ややこれで身の回りが自由に。

 
どこに委託するかなどの情報は追って出しますゆえー。
ひとまずweb拍手レス。
 
>ルキズ終わってからのこの短時間でSSを書ける速さがうらやましいっす
んー、実際のところwordで四枚程度なんでさほどの量でもなかったり。
 
>つまり、阪神のTHはテスタロッサ・ハラオウンのTHだったんだよ! 阪神ファンで何が悪い! 金本さんはみんなのアニキ!
な、なんd(ry・・・そーか、阪神ロゴのTHはテスタロッサラオウンか・・・。その発想はなかった。
 
>あったりまえだぁ! って言うの誰だよwwwwwww>ひぎぃSSいい加減何とかしろと言った坊主。
フェイト「全力全開は一回。ブラスターは決め球のときだけ。守ってもらうよ」
なのは「(え……何、わたし野球でブラスターまで使わなきゃいけないの?)」
というわけでなのはが言う(言わされる)んじゃないでしょーか。
 
阪神ファンですか?僕はにわかロッテファンです
うんにゃ。出身が福岡なのでダイエー時代からのソフトバンクファンっす。好きな選手は湯上谷とか柳田とか。
 
>ホントにヴォルテールを抑止力だけにするのかが疑問に残るな。というのも、バケモノ相手に核兵器使って殲滅した某盟主を見ているので…なのはと戦闘機人まとめてゆりかごごとヴォルテールで焼く、ってダークな考えが浮かんでしまった。
あー、クアットロならそういうこと考えてるかもしれませんなぁ。
 
>拍手SSおいしゅうございました。(某貧乏市民球団ファンより)
野球はいいッスよねぇ。
 
>なんじゃこりゃw
野球好きの640がルーキーズ最終回見た直後に勢いで書いた産物。
 
>はやてとフェイトが考えた六課のチームオーダーがかなり気になってしまって、つづかないと書かれてあるにも続きが気になる……。
多分一番はエリオ。あとシャマルが代打の切り札。永遠に切り札のまま日の目を見ることなく終わるという意味での切り札。
 
>ウェンディよりもノーヴェのほうがお姉さんだってことすっかり忘れてました。自分のなかではノーヴェのほうが駄々っ子なイメージが強くて。でも、ここのノーヴェはちょっと頼れる感じに成長してますね。次回も楽しみに待ってますー。
そう、皆忘れがちだけど実はノーヴェってば地味にお姉さんなんですよ。
 
 
 
はい、んでは珍しく速いペースでカーテンコール更新。
今回、ちと以前書いた話とノーヴェの魔力光の色が違ってます。(どっちにしろ捏造設定だ)
や、単純に見栄えとして蒼二つより蒼と赤のほうがきれいだろーと思ったので。
そんなわけで、どぞー。
 
↓↓↓↓
 
 
 
− − − −
 
 
 
 がばり、と起き上がった少年を、セインは腕力の限りに押さえつける。じっとしてろ、大人しくベッドに寝てなさいと言わんばかりに。たとえそれが旧知の相手であったとしても、遠慮会釈なく。
 
「スバルさんが出撃したんでしょうっ!? だったら僕も……っ」
「あーほら、馬鹿言うんじゃないの。そんな怪我で出てってどうすんの。相方の子だって困ってるよ、ほら」
「こんなの、平気ですっ!!」
 
 彼の右腕はその酷使によりひどく損傷し、包帯にほぼ肩口近くまで覆い尽くされ三角巾によって固定されている。
 もう一方のもがく左手には、点滴のチューブ。運び込まれた際、彼の肉体は疲労の蓄積、魔力の消耗ともに激しく、衰弱といっても差し支えないほどの状態だった。体のあちこちの絆創膏も、痛々しい。こんな状態で前線に向かわせることなど、できようはずもない。
 
 無論、弱っているとはいってもAAランクに登録される騎士である。暴れられては、医療班員に抑えられるものでもない。ゆえに彼をなだめ押さえつけるのはセインの担当。
 彼と一緒に運び込まれた少女──キャロも、押さえるセインと飛び出して行きかねないエリオとのやりとりに、おろおろと二人の間に視線を往復させる。
 
「ほーら、寝てなってば」
「でも、なのはさんが……それにフリードたちも助け出さないと……」
「大体、デバイスだって修理中なんだろ? 大人しくしてなって」
「エリオくん……」
 
