ぎりぎりになりましたけども。

orz6402009-09-17

 
九月二十日、わし23歳になります(いやまじで。ガチ誕生日)。
 
・・・いや、どーでもいいですね、はい。それは置いといて。
九月二十日のリリカルマジカル7、うちは
 
『スペースか25 サークル R-640』
 
で参加します。
 
当日の頒布物は新刊と既刊数種類、それと委託物ですが、
 
新刊はこちら。
 

 
『pain〜羽根の光/the day』
 
中編二本を一冊にまとめて、書き下ろしのエピローグを加えて加筆修正した形ですね。
特にthe dayは執筆から日にちが経っていることもあってわりとおおがかりな修正をしました。
表紙、および『羽根の光』の挿絵担当は「ぱっしょ〜ね☆」のくちびるさん。
『Theday』の挿絵は機動六課勤務日誌でもお世話になったあははさんにお願いしました。
頒布予定価格は五百円。百部ほど用意して待っておりますー。
 
まあ、なんだ。・・・ご祝儀と思って買ってね!!(ぉぃ
ちなみに、自分も寄稿しています、真夏の夜の夢さんの機動六課勤務日誌を当日委託でうちのスペースにて取り扱う予定です。こちらもよろしかったらどうぞー。
 
 
んでは続きを読むからダブルオークロス三話その1更新です。
気がつくとテンペストもいました、みたいな。
 
↓↓↓↓
 
 
 
− − − −
 
 
 
 自分自身への失笑が、漏れた。
「──……テロ組織、か」
 沙慈・クロスロードからの非難には、まるで真っ向からの否定と、返す刀での彼の視野に対する反論を冷厳と浴びせることが出来たというのに。彼には、何も知らないその点を──正面から斬って捨てたにもかかわらず。
「まったく、なのかもしれないな」
 この世界の『外』からきたという。本来の意味での第三者、客観的な立場に立つ者からの視点で見れば、実際そうなのかもしれないな、と思わざるを得なかった。
 世界を統一する。アロウズの論理。
 世界を、変える。ティエリアたちの戦う理由。
 どちらも、この世界における理屈であり、この世界でのみ通用する論法といえばそうなのだろう。まるきりの第三者からすればまさしく……体制と、テログループと。そう断じるより他にない。
 その実感が、セラヴィーのコックピットにてティエリアを失笑させる。
 だが。
「それでも僕らは──当事者だ」
 この世界で。信念のもとに動く、実際に向き合っている者なのだから。
 だから、戦う。
 ロックオンや。クリスティナ・シエラ、リヒテンダール・ツェーリや。幾多の戦乱にて命を落とした者たちが、それぞれに当事者であったように、自分もまた。
 願い持つ、ゆえに戦う。その、当事者。
『射出タイミングを、セラヴィーに譲渡するです』
「了解」
 正当化はしない。客観からの批判は、甘んじて受けよう。それがたしかな、客観的立場から発せられたものであるならば。しかし。
 ロックオンが。彼がそう選んだように、自分もまたそれで戦いをやめるという選択肢を手にとることはない。
「……そうだろう、刹那」
 発進を待つ愛機の内部にて、そうティエリアはひとりごちた。
 向かい側の格納庫で同じく出撃準備を完了させているはずの、誰より戦争根絶を願っている蒼の、ガンダムマイスターに対して。
 
 
Strikers −the number of OO−
Act.3 砲火の世界で (上)
 
