スレに投下した話、微妙に構成ミスった臭い。

プロットと微妙にズレてる・・・orz
 
 
で。
ここにのっける話なんですが。
うpろだだと流れちゃうから、てのがひとつあるんですよ。
スレに投下するのは向かないんだろうけど、
流れちゃって読めない人とかがいたら嫌だなぁ、てのもあるわけで。
一応「forget me not」については加筆版はすべて完成しているのですが、
ろだを使わない理由はそんなところにあったり。
というわけで二話目どうぞ↓。スレ投下版の第三〜四回分になります。
 
 
魔法少女リリカルなのは −forget-me-not−

第二回 少女の衣と、心は黒く
 
放課後の学校というものは、いつもどこだって喧騒に包まれているものだ。
帰宅の途につく者、掃除当番の不平を漏らす者。
あるいは着替えや準備を終えてグラウンドへと向かい、クラブ活動に精を出す者もいる。
そしてそれらは互いに混ざり合い、学校という多数の人間の生活する場所に
一種のカオスとも言える煩雑とした状態を生み出す要因となっている。
 
「……とと」
 
高町なのはもまた、その中の一人。
雑然とした状況の教室をあとにしようと、
アリサ、すずかの親友二人組と会話をはずませながら鞄に荷物をつめている最中だった。
うっかり滑らせそうになった掌の教科書を、ずり落ちそうになりながらも鞄へと押し込む。
 
「なのは、早くしなさいよー」
「わ、待ってよー」
 
アリサの急かす声に呼応するように、手際よく鞄へと教科書を放り込んでいく。
机の引き出しの中を覗いて、もう一度忘れ物がないかどうかチェック。
うん、なにもない。忘れ物、なし。
帰る準備、オーケー。お弁当箱の入った巾着も持った。
 
「ごめん、お待た……」
 
『────許さない────』
 
「せ……?」
 
心の中に直接響いてきた、少女らしき声。その声になのはの動きがぴたりと止まる。
 
(え?何これ、念話……?)
 
気のせいでなく、それはたしかに聞こえてきた。
声がはっきりと、伝わってきた。
だれかがなのはに直接放った、呪詛のような念に満ちた声が。
耳ではなく、その思念へとまっすぐに。
 
「?なのはちゃん、どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
「そう?」
「ほらほら、行くわよ。塾の時間、迫ってるんだから」
 
『───消えろ───』
「!?」
 
また。まただ。一体、どこから。
今度こそ間違いない。幼くも、ひどく冷たい少女の声。
再び脳裏に聞こえた少女の声に、振り返るなのは。
───しかし、そこには誰もいなかった。
 
「……?」
 
そう。
まさしく、「だれもいなかった」のだ。
いるべき人間、その全てが。あれほどまでに騒がしかった子供達、一人一人が。
喧騒に包まれていた教室の音源であったクラスメイトたち、全てが。
一人残らず、まるで神隠しにあったかのように消失していた。
 
「──え?」
 
余りに現実離れしたできごとに、思考回路が一旦ストップする。
結界とも違う。
ジュエルシードを集めているときでさえも、このようなことが起きることはなかった。
 
「あ!?まさかっ!?」
 
なのはの予感は当たった。
隣にいたはずのすずかも。既に教室からでていたアリサの姿も、消えていた。
なのはにとって大切な二人の親友。彼女達も例外ではなかった。
 
「そんな!?」
 
いてもたってもいられず、廊下に貼られている「廊下は歩いて」と書かれた張り紙も無視してなのはは走り出す。
最上階から一つ一つ、全ての教室を見て回る。閉まっている引き戸は、乱暴に引き開けて。
だが、それでもやはり、誰一人発見することはできず仕舞いだった。
ただ苦手な運動を続けたことによる疲労と呼吸の乱れ、そして誰もいないことによる寂しさが残るだけに終わる。
更に彼女もまたよく知る独特の発動音、魔力の流れを伴って、周囲の空気が一変していく。
外界と今、自分がいるこの場所が隔絶されていくことがはっきりとわかった。
 
「結界!?」
 
今度は結界に相違なかった。
空の色が空気の色が濁った暗色に染まり、息苦しさを覚える。
今結界が発生したということはこの異様な状況は、人為的なもの。
そして皆が消えたのは、結界によって人払いが為される前のこと。
なんらかの思惟の働いた魔法によって皆が消されたのであろうことを、なのはは悟った。
 
(……でも、どうして───……?)
『───来なさい、レイジングハート───』
「!!」
 
そうだ、この声。
きっとこの声に、なにか原因があるに違いない。
この状況を作り出している結界の主が、この声の聞こえる先にいる。
 
レイジングハート、お願い!!」
 
瞬間的にバリアジャケットに換装し、自らの愛杖を手にすると、
休むことなくなのはは声、思念を感じる方向の校庭へと走った。
きっとそこに何か手がかりがある、そう信じて。
 
*    *    *
 
彼女が辿り着いたその場所は、大きく変貌していた。
校庭は、異様なまでに強力な魔力によって満ち溢れていて。
踏み出した瞬間、なにか背中に冷たいものをあてられたように身体が強張っていくのがわかる。
 
「これ……?」
 
否。ただ、強力なだけではない。
冷たく、どこか恐ろしささえ感じさせる。そんな魔力によって支配された空間。
それが、なのはの現在いる場所だった。
 
(ユーノ君。……ユーノ君、お願い。聞こえたら返事をして)
 
目を閉じ、家にいるはずのユーノへの念話を試みる。
しかし、その呼びかけに対するユーノの返事はない。
 
(やっぱり、だめか……)
 
ここに来るまでの短い間に数度、試みてはいる。
しかし、結界の効果かはたまた何かによって阻害されているのか、
未だ彼との交信には成功していない。あるいは──……、
 
(ユーノ君にも、何かあったんじゃ……?)
『───来たわね、レイジングハート
 
また、この声。なのはは念話への集中を解き、思念を感じたほうへと杖を構える。
構えずにはいられないほど、その声のトーンには肌寒さを感じさせるものがあった。
 
『───そして、その主』
「──え!?」
 
──そこには、少女がいた。
薄く黒い衣をまとった、銀色の長い髪の少女がただ一人。
特に感じようと意識を集中しなくてもわかるほどに強大無比な魔力を、その身に従えて。
その幼い姿とは裏腹に、彼女がこの空間の支配者であるということは一目瞭然であった。
 
「あなた、なの……?」
 
なのはの問いに、少女は答えない。
 
「あなたがこんなことをしたの!?」
 
矢継ぎ早に浴びせられる質問に、返答はない。
ただ、少女が問いかけるなのはへと向けるのは。
 
「どうして!?答えて!!」
 
憎悪の宿った悲しげな目と。
 
「ッ!?」
 
凄まじいまでの魔力の込められた右腕だった。
 
『───レイジングハート。あなたと主の大切なもの、みんな消してあげる。あなたが私にそうしたように……』
 
少女が言うのと同時に、彼女の右腕が発光し。
なのはの視界が、光に包まれた。