わがR−640の新刊は。

 
(・・・にしても浸透しないねこのサークル名(汗))
 
いっそこのまま640の小部屋をサークル名にしてしまおうかしら。
ま、いいや。それはそれとして。
自分は参加できないのですが、新刊出します。
 
 
さんざ出す出す言っておいて延び延びになっていた喪失辞書1,2巻の再販ということでならせっかくだし一冊にまとめて今見るとあれな部分改稿して出してしまえというそんな新装版。表紙画像については明日にでもフォトライフにあげときます。
 
the lost encyclopedia 〜Blades of blaze〜 上巻
 
サイズは新書サイズ、156ページで100部。価格は600円を予定しております。
 
委託先はこちら。
17日(三日目) 東3ホール、ク−17a
FearlessHawkさんに委託させてもらっております。
 
 
でもって、続きを読むにティアナ&ディード話更新。
 
>柳田に湯上谷とかテラ守備要員wwwww あ、ちなみに俺は出口と辻が(ry
なにをいう、湯上谷選手は引退後はシーフォークにもつとめてたことのある堅実な人なんだぞう。
 
>援軍到来!! エリキャロは怪我だったか。捕虜じゃなくてホントに良かった…
エリオが紫電一閃撃ちすぎで右腕死んでますががが。
 
なのはさんのトーレとの接近戦は燃える。だが何時ぶっ倒れるか気が気でない…スバルん、はやく行ってやってくれ
れっつごースバル、はりーあっぷスバル。
 
 
 
 
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※前回・前々回分は短編etcまとめに保管※
 
 
 
 
通信室の、明かりの中。こんこんとノックをする音に、ディードは振り返る。
 向かっていたモニターには、フェイトともまた色味の違う濃い金色のブロンドが同様に彼女の向いた方向へと視線を注いでいる。
 
「ディード、ちょっといい──……あっ?」
 
 入ってこようとした相手は、その人物の映し出された中継映像に慌てて開いた扉を閉めにかかる。
 こんな格好で前に出ていい相手ではないとばかりに、Tシャツの裾を目一杯引き伸ばして。湯上りの彼女の服装は、七分袖のTシャツにスパッツという寛いだ、非常にラフな上下仕様の出で立ちだ。
 
『気にしないで、ランスター執務官補佐。こちらの話ももう終わるところだから』
「す、すいません。カリム・グラシア理事」
 
 くすりとした笑いが、扉の後ろへとひっこんだティアナへと目を向け続けるディードの耳を打つ。
 
『それじゃあ。また良い話が聞かせてもらえることを期待しているわ』
 
 三人分の顔があるのは、そこで終わり。挨拶もそこそこに、通信は切れた。
 完全にモニターの明かりが落ちているのを確認しいしい、扉の陰に隠れていた相手はディードの前に顔を出してくる。
 
「気、遣わせちゃったかしら」
「いえ。騎士カリムも言われていたとおり、話は殆どもう終わっていたので」
「そっか。何の話?」
 
 いつもの、定期的な近況報告です。ディードの応答に頷き、ティアナは後ろにしていた左手に二本持っていた缶ジュースを差し出す。
 受け取って、ディードは小さく会釈を返した。
 
「それと、たまには顔を見せに来るようにと」
「あ……」
 
 その言葉を聴いて、橙色の髪をした執務官補佐は口元に持っていった缶を持つ手を止めた。
 
 ディードが、今ここにいるということ。それがすなわち、本来ならばオットーとともにその側にいて然るべき後見人であるカリム・グラシアのもとを離れ、彼女の厚意によって次元航行部隊に身を置いているということに他ならないという事実を思い出すに至ったから。
 あくまで、出向。研修扱い。それは本局にいるオットーやチンク、陸上本部のセインにウェンディ。スバルのもとのノーヴェについても然り。それぞれ異なる後見人たちの許可と書類へのサインを得て、一時的な措置として学びの日々を送っているというだけに過ぎないのだ。実際、ディードの使用しているクローゼットの奥には未だ袖の通されたことのない、糊の利いたままハンガーにかけられしまいこまれた、真新しい長袖の黒カソックが日の光を浴びるそのときを待っている。
 
 この今というひとときがけっして長く続くわけではないということを、改めて思い知らされる。ティアナも、ディードも、双方。
 いつしかこの時間にもまた、終わりがやってくる。ティアナが執務官として独り立ちするのが先か、ディードが教会に戻るのが先かはわからないけれど。
 
