ほぼ完治したけど

 
咳だけ止まりません。げふり。
今回は久々、the number of OOの更新だよー。
 
・まずは
夏コミ参加情報から。
 
 新刊も出しますが、合同誌にも参加しますー。毎度おなじみ、真夏の夜の夢さんより刊行されます、機動六課勤務日誌5に一本、作品を寄稿していますー。
裏表紙はこちら。
 
 みなさま、よかったらわしの作品よりいろんな方の作品目当てで手に取ってみてくだされー。
 
web拍手レスっ
 
>たぶん半年ぶりくらいのコメントになります。イヒダリ彰人です。現在、カーテンコールを楽しく読ませてもらっています。――あ、完結おめでとうございます。同人誌化も楽しみにしています。――で、カーテンコールの第十六話を読んでいて気になるところがありました。それはオットーの代名詞が『彼』になっていたことです。オットーは女性なので『彼女』とするのが正しい表記です。お節介かもしれませんが、気になったので指摘しておきます。それでは。
あー、うん。それ、意図的です。設定上たしかにオットーは女性ですが、作品中でどちらとも明示されていない、というのと重ねて、どっちつかずにしてます。
 
さ、それでは続きを読むからthe number of OO第七話、Aパート。
前回分はこちら
 
どうぞー。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
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 いてもたっても、いられなかった。
 ピーリス中尉がMIA──それも、ガンダムとの戦闘で、だなんて。
 わたしはもう、こんな風に側からだれかを失いたくない。奪った者たちに鉄槌を下したい。そのために、アロウズに入ったというのに。
 また、なのか? また、失ってしまうのか? なにも、できず。
「待つんだ、准尉!」
 義手である左の手首を掴まれ、振りほどくようにルイスはそうした相手へと振り返る。
 アンドレイ・スミルノフ少尉。わたしよりも彼女の部下として、付き合いは長いはずなのに。止めるなんて、そんな。
「放してください! ピーリス中尉の捜索に……っ!」
「一体何の騒ぎだ」
 洋上を航行する空母の、MSハンガー。そこでルイスが起こした小さな騒ぎに、顔を見せたのは──この船の、主。所属部隊部隊長である、
マネキン大佐
「何の騒ぎかと聞いている。ハレヴィ准尉だったな」
「おねがいです! ピーリス中尉の捜索を、私たちにも──……」
「ダメだな」
「そんなっ!」
 懇願への回答は、にべにもない。マネキンは踵を返し、軍靴を鳴らして。取り付く島もなくそこを立ち去ろうとする。
 ルイスの立場では、知る由もない。
 マネキンが捜索隊編成に一度は動こうとしたことも。
 上意下達に従い、その行おうとしていた動きを、正規軍であり旧知の、セルゲイ・スミルノフへと委ねなければならなかったことも。
 ソーマ・ピーリスの後見人である軍人はマネキンを責めることはなかった。
 ゆえに今なお、ここにあって指揮官の心中には慙愧と後悔とが燻っている。
「でしたら。私たちが捜索に向かいます」
「──なに?」
 その、歩みを止める。振り返るのは一斉。カティ・マネキンも、ルイス・ハレヴィも等しくそちらを見る。
「私たちにはライセンスがあります。捜索に向かう分には、なにも問題はないはずですが」
 大小、ふたつの影がそれを言う。
「あなたは、さっきの」
 その大きいほうの声はルイスには、聞き覚えがあった。
 そうだ、先ほどの戦闘でルイスを助け、そして撤退を命じたあの機体。ガンダムの──……、
「自己紹介、まだだったわね。ギンガ。ギンガ・ナカジマ。キュリオス『ブリッツ』の操縦をしています」
 その人物が、ずっと小柄なもう一方の相手とともに、まるでルイスへの加勢に、加わるように。
「同じく、チンク・ナカジマ。──それで、あまり時間はないのだろう? 日が落ちきる前に出発したほうがいい。我々のブリッツとスティンガーを出す。それで問題なかろう?」
 小柄な。幼女といっていいくらいの軍服が、銀髪を揺らし言う。
 この二人が、ガンダムパイロット。忌むべき敵──でなく、味方の。
 彼女たちが、申し出てくれている。ピーリス中尉の捜索を。任せろ、と。
「しかし」
 アンドレイが、言いよどむ。しかし──無言にマネキンは、やはりこちらを向くことなく一歩を踏み出して。
「──明朝までに、本艦は補給船との合流ポイントに到達しておかねばならん」
 このまま、ここにはいない。捜索に出て行ったところで、待ってやるつもりもない。
 はじめはそう、上から押さえつけるように。
「座標だけは頭に叩き込んでおけ」
 しかし──最後のひと言は、黙認。それ以外の解釈は、この場にはきっと不適。
「じゃあ……」
 ルイスは、上官より返された予想外の言葉に、目を見開いた。
 ぽんと、肩を叩かれ振り返る。深い色をした長い髪のライセンサー……ギンガ・ナカジマが、微笑している。
「途中で燃料切れで落ちても、助けはよこさんぞ」
 特にジンクスの二人。……わかっているな?
 ちらと向けられた視線は、きつく釘をさして、けれど最後の一瞬──不敵の色に染まっていた。
「いっていい」と。そう、許しが出た瞬間だった。
 ぱっと、気が軽くなったのが、ルイスもまた自分自身、理解できた。直後、感謝の言葉を吐き出したのも、違いなく。
 
 
Strikers −the number of OO−
 
Act.7 Can't you see that you are sweet?(上)
 
