支部ラジあわせの更新のネタに困ったとかじゃ、ないんだからねっ!!

 
第二夜更新ー。の前にweb拍手レスー。
 
>やはり狐目の男は敵でしたか…何を考えているのか、ちょい不気味
待て、次回っ!!
……ただやっぱし書いてて、オリキャラはさじ加減がむずかしいなぁと改めて実感させられることしきりだったりもしてます。
 
>実際、ダンゴはもともといなかった奴まで引き寄せるそうで、新居にはGの影を見かけるまでは設置しないほうがいいようです
ですってよー、G様おいでませになってるかもよー、ケインさん。
 
 
でわ八神家どうでしょう二夜、更新。第一夜はこちらから。
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
− − − −
 
 
 暗い廃墟は、六課隊舎内部にわざわざ設営されたセットである。
 
その中に、少女がひとり。
例によって、ツインテール。例によって、陸士制服。
 
『どうでしょうナビゲートねーちゃん』こと、ティアナ・ランスターその人がそこにいる。
 
「こんばんは。今回も八神家リターンズの時間がやってまいりました」
 
本日は、彼女の目の前には胸元ほどの高さの丸テーブル。その上には二台のカブのミニチュアプラモデルが並んでいた。
製作時間、片方に一週間。計、二週間。ともにスバルの力作である。
 
このために彼女にハンドピースやらコンプレッサーやらを買い与え防塵マスクとゴーグル持参で仕上げに立ち会った部隊長は太っ腹というかなんというか。
おかげで製作期間中と製作後の数日間は、いくら換気に窓を開けていてもスバルと同室であるティアナの部屋は有機溶剤の匂いでマスクなしにはとても寝れたものではなかった。
 
そしてそれらを左右にわかつようにテーブル上へと直角に天を向いて突き立つ、一本のフォーク。
これこそが、本日の中身を暗示している。
 
「さあ、二度目となりました八神家リターンズ。作者が更新に困った際の緊急避難アイテムと化しているような気もしなくはないですが……多分、つっこんだら負けです」
 
そうなんです。負けなんです。つっこんじゃだめなんです。切実に。
つっこみ担当ベテランのティアナが言うんだからきっとそれは切実に、間違いのないこと。
 
「それでは第二夜、八神家のご一行に今度は、一体なにが襲いかかるのでしょうか?」
 
クロスミラージュを、掌に起動する。
拳銃──そう、ピストル。彼女の見せたその行動すらも、今夜の前振りの、そのひとつでしかない。
……たとえ撮影後に、その本人から「これでほんとに伝わるのかなぁ?」とぼやかれたとしても。
 
総監督たる機動六課部隊長二等陸佐・八神はやては退かない媚びない顧みない。
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜八神家どうでしょう・ミッド北部横断1200キロカブの旅〜
 
第二夜 今は何も、何もわからない
 
 
−機動六課隊舎・オフィス−
 
「さて、先ほど八神部隊長たちがあちらを出発されたそうなんですが」
 
ヴァイスの向けるレンズの先には、一人の女性の顔があった。
若干近すぎる気がするのか、苦笑いして彼女は少々椅子を引いて後ろに下がる。
 
なのはさんはどう思います?五日間で1200キロ、この隊舎まで」
「はは……どうだろうね。はやてちゃんの思いつきって、結構いつも強引で無茶苦茶だから」
 
仕事を中断してカメラの撮影に応じるサイドポニーの分隊長は、呼び出し中のデータの進行具合が気になる様子で、ちらちらとこちらと交互に見比べていた。
 
「無理かもしれないと思います?」
「っていうか、大変そう、かな」
 
作業の完了したコンソールを叩き、エンターキーを押す。
意識の向けられている対象はやはり、カメラと仕事半々のようである。
 
実は、彼女は知らない。
自分にこれから特別業務として、デスクワークとも訓練ともまた違った仕事が待ちうけているということを。
既に正式な有無を言わさぬ命令書が、出発前にはやてによって書き上げられていることを。
 
そして、カメラバッグと共にヴァイスが抱える大鞄の中に、その答えがあるということを。
 
彼女はまったく、知らされていないのだ。
 
「じゃあ、いきましょう」
「えっ?」
 
何て?といった顔で、なのははヴァイスに振り向いた。
聞こえなかったわけはないだろうが、もう一度。今度は言葉を補って明確に口にする。
 
「だから、応援にいきましょう。部隊長たち……シグナム姐さんとシャマル先生が無事、五日間で帰り着けるよう、励ましに」
 
そういって、ヴァイスは大鞄のジッパーを開け、中身をなのはに差し出した。
それは、柔らかくて。大鞄がぱんぱんに膨れ上がっていたことを頷かせるほど、人がすっぽり入れるくらいに大きくて──……。
 
