……?」
「はい、フェイト・テスタロッサお嬢様。母上様もよく存じ上げております」
 
にっこりと、ウーノは微笑んだ。
それはまるで、吸い込まれるような笑顔で。
母、という言葉に、フェイトは目を見開いた。
  
(母さんが……?いや……だめだ。今は目の前のことに集中しないと……っ)
 
この笑顔に付き合ってはいけない、フェイトは無心に鎌を握り締める。
 
「スカリエッティ一味の者だというなら……あなたをここで拘束します。抵抗さえしなければ手荒な真似はしません」
 
女性の返事はなかった。
代わりに、右手の爪が鋭利な刃物へと変化していく。
 
「それが……答えですか」
「ええ。残念ながらもう戻らねばなりません故」
「させません」
 
きっぱりと、彼女の言葉を払いのけるフェイト。
  
「個人的に、聞きたいこともあります。本局へ──アースラへ、あなたを連行します」
 
女性が、ばさりと来ていた服を脱ぎ捨てた。
そこには、ぴったりとした紺色のボディスーツのような。
硬質な素材を思わせる戦闘服が、ウーノという名の女性の身を覆っていた。
 
宙を舞った女性のワイシャツの落着こそが、戦闘開始の合図。
 
*   *   *
 
──思えば、このときの彼女がまさにそうだったのだ。
 
そうフェイトは述懐する。
 
数年後、レリック事件において少女達の前に幾度となく立ちはだかった、厄介極まりない相手。
戦闘機人と呼ばれる者たちの、まさしくその一体であったということを。
 
その頃はまだ知る由もなく未熟であった己が挑んだ相手こそ、後の障害となる敵対者、そのものだった。
 
(後編につづく)
 
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後編はWeb拍手お礼更新と同時にあげるぞい。もう少し待ってね。つWeb拍手