オフセで出したいんだけれども。
文章力やらなにやら色々問題はあるわけですが、
けっこう切実なのは、
俺、表紙絵かけねえorz
ってことなんだよなあorzいやまいったまいった
去年のなのフェスはコピー本だったから自分で挿絵&表紙描きましたけども。
オフセで見て苦しくないような画力はない罠。
いっそもう表紙文字だけでいっかー、なんて。
ひとまず、web拍手レスを。
>good job
ありがとうございます、ほんと毎度毎度読んでくださってる方々には感謝の言葉もないです。
はい。それでは喪失辞書(しつこく使ってくよー)の第三話です。
今回はこの回だけじゃ説明不足な部分が多々ありますが、そこは
徐々に話進むにつれてなんとか、はい。
……言い訳ですね、失礼。つべこべ言わずにうpしますか。
では、どうぞ
↓↓↓↓
静かだった教会内に、爆音が轟く。
それは石造りの古い本殿を揺らし、聖堂の静謐な空気を震わせ。
辺り一帯に強力な魔力を、撒き散らしていく。
その中心部には、火を噴き燃え上がる一軒の建物があった。
燃え盛る離れの一角から、三つの影が草の生えた大地へと降り立つ。
「はやて!!」
「大丈夫だ……主はやてもリインも眠っているだけにすぎん。しかし」
はやてをその腕の中に抱えた、シグナム。
フェイトとシャッハもそれに続き、炎の中から脱出していた。
「迂闊でした。まさかあのロストロギアがはやての魔力で起動してしまうなんて」
崩れ、焼け落ちる館から浮かび上がるのは、一冊の魔導書。
はやての魔力を吸収したそれは、今にも活動を開始しようとしていた。
魔法少女リリカルなのは 〜the lost encyclopedia〜
第三話 烈火の将を越えるもの(上)
「止めるぞ、テスタロッサ」
「ええ」
はやてとリインをシャッハに任せ、二人は立ち上がる。
このままあのロストロギアを放置するわけにはいかない。
幸い、起動したばかりの今ならまだ封印も容易なはずだ。
「敷地内の結界はオートで起動してあります。周囲に被害の出る心配はありません」
「……了解。シャッハさんはアースラに連絡を」
二人同時に、デバイスを起動する。
シグナムは、炎の魔剣・レヴァンティンを。そしてフェイトは左右の腕に、二振りの斧を。
「いくよ、バルディッシュ・ライト。セカンド」
インテリジェントシステムを搭載せぬストレージデバイスの二機は、
無言ながらもその持ち主にコアの部分に当たる宝玉を明滅させて応じる。
『Bogenform』
『『Savourform』』
もっともその性質はストレージというより、シグナムのレヴァンティンに代表されるようなアームドデバイスに近い。
カートリッジシステムこそ積んでいないものの、近接攻撃力に主眼を置いて設計されているからだ。
剣の、刀身と鞘が。戦斧の機体と機体が、それぞれ合体し一つの形状へと変型していく。
魔弾を放つべき、一振りの弓が将の手には握られ。
黄金に輝く大剣が、歴戦の執務官たる少女の掌中に収まる。
「雷鳴……!!」
「……轟炎」
好敵手たる二人の息は、戦友でもあるが故、ひとつ。
ゆるぎない信頼と、互いの強さに対する絶対の自負とが、彼女たちの魔力を纏め上げていく。
「「一閃ッ!!」」
大剣は、稲妻を呼び。鋼鉄の弓は、爆炎を空高く巻き上がらせる。
「ブレイブ!!」
「フェニックス!!」
『『brave phoenix』』
雷の集まった剣の切っ先から溶け出すように現れるは、一羽の巨怪なる鳥。
羽ばたき雄叫びをあげて魔導書を滅さんと飛翔するその身体は、まさに稲妻の化身。
金色に光輝くその巨躯を追い、炎熱を纏った一矢が放たれる。
一足に雷の鳳凰を追い抜いたそれは巨鳥の目前で四散、なおも一層の勢いを増し火炎に雷の鳥を覆い尽くしていく。
そして、その炎が燃え尽きたそこには、雷と炎。
ともに二人の魔力を受けた荒ぶる熱をその体内に取り込んだ、一羽の雄々しき不死鳥が誕生していた。
炎を散らし、雷を迸らせて深紅の不死鳥は駆ける。
「間に合えっ!!」
雷鳴のごとき鳴き声をひとつ響かせて、不死鳥の黄金色の嘴が大きく開かれる。
狙うは他でもない、魔力を放出し続けるロストロギアただひとつ。
溢れ出る魔力をたなびかせ舞う紅き熱き火の鳥は、その身体へとページを開いた魔導の器を一瞬にして飲み込んでいった。
* * *
連結させた二機の柄部分にほど近い排気ダクトが展開し、余剰の魔力とその熱が蒸気となって放出される。
『over heat』
コアとなっている黄色の宝玉が紅く点滅し、これ以上の大出力魔法の行使は不可能である旨、電子音声で告げた。
……なんとか保ってくれたか、といったところだ。
ぎりぎりではあっても自分の魔力に耐えきってくれた二機のデバイスに、フェイトはほっと安堵の息をついた。
「……お疲れ様」
黄金の刀身が消失し、黒光りする柄の部分だけが残る。
本来想定されている出力値も、この魔力に耐えられたというのならば十分発揮可能だろう。
よく、頑張ってくれたと思う。
「やったか?」
舞い上がる土煙の先を、手を翳して埃を遮り見つめるシグナム。
フェイトもまた目を細め、自分たちの攻撃が成功したのかどうかを見極めるべくそちらに目を向ける。
けっして自分たちの力量を過信しているわけではないが、この距離で、二人分の魔力を乗せた一撃を受けたのだ。
おそらくは機能を停止して、転がっている────……、
「!?」
……────はずだった。