 
 ダブルオーは今、動かない。
「イアンにすぐこちらに向かってもらってくれ。修理を」
『ええ、もう行ってくれてるはずよ。セラヴィーとケルディムも補給が終わり次第、出てもらう。だから大丈夫』
 それゆえ、刹那の意識は焦れる。モニターの向こう側、──格納庫の備え付けモニターで、ブリッジのフェルト・グレイスへと話しながら。
『それに──……』
「それに?」
「待たせたな、刹那」
 彼女たちが、手伝ってくれるって。──淡い色の髪をした同年代の少女の言葉が、ドアをスライドさせて入ってきたイアンのそれに、重なり消える。
 待っていた。目線だけで通信機の向こうに合図を送り、あちらも頷く。通信を切るのには、それで十分だった。
 そして、振り返って。
「イアン、すぐにダブルオーの修理を──……?」
 予期していたものとは別にふたつ、人物像がイアンのうしろについてきていることに気付く。
沙慈・クロスロード? それに」
「ディエチ。ディエチ・ナカジマ。……って、もう憶えてた?」
 重苦しい表情の青年と、後ろ髪を結んだ少女。
 二人を尻目に、イアンはすぐさま、修理用ロボット・カレルへの指示をパネルに打ち込んでいく。
「修理、手伝うよ。この世界のメカはよくしらないけど、もともと機械いじりは嫌いじゃないし」
 力仕事ならそれ以上に、役に立てるだろうし、ね。
「いいのか」
 言う彼女と、黙りこくる彼に刹那は、問いを向ける。
「……カタロンの人たちが無事に脱出できるまでは、なんでもするよ」
 沙慈からは、覇気なくそんな応えが投げ返されて。
「妹たちが手伝ってる間、自分だけぼうっとしてるっていうのも、ね」
 少女は、そう言って肩を竦めた。
 ──妹、たち?

「本当にいいのか、スバル・ナカジマ。協力には感謝するが」
 言って、ティエリアは愛機・セラヴィーのメインカメラをその掌へと向け、拡大する。
 そこには、白衣の少女。頷くその仕草が、愛機の網膜へと捉えられている。
『うん。人命救助は、あたしの本職だから。それが誰とか、関係ないよ』
 同じようにカタパルトの後方、発進と補給の完了を待つケルディムの掌中には、赤毛の少女も、また。
『それに、知りたいんだ。もっと、あなたたちのこと』
「我々の?」
『ううん、もっと。この世界のことや。あなたたちがこの世界でなにをやって、なにをしようとしてるのか、とか』
 両者の申し出は意外ではあったが、しかし──……、
『だから、探しながら聞かせて。──手伝う、から』
「──わかった。重ねて、感謝する。……掴まっていろ」
 しかし実際、ありがたい。
 ティエリアは操縦桿のレバーを押し込む。
「セラヴィー、発進します」
 加速。セラヴィーが、発進をしていく。
 本来ならその掌に着の身着のまま乗っていて、耐えられるものではない。
 だが、少女はそこにいる。いられるのも、これが──少女たちが、この世界のものでないからなのか。
「ん……雨、か」
 夜空に躍り出た機体を打つ雨露に、ティエリアは気付く。
「濡れるぞ。大丈夫か」
『平気』
 けれど言った少女を覆うように、彼は少女を乗せた愛機の片腕を、より機体の側へと寄せた。

「やあ。午後のお茶かい? 随分ときみはのんびりできているようで、羨ましいね」
 オットーの両手には、カップと、ティーポットの載せられたトレーがあった。
 対する少年の手には──いや、その着衣はそれまでと、まるきり異なる様相を、見せていて。
「それを言うなら、きみのほうこそ随分──かしこまった格好だね。リジェネ・レジェッタ。どこか、出かけるのかい?」
 皮肉に、皮肉で返す。
 オットーも今袖を通している、ゆったりとした、画一的な服装でない彼に。
 上下とも、スリーピースのスーツ。似合ってはいるが見慣れない彼の衣装への、それはオットーの率直な感想でもあった。
「ああ、今仕立てが仕上がったところでね。試着の最中さ。すぐ必要になるからね」
「そう」
 鳩が鳴くように、喉を鳴らして笑う彼に、オットーは連れない。
「用がそれだけなら、僕は行くよ。ディードに淹れたせっかくのお茶が、冷めてしまう」
「まあ待ちなよ。……なに、きみたち『兄妹』を、誘おうと思ってね」
 警戒心はまだ、解いてはいない。
 眼前の、眼鏡の少年に対してだけではない。彼ら『イノベイター』と名乗る者たち、すべてに対してだ。
「誘う?」
「そう。もっと親睦を深めて、打ち解けてほしくてね。どうだい? 三日後にリボンズが僕らをちょっとしたパーティーに連れて行ってくれる。きみたちもよければ」
「興味ないな」
 きっぱり、拒絶する。
 そして、立ち去ろうとする。──だがここまであからさまに邪険に扱ってなお、少年の声はどこか人を食ったように、軽く。
「まあ、そう言わずに考えてみてほしいね。案外きみの妹も、喜んでくれるかもしれないじゃないか」
 大体、だ。
「──……一応、伝える。考えてもおく。それでいいだろう」
 親睦を深めたいのも。打ち解けてほしいというのも。
 それは果たして善意ゆえか? それとも、『彼らにとって、彼らの都合のために』懐柔したいだけではないのか?
 心中、反論しつつオットーはリジェネにすれ違う。
「ああ、十分だ」
 異世界よりの来訪者たちよ。──その声と、立ち去る気配とを、背後に感じながら。
 オットーもまた、そこを立ち去る。
 
(つづく)
 
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