更新ー。

 
さ、更新したら一次創作の追い込みだ(`・ω・´)
 
公募ガイドも眺めて純文学系の賞も物色しつつ。
賞とは別に原稿送って見てもらうのもしてくれるとこはしてくれるんだなぁ、とけっこう目から鱗中。
まあ、実際に出版に到るかってーとその場合自費出版がメインになるようですが。
まあんな金ないし見てもらうだけ送って見て貰おうかしらー。アドバイスください的に。
 
続きを読むからカーテンコール最新話どうぞー。
 
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 よほどに鋭敏な聴覚持つ者であったならば、その瞬間それを研ぎ澄ませていれば聞こえていたかもしれない。
 吹いたその風の中にあった、呟きを。
 吹き抜けた戦域の最外周、そこに咲いた爆発の花の轟音の中にも、もしかすると耳に出来たのだろう。
 花咲く爆炎は、ひとつ、ふたつ。更に増えて。ガジェットが、飛行型の傀儡兵を、その種子として。
 風過ぎ去りしその道を、彩っていく。
 ──ティアナ。ディード。微かに紡がれた発声の音色と。
 そして、軌跡に散る黄金の残滓、その粒とともに。
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
 
第三十八話 向かい風の中で 1
 
 
 おかしい。……ギンガの意識が感じ取るのは、そのような感触。
 相手は、ナンバーズの二番目。隠密行動をその投入の主体とされてきたとはいえ、初期ロットであるがゆえの改良と実戦の蓄積は、一筋縄というものではないはず。だから、警戒をしていた。なのに。
 ──なのに、手ごたえがなさすぎる。
「ブリッツ」
『──There is no biological reaction. It is a machine.(生体反応、なし。機械です)』
 両腕。両脚が、だらりと垂れ下がっている。それら四つ、肘と膝。関節はすべて、ギンガの放った打突に砕かれて。
 その頭部は、リボルバーナックルを装着したギンガの左拳に握られる。
 みしみしと骨格よりの音を、立てながら。それでもなおその『二番』はひと言も発することなく。
 まさか。疑念とともに愛機に命じたスキャニングの結果は、まさしく予感のとおりであり。
「このナンバー2も……模造品。だったら──……」
 本物はどこに、と考える暇もあればこそ。
「!!」
 関節を粉砕され微動だにできぬはずの『それ』が、軋みをあげながら僅かに挙動をする。ほんの微かであったそれは一瞬後には既に全身に。
 肘を。膝をあらぬ方向にぶらつかせ、顔面を握り拘束するギンガへと、抱きつくような素振りで不意をつかんと襲いかかる。
「これは……っ!!」
 無論、そのような苦し紛れの断末魔、つけ入られるギンガではない。
 戦闘機人──いや、その肉体を模した人型機械が覆い被さり、動きを阻害するより早く、利き腕の渾身を以って垂れ下がるその機体を投げ捨て叩きつける。
 そして、跳躍。地面を転がり無造作に投げ出されたその頭部に向かい、正拳を振り下ろす。
 今度は、拘束など。捕獲など考えず。砕く。圧力と破壊力をして、潰す。
 床面にヒビを刻み、体重の乗った拳に圧砕され。不快な金属音とともに、破片が、内部機械がオイル塗れのそれをゆりかごの中に散らした。
 すぐさま、跳び退く。予感に従い、距離をとる。
 ──直後。聴覚が失われた。
「自爆……やっぱり……っ」
 砕け散った頭部を追うように、熱量と光とを突如に増したボディが、周囲全てを続かせんというばかりの猛烈な爆炎を上げ、内部より破裂したがため。
 ギンガの呟きのとおり、それは自爆という行為以外のなにものでもなかった。
『sir』
「問題ないわ。ありがとう、ブリッツキャリバー」
 この距離なら。気付いて、よかった。
 薄く張ったシールドを打つ、四散した細かな金属パーツの飛礫が乾いた音を立てる。すべてはギンガ自身になんら影響を与えることなく、軽く眼前に弾かれている。
 すべて。そう、すべて、ギンガの前に立ちはだかった者たちは、ただの機械でしかなかった。
「だとしたら、どこに」
 指揮者として、本物だと思われた、ナンバー2でさえも。だったらその本物は果たして、どこにいるというのか。
 艦内──は考えにくい。隠密・奇襲型ならばゆりかご内部には既に大量に、ステルス機能を備えたガジェット四型が搭載されている。それだけで止められるこちらではないにしろ、マイア・セドリックといい、フリードといい。戦力は多く投入され結果として分散させられているのは事実なのだから。
 まさか、スバルを? いや。仮にも王を相手は名乗っているのだ、良くも悪くもこちらは見下されている。ただひとりであれば真っ向から叩き潰そうとするはず。単身挑もうとする相手にわざわざ迎撃戦力として貴重な戦闘機人をまわすだろうか。
「……だったら」
 内ではない。ならば──……残るは、外しかない。
「まさかっ!?」
 導き出された帰結に、思わずギンガは高い天井の頭上を見上げた。
 その向こう側では、戦っている。
 ギンガと同じく、妹たちが。
 やはりギンガと同じく──こちらは正真正銘、本物の。戦闘機人を、相手に。
 
