右ゼーット!!で笑い死ぬかと思いました。

なにやってんすか水木一郎
あけましておめでとうございます。
 
さて、正月ssですよ。
・・・っていっても一話に収める予定がプロットが広がりすぎて
数話分になっちゃいましたが。
ってことでまあ、正月休み中に書き終わればいいなあ、ってことで。
ひとまず今日は第一話を。
 

 
  
「明後日一月一日元旦、朝十時に八束神社の鳥居前にいること」
 
久々に顔を合わせた金髪の少女は、やってくるなり有無を言わさずそう命じた。
びしりと突き出された指先を、少年はぽかんと見つめ返す。
 
「……は?」
「絶対だからね。一秒でも遅れたら、私が許さないから」
 
なんで?という表情を顔に出す暇ももらえずに。
一方的に言うだけ言って、フェイトはさっさと行ってしまった。
 
司書室の扉が閉まる音の後には、両腕に資料を抱えたままの姿勢で唖然と硬直する、一人の少年の姿だけが残される。
 
「……ああ、そうか」
 
しばらく立ちっぱなしでいて、ようやく彼は呟いた。
 
そういえば地球の日本時間では、もう年末なのだな、と。
ユーノに把握することができたのは、せいぜいがそのくらいのことであった。
彼女が勝手に自分の休暇申請を出していたことを知るに及び、彼はやっとフェイトが本気であると認識した。
 
 
魔法少女リリカルなのはA’s to strikers
 
〜二人だけの初詣〜
 
第一話 フェイトの悪巧み
 
 
フェイトが「その事実」を聞いたのは、年の瀬も迫った、年末。
12月の28日のことであった。
 
「それ、本当!?」
 
もうじき、正式にこのハラオウン家の一員となるエイミィも加わった夕飯の席において。
そのエイミィから聞かされた「彼」の言葉に彼女は素っ頓狂な声をあげ、思わず椅子から立ち上がった。
 
──立ち上がって、家族一同の視線が注がれていることに気付き慌てて座りなおす。
 
「フェイト」
「……あ、ご、ごめんなさい。でも、本当なのそれ」
 
腰を落ち着けて、縮こまりながらももう一度エイミィに問う彼女の心は実際、不満でいっぱいだった。
 
「なのはとはただの幼馴染みだ、なんて」
 
信じられなかった。あの同窓会任務のときに、彼がそんなことを言っていたとは。
なのはもユーノも、鈍感だし奥手であるのは知っていたけれど。
二人の間をずっと見てきたフェイトは、彼と彼女はきっといつか乗り越えていくと思っていたのに。
六年も一緒にいて、互いのことに気付かない。
まして、男であるユーノの口からそんな言葉がでてくるなんて、考えられなかった。
 
「……よし」
「あ、ちょっとフェイト?行儀が──」
 
だから、決めた。
 
「ふみまふぇん」
 
自分の皿の上に残っていた夕飯の食材を、詰め込むように頬張り強引に夕食を済ませ、立ち上がる。
フェイトにはめずらしい無作法に眉を寄せた母に頭を下げ、戻るは自室。
 
気付かないなら、気付かせてやろうじゃないか。
 
多少、強引な手を使ってでも。
あちらは無限書庫の司書長かもしれないが、こちとら伊達に執務官をやっているわけではない。
 
利用できるものを、利用して。
使える人脈を使って。
教えてあげようではないか。
 
「よしっ」
 
まずは、なのはにメールだ。それから、二人の休暇申請。
 
かくして、フェイトの「鈍感な二人をくっつけよう作戦in元旦」はスタートしたのである。
 
*   *   *
 
〜三日後、一月一日・AM 9:30〜
 
「……」
 
──いた、いた。
 
家族への新年のあいさつや、振袖への着替えもそこそこにフェイトは家を出た。
なのは達を呼び出した神社へ、裏手から回り。
鳥居のところからは死角になっている藪から、様子を窺う。
 
もちろん魔力で気付かれないように、バルディッシュを持参し自身の魔力も彼に抑えさせている。
潜入捜査用に最近搭載した、魔力抑制用のフィールドがこんな形で役に立とうとは。
 
『it's ok?』
「うん、まだユーノは来てないね」
 
さらに、首にかかった赤い宝石──レイジングハートの問いに頷く。
 
年末になのはが年を越す形でオーバーホールに出していたのを、執務官権限を使って無理矢理整備スタッフに突貫工事させて昨日受け取ってきたのだ。
やはりなのはのことを一番身近に知る彼女がいるといないとでは、大違いであろうから。
 
