二次創作でな。

 
てなわけでがんばって更新するよカーテンコール。
と、無理やりカラ元気ってみる。
 
続きを読むからどうぞー。
 
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「穴が……塞がっている!?」
 輸送機に続くのは、激震。
 ノーヴェを既に放出し、空戦可能な二人をそれに付随させたがためにその機体を伴い護る者はなく。
 管制を担当するストームレイダーがいかに優れた処理演算能力、照準性能を持っていようとも、高々防空用に備え付けられた機銃二基程度で、迫りくるガジェットの大群に正面から突っ込んでいくことはまるきり、自殺行為そのものであるに決まっている。
 そこをまかり通ることができたのは散発的とはいえ艦上からディエチの撃ちこんでくれる支援砲撃と、機体を操縦する二人──特にストームレイダーが主である青年、首都防衛隊エースたる烈火の将すら信頼を寄せる腕前の持ち主──の技術が、確かなものであったからに、他ならない。
 天空の道が、ゆりかごに辿り着ける場所。そこから、内部を目指せるポイント。
 つまり、最初の戦闘に際しエースオブエースと砲撃手、両者の力を合わせた一撃によって風穴を穿たれし破損区画。その外装を臨む空域に至近弾の雨の中、小回りのお世辞にも利くものではない輸送機は健在であった。
「……いや、数値をよくみろ。外装温度、装甲厚。微妙にだが違う。ありゃ、応急補修だ。どっちみちこの短期間じゃ、完全のわけがない」
「ですけど!!  それでも一見しただけじゃわかんないくらいにってことは!!」
「ああ。ほぼ同じ材質だろうな」
 けれどコックピットで言い合う二人にできるのは、その場所に運び辿り着くという、そこまでであり。
 開いているはずであった穴。ストライカーたちが身を躍らせるはずであった突入口を覆う、その補修装甲部についてはあるいは冷静に分析しながら、あるいは動揺をしながら、機体を操り撃墜を避け続けるより他になかった。
『──ぶち抜きます』
 どうする、と訊くより先に。カーゴ内から返された、その声を耳にするまで。
「スバル!?」
 驚きが加わりつつも、操縦は誤らない。親友の名を呼び返し、アルトは操縦桿を引く。
『至近距離から、砲撃で撃ち抜いてそのまま突入する。それしかない』
「撃ち抜くたって……この状況でどうやって!?」
 一口に撃ち抜く、砲撃だといっても、この混戦、乱戦状態の空である。
 破壊力を増すには当然必要なチャージタイム、それを十分に確保することなど困難この上極まりなく、もし可能であったとしても肝心のスフィアに流れ弾が直撃しないともかぎらない。
 魔力を凝縮した砲台であるスフィアは言わば、臨界寸前にまで熱しあがったエネルギー炉が剥き出しになったようなもの。正式の手順、術式を踏まずそのような形で暴発することになれば被害を受けるのはその術者に他ならない。仮にそれによって、敵にもダメージを与えられるにせよ。
 その諸刃の刃たる砲撃をスタンドアロンの高速戦闘において比類なきまでに使いこなし、数々の戦術と織り交ぜることによってあくまで主力として確実な戦果をあげ続けた高町なのは一等空尉が他に類を見ないレアケースの戦闘スタイルと称されるのは、そういった面もあるのである。彼女のセンスと、たゆまぬ努力によって身に着けた実力だから、できること。
 確実に。自分は、安全に。奥の手ではなく主力として、戦術のひとつではなく必要な初手として、多用の手として混乱した戦場にて砲撃を扱うのは、その戦闘が空間より面になりがちな陸戦魔導師であればあるほど、空戦魔導師であってもそのように──口で言うより、遥かに困難なことなのだ。
 砲台のスフィアが無防備である。
 高い威力をたたき出すためには、そのチャージタイムに応じ回避などといった移動を捨てねばならない。
 それら安全性をそぎ落とす無数の問題点への対処法のひとつこそがまさに、なのはからスバルへと機動六課時代に伝授された、スフィアを自らの拳で保持・保護しながら放つゼロレンジでの砲撃なのだが──……。
「ゆりかごの外壁を撃ち抜くんだよ!? そんな威力、ゼロレンジからじゃ少し制御が狂っても……!!」
『やれるよ。大丈夫』
 だがアルトの心配も余所に、スバルの声ははっきりと彼女の意志を表明し、宣誓し。そして、求める。
『ヴァイス陸曹。アルト。カーゴハッチ、オープンお願いします』
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
 