 
「この艦を降りる、なんていうんじゃないだろうね」
 ディエチが投げたその言葉は、どうやらスバルの図星を突いたらしい。
 寄りかかっていた壁のバーから、すっくと立ち上がった彼女の、出鼻を挫いた形になる。──時空管理局員の肩書きを持つ一つ下の義妹は、小さく息を呑んでこちらに視線を送ってくる。
 嘱託しか資格としては保持していないディエチに比べれば、それはたしかに彼女の判断はプロの立場から発せられたものだろう。
 平和を。安定を守り続ける、その魁の者としての。
「ディエチ。……反対なの?」
 しかしディエチは、首を横に振り、また縦に振る。
 スバルの、その立場からの判断に。そして、反対か否かを問う、彼女の声に。
 テロ組織の艦──どのような世界であれそれは乱を生み出す渦の、まさしく真っ只中にあって然るものだ。
 そんなところに、いられない。姉妹たちを置いてはおけない。正論としても、感情論としてもたしかにそれは理解できる思考ではあるけれど、少なくとも今このときに関しては、ディエチは素直にそれに、同意しかねた。
 自分が最年長の、姉妹の一番上として。そうあらねばならないこのときには、だ。
「降りて、どうするの。あたしたちはあまりに、この世界のことを知らなすぎる。それこそ──彼らがどうして戦っているのか、さえ」
「手段としてのテロを、認めるっていうの」
 違う。それは──それは、過去の自分たちを正当化すること。そうじゃ、ない。
 目的のための手段が絶対に正しいものだとは、言わないし、思わない。
「そうじゃない。あてもなく出て行ったとして、どうにかなるもんじゃないってこと」
「だけど!」
 ただ、彼らに対する評価をその一点に集約していいのか。そこから、自分たちの行動を決めるのが正しいのか。
 少なくとも自分たちを助けてくれた彼らがただひたすらに意志を世界に押し付ける、暴君的なテロリズムの体現者であるようにはディエチには思えない。
 この世界がどういう場所かを知って。彼らが更にどういった影響を世界に及ぼしていて、どう扱われて。そしてそれを認識して。その上で動くくらいの時間や慎重さは必要でないかとは、思うのだ。
 見ず知らずの世界の、見ず知らずの者たちに対する礼儀としても。
 自分たち姉妹の、今後の指針を決めていく上でも。
「だけど……それじゃあ、ノーヴェもディエチも、せっかくうちの家族になって……平和に暮らしてて……なのに……」
 スバルが、局員として断じるなら。この場での一番上の姉として、ディエチは思う。
「スバルの気持ちは嬉しいよ。ほんと。だけど」
 だけど──彼らの理由も、自分たちはまだ知らない。
「知ってからでも、遅くはないと思う」
 俄かに、艦が揺れた。
 おそらくは戦闘速度だ──スピードを上げていく艦を、彼女らは実感する。
「まずはこの場を生き残ってから……ね」
 

 
 ここには、花がある。
『ディードちゃん、ディードちゃん。こっちのお花はなんていうですか?』
「それはね、アネモネよ。テンペスト
 光も。草も。飛び交う、蝶もこの箱庭には存在している。
 まるでそう──自分たちが日常暮らしているあの、聖王教会のように。
リボンズの考えとは別に、僕もきみたちには興味がある。それはもう、おおいにね」
 ここはそんな、庭園。双子の妹が、掌サイズの赤毛の少女とともに花々と戯れている。
 その光景を見下ろしながら。オットーは眼前の、眼鏡をかけた少年と向き合っている。
リジェネ・レジェッタ。……行く当てもなかった、右も左もわからない僕らを拾ってくれたきみたちには感謝しているよ」
 いつしか、自分たちがいた世界。名前だけは知人である聖王陛下の母である女性、その出身地と同じ管理外世界・地球。だが決定的に何かが違っている、そんな場所。
 オットーの知る限りの知識では、この管理外世界は……同じ名前持つ星・地球は。宇宙に進出する技術などまだ発展途上であったはずだ。
 今、自分たちのいるここは、それとは明確に異なっている。
 天井の向こう側には、広大に広がる宇宙があり。オットーたちのいる足場は、地球のものでなく。また、その地球も軌道エレベーターと呼ばれる設備に周囲を囲まれている。
 時間に、ズレが生じたのか。それとも、そもそもが異なる世界として存在する『地球』なのか。それはわからない。
 だが、たしかなことは自分や、ディードや。ともにいたテンペストが、この世界に転移してきた。その点は間違いようのない事実。そして──『あの二人』も。
「けれど、そういう風に言われるのはあまり好きじゃない。僕らは、珍獣じゃないんだ」
「れっきとした人間だと──そういうことだね? いいさ、気をつけよう。済まなかったね?」
「いや、わかってくれればいいんだ」
 口ではなんとでも言える──大して変化のない好奇と興味の交じり合った、それでいてどこか優越を抱いているような眼鏡の奥の瞳に思いつつ、返す。
 善意なんかではない。自分たちを拾ったのも。ここで寝食を与えているのも。着ているこの服を、あつらえたのも。すべては彼らに、なんらかの目的があってのことだと、その態度から容易に想像がつく。
「少なくともリボンズたちよりはずっと僕は、きみたちに親しみを持っているつもりなんだけれどな」
「──だと、いいね」
「きみにも。あそこにいる、きみの妹や、かわいらしい電子の妖精にもね」
 警戒心を、オットーは隠せなかった。
 すっと、椅子から腰をあげ、歩を前に進める。ゆっくりと、庭園に向かう段を降りていく。
「そろそろ部屋に戻るよ」
「ああ。ゆっくり休むといい──ああ、そうそう」
 休ませて、もらうさ。この監視の目光る、外部の者からすれば一見カモフラージュされた牢獄にも似た、きみたちの居城でね。
 靴底が、芝生を踏む。
「例の二人、今日付けでアロウズに配属されたよ。協力を感謝すると、リボンズが」
「そう」
『あ、オットーにいさまー』
 花の絨毯の上にスカートを広げて腰掛けるディードの膝から、テンペストが手を振ってくる。
 テンペストキャリバー。本来は姉であるノーヴェの愛機として開発されつつも、種々の事情からユニゾンバイスのボディを借りる形で小さな少女として活動することになった赤毛の幼子。彼女を巻き込んでしまって、申し訳なくも思う。
「ディード」
 自分は、彼女たちを守らなくてはいけない。
 この、世界で。
 別行動をとるといってISを駆使し消えた姉・セインが戻ってくるまで。
 この世界から──願わくばそうならないことを祈りたいが、今は庇護をしてくれているリジェネたち、『イノベイター』の手から。
 姉として。兄として。
「オットー兄さま」
 今、彼女はすべてを失っているのだから。
 振り返り無垢に微笑んだ、ディードの。その転移の際にだろうか、欠落し失われた記憶が、戻るまでは。
 双子の姉でもなく。彼女がそう認識する、双子の兄として、自分が守っていかなくてはいけない。
「戻ろう、ディード。もういい時間だ。テンペストも」
「はい、兄さま」
 イノベイターたちのそれを模した、下半身だけがスカートの服装で、ディードが立ち上がる。その手をとって、オットーは彼女をひっぱってやる。
 今はただの女の子である、妹の、手を。
 引くと同時、ポケットをまさぐった。
 ──ツインブレイズ。シスター・シャッハの愛機を参考に追加された待機モードの形状で、ディードの愛機がそこに眠っている。
 まだ、これはディードには返せない。……まだ。
「紅茶、淹れるよ。ミルクがいい、レモンがいい?」
 セインだけでなく、ほかの姉妹たちはどうしているだろう。もしもこの世界にきているのならば、どうにかして連絡はとりあえないだろうか。
 言いながら、少なくともあと二人存在する、セインでもなく自分たちでもない来訪者にオットーは想いを馳せた。
 