「にしてもユーノ、先にこなきゃダメじゃない」
『yes,I think so』
 
女の子を待たせるなんて、いけないぞ。
買ってきたホットの缶コーヒーをすすり、魔力光と同じ桜色の振袖に身を包んだ親友の姿を観察する。
 
正月ということもあり人の往来で賑わう神社に、なのははぽつんと人待ち顔で立っていた。
 
本人は、フェイトのことを待っているつもりだが。
その実、やってくるのはユーノである。
二人が顔を合わせたタイミングを見計らって、行けなくなった旨こちらから連絡を入れるのだ。
 
「完璧……」
「なにが?」
 
某新世界の神のごとく黒い笑みを浮かべて悦に入っていたところで、背後から突然声をかけられた。
違います違います私は○ラなんかじゃありません、なんてわけのわからないうろたえ方をしつつ後ろを振り向くと、そこには───……。
 
「ア、アリサ……」
「なにやってんのよ、こんな神社も人気のないところで」
 
……アリサがいた。やはり正月らしく、着物に身を包んで。
 
「い、いやその。それは」
「あ?あれなのはじゃない」
 
しまった。
 
この計画に傾倒するあまり、彼女やすずか達への根回しを忘れていた。
動揺し、真冬だというのに額に汗をかくフェイト。
 
「ど、どうしてここに……?」
「んあ?ああ。年末、あんたたち忙しそうにしてたじゃない?だから気を使わせちゃいけないなーって思って、今年はすずかと二人で初詣行こうってことになったわけ。で、早くついちゃったからぶらついてたら」
「……私を見つけた、と?」
「yes,I did.で、あんた行かないわけ?なのは待ってるじゃない」
 
……なんてことだ。
このままアリサを出ていかせれば、せっかく練った計画が台無しだ。
 
「……アリサ」
「なによ」
「これには、深い理由がありまして」
「……まあ、でないとそんな明らかに不審者にしか見えない格好してないわよねえ」
 
ちなみに現在のフェイトの服装。
振袖にマフラーはいいとしても、サングラスとニット帽、更にマスクである。
こんなものがぶつぶつ呟きながら、時折マスクをあげて缶コーヒーをすすっているのである。
魔力は消していても姿までは消していないから、不審であることこの上ない。
 
「とりあえず、何も言わずになのはのことはスルーしてくれると嬉しいかな?」
 
かくかくしかじか、と説明している時間はない。
そうこうしているうちに、ユーノとの待ち合わせ時間まであと十五分となってしまった。
 
「あ」
「な、なに?」
「はやてたちが来た」
「ええっ!?」
 
言われて振り向くと、確かに見覚えのある五人+一匹が石段を上ってくるのが見える。
リインフォースも今日は人型サイズでかわいらしい着物を着て髪を結っている。
意外にもシグナムも艶やかな振袖を着て着飾っているではないか。
 
「って違ーう!!」
「!?」
 
そうじゃない。
今重要な点はそこではないのだ。
 
幸い、なのはは今知人らしい巫女さんと話し込んでいて一行に気付いていない。
 
「……行ってくる」
 
缶コーヒーの残りをアリサに渡し、フェイトは風となった。
 
*   *   *
 
「……?」
 
兄の友人が行ってしまってから、ふと感じた違和感と強い風に、なのはは顔をあげた。
 
「あれ、今……」
 
フェイトちゃんの魔力を感じたような。
きょろきょろと周囲を見回して親友の姿を探すが、見つけることはできない。
 
「気のせい?」
 
まあ、そういうこともあるか。
さっさと結論付けて、なのはは再び親友を待つ。
 
時間はまだ十五分もある。自分が、早く来すぎただけなのだ。
 
*   *   *
 
「……えーと?」
 
簡単に、アリサの目の前で起こったことを説明しよう。
 
フェイトに突然、缶コーヒーを持たされたと思ったら。
それを渡してきた彼女は、いきなりスパッツ姿の超薄着に着替えていて。
突風が吹いた次の瞬間には、はやてたち一行を抱えたフェイトが、足元にへたり込んでいた。
 
「ば、ば、バルディッシュ!!久々すぎてソニックフォームの強度調整間違ったでしょ!!風が、風がすごく痛かった!!」
『……sorry』
「「「「「「???」」」」」」
 
黒い斧に向かってフェイトは怒っていた。
急に連れてこられた八神家一同も、目を点にして事態が飲み込めずにいる。
 
「ぶ、ブリッツラッシュが……グキッて……」
『sir!?』
 
なんなんだ、一体。
これはちゃんと、事情を説明させよう。
 
振袖姿に戻った親友に対し、アリサは心からそう思った。