ピンク色のやたらもこもことした素材で、できていた。
 
*   *   *
 
ミッドチルダ新暦75年・六月五日 午前十時三十分─
 
「えー、現在は午前の十時半をまわったところ。ホテルを出発して二時間と少し経ったくらいです」
 
運転は、はやてである。
ヴィータが向けたカメラに、車内のデジタル表示の時刻を見ながらリインがコメントを繋いでいく。
後部座席では、ザフィーラが前足でロードマップをめくっていた。彼が、ナビゲーターということになる。
 
「さてさて、今どんな感じかといいますと……」
 
カメラの焦点が、フロントガラスの向こうに移る。
緋色とエメラルド色、二色のツナギをそれぞれ載せて走る、二台の原付をレンズに捉える。
 
他にはなにがあるでもない。
時折抜いていく車と、側道を歩く歩行者の姿が見切れとして映るくらいで。
  
単調に、ただ単調に法定速度のリズムをエンジンが刻み、道程を進行していくのだ。
 
「……しっかし地っ味な絵やなぁ」
『『うっ』』
 
ただひたすらに流れるのは、二台の二輪車の後姿。それ以外、変化があるでもない。
はやての漏らした一言は、残酷すぎるほどあまりにも的確であった。
 
「二人ともなんかこー、盛り上がる動きできひんのー?ウィリーとかー」
『む、無茶言わないで下さい!! 後々の振りになっちゃいそうで怖いじゃないですか!!』
『……そもそも私は未だに、こんなことをしている理由が飲み込めていないのですが……』
「決まっとるやん。言うたやろー、陸上本部の広報用ビデオやー、って」
 
なんでも来年は、市民に親しみやすい地上部隊というのがスローガンなんだとか。
そのための宣伝映像の素材として使われるんだから、これも立派なお仕事のひとつ。
しれっとはやてはシグナムを丸め込むべく、言ってのける。
 
もっとも、これも大嘘。旅を続けてもらうための方便である。
無論、気がつけば、といった感じでとりあえずバイクに跨がらされているシグナムは、未だに納得しない様子だったが。
 
だが、それでいいのである。
この旅は不条理でなくては。出演陣が苦しんでこそのカブの旅である。
……いや、まあ。シグナムがそんなこと、知るわけもないのだけれど。DVD見せてないし。
 
『それにしても、ヴィータ、リイン。ザフィーラも』
「はい?」
「あん?」
『お前たち……全部知っていたのか?』
 
そりゃあ、もちろん。
 
だってこれは、シグナムを騙すためのものなんだもの。一番余裕の崩れた表情が面白そうな、あなたを。
 
『じゃあ何か、知らなかったのは私だけということか』
 
──まあ、そうなりますね。
 
一家は(バイク上のシャマルを含む)息もぴったり、まったくもって同時に頷いた。
まさしく、知らぬは烈火の将ばかりなり。彼女が交代部隊にかかりきりだったことも、隠し通すのを容易にしていた要素のひとつである。
 
『……』
『あ、ここどっちですかー?』
「右だ。もう暫くいけば州境が見えてくるはずだ」
 
いやいや、愕然として黙り込んでしまったら負けである。
そもそも今回の八神家総出での一泊二日の温泉旅行自体、このカブの旅の前ふりでしかなかったのだから。
 
横断の前段階、『烈火の将シグナムさん拉致計画』の一部分に当初より組み込み済みであったのだ。
 
「今日の目標はいちお、三百キロ弱くらいは目指しとるからなー」
『はーい♪』
『さ、三百キロぉ!?』
 
あと、驚いても負け。この旅の過酷さはきっと、まだこんなものではない。驚くにはまだ早い。
直線距離なら三百キロもまだ楽かもしれないが、生憎と山沿いの曲がりくねった田舎道はそれ以上の破壊力を持っている。
 
油断しているときっと……かなりおみまいされて、やられることになる(体力的な意味で)。
 
*   *   *
 
−午前十二時三十七分・ミッドチルダ西部エルセア、最北端−
 
歩道を行き交う人々の往来は、ここから見ていても一向に止む気配はない。
 
「……さて。我々は現在、ミッド北部と西部を分けるながーく突き出たエルセアの、最北端に位置します、小さな町に来ています」
 
とある、パーキングエリアの駐車場。
ここまで乗ってきた大型車を背に、はやてがカメラに向かってスマイル、スマイル。
 
都市部からやや離れているとはいえ、昼食時ということもあり車の数もそれなりに多い。
今から旅行か、はたまた旅行帰りか。家族連れの目立つ休憩客たちの中でもこの『旅そのもの』が目的の人間なんて、多分はやてたち八神家ご一行くらいのものであろう。
 
「やっぱお腹空いたまんまやったら力もでーへん、ってことでこれから食事なわけですけれども……」
「主はやて」
「ん、どしたシグナム」
 
ツナギ姿のシグナムは、しきりに腰をさすっていた。おそらくは尻が痛いのだろう。
なにしろ四時間もバイクにまたがりっぱなしだったのだから。シートに擦れて擦れて仕方ない。
 
まだ全行程の序盤も序盤、最序盤でしかないというのに不安極まりないことではあるけれど。
 
「いえ、昼食ならばはやく行かれたほうが。シャマルたちももう行ってしまったようですし」
「あー、気にせんでええ。シャマルヴィータも準備しにいっただけやから。……っと」
 