 きみも寝てなさい。少年を押さえながら、セインは少女へと目配せする。こういうのも全部、聖王教会でシスター・シャッハのもとにいたときに教わったことだ。
 
 再三戻って来いと誘われているにせよ、当分、その気はないけれど。法的後見人である彼女のところで積んだ経験が、糧となって今ここで役立っているのも事実である。
 
「スバルの元同僚でしょーが、きみ。ならスバルのこと信じて治療受けなさいって」
 
 ただ、たまには顔を出すくらいはしてもいいかもしれない。少年が暴れたせいでハンガーから外れかけた点滴のパックを元に戻しながら、ふとそんなことを思う。
 
「動かすなら、身体じゃなく口を動かす。ここの人たちはたぶん、お二人さんの見てきたこととかをすっごく知りたがってるし、必要としてるはずだから。話せる気力があるなら、手の空いてる人を呼んでくるからさ」
 
 

魔法少女リリカルなのはStrikers 〜カーテンコール〜
 
第十四話 駆け抜けて
 
 
 空を走るには、まだ早い。距離、一万。九千八百、九千七百。足元のキャリバーが刻む相対距離のカウントダウンに耳を澄ませ、足場となり輸送の手段となっているライドボードを駆るウェンディの肩につかまる。
 
 ディエチの空けた、敵機群の風穴をまっすぐに。陣形を立て直しつつあるそれらの間隙を縫って、スバルとノーヴェを乗せ彼女はライドボードを操っていく。
 
「きたきたきたぁっ!! 迎撃、頼むッスよぉっ!!」
 
 前方の敵は、ライドボードそのものの砲口からの斉射である程度対応ができる。
 問題は、側面。群がってくる敵たちに対し任されたスバルとノーヴェは背中合わせにそれぞれの右腕を構え射撃の発射体勢に入る。
 リボルバーナックルが回転し、唸りを上げ。ガンナックルが静かな駆動音を内部より響かせる。
 
リボルバー!!」
「ガンナックルッ!!」
 
 アブゾーブグリップで、ふんばりつつ。体勢を崩さず連射が可能であるよう、反動を背中で相殺しあえるように、等しい威力へとその破壊力を調整する。
 
「「シューーーートッ!!」」
 
 右側面を、敢えて収束率の下げられた螺旋状の風が薙ぎ払い複数の機体を巻き込み落としていく。
 左側面に、機関銃のようた無数の光の散弾がばら撒かれ近付く機体たちに細かな穴を穿っていく。
 
 衝撃は、互いの背中で打ち消しあう。マリエル主任がライドボードの改修時に施したという装甲可変機能は、実際問題として非常に的確だったわけだ。
 装甲を展開して生み出された、あたかも二枚の翼のようにすらも見える、今スバルたちの足を支えている足場がなければ、魔法によって両足を固定しているにせよこの機体の本来のサイズではさすがに三人は不安定であったろうから。
 
 通常時における外見はそのままの可変式の展開装甲、ペイロードの増加。よく考え付いたものだ。
 
ウイングロードのゆりかごへの到達可能地点まであと7800……二陣!! まだまだくるッスよっ!!」
「おおっ!!」
 
 同時多発的な攻撃に散らされ、風穴を空けられてなお、容易に陣形を立て直せるほどに敵機の数は多かった。だが、そんなものどうだっていい。
 
 蹴散らすだけだ。蹴散らして──エースの下へ、向かえばいい。
 
*   *   *
 
 なのはには、ティアナのような幻術はない。ゆえに、三対一ともなればある程度のクリーンヒットは覚悟の上。だが。
 
「むーだ、無駄。あなたの行動パターンは確かに多彩ですけどぉ……たっぷりとデータはいただいてるわけですからぁ、ぜーんぶ私たちのココに入っちゃってるんですよぉ?」
 
 攻撃が、読まれている。ブラスタービットの牽制、アクセルシューターによる背後からの狙撃。そしてなのは自身がレイジングハートより放つ、砲撃。
 
 完全にではなくとも、ほぼ三分の一近くが先読みされ、高速戦闘型と隠密型、身軽な二機の戦闘機人および常に一定の距離を置くフリードと魔導師とに避けられる。
 少なくとも本命の一撃は常に、その狙いをはずされかわされている。
 