*   *   *
 
「……なぜだ」
 手数の差は、増える一方だった。
 増えるだけ、増えて。うんざりしてくるくらいに、たくさん。でもただ、それだけ。『増えた』だけだった。
「なぜだ……なぜだなぜだなぜだなぜだああっ!?」
 理由は、簡単だ。
 こちらが、撃っていない。ティアナが、手をだしていないから。だから、一方的に増える。相手の放つ射撃の数、だけは。
「……問題ないわね、クロスミラージュ」
 出していない、とはいっても。手を動かしていないわけではない。動かしているからこそ、魔力弾を生成し続ける男の、耳障りな叫びがここに今、あるのだから。
 引き金を引かずともティアナの両腕は、休みなく動いている。残念ながら、汗ひとつとしてかいてはいないから、碌な運動というわけにもいっていないが。
 ティアナは、左右の腕を振るい続ける。ただ、撃ち落とすために。
『of-course(当然です)』
 降り注ぐ、全ての光弾を。愛機の銃身を、あるいは銃床を駆使し、ひとつ残らず叩き落とす。
「ほんとに、ぬるいわね。……自称『天才』さん?」
 機体で、そのまま。弾く。撃墜する。ダガーモードの刃なんて、必要ない。反撃や迎撃のための魔力なんて、もっと必要ない。
 すべてに、反応し続けるだけ。そして少しずつ、一歩ずつ、それらを放ち続ける男に向かい距離を詰めていく。ひどく簡単で──ティアナの言どおりの、生ぬるい作業。もはやそれは、戦闘ではない。
 こんあことが、もうどれくらい続いただろうか。だが如何せん、ティアナもそろそろこの『天才』とやらの無駄な努力に付き合ってやるのに、些か飽き飽きしていた。
「馬鹿な……馬鹿な、馬鹿なあっ!!」
 やがて気付けば、眼前には狼狽する男の、痩せぎすな体躯が待っていた。
 師と同期であるという魔導師を前にただ、冷ややかな目をティアナは向ける。
「天才、ね。凡人に、なに防がれてるわけ?」
 後方の上空より、誘導弾迫る中。
 もう──愛機に頼ることすら、不要。おそらくは不意を衝くつもりであったろうそれを、ティアナは振り返ることも仰ぎ見ることもなく、魔力を通した拳に鷲掴みに捕らえ、そして握り潰す。
「な……っ!!」
「しかも、全部。ほんと馬鹿馬鹿しい」
 なにが、天才だか。
 掌のうちに消滅させた魔力弾の残滓が、蒸気となって右手の内側より立ち上る。
 こんな──自称『天才』に、なのはさんは嵌められたのか。こんな、相手に。
 冗談じゃあ、ない。こんなやつが、エースオブエースを墜としたなどと、誇るなぞ。
「──フェイクシルエット」
 断じて、ゆるせるものか。燻っていた苛立ちに、その感情が怒りという炎を灯していったことをティアナは実感する。
 幻影、四つ。瞬時に生み出した、ティアナ自身と同じ姿かたちの実体なき幻が、男を取り囲む。
 どこにももう、逃げ場はない。あの人はしかし、男に同様の孤立無援の状態に追い込まれようとも、ひとり立ち向かった。
 同じく、四対一であったとしても。
「言っとくけどね」
 騙し討ちへの、怒り。右拳へとその激情が、魔力とともに集約されていく。
 まだ実際には一対一であるぶん──ましと思え。
なのはさんは、こんなもんじゃないわよ」
振りかぶったのは、四人。男の顔面にその拳を、真正面からたたきこんだのは、正面に立つ本物のティアナ、ただひとり。