 
「中尉、そろそろ機体に向かわねば、出撃が迫っています」
「わかっている」
 ソーマ・ピーリスは、早足に歩く。
 本来、自分の機体であるアヘッドに搭乗するためではない。待機所すら後に向かうのは、反対側に位置するもうひとつのハンガー待機所。
「同僚となる相手だ、挨拶のひとつもしておかないわけにもいくまい。それに──特機ともあれば、連携も複雑になる。そういったことも必要だ」
 その打ち合わせをする、というにはあまりに時間が押している。
 すでにこちらの管制はソレスタルビーイングの艦をキャッチしている。出撃までもう幾許もないというのに。大体言葉を交わすくらいなら、いくらでも機体コックピットにある通信機で事足りる。すべては言い訳、理由付けにもならない理由でしかない。
 ──あの、羽つきと。二機のパイロットが誰なのか見極める。
 渦を巻いていた本心は結局、そこにつきる。
 ちらと視線を向け、歩みを止めることなく見上げる。
 屹立する二機のMS。かつてのそれらに比べ暗色系でまとめられた印象の強いカラーリングの、ガンダムが二体。
 ガンダムキュリオス・ブリッツ。ガンダムナドレ・スティンガー。指揮官であるカティ・マネキン大佐より事前に与えられた資料では、そのような名称であるとのことだった。
 だが、それがなんだというのだ。鹵獲した機体が高性能だった。だから改修して、使う。今でこそアヘッドというより性能の高いMSがあるにせよ、これらの機体は五年前の時点で、それだけのものを持っていたのだ。
 技術屋ならば、いじりたくもなるだろう。上層部なら、投入してみたくもなろう。大いに結構。
 ただ、かつて矛を交えた彼女だからこそ、羽つきガンダムの本来のパイロットを知っているからこそ、今どのような者がその機体に乗っているかが気になる。
 知ってどうなるというものでないのは重々承知。
 かつてのガンダムたちは強かった。その強さは忌むべき敵であったと同時に、戦いを重ねその末に打ち破った、自分にとっての矜持でもある。
 彼らの強さを。自分やスミルノフ大佐、多くの散っていった兵たちの誇りを汚すような者であったならば、自分はそれを認めない。認めて、なるものか。
「──失礼する」
 その感情は、兵器として生きること──超兵としての本質に立ち戻ることを誓った彼女自身に対し矛盾するほどに生臭いものではあったけれど。
 彼女自身それに気付いていない。ただ、その感情に従う。
 スライドドアが、開いた。
「先任の、ソーマ・ピーリス中尉だ。着任されたかの二機のパイロットはおられるか」
 そして。その内側にあった大小二つの影が、彼女へと振り返った。
 
(つづく)
 
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