頒布物情報とノーヴェとweb拍手。
てわけでなのパの頒布物情報から。
<新刊>
・ナンバーズ合同誌『Numbers』 600円 100部〜200部(とらからの発注部数次第で増減)
<既刊>
・the lost encyclopedia 〜blades of blaze〜? 500円
・the lost encyclopedia? 500円
・the lost encyclopedia? 500円
・Reborn 400円
・空へ導く篝火に(18禁本)500円
・花冠のあとに(マリみて本)100円
既刊はいずれも残部数少ないんで(概ね十部切ってます)一部除いててっとりばやく価格統一&価格 改定。
あと新刊もしくはRebornを買っていってくださった方には先着でRebornの表紙と同じデザインのフルカラーのペーパーつきます。
<委託>
・全力全壊(Fearless hawkのケインさんとの合同本)500円
てなわけでスペースC−43にて当日お待ちしてますー。
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んで、ここからはケインさんとのリレーss、アストラとノーヴェの話の最新話です。
前回の話はこちら。うちに掲載してるぶんの前回分(つまり前々回)はこちらになります。
今回はオチでわりと遊んでみた。いや、一度こういうオチをやってみたかったのよ。
そしてケインさんになげっぱなす。あ、拍手レスは週明けに。お礼ss更新しとくんで。
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アストラとノーヴェ アンスウェラーとサイクロンキャリバー
眼鏡をかけた女性が、メンテナンスルームの室内にいるただひとりの人間だった。
あとはひたすら、機材とコンピュータのモニター画面の明かりが並ぶばかり。計器類の一定した絶えることのない駆動音と、女性の指先が打っていくキーボードのタイプ音が鮮明に木霊する。
「ノーヴェにも、なかなか素直なところあるんじゃない。ね、サイクロンキャリバー」
『……』
つい先ほどまでは、それらの音に加えて少女の声があった。この部屋の内側で発されたものではなく──同じ部隊内ではありながらも、多少の距離を置いた、訓練場から拾われた音声であったけれど。
それを拾っていたのは、『彼女』の身体だ。模擬戦に臨む少女の両足へと装着された、鋼の機体。整備と調整の作業を続ける女性、マリエル・アテンザの前に置かれたメンテナンスポッド内部に浮かぶ、本来その肉体に収まりそれを制御すべきAIユニットの名は、眼鏡の技官が呼んだとおり、サイクロンキャリバー。
ノーヴェに対し、彼女は無言だった。まっすぐに向けられた主からの言葉に、応えの声を返さなかった。いや、返せなかった。返せる場所に──その鋼の肉体のみを残し、彼女自身がいなかったがために。
「ご主人様がああやって素直に言葉かけてくれてるんだし、あなたももう少し素直になったら? ね、サイクロン」
『The theory is another to it and this. (それとこれとは話が別です。私にとって彼女が敬うに足る主であるかどうかは)』
「またまた」
よほどの徹底オーバーホールの際でもなければ、AIユニット本体をインテリジェントデバイスの機体から取り外すことなどまずないことだ。まして、いくら機体ボディに最低限の稼動と機能は残しているとはいえ、その状態で持ち主が使用するなど。だが現に、『彼女』はここにいる。マリエルは、その調整を続けている。
「だったらなんで、あなたはこんなことをわざわざ私に頼んできたのかなぁ?」
キーボードを、叩きながら。各種の数値に、目を走らせながら。あくまで素直になりきらない、なりきれないデバイスへと、意地悪な口調を向ける。
AIユニットの浮かぶポッドの隣に、更にポッドはもうひとつ。マリエルの前に並ぶ。
中核をなすその小さな部品のみの姿となったサイクロンキャリバーが見ていたのは、マリエルだろうか。訓練場で模擬戦に臨む主の、その両足に残してきた、抜け殻となった己が身体が映し出す光景にだろうか。
それとも、あるいは。
彼女が見ていたのはひょっとすると、自身と同じく並んだポッドの中で同調の時を待つ、かつての主がその戦の愛機としてふるっていた、無骨なる鋼の刃であったのかもしれない。
* * *
なるほど、ね。そういうことか。