「ま、それでもここまであなたの戦術が多彩だとは思いませんでしたけどぉ……つらいでしょう? その疲れきった身体では」
「そう、だね……でもっ!!」
 
 また、現実には戦闘機人三人と、魔導師。そして竜一頭を相手にしているのであっても。実質的になのははそれ以上の数を相手に戦いを構築していかねばならない。
 
 その、戦闘機人が一人──クアットロの持つ幻惑能力、シルバーカーテンによって。
 
「くっ!! またっ!! 一体いくつの幻影を……!!」
「はい、ざぁーんねん」
 
 ブラスタービットの直射に貫かれた、蒼いボディスーツの影が霧消する。幻影によって作り出された贋作。直後、こちらを狙い撃ち放たれるフリードのブラストレイから身を翻し回避するなのは。
 
 ヴォルテールを含めても六つのはずの敵影は間断なく生み出され補充されていく幻によりそれぞれが十にも二十にも増え、彼女を囲み。本物をその中に隠しなのはの不利を増幅する。
 この状況に対し最も有効な空間攻撃や、広範囲砲撃も行う隙など与えてもらえようはずもない。ひとつひとつの場当たりを、なのはは強制される。
 
「ならっ!! セイクリッドクラスター!!」
 
 次善の策として、散弾をばら撒く。多少威力は劣っても、幻影を消滅させていくにはこれしかない。
 ブラスターで強引に威力を引き上げ、散弾と幻影とを対消滅させる。
 
「!?」
 
 が。目の前には、なにもいなかった。セイクリッドクラスターを放った瞬間、すべての幻影が一斉に消えうせ消滅する。
 その中に混じっているはずの本物の姿は……ない。
 
「こっちも性能上がってるんですよぉ。出し入れ自在、いつでもコンマの早さで消せるってね」
 
 まずい、後ろだ。レイジングハートを掲げ構え、急旋回し対応を急ぐ。
 
 最上段からの、光の刃きらめく回し蹴りがすぐそこには迫っていた。プロテクション、ラウンドシールドもいずれも間に合わない。持ち前の見切りのよさを頼りに、愛機の柄でガードする。
 
 重い、重い蹴りだった。だがなのははそれを堪え、耐える。渾身の力を両腕に込めて。
 
 代わりに刃の洗礼を受け鮮血を噴出したのは、今度は背中ではなく脇腹。耐える両腕の隙間から、鋭い鉤爪がバリアジャケットを引き裂く。
 
「ぐ、うぅぅっ!!」
 
 刃と、長槍の拮抗が崩れる。弾かれた防御の内側、そこへ叩き込まれてくる斬撃つきの裏拳に対しなのはができる対応は揺らいだ身に逆らわず更に捻り、額よりの血飛沫を散らして直撃をどうにか急所から外す程度。
 光の翼に灼かれたリボンが消し炭となって、風に消えた。ひとまとめになっていた右半分の長い髪が、強風の中に舞った。
 
「……まだっ!!」
 
 それでも、慣性は残っている。それは──利用できる。
 
「ストライクフレームっ!!」
 
 斬撃には、こちらも同じく。止まりかけの独楽のようにきりもみ運動に流されていた身体の動きに乗せ、円軌道で下から斬り上げる。この距離なら──装甲の一枚も傷つけることは出来るはず。
 結果は、なのはの目論見どおりだった。こちらの突然の反撃に急速に後退していった短髪の戦闘機人のボディスーツの胸元に、真一文字の裂け目が刻まれる。
 
「はぁ……っ、はあっ……っく」
 
 後退した相手のその周囲に再び展開されていく幻影たちの群れに、思わずなのはの口元は歪む。
 
 どうだ、といわんばかりに。六対一だろうと、六十対一だろうと。自分はまだまだ、やれる。まだ、戦える。
 
 視界が既に右半分、こめかみからの出血に覆われ失われていたとしても。最初にゆりかごで受けた傷口が開き、左腕を伝い地面を赤い雫が打っていたとしても。ブラスターの反動と残り少ない魔力に、疲労困憊した肉体が悲鳴を上げていようとも。
 
