二回ほど。

 
 詳しい内容には触れませんが個人的には大満足。無茶苦茶おもしろかったー。
 フェルトが超ヒロインしててめっちゃ俺得だったし(そこかい
 
 
 ささ、そんな勢いでthe number of OOを更新ー。
 640は刹フェル派です。
 640は刹フェル派です(大事なことなので二回言いました
 
 でわ続きを読むからどうぞー。
 
 
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 フェルトのことを、探していた。
 マリーとの一連のやりとりには他ならぬアレルヤもその場に居合わせたのだし、その責任があるとも自分自身だとアレルヤは、思っていたから。
「──そうか。あの子が、な」
 けっして、スペースの限られた艦内においてフェルトの行きそうなところというのは多くはない。
 自室にはまだ、戻っていなかった。となると──……、
「僕が、無神経すぎたんです。フェルトにとってマリーは……いや、『ソーマ・ピーリス』は」
「そう自分を責めるな」
「イアン」
 しかし彼女の姿は、なかなか見つからず。艦内を彷徨っているうち、旧来彼女の保護者がわりでもある整備士と出くわした。
 だから今は互い、コーヒーを片手に話をしている。
「なにもロックオンの存在の比重が大きかったのは、フェルトだけじゃない。ティエリアも、刹那も。うちの、トレミーの若い連中はみんなそうだろう」
 アレルヤ、お前も。イアンの口調は言外に、そう言いたげだった。
「それにな、わしはいい傾向なんじゃないかって思ってるがな」
「え?」
 フェルトを幼い頃より見守ってきたメカニックは、言う。
「男親の勝手な見解かもしれんが。そうやって感情を表に、あの子もきちんと出せるようになった。そういうことだろう」
 かも、しれない。──思いたい。それがアレルヤの、実感だった。
 
 
Strikers −the number of OO−
 
Act.8 めぐりあい (下)
 
 
 背中を押してくれたのは、赤毛と蒼髪の、異邦人の姉妹たちだった。
「……あ、ありがとう」
 スバル・ナカジマに、ノーヴェ・ナカジマ。苗字で呼ぼうとするとどちらも、「下の名前でいい」と返してくれたふたりのおかげ。
 彼女らが、勧めてくれた。
 悩んでいること。辛いこと。あるのなら、立場の近いと思える相手に相談してみるのも、手だと。
「こんなものしかなくて、すまないが」
「う、ううん。十分」
 言われてみて。なぜだろう、真っ先にフェルトの頭に浮かんだのはたった今目の前で、湯気のたつコーヒーを渡してくれた、刹那だった。
「なにか、あったのか」
「──え?」
「用があったんだろう」
「……うん」
 彼の口調は要点だけで、淡々としている。こういうところははじめてあった頃から全然、変わっていない。
「あの、ね」
 受け取ったカップを、両掌に包み込むように、握る。
 インスタントだけれど、それでもしっかりとコーヒー独特の香ばしい匂いが同時、鼻腔を擽った。
 その、湯気の動きに──自分の迷いを。逡巡を、フェルトは重ねる。
「パーファシーさんのこと。ソーマ・ピーリスだった彼女のこと、刹那は、どう思う?」
アレルヤの連れてきた……ああ」
「私。……わたし、ひどいこと言っちゃった。彼女にも、アレルヤにも」
 言うこと自体に少し、勇気が必要だった。
 呆れられるだろうか。軽蔑、されるだろうか。それとも、同調してくれるだろうか。そのどれもが、想像するだに少し、怖くって。
 五年前。主のいなくなったデュナメスの前でともに、ロックオンのことを想った彼がそのいずれかを選んでももしかすると、フェルトはやりきれなかったかもしれない。
「ロックオンのこと、か?」
「……うん。彼や、クリスや、リヒティや」
 あるいはトレミーの医師であった、モレノさんの、こと。
 今の彼女が、『マリー・パーファシー』であり、『ソーマ・ピーリス』でない。そんなこと、わかりきっているのに。直接彼らに手を下したのが彼女でないことも、知っているというのに。
 責任を、転嫁してしまった。
 自分たちのほうこそ──五年前の武力介入で多くの悲しみを生み出してしまった側だというにも、かかわらず。そう言い返されたとしてもしょうがないのに。無神経だったのだと、思う。
「その感情自体は、けっして間違ってはいないと思うがな」
「……え?」
 彼はフェルトの腰掛けたベッドに、隣り合い腰を下ろした。ちょうどふたり、並んだような形になる。
「悪かったとも、思えているんだろう。なら次は言葉にすれば、いいんじゃないか」
「刹那……」
「俺は、そう思う」
「そう。──そう、だね」
 フェルトは彼を、見上げる。
 彼は間近からその視線で、フェルトを見下ろしている。
 持ち上げた目線と、彼の目線とが交差して。ふとフェルトは気付く。実感する。
 それはあまりにも今更なこと。彼がトレミーへと帰ってきたばかりの頃に思い、やがていつの間にか当たり前になっていた感覚。
「ありがとう。……ねえ、刹那」
「?」
 出会ったばかりの頃。主を失ったデュナメスの前でロックオンをふたり、想ったときだって。五年前はそこまで、大きな差じゃなかったのに。
 そうだ、今彼は、自分を見下ろしている。
 男性の。ずっと大きな体格で。そのことを思い出し──ふっと、口許が綻んだ。また、気付くことが出来た。
「大きくなったね、刹那」
「……なんだ、突然」
「ううん。すごく、大きくなったよ。すごく」
 そのことがなんだか、無性に嬉しかった。
 考える時間がほしくって、スバルたちにアドバイスされて。彼の元を今訪れて、よかったと思う。
「変なことを……」
「そんなこと、ないよ」
 彼の示してくれたとおりに。きちんと、謝ってこよう。
 