第三十二話 Strikers
 
 
 細い光が、徐々に厚みを増していく。
 ハッチが、開き口を広げていく様はもう、ノーヴェが一足先にそこから出て行くときに見た。
「……ってわけだからごめん、ギン姉。ティアのことはお願い」
 その差し込んでくる白さが、自らの身体をゆっくりと照らし始める。
 足元から。膝。腰を通過して、明色に染めて──やがて、握った拳へと。
「あたしと、マッハキャリバーと。レイジングハートとで、まず突入のための穴を開ける」
 だから、先頭で行く。
 告げるスバルに、同じく日の光に照らし出される姉妹も仲間たちも、小さく頷いた。
 エリオと、キャロと。ギンガと、ティアナと。
 ウイングロード上に高速移動を駆使できる者が、そうでない者を取り残していかぬよう、互いに肩を組み合い、二組のチームを作って。
『I control Bombardment. You must concentrate on the fixation of the orbit.(マッハキャリバー。砲撃の魔力制御は私がやります、貴女はウイングロードの軌道固定に専念を)』
 それら一様に照らされる面々の中にあって、鋼の拳の中に座する彼女の輝きは一層眩しく。
『Don’t worry(了解しました)』
 紅く、煌いている。鉄拳の手甲。そこに三つ並んだ宝玉、それそのものとなり、言葉のたびに深紅を明滅させながら。
 黄金の縁取りも鮮やかに描き加えられたその装備と一体となり、本来の主、その教え子たるスバルと愛機・マッハキャリバーに電子音声を奏でる。
Subaru,all right?(わかっていますね、スバル。『アレ』は──……)』
「うん。最大、三発が限度……だね? わかってる、心配しないで」
 開ききったハッチからは、殆ど眼前というほどにゆりかごが一面を埋め尽くす光景が広がる。
 右へ、左へ。
 零の姉妹と、星の相棒と。雷の二人へ、それぞれスバルは振り返り、頷いた。
 頷かれた側も、頷き返した。
エクセリオンバスター……スタンバイ」
 直後。まっすぐに──ウイングロードが、ゆりかごへと伸びた。
 ギアエクセリオンの、雄々しくも高らかな声とともに。
「三発中のまず一発目……!! こじ開けるよ、二人とも……!!」
 飛び出した彼女の身を包むスターズスタイルの衣は、その至る所にそれまで以上の力を示すがごとく、黄金の色を散りばめ、師の象徴たる桜のラインを一条、通していた。
 
*   *   *
 
 バインドに、囚われている。身動きのひとつさえ、とりようもなく。
 ここが。この状況が──仮に現実であろうと、なかろうと。なのはは、痛みを感じている。苦悶に、苛まれ続けている。
 同時にまた、その姿を見られ続けても、いる。
 自分自身に。
 そう、消えることのない、無数の「過去の自分」たちの視線によって、射抜かれる時間はけっして終わりを見せることはなく。
「だめだよ、眠っちゃうなんて」
「……っは……」
 気を失うことも、許されない。それははたまた、なのはが既に気を失った、そこに生じた幻影ゆえなのかもしれなくはあったけれども。
 頭を、垂れさせてはもらえない。顎を細く小さな指先に持ち上げられる。
 その姿を、九歳の自分を見上げさせられる。
「言ったでしょう。わたしたちは、もっと痛かった。あなたの──すべては、あなたの選んだ、道のせいでっ!!」
 強制的に上げさせられ、目線は再度落ちる。
 張られた頬の衝撃に脳が揺れてしまうほど弱りきってしまっている自分の肉体を、どこか冷めているかのように客観的に認識する自分がいた。
 もはや、バリアジャケットなんて身を守ってくれるものはなくて。
 レイジングハートも暗闇の中、どこかにいってしまった。
 長く伸ばした髪は解けて、拘束される四肢も、纏っていた一糸すら、かつての自分たちからの一方的な蹂躙に焼き尽くされ失われていた。
 つまり、全裸。傷だらけの、抵抗のすべなき虐待の後の身体をバインドにまかれながらただ、なのはは晒している。現実か、幻かもわからぬ、自分自身たちに対し。
「──ねぇ」
「うぁ……っ」
 前髪を掴まれ、引っ張り上げられる。それまでとはまた違った鋭い痛みが頭皮を通じ、駆け抜けていく。
「ねえ、教えて? あなたは……わたしたちに何をしてくれた? あなた自身のために、なにをやってきた?」
「え……?」
 既にもう、掠れがちの視界だった。苦痛に顰めずとも、見えるものはぼやけてしか映されない。
 無理矢理引き上げられても、変わらない。ただ……歪み、掠れてなお、それが捉えた。その程度には、視覚は残っていた。
「困っている、だれかのために。自分ができることや、やってあげられること。そんなお題目ばかりで、人のためばかりで。その考えの中に、『わたし』たちはいたの?」
 少女が。つまりは、幼き日の自分が。その瞳に涙を浮かべる様はたしかに──見えていた。
 