 男は、ガードも回避も出来ず、鼻骨から鈍い音をさせ、吹っ飛び転がっていく。そして、倒れ臥す。
「まず、スバルの分。入れたわよ」
 それを、追う。一歩一歩、魔力弾の嵐の中を進んだときと同じように、ゆっくりと。
 男は顔をあげ、「ひぃ」と小さく悲鳴をあげながら。立ち上がることさえもできぬまま泡を食ったように、あとずさっていく。
 同時に。放出したまま空中に放置されていたいくつかの魔力弾が、男の下に集まっていく。やがてそれは、ひとつに。男に寄り添うように、浮遊する。
「フェイトさんの分ももちろん、やらせてもらうから」
 反撃か。多少は魔導師としての性が残っているらしい──思いつつ、ベスト裏のホルスターへとティアナは愛機を固定ししまいこむ。
 ひと呼吸のち、詠唱。円形のミッド式魔法陣を、足元に輝かせて。
「雷や電気が使えないのが、残念だけれど」
 師が、親友。現在の上司である女性のもとで身につけた、ティアナにとっては三つめの純粋な砲撃魔法。執務官志望であった兄の無念も、添えて。
「ブレイズスマッシャー」
 眼前に生み出したスフィアより撃ち放ったそれが、飛来する魔力弾の集合を飲み込み、押し流していく。
 勢いは、止まらない。非殺傷設定の噴流は男をもまたその破壊力の内側に捉え、着弾する。
 爆発と。それに煽られ舞い上がり地面に叩きつけられる魔導師の姿とを、ティアナは無感動に俯瞰する。
 その手には既に、ホルスターから引き抜いた愛機が握られていて。
「ひっ!!」
 バインド。男の四肢を、十字架に架けられた罪人のごとく拘束する。
「クロスミラージュ。サードモード」
『All right, blaze mode,set up』
 目の前の裏切り者には、もう逃げようもない。静かにティアナは、愛機へと第三形態への変形を命じる。
「馬鹿な……私は……天才で……なのに……なぜこんな凡人が……凡人がああっ!!」
「あたしが知るわけないでしょ。勘違いの天才さん」
 ひと回り大型の拳銃の形状へと。変形が完了する。左右の手にしたそれら二つを前後にかさねあわせ──ロック。前部のグリップが折れ収納され、スコープがせり出す。“形態を使い分ける”。砲撃の不得手な自分のためにと機動六課在りし日に師が用意してくれたそれは、サードモードたるブレイズ、その砲撃戦対応形態。射撃戦仕様のガンズシフトに対応するその名も、ブレイズモード・カノンシフト。
「──それと。最後にこれは、あたしと、なのはさん自身の分」
 通常形態よりも伸びたその銃身の先は、まっすぐに撃つべき男へと向かい伸びている。
 その、先端。銃口に、一粒の光が生まれたのが、はじまりだった。
「まだまだ練習中で、とてもじゃないけど実戦レベルなんてもんじゃないけど」
 星が、輝く。その輝きが、集まってゆく。
 ティアナのもとへ。ブレイズモードのクロスミラージュ、そこにある新たな星の煌きへ。
 部屋中に漂っていた魔力の残滓が光となって、彼女らのもとに集っていく。
「でも、それで十分。あんたには、あたしの半端な星の輝きでも、十分すぎるくらい」
 集った光は、ひとつに。膨れ上がったそれは紛うことなく、エースオブエースが代名詞。目を見開いた、囚われの男も。それを放とうとしているティアナも十二分に知っている、それは。
『starlight breaker』
 それは──星々さえも砕く、その輝き。
 