 
「……迷ってる?」
 不意に言われ、ティエリアは顔を上げた。
 工具を差し出しているディエチ・ナカジマは微笑している。
「なぜ、そう言える」
「出てるよ、顔に」
 ──ほんとうに?
「なんてね。……内側に思ってること、溜め込む性質でしょ? あたしもそういうとこあるから、わかるよ。なんとなく」
 最初は聞き流していたはずだったのに、いつからか彼女の語る言葉に耳を傾けながら作業をしていた。
 かつて右も左もわからぬまま、彼女らが罪を犯したこと。
 スバルや、父親や。姉と出会い、新たな世界を知り新たな道を、歩み始めたこと。
 なにも、知らなかった。ロックオンに導かれるまで、知ろうともしなかった。その意味では自分と彼女らとはどこか、似ている部分があるのかもしれない。そう、思いながら。
「そうやって出会った世界が、あたしは大好き」
 父や、姉妹たちとともに生きる世界が。
「だからね。他の誰かにとって同じように一生懸命歩める世界があるなら、その世界のこともあたしは知りたいと思う。好きになってみたい」
 自分にとって大好きな世界に、妹たちと戻るためにも。
 他の誰かにとって大切な世界を理解して、そこでできる最善をして、帰る道を探したい。
「……前向きなんだな、きみは」
「どうかな。ぼんやりしてるし、無愛想だって、自分では思ってるけど」
「いや。正直、羨ましく思う」
 そういう、前に進む強さも必要なのかもしれない。ティエリアはそう思った。もう、少女のことを鬱陶しくは思わなかった。
ティエリアや、この艦の人たちが一生懸命なのは、わかるから」
 それがいいのかわるいのかは、たぶんあたしたちが評価することじゃないと思う。ディエチはそう言う。
「──約一時間後」
「え?」
「一時間後に、エージェントからの定時通信と、ブリーフィングがある」
 以前の自分ならば、考えられないことだろうな──思いながらティエリアは、少女を受け容れつつある自分を自覚する。
 その部分に立脚した言葉を投げかける。
 ……ああ、間違いなく、眉を顰めたり、マイスターとしての資質そのものに非難を加えていただろう。秘匿義務、守秘義務を、口をすっぱくして。
「皆には僕から話をしておく。……少しでも、情報がほしいだろう。データとしても、判断材料としても。妹たちと一緒に参加するといい」
ティエリア
「──……我武者羅に、歩んでみるさ」
 

 
 大丈夫かなあいつ、とノーヴェが言って、ゆえにスバルは振り返った。
「フェルトのこと?」
「……おう。つーかもうお前、呼び捨てなのな」
「えー。だって殆ど、同年代じゃん」
 ノーヴェのいうあいつというのが、フェルト・グレイスのことだとスバルにもすぐにわかった。
 彼女は、泣いていた。相談する相手がうまく、見つかればいいのだけれど。
 どうしたってスバルたちは部外者だし、異邦人だから。そう思ってのアドバイスだったけれども、うまくいっているといい。
「んで。お前のほうはこれからどうすんだよ?」
「──ノーヴェってさ」
「あん?」
「ほんと、面倒見いいよね。我が妹ながら」
「……んだよ、それ」
 ノーヴェは少し戸惑い気味に、ぷいとそっぽを向く。
 うん。自慢の、あたしの妹だ。スバルはひとり、うんうんと頷く。
「気になってる人が、いるんだ」
「もうひとり、だろ?」
「うん」
 廊下の突き当たりの、右側の部屋。そこに、彼はいる。
 なぜだか、いる人。此この艦のクルーどはないというのに、まるでそれはスバルたちが異物として存在しているのと同じように。
沙慈・クロスロードさん。沙慈さん? ……沙慈、かな?」
「だから、本人に許可くらいとってからにしろっての」
 そのインターフォンを、スバルは押した。
 あまり気分の冴えているとは言いがたい表情の青年が応対するのは、すぐだった。
 
(つづく)
 
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