準備?とシグナムが問い返す前に、海鳴りから引っ越した後も定期的に機種変更をしながら一応持ち歩いている携帯が鳴った。
うむ、迅速でよろしい。そんな表情で、はやてはポケットから取り出し小さく満足げに頷く。
応対するまでもなく相手はわかる、問題ない。
 
「ほな、いこか。シャマルたちが待っとるから」
「は? はぁ」
 
態度をころりと変えたのが不審に映ったのだろう。
シグナムは首を傾げながらもはやてとカメラをまわすザフィーラのあとについて歩き出す。
 
でもね、シグナム。
別にこっちはどこに行くとも、どこで昼食を食べるとも一言も言ってないんですよ?
実際これから自分たちが向かうのはパーキングエリア内の食堂でも、屋台でもなく。
 
建物の側に用意された木陰の、屋根の下にあるテーブルとベンチだけのランチスペースなのだから。
 
*   *   *
 
−午後十二時四十三分・ビストロシャマル開店−
 
「──な」
「えー、それではご紹介しましょう」
 
シグナムがなにかおかしいと気付いたのはようやく、まさにそのランチスペースに腰を下ろしてからのことだった。
 
この場所に案内されたことそのものについては違和感はない。
ちょっとしたキャンプ場のように流しがついているあたり、少々珍しい、本格的なところだなとは思っていたが。
アウトドア客が多いところともなれば、こんなものか。てっきり出店や屋台で名物でも買い込んできて食べるものだと、思い込んでいた。
 
けれど、よくよく見回すと。
 
木製のテーブルの上には何故か調理前の野菜、肉。米、魚。
各種の調味料やソース類もばっちり、屋外とは思えないほどに用意されている。
……というか、中身の減り方や銘柄から察するに明らかにはやての愛用の品。六課隊舎からの持参物だ。

そして組み立てられたキャンプ用のコンロに、フライパン、鍋。包丁とまな板もばっちり。
こちらも、しっかりと使い込まれた輝きと細かな傷が刻まれているあたり同様だろう。
 
なにより──……。
 
「シェフ、シャマルです」
「いらっしゃい魔法ー」
 
なんかうちの風の癒し手が料理人のような格好をして笑ってやがりますですよ?
しかも、シェフとかなんとか聞き捨てならない言葉がはやての口から発せられたのも気のせいではないわけで。
 
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。シャマル。それに主はやても。いらっしゃい魔法じゃなくて」
 
それ、笑えないから。大体何さいらっしゃい魔法って。いらっしゃいませ、というのならともかく。
あふれ出てくるつっこみと静止の言葉を、どうにかシグナムは口にする。
 
反抗する、ともいう。

「あ、ひらがなにしたほうがわかりやすい? いらっしゃいまほー」
「違う!! この状況を説明しろと言っているんだ!!」
「さ、シェフ!! 私ら既におみまいされる覚悟はできております!!」
「主っ!?」
 
まあもっとも、例によってシグナムの発した必死の抗議はスルーされるのだけれど。
 
「ほんじゃまとっとと、調理に入ってもらいますか」
「だから!! どうしてシャマルが料理をするんですか!?」
「やー、だってせっかくキッチンセットやら食材やら用意したわけやし」
 
土台、口八丁では実直かつ口下手なシグナムが海千山千の主や参謀格、ひねくれものの鉄騎に勝てるわけがないのである。
 
彼女が抗議しているのをよそに、シャマルは本日のお品書きなんて書いた紙を屋根の支柱に貼り付けだしている。
もう、やる気まんまん。聞く気ゼロである。
 
「だったら主が作ればいいじゃないですか!!」
「えー。私旅行に来てまでそんな主婦みたいな真似しとうないし」
「料理は趣味じゃなかったんですかっ!?」
 
つっこみとぼやき自体は冴え渡ってるんだけどなぁ。
 
惜しいなーと思う辺り、主の性分である関西人気質、芸人気質に大分に影響を受けていることを実感するヴィータとリインであり。
既にシャマルの料理を受け入れている以上、少しでもまともなものが出てくることを祈るばかりの二人+ザフィーラなのであった。
 
「心配せんでもあとでシグナムにも見せ場用意しとるから」
「そうじゃありません!! というかいりません!!」
「おみまいするぞー」
 
腕まくりをして宣言したシェフの手には、大量のパスタが握られていた。
 
「茹で時間は二十分ってところかしらね」
 
パスタがはたして麺でいられるか、水を吸いすぎてふやけて餅と化すか。それはまだ、作る本人にすらもわからない。
むしろ、本人以外のほうが的確な予想を立てられているのかもしれない。
 
乾燥した麺を梱包していたパッケージの袋にポップな字体で大きく描かれていた茹で時間はちなみに、七分であった。
 
 
(第三夜につづく)
 
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おみまいするぞー!!おみまいするぞー!!な勢いで押してくれるとうれしい。
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