「ティアナ姉さま」
「そんな顔しない。それより、捜査の話」
 
 少なくとも今は、執務官補佐とその助手として、この場にいる。今はそれでいいだろうと、ティアナは座ったディードの頭をそっと撫でた。
 
「さ、やるわよ」
「はい」
 
 捜査も、少しずつ進展をはじめていた。一時的というならば、この世界で過ごす時間も。海鳴の日々も、もうすぐやがて終わりを迎えることになる。
 
 
『双銃の弾道・双剣の軌跡〜ある執務官補佐の日誌から〜』
 
 SideA. Chapter3 海鳴の日(3)
 
 
 流れるような、淀みのない動きだった。
 
 それはまさに、舞を演ずる──『演舞』という言葉にふさわしい、そんな四肢の一挙手一投足、二本の剣の軌跡。
 模擬ゆえの木刀がため、そこに刃の煌きはなくとも。斬っている。その描く軌道はまぎれもなく、空気を斬り裂き虚空を踊っている。
 
「……ふうっ」
 
 舞い踊る体はやがて終息へと向かい、編みこまれ一本にまとめられた長い後ろ髪が、最後に重力へと従い垂れ落ちる。振り上げた首、前髪からひとしずくの汗が散った。
 
 高町、美由希。
 ティアナにとっては師と呼ぶべき存在である高町なのはの姉であり、フェイト・T・ハラオウン執務官もその愛機・バルディッシュ・アサルトの第四形態、ライオットブレード『スティンガー』の戦闘スタイル確立の際には師事したという御神流小太刀二刀剣術の師範たる女性だった。
 
「と──まあ。こんなところなんだけど、どうかな? 少しでも、参考になった?」
 
 二本の木刀を片手にまとめて握り、床のタオルを拾い上げて美由希は見学者の二人へと踵を返し目を向ける。
 
「参考……といいましょうか……」
「……その、見とれちゃってました」
 
 アリサやすずか、それにハラオウン家でエイミィから彼女のことを聞かされ、会ってみたい。その剣さばきに興味があるとディードが言い出したのが、一昨日のこと。
 快く諾してくれた彼女の厚意に感謝しつつ、それを無下にせぬよう二人はここ高町家の道場へと、高校の放課後と捜査の開始時刻の合間を縫い、着替えもそこそこに学生服のまま訪れている。
 
「すごい……です。私なんかじゃ、全然あんな自然な動きは」
「そう? っと、ちょっと立ってみてくれる?」
 
 折り目正しい正座から、美由希に促され起立するディード。はい、ばんざい。言われるまま両手を天に向かい持ち上げる。その姿勢のディードの身体の隅々を、確認するように彼女はぺたぺたと触っていく。
 
 首筋、肩。胸下、二の腕、肋骨の下、腰。
 いぶかしみながらも、ディードは美由希のされるとおりに大人しくそれに従う。
 
「あの、なにを?」
「んー……あのフェイトちゃんが指導してるだけはあって二刀流にほぼ最適って感じだけど。この感じだともしかしてちょっと前まで、拳法家かそっちの畑の人に稽古してもらってた?」
 
 先立っていた布と肌とが押され密着し擦れあう痛痒感が、一瞬どこかに行った。
 
 たしかに海上更生施設でディードの近接格闘の技術指導を行っていたのは剣技ではなくシューティングアーツの使い手、ギンガ・ナカジマであったけれど。
 たったこの数瞬の身体検査、触診でそれを言い当てるなんて。その驚きが、大きかった。
 
「はい、ギンガ姉さま……あ、いえ。ギンガ・ナカジマ陸曹長に指導を」
「ナカジマ? っていうと前にこっちにきてたスバルちゃんのお姉ちゃんかなにか?」
「はい」
 
 そっかそっか、なら納得だ。言って、終わりだとばかりにぽんとディードの背中を叩き、美由希は離れた。
 そして。
 
「さ、どうする? せっかくきたんだし、かるく練習試合でもやってみる?」
 
 壁に向かい、架けられていたもう一対の木刀を手にする。振り向いて、選択肢を投げかけるようにディードへと微笑む。
 
 こちらの受け取る手は、若干恐る恐るだった。今は陸上本部にいるセインの、その本来の後見人たるシスター・シャッハと互角の剣の腕を持つとティアナから聞かされた、首都防衛隊航空班小隊長、烈火の将・シグナム。
 彼女は、その剣の騎士にも勝利こそないものの、肉薄する実力だという。魔力もデバイスもなにももたない、ただの管理外世界の人間でありながら。純粋に剣技のみで、陸上本部のストライカーと練習試合で渡り合ったことがあると。
 