 背中も、右手で押さえる脇腹も、深い斬撃に抉られ熱い体温を帯びていたにしても、だ。
 
 スバルたちの到着するまでくらいは、まだやれる。救援がやってくるまでにノアを救い出す程度のことは、やってみせる。
 
 横の大振りに振り抜かれたヴォルテールの巨大な腕を、アクセルフィンのはばたきに身を任せなのはは避けた。
 
*   *   *
 
 背中合わせに一息ついた槍使いの陸曹長は、柄の悪い笑みを浮かべつつ一言、悪くねぇな、と呟いた。
 
「なにがです?」
「いや、俺たちが助けに行くっていうこの状況がな」
 
 痛快じゃねえか、と彼はギンガに言葉を繰り返す。そして再び、ガジェット群へと躍りかかっていく。
 
 仮にも、自分は指揮官だ。ギンガもそれに遅れをとるわけにはいかない。
 リボルバーシュートで敵を貫き、ウイングロードを直接当てて崩した機体に、その上を疾走して踵落としをたたきこむ。
 
「普段さんざエースだなんだってもてはやすばっかで頼りっきりだったろうが、あいつの参加する部隊は大抵どこもよ」
「ああ、そういうことですか」
 
 だが一応、陸曹長としてはあちらが先任だ。離れては、敵を落とし。撃墜しては再度合流する。背中と背中が近付くたび、敬語で応答をする。
 
「たしかに、そうかもしれませんね」
「そういうこった」
 
 要するに、ギブ&テイク──たまにはその分を彼女にリターンしてやれ、ということらしい。
 少なくとも今、自分たちはそうすることのできる場所にいる。エースの力を借りるのではなく、エースを助けるべく戦っている。
 
「火砲支援……くるっ!!」
 
 上空のガジェットたちを爆発の花へと変えていくのは、艦上から放たれるディエチの支援砲撃だ。あの子も、戦っている。
 
 スバルも、ノーヴェも。彼女らを運ぶウェンディも。
 そうだ、今は。
 
「にしても、ちっとばかし数が多いな、こいつは」
「ええ」
 
 だが単騎で、わずか三人で駆け抜けるにはいささか距離は遠く、敵機の密集は早い。部隊を総動員し拡散させ、ひきつけてなおこれだ。
 スバルやノーヴェの突破力も足場が限られるこの状況では十分には発揮できない。必死の戦いも、完全な実力が出せないとあっては。
 
『sir』
 
 援護に回す人員もない。一斉射撃にギンガも跳躍、後方の一人と分散し。自身のフィールドを駆け抜けるのに縛られている。
 他の部隊員たちも航空・陸戦魔導師問わず彼女と似たり寄ったりの状況だ。
 
「なに? ブリッツキャリバー」
『Someone metastasizes to the vicinity where they are.(スバルたちの付近に、何者かが転移してきます)』
 
 そんな折の相棒からの報告に、ギンガは空を疾駆する妹たちの方角を見上げ仰いだ。
 
「反応は?」
『Two. It takes time to detect the identification signal a little more.(ふたつ。識別信号検出まで、もう少し)』
 
 それは新たな壁か、はたまた福音となる新たな一矢か。
 見守ることもゆるされず、射撃を避けてギンガは新たな敵へと拳を振り上げ、向かっていく。そして、振り下ろす。
 
*   *   *
 
 ちょうど、手が足りないところだった。
 
「あと少し……!! 四百、三百……!!」
「五十ッス!! いいッスか、五十まで行ったらこっちのことよりなにより、とにかく跳ぶッスよ!!」
 
 あと少し。あと少しで目的のポイントまで到達する。にもかかわらず、その最後の一押しがもっとも苛烈。
 
「くうっ……!!」
 
 敵はとうの昔に陣形を整え終えている。最大限のスピードでここまでこれただけでも御の字といえるほど、ギンガやディエチたち、そしてウェンディのライドボードはよくやってくれていた。
 
 けれど、ここから先は。たった三人では、近接主体の二人の射撃と、荷物を多大に抱えた輸送モードのライドボードでは迎撃も追いつかない。
 まっすぐには、いけない。雨あられと浴びせられる砲火に、迎撃と回避を繰り返しながらの蛇行を余儀なくされる。
 
「ウェンディ!! つっこめ!!」
「うえっ!? けど、それじゃ直撃を……」
「いや!! それでいい!! あたしからもお願い、ウェンディ」
 
 そんな中、ノーヴェがウェンディの背中を押す。スバルも、それに続く。
 ここから先は迎撃は捨てる、といわんばかりに。ガンナックルとリボルバーナックルの二人分の掌に、組み上げた防御の術式スフィアを輝かせて。
 