二人がかりの攻勢を捌き、かわし、避け防ぎきりながら、ヴィータは心中で納得にひとりごちる。
気付いたことはふたつ。いずれも、数度の交錯のうちに、すぐにわかった。
スバルの、戦い方。そして、ノーヴェの動き。軽く手を合わせてみて読み取れないとあっては教導官失格だろう。
(──それにしても、だ)
スバルのやつ。赤と青、交互に一撃を繰り出してくる二人に、ヴィータも交互に視線を移す。
攻めの主体はスバル。その右回し蹴りを、スウェーで避ける。振り抜いて、今度は左。アイゼンの柄が、マッハキャリバーに覆われた爪先を弾く。
(あたしを使うとは、大層なご身分になったもんだ)
仮にも、かつての教え子だ。どういった戦い方をするかはなにより、身体で記憶している。そして今──……スバルの体捌きはヴィータの憶えているそれとは、明確に異なっている。ゆえに、彼女の目的が理解できる。
彼女と、ヴィータとが殆ど一対一で繰り広げる応酬に、どうにかついてくることがやっとの赤毛の少女の、我武者羅な様子と相まって。
──尤も、成長を促す。成長させるための道具、材料となる。それこそまさしく、教導官の仕事のひとつではあるのだけれど。
「なめんなっ!! まだまだ追いつかれやしねーぞ、このバカスバルッ!!」
踵落とし。ハンマーヘッドでかち上げる。スバルはその衝撃に逆らわない。振り下ろした足の方向とは逆回転で宙を舞い、落とした腰で水面蹴りを狙ってくる。
また、蹴り。足技だ。
アイゼンを地面に突き立てる。その柄で受けて、堪える。もちろん小柄なヴィータの四肢は教え子からの強烈な一撃の破壊力に悲鳴をあげる。
放すのは、アイゼンに添えた両手ではない。地面に踏ん張る、両足だ。スバルと同じく、加えられた慣性に身を任せる。
丁度、跳ぶにはいい角度だった。愛機を軸に、ヴィータは空中に躍り。弟子の頭上を飛び越え、くるりと背後に着地する。付け入る隙が、あった。お互いに。
背後を取った自分と、着地の瞬間を攻めることの出来る、スバルと。両方。
「テイトリヒッ!!」
「キャリバー!!」
二人、同時に選んだのは横の回転運動。円軌道が、加速する。ハンマーを……蹴り足を。
「シュラアァクッ!!」
「ショットオォォッ!!」
振り抜かれた二人の一撃が、激しく交差した。直後の、ノーヴェの動きに叱咤を飛ばす。
「見え見えだ!! このバカ!! そんなだから三対一でもティアナに負けて、スバルにもタイマンで勝てねーんだよっ!!」
もちろん、長く鍔迫り合いはしない。生憎、二対一の状況でそんな隙を晒すようなことはやってはいられない。押し切れないと判断するが早いか、身を翻す。──跳躍し背後の上空から必殺の一撃を狙おうとしていたノーヴェに、打ち出した迎撃の鉄球と、罵声との置き土産を残しながら。
間断なく、顎を標的に定めたトラースキックをスバルが放つ。
彼女の顔は、ヴィータがノーヴェへと浴びせた罵声に笑んでいた。
──そうそう。いい感じです、そんな感じでお願いします、ヴィータ副隊長。そのようにさも、言いたげに。
やっぱり、使われている。教え子から、教え子の教え子に対して指導を施すという名目で。
まあ、いいさ。後方に距離をとるのに、スバルの一撃を利用しながら思う。
「おら、どうした!! 殆どスバルの攻撃しかあたしには当たってねーぞ!!」
また、罵声。これでいいのだろうと、スバルに視線を向けて。ノーヴェに、言い放つ。
「う……うるせえっ!! 言われなくても、今入れてやるよっ!!」
「おお、やってみろっ!! やれるもんならなぁっ!!」
挑発的であることを、敢えて心がけながら。
ちらと横目を移した先のスバルが、小さく頷いたのを、ヴィータは目の端にしっかりと捉えていた。
* * *
やれるものなら。──やれるのか? 自分に。階級的にも、魔導師ランク的にもずっと下のタイプゼロ・セカンド……姉であるスバルや、昨日のわけのわからない、あのアストラとかいう男にすら届かない、自分に。
「うおおおおっ!!」
「バカ、見え見えなんだよ!! そういうのはデバイスの補助があってはじめてうまくいく動きだろうがっ!!」
叱責。反撃という表現も生易しく、ガードの上からハンマーが殴りつけていった衝撃に足腰が浮き上がる。
明確に、わかる。今なら、認められる。
自分以外の、今戦っている二人。二人は──強い。自分自身よりもずっと。