*   *   *
 
 痛みが、身体を。脳を貫いている。
 蹴りを。渾身の一撃を──突き刺した、はずだった。
 強大な姉への、乾坤一擲の一撃。必中の隙。必中のタイミングを妹たちとともに生み出して、そこに叩き込んだ。
 いや、それすらも。叩き込んだ、はずだった。完遂に、辿り着けなかった。そういうことになってしまう。
 この苦痛は。脇腹と背中を起源とする、この激痛は。その証左に他ならないのだから。
「が……っ」
 呻きをあげるのは、本来ならば眼下に見下ろす、姉のほうであったはずだというのに。
 あちらは、避け切れるはずがなかった。防ぐ暇などない、その瞬間。渾身の魔力と威力とを右足に込め、浴びせた──そのままであれば、浴びせられたのに。
「どこ……か、ら」
 突き刺さっているのは、自分のほう。
 苦悶の声とともに搾り出した呼吸が、息苦しさに満ちている。
 右の脇腹と、後背とに、めり込んでいるから。
 激しい戦闘により破損した艦体装甲、その一部であったろう極太の無骨な鋼鉄材が。
 何処よりか飛来し、ノーヴェの肉体に吸い込まれるようにして、垂直に打ち据えていたがために。
 ノーヴェの一撃は姉が顔面へと届く直前に、空中に縫い付けられ止まってしまっている。だからすべては、「はず」という未遂でしか、なくなった。
「ノーヴェッ!!」
「ノーヴェ姉さまっ!!」
 ぐらりと、傾き。そしてゆっくりと艦上に落下をしていく。人ひとり分ほどの高さからの落着にかかる時間など、殆どない。
 あわせ、全身へと漲り燃え盛るがごとく循環をしていた深紅の魔力の熱さが、すっと冷めていく。炎のようですらあった湧き上がる魔力が、苦痛に苛まれる肉体から、抜け落ちていくのが、ノーヴェ自身にも、声を上げたウェンディたちにもはっきりと認識できた。
 どさり、と。受身も取れずノーヴェは全身で艦上の固い装甲材を打つ。
 生じた隙に、頑強な物体で鋭利に打ち据える。それはごくシンプルであるがゆえ、十二分な運動エネルギーさえ乗せられていれば」破壊力としては申し分のないものとなる。──そして、ノーヴェに向かい飛来したそれらもまた、そういった類の凶器に他ならなかった。
「だれ、が……っ、どこ、か、ら」
 直前までは見下ろしていた姉より俯瞰され、ノーヴェは立ち上がることすらままならず目の前の足場を指先で掻く。その手の動きすら、苦痛と。急所を撃たれたことにより自由とならない呼吸の喘ぎとに、小刻みに痙攣をする。
 頭をあげるのが、やっと。持ち上げた意識で──その声を、耳にするのが。
「──下の子たちも、なかなかやるようだけれど。周囲が少しばかり、お留守のようねぇ」
「っ……!?」
 それは。眼前のトーレからのものではない。背後から。そして。
「ディード!!」
 同じく放たれたウェンディの声に、精一杯の力で首を曲げる。それだけで懸命となりながらも、振り返る。双方は、同じ方向からノーヴェの鼓膜に届いていた。
 どうしたと、いうのだ。ディードが。ディードに、なにがあった。
「……な」
 そのディードは、自失としたように、状況が飲み込めていないような表情をしていた。
 ノーヴェの置かれたそれが、ではない。自分自身、ディード自身が、今。そのように姉であるウェンディから叫びを向けられた、その理由を、だ。
「さすが、クアットロのIS。使い出があるわね、助かるわ」
 彼女の背後に、もう一人。少し離れたウェンディでない女性が、立っている。
 そのことも。おそらくはその意味も解せぬまま、ぐらりと、黒髪の少女は前のめりに傾いていく。その両手から、愛機であるツインブレイズが、零れ落ちていく。
 ナンバー2.ドゥーエ。倒れたディードの、その後方に、そう認識される顔が彼女を、見下ろしていた。
「ディードッ!!」
 指先の鉤爪──ピアッシングネイルは、紅に染まり。
 十文字に切り裂かれたディードの背中が、その赤の正体を雄弁に物語っていた。
 ディードの背に刻まれた十字の傷もまた、溢れ出る赤の色に、染め上げられていたから。
 
(つづく)
 
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