「……りょーかい。腹、くくるッス」
 
 姉たちの見せた表情と仕草とに、ウェンディも引き攣り気味の笑みを返した。
 
 二人分のシールドで、目的の地点まで押し通る。上等ではないか。
 
「抜かれたら真っ先に食らうのは先頭のアタシなんスから、しっかり防御、頼むッスよ!!」
「わかってる!! お願い、ウェンディ!!」
 
 蒼と赤の力が、三人の前面に防護の壁となり広がる。ここからは、敵機の攻撃に対しては、三人の対応はこれがすべて。あとはただ、前だけを目指す。
 
「うっし!! 行くッス!!」
 
 十字砲火を、耐える。耐えて、進む。あと少し、もう少し。直撃の振動を堪え、ウェンディが巧みにボードを操って。スバルが、ノーヴェが、防御陣を叩く破壊の衝撃に、歯を食いしばって。
 
 多少の痛みや、ダメージは承知の上。ところどころを抜いてきた僅かな破壊力の残滓が、防護服や素肌に焦げ目をつけていこうとも。
 三人は、進む。視界すら埋め尽くすほどの光弾の嵐の中を。
 直撃を浴び、時折身体をぐらつかせ。蒼が弱まれば赤が補い、出力に劣る赤を蒼が支える。それらに守られ、滑空者が直線を描く。
 
「ここッス!! スバル、ノーヴェっ!!」
 
 そして、たどり着いた。あとは二人が自力でゆりかごへと向かうことの出来る、その地点へと。砲火をくぐり、受け止めて。ただ飛行するだけならばごく僅かの、長い長い距離を駆け抜けて。
 
「行くッス!! 二人とも!!」
 
 アブゾーブグリップ、解除。二人の少女が、同時にボード上を踏み切り跳躍する。
 ここから先は、力を借りるまでもない。自分たちの翼──翼の道が、駆け抜けるべき空が、行き先へと導いてくれる。
 
 ──その瞬間。
 
「!?」
 
 二人の離れたライドボードを、砲撃が掠めていく。片側の装甲を、焦がし。煽り。
 その上に乗る操縦者のバランスを、ぐらりと傾かせる。
 
 もちろん彼女はこの程度で落下したりはしない。膝を曲げ、片手をつき。ウェンディは体勢を整え踏みとどまる。
 しかし、相手への対応は当然遅れる。彼女の目の前に、ほぼ零距離といっていいほどの前面に、大型のガジェット三型が砲口をまっすぐに向け割り込んでいた。
 
「ウェンディ!!」
 
 声をあげたスバルも、同様に顔を向けたノーヴェも。それに気をとられたという点では隙だらけの姿を晒したことに変わりはなかった。
 
 不安定な空中での、跳躍の体勢──その二人を、小型の飛行ガジェットたちが囲む。
 正面の大穴が。無数の銃口が。三人に向いたその穴を輝かせていく。
 
 なんとか、迎撃をしなくては。振動拳も、リボルバーシュートでもまるでさばききれないことをわかっていながらスバルの指先は動く。
 ノーヴェも、ウェンディも助けなければならない。今ここにあるのは自分たち三人分の手しかないのだから。
 守るのは、自分だ。姉である、自分なのだ。
 
「スバル!! ほっときなさい!! ウイングロード!!」
 
 だが。はるか上空から響いた声は正反対のことをスバルの耳へと届けた。そして、その通りにスバルの身体は動いた。
 
「ウイングゥゥゥッ!! ロォォォォドォォォッ!!」
 
 目の端で、ノーヴェが自分に倣いエアライナーを発動するのをスバルは確認する。また。
 
「ディードッ!!」
 
 声の主が放った無数の弾丸が、同時に自分たちを囲んでいた敵機のことごとくを撃ち落していったことも同様に、見届ける。
 振り向けばそこには風に揺れる長い黒髪が、真っ二つに断ち割られた球形のガジェットの落ちゆく間から、一閃された紅の刃とともに姿を覗かせはじめたばかりだった。
 
「ディード!?」
 
 手は、三人分だけではなかった。蒼い空の道へと降り立った、橙の輝きを魔力光の残滓に煌かせる相手も入れれば、もう二人分。
 執務官補佐と、捜査官見習いが一人ずつ。
 
「ティアッ!!」
「るさい。ったく、到着早々世話の焼ける」
 
 それは双銃の射手と、双刃の剣士。黒髪の少女は己の救った姉へと静かに微笑み、かつてのスバルのパートナーたる橙の少女は、ぼやきながら硝煙燻る銃口を持ち上げた。
 
 
(つづく)
 
− − − −