 それほどの腕前なのだろうかと、見せ付けられた演舞の動きが増幅した想像が、木刀の重みによってより掻き立てられる。
 隣に座したままのティアナを見れば、ほどほどにねといった視線が返ってくる。
 
「あーほらほら、緊張しないで。リラックスリラックス」
「はぁ」
 
 普段かけている眼鏡を外した女師範は、一見してディードが固くなっているのを見て取ったようだった。
 
「服はそのままでいい? 大丈夫?」
 
 問われ、促され。少し考えて上着を脱ぎタイだけを首から解き襟元を緩める。スカートはプリーツのミニだし動きに支障はない。ベストも、Yシャツもそのままでいいだろう。
 ハイソックスの足の裏で板張りの道場の床を進み、先に位置へとついた美由希に対面するよう向かい側に立つ。
 
「や──……まあ、そういうことじゃないんだけどね。ま、いっか」
 
 肩にかかった髪を払うディードに、美由希は苦笑する。そして互いに──構える。
 
「それが、あなたの構え?」
「……はい」
 
 お互いに、双方の構えを知らない状態。訊ねてくる美由希の構えも、ディードははじめて見る。
 二刀流という変則の剣術の型はお互い様。ゆえにそれも当然といえば当然。
 
「いつでもいいよ。好きなときにどうぞ」
 
 余裕たっぷりともとれる言葉に対し今度は、ディードは返答の声を発しなかった。
 切り込んでいく、つけいる隙。ただそれを見つけることだけに、すべての意識を集中する。
 
 ISは、使わない。木刀だから使えないというわけではない。
 ディードのIS、ツインブレイズは二刀剣術による近接戦闘術と、その管制・補助能力。手にしているのが木刀だろうと、ただの棒であろうと。戦闘技能としてのそれを発動すること自体に支障はない。エネルギーの刃による実体剣はあくまでその一端にすぎないのだ。
 だが身一つ、両腕の剣のみで待ち構える模擬の対戦相手にそれをぶつけるというのは、フェアではない。
 少なくとも最初は、自分の剣技の腕が通用しないという領域に達するまでは──こちらも同じく、自己のもてる技、ただそれだけで挑む。そして、勝機を探す。

「……行きますっ!!」
 
 左の一本をくるりと掌で回し、逆手に持ち替え。床板を黒のソックスの右足が、強く蹴り踏み切った。
 まずは、肉体の全力。技の全開。すべてで、正面からぶつかっていくのみ。
 
*   *   *
 
 やりあう剣撃の激しさが。打ち込みあう太刀筋の、鋭さが。応酬する軌跡の疾さ、それらすべてが。仮にも戦闘機人である少女と、魔力のまの字ももたない、まして一介の民間人のかかり稽古であるとは見ているティアナ自身、今もって信じられなかった。
 押されているのがディードのほうであるともあれば、なおのこと。ダガーモードの二刀を補助的にとはいえ使いこなすため彼女と幾度も組み手、模擬戦を重ねてきたティアナにしてみれば、十分に驚愕に値する。
 まだ我流が抜け切れていないとはいえ、ディードの近接戦闘力は並を超えて高い。彼女に攻め込まれ、それをさばきいなすことで自分も近接における射撃手の戦い方を磨いてきたのだから。ディードの実力は管理局の人間でおそらく、自分が一番良く知っている。
 
 だが、今彼女とやりあっている女性はさらにその上を行く。   
 あのシグナム服隊長にも肉薄する腕前と聞いて驚かぬ心の準備はしていたはずだったが──それでも、聞くと見るとでは勝手が違った。
 
 ディードは有効打を打ち込めない。完全に攻めあぐねている。一方で的確に打ち据えられる四方からの二本の木刀による攻撃は、彼女にミスの許されない対応を迫り守勢を強いている。
 ゆえにディードが攻め込めるのは、時折。また、ほんのひととき。すぐさま、攻守は巻き戻される。
 