*   *   *
 
 グラーフアイゼン、ツェアシュテールングスフォルム。巨大に再構築された、遠心駆動による貫通破壊機構──すなわちドリルを搭載したハンマーヘッドを持つその姿はヴィータの小柄な身体との対比でいうなればあまりに大きく、またあまりに暴力的に一見、過ぎるものだ。
 しかし無論、鉄槌の騎士は使いこなす。自らの肉体の一部と等しいほど自在に。己の全力でではなく、全力の中にそのハンマーそれ自体を包含しているがゆえに。
「っだありゃあああぁぁっ!!」
 融合騎とのユニゾンさえ、そこに加えて。
 二人の騎士の全力こそが、漆黒の竜神を食い止めるには必要不可欠なものに違いなかった。
 太く、荒々しく振るわれる長大な尾部の一撃を真っ向から迎え撃つ。
 愛機のヘッド部にあるドリルの先端で鍔迫り合いにも似た正面からの激突を演じてみせる。
 彼女が竜とのせめぎ合いを繰り広げるその脇を、隙ありとばかりにガジェットの群れが飛び去り防衛線の向こうへの突破を試みる。
「……シグナム!! アギトッ!!」
 ひと時とて神経の緩和を許されない状況に脂汗を頬に伝わらせながら、白衣の守護騎士は仲間に叫ぶ。
 直後通過を果たそうとしていたガジェット群がなぎ払われ火球へと姿を変えたのは、言葉があくまで形式でなかったことの証左。
 烈火の名持つ二人の剣閃が、同じタイミングですべてを撃墜する。
ヴィータッ!!」
 シュランゲフォルム、連接刃となった魔剣が、戻ることなく竜のごとくうねり咆哮し、真竜に襲い掛かる。
「はあああぁっ!!」
 ヴィータを押しつぶさんとする尾を絡めとり、炎を纏い。引き剥がさんとする。
グラーフアイゼンのドリルを、ヴィータは稼動させた。そして将の一撃によっていくぶん和らいだ両腕の重みを──一気に押し切る。
「──ぶっ倒れろ!! ヴォルテール!!」
 流石は真竜と呼ばれるだけのことはある、その硬い皮膚はそれを以ってしても突き破れない。
 だが、ヴィータは動く。アイゼンの先端を竜の尾に伝わせ、滑らせるようにしてその付け根を目指す。
「リイン!! おもいっきりだ!! アイゼン!! ぶちかませ!!」
『はいですっ!!』
 カートリッジのロードと同時、融合し肉体を共有する相手に命ずるのは全力。
 ただし全霊ではない。さすればヴォルテールを討ち取ることは可能であろうが、ヴィータはそれを望まない。
 無傷とは、いかなくとも。この竜は無事に教え子のもとに返さなくてはならないのだから。
「お……おおりゃあああぁぁっ!!」
 だから、全力で食い止める。足を止める。
 リミットブレイクフォルムのアイゼンを振りぬき、竜の持つその巨体を大きくぐらつかせる。
 そこに、炎を帯びた連接刃が豪熱の鞭となり浴びせかけられて、ようやくヴォルテールは崩れ落ちる。
「……!!」
「っとに!! 厄介だよな……っ!!」
 さほどの時間も、黒き巨竜はそのままであってはくれなかったけれど。
「いくぞ、ヴィータ。もう一度だ」
「おう!!」
 ゆらりと転倒した身体を起こし、大顎に伸びる首を持ち上げた竜神へと、二人の騎士は再び挑み、向かっていく。攻勢の手を、休めてはおれない。
「──剣閃烈火!!」
轟天爆砕ッ!!」
 倒されたその姿勢で竜の口蓋は輝きを蓄えはじめている。反撃の。竜の感情に怒りが芽生え始めた、証拠だ。
 もちろんそれに──墜とされるつもりは、毛頭無い。
 
*   *   *
 
「──ふむ」
 そこは、広い場所だった。
 広い、広い。
 いくら巨大であるとはいえゆりかごというたった一艦の内部にあっては、区画としては最大のスペース。
 玉座の間より広いそこには無論、理由がある。
「どうやら、いらしたようですね」
 それは、戦場。そしてここで聖王が打ち倒したその相手に対する、処刑場。
 四方は壁、出入り口は彼の背後と、見据える先の閉ざされた扉、ひとつずつ。一直線でしか、ここは通り抜けることはできない。
 マイアの見ているその壁面に、一筋の線が今、刻まれた。
 直線でなく、歪に。一筋であったものがさまざまな方向に、角度に。壁を走りその数を増していく。
 彼の隣に、ばさりと風圧が舞い起こったのは、同じく来訪者──敵を待ちうけるべく配された竜が、羽ばたいたがため。
 白き竜が、正気なきその瞳で睨みつける。一方でマイアは微笑のままに、睥睨した目線を崩さず時を待つ。
 音を立てて壁の砕け散る、そのときを。
「思ったより早かったですねぇ、元機動六課の──化け物の教え子さんたち?」
 爆音が、鼓膜を切り裂いた。土煙が、飛び散った破片が、視界を覆いつくした。
「ようこそ、ゆりかごへ」
 赤茶と灰の煙の向こうに煌いた深紅の輝きに向かい、マイアは言い放つ。
「──マイア・セドリック准尉」
 ほどなく、言葉は返される。
 紅の光──つまり、その宝玉を埋め込んだ鉄拳の、その持ち主より、はっきりとした声の決意表明となって。
なのはさんを──返してもらいます。返してもらいに、きました」
 現れた影は、五つ。
なのはさんの代わりに。あたしたちが、終わらせます」
 星と、雷と。そして零の異名授かりし五人が、煙る土ぼこり覚めやらぬ中、そこに立っていた。
 
 
(つづく)
 
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