唇の端を、跳ねた小石が掠めて血が流れ落ちる。人間の、赤い血が。ノーヴェはそれを、乱暴にガンナックルの甲でぬぐう。かまってなんていられない。かまっている暇なんて、この二人の間に割って入るのに、とても考えていられるものか。
猛攻に晒される。両腕でガードを固めて。捌ききれない一撃が訪れる。唯一間に合うのは……右足。しかし、一瞬反応をしかけて、踏みとどまる。
「どうしたァ!! 今のはガードできたろうが、このバカっ!!」
──そりゃ、そうだよな。あたしの戦い方は主だなんだって以前に、一人の人間として向き合ってなかったんだから。お前と。
足元のサイクロンキャリバーは応えないまま。戦闘服──ジャケットの胸元に裂け目を刻みながら、その損傷を代償にして態勢を立て直す。防御性能が、ごっそりと削られる。
愛機には、防御は命じない。協力してくれる気のない相手に要求したところで、何になる。愛機に対して、その説得力も与えられない自分に、その資格はない。無理矢理言うことを聞かせて、どうする。
インテリジェントデバイス……意志持つ愛機の、主として。自分はそこに到達していないのだから。
かわりに、その愛機へと心中で語りかける。気付いたことと、今の気持ち。それらを、まさしく暴風のごとき戦いの中において。
──人としてまだ、なんにも知らないくせに。縋ってたのは戦闘機人としての、ちっぽけなプライドだったんだもんな。
勝てなくて、悔しくて。負けて腹が立って。相棒が思い通りにならないことに苛立っていたのは、未来を見据えて歩んでいく、そう決めたはずなのに過去にこだわっていたから。
なにも、己の過去を否定するわけじゃない。ただ自分の強さという、自負に。人としての日々、そこで積み重ねてきたものではなく、戦闘機人として駆け抜けた、身につけた力と思考で、新たに歩み始めた人としての技を使おうとしていたからこそ。
それらふたつが無軌道に交じり合っていては当然、平行して使いこなすことのできる相手や、ひとつをとことんにつきつめた相手になど太刀打ちできるはずもない。
今と過去。それらは並立こそすれ、けっして同じものとはなりえないものなのだから。
過去は、過去。今は今。過去の不確かな自信やプライドで──どうやって『今』を戦える。
「だからっ!!」
──だから、当然だ。認めてなんか、もらえるわけがない。
「サイクロンキャリバー!!」
──力は貸してほしい。言って向けた言葉に、偽りはない。けれど、それがまだ叶わないというのならば。
「しっかり!! よーく見てろっ!!」
あたしの、力を。その上で認めるかどうか、判断してくれていい。そして願わくば、力を貸してほしい。
──お前が走らせてくれるその道を。あたしに切り拓いていくだけの力が、その可能性があるのかどうか。
* * *
ずり、ずり、ずり。それは、そんな擬音が聞こえてきそうな光景だった。
「……なあ、アンスウェラー」
首には、首輪。ぶっとい鎖の先は二つに分かれ、それぞれに前方の二人が保持しアストラをひっぱっていく。
いずれも、つい先ほど隊舎に帰還したばかりの二人。……いや、一人と一匹。
される側のアストラは──要するに、拉致というか、強制連行というか。とにかく、引き摺られていくばかり。
「ほーら、アストラさん抵抗しちゃだめですよー。訓練場に行く前にメンテ室寄ってけって、マリーさんから言われてるんですから」
小柄な少女の名は、フェベル・テーター。当部隊におけるある意味での、アストラの天敵二号(一号はもちろんギンガ)。
「……仕事だ、諦めろ、ガレリアン」
その隣で、犬ぞりの要領で鎖を加えて引き摺る蒼い狼。もちろんいわずもがな、ヴォルケンリッターが一人こと、盾の守護獣・ザフィーラである。非力な少女が鎖を引っ張っているように見えるのは、殆ど形だけ。最近ギンガの相棒的な役割として108部隊に出入りすることの多い勝手知ったる彼が引っ張っているがゆえに、床の上をアストラのぐるぐる簀巻きの身体は前進していくのだ。
いや、行きたくないんですけど。スナック菓子片手にロボアニメでも見てたいんですけど。そんなことは、言ったところで多分一秒とかからず却下される。
「アンスウェラーよぉ」
『なんでしょう』
そろそろ、摩擦で尻がいい感じにひりひりしてきている。そんな中、首元の愛機にアストラは呟いた。
「俺、今回出番こんだけ?」
『そのようです』
──というわけで、待て次回。
(つづく)
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ケインさんのとこに続きます。