 達人──その二文字が、見守るティアナの脳裏をかすめていく。まさに、そこにいるのは達人だった。
 
 けれど。だが、それでも──と、ティアナは思う。まだディードには彼女に対し、つけいる隙があると。
 それは相手が達人とはいえ、あくまでもその剣が『道場の剣』であるということ。技法や秘伝の生い立ちはどうあれ、美由希自身はけっして、その剣技の多くを実戦において研鑽してきたものではないということだ。
 あくまでそれが生かされてきたのは稽古、あるいは試合の場が殆どであったはず。そこに、ディードの勝機はある。誇れることではないだろうが──それは偏に、これまでに歩んできた環境の違い。
 
「……はあっ!!」
 
 とはいっても、あまり長くやらせているわけにもいかない。あくまで自分たちの本分は捜査であり、これはその合間にやっていること、それに過ぎないのだから。
 腕時計に、目を落とす。せいぜいあと十分、いや五分。そのくらいを限度に、切り上げさせなくては。
 
 止めるタイミングを、ティアナは窺う。だがしかし、彼女が中断の声を発するより早く、横槍は別な形で訪れた。
 
 そしてその横槍が、決着を生む引き金となった。
 
「「!?」」
 
 それは二つ並び置かれていた通学鞄の上の、携帯電話の着信音。ティアナとディードのものから、それぞれに。模擬らしからぬほど緊迫した模擬の試合に張り詰めた空気に、その軽快かつ不調和なメロディは闖入してくる。
 一瞬気をとられたのは、双方同じ。だが立ち直ったのはそれがあることを極一般と受け取り捉える事の出来る世界の住人としてのアドバンテージゆえか、美由希のほうだった。
 
 場の空気を読まない電子音楽を打ち消す、足裏の骨が木目を打つ気持ちがいいほどの甲高く乾いた音。刹那、管理外世界の剣士の身体はディードの懐へ入り込む。彼女の両腕の、二刀のその内側へ。
 
 瞬きの暇もなく、ティアナの瞳には両腕を打たれ苦痛に顔を歪めるディードと、跳ね上がり虚空へと飛ばされる二本の木刀とが映っていた。
 こうなればもう、ディードは無防備。身構えることも、距離をとることもならず。両目を見開いた彼女の顔面、すぐ直前で──突き出された木刀の柄、その底部がぴたりと止まる。
 
「……うん、いい腕。ここまでだねー。ほら、電話鳴ってるよ」
 
 それが下げられると同時に告げられる敗北宣告は、気安い言葉によるもの。
 ちょいちょいと鞄の上に投げ出された、鳴り続ける携帯を指差す女性は、やりあっていたときの調子はもうどこにもなかった。
 
 戸惑い気味にぺこりと深く頭を下げて、ディードがこちらに戻ってくる。汗を浮かべた彼女へと、ティアナは携帯に添えてタオルを差し出した。
 
「……負けちゃいました」
 
 肩を竦めて、残念そうに彼女は言った。そして、すいませんと一言告げてそれらを受け取る。
 
「っと、そうだ。あたしも電話」
 
 ふと口にして、つい先日まで単語自体知らなかった電話という言葉が自然に口をついて出るようになっているのが、自分自身不思議に可笑しかった。
  
「あんたも同時ってことは、アリサさんたちかエイミィ管制指令かしら」
「……いえ。同じクラスの方からです、私は」
 
 応じながら、ディードは着信相手の名を確認し通話ボタンをプッシュするところだった。
 ティアナも、それに準じる。二つ折りの端末を開いて、液晶を表に出す。
 
「あら、あたしもだわ」
 
 そこにあるのはそれなりに言葉を交わす程度には親しくなった、クラスメイトの名前。それなりの時間は鳴り始めてから経っているにもかかわらず、飽きもせずまだ呼び出しは続いている。
 
「「もしもし」」
 
 同時の発声が、二重唱を奏でた。
 
「は? アリサさんの教育実習の?」
「……え? 月村先生の……ですか?」
 
 その後に向こう側から聞かされた言葉に対し、見せた反応も同類のものだった。
 美由希がスポーツ飲料を口にしつつ、二人の吐いた、彼女にもよく知った二つの名前にこちらを見やっていた。
 
 改めて、二人の声がもう一度ユニゾンする。ともに持ち上がった語尾へと、互いを振り返りながら。
 
「「合同送別会?」」
 
 二人は、眼前の相手が言った言葉と、自分のいった言葉とに目を丸くした。
 
 
(つづく)
 
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