だが、薄らいでいった土埃の先には何もなく、魔導書の姿など影も形も見当たらず。
炎と雷の怪鳥によって穿たれた大きな窪みが一つ、その結果として残っているだけ。
「外し……た?」
「いや、そんなはずは」
避けられた、とは考えにくい。
起動間もないロストロギアに、それほどの機動性があるとは思えない。
自分たちの狙いだって、この距離だ。正確であったはずである。
合体させたデバイスを分離させ、戦闘能力に秀でたバルディッシュ・ライトのみをデバイスモードで保持するフェイト。
シグナムもレヴァンティンをシュベルトフォルムへと戻し、周囲の様子を伺い、魔力を探る。
一体、あのロストロギアはどこにいったのだ。
「「!!」」
そして二人同時に、空を見上げる。強く、全てを切り裂くような殺気を孕んだ魔力を感じて。
わずかに雲の漂う空を貫き届いてくるその魔力は、シグナムの知覚に奇妙な既視感を植えつける。
「……え?」
たなびく長い髪は結われておらず、緋の色に染め上げられていた。
まるで、シグナムのそれと本人ですら、見紛うほどに。
「まさか」
その身を包む装束も、烈火の色を鮮やかに発し。
すらりとした肢体は細く、力強さに加え折れそうなほどの繊細さを併せ持つ。
そこにいた存在は、そんな相反する印象を兼ね備えていた。
足首近くまで覆うロングスカートはサイドに入ったスリットの切れ込みにより、
風を受けてはためき続ける。
「……」
一人の女性が、魔導書を手にしていた。
直立不動で彼女は空に聳え立ち、フェイトやシグナムたちを見下ろしている。
ゆっくりと、女性の目が開く。
切れ長の、シグナムによく似た目。
出で立ちだけでなくその顔つきまでもが、彼女はシグナムにそっくりだった。
抜き身の刃のように鋭いシグナムの雰囲気を、わずかに穏やかにしたような気配。
その上には、何者をも近寄らせぬがごとき戦意と殺気に満ちた魔力というヴェールがかぶさっている。
突如として出現したその姿に、見上げる二人も困惑していた。
───それぞれに、性質の違う困惑を。
「……姉様」
「え?」
フェイトのそれは、ただ純粋な戸惑い。
突然の闖入者に対する、敵か味方か。疑念のこもったものであり。
一方のシグナムのそれは───……。
(シグナムが……震えている?それに……姉様、だって!?)
信じ難いものを見た表情。
怯えや驚愕といったものを含んだ、様々な意味を持つ複雑な困惑であった。
「「!!」」
刹那、女性の姿が消える。
瞬く間もない、一瞬のうちに。
「久しぶりね、シグナム。いつ以来かしら」
そして、彼女は背後をとっていた。
フェイトとシグナム、二人の手錬れを相手に、全くその軌道さえ気付かせることなく。
片手には彼女たちが封印せんとしていた魔導書を、
もう片方には、シグナムの首筋へと突きつける剣を手にしてすら、音一つ立てることはなかった。
とっさに背後を振り向き、デバイスを構えるフェイト。
シグナムの顎を、致命の状況の冷や汗が伝っていく。
「……何百年……というところですか」
「シグナム!?」
切っ先をつきつけられた首筋に血を滲ませながらシグナムは応える。
自身を落ち着かせるように目を閉じて、ひとつひとつ言葉を搾り出し、
背後の女性へと感情を抑え逆に問う。
「……生きておられたのですね」
「おかげさまでね。まあ、色々あったからね」
魔導書をしまいこみ、女性は億劫そうに顔にかかった髪を払う。
シグナムは、この女性を知っているのだろうか。
二人のやりとりに躊躇しながらも、フェイトは女性へと自らの手にする黒き鋼の斧を向ける。
「武器を、納めて下さい。その魔導書は管理局によって保護が決定されています。
今ならまだ使用などの罪に問われることはありません。刃を下ろしてください」
極力、刺激しない物言いで説得する。
先程自分たちの後ろを取った動きからして、気の抜ける相手ではない。
そんな彼女を女性は、ちらと横目でねめつけるように見て、小さく溜息をつき剣を下ろす。
ひゅん、という鋭い音が、風を切り裂いて鳴った。
───よかった、わかってくれたか。
話して分かる相手ならば、それに越したことはない。
警戒はまだ解けないが、掌中のバルディッシュ・ライトを下げる。
「だめだ、テスタロッサ!!」
だが、安堵することができたのは、わずか一瞬のことだった。
シグナムの切迫した声にびくりと反応し、女騎士が剣を虚空より取り出した鞘に収めた直後、
「……な?」
彼女の手にある戦斧は、柄の部分で真っ二つに断ち割られ。
鮮血が少女の体から斜めに、噴き出した。
* * *
───太刀筋が、見えなかった。
フェイトの超高速機動に慣らされた、シグナムの目を以ってしても。
「テスタロッサ!!」
少女の白い外套が、彼女自身の胸から溢れ出る紅に染まっていく。
蹲る少女へと、シグナムは思わず叫ぶ。叫んで、彼女を斬り裂いた女騎士を睨みつける。
「だい……ぶ、です……の、くらい……っ」
「……っ!!あなたはっ!!」
シグナムから厳しい目を向けられた騎士は、鞘に収めた剣を片手に、
その程度特にどうということもないといった表情で冷ややかに彼女を見つめ返す。
全てを見透かすような、自分の実力さえも測られているようなその視線に、シグナムは二の句が継げない。
「このくらい、見て判らないの?死ぬほどには斬っていないわ」
「そうではない!!」
「く……ぅ、シグ、ナム……」
鮮血の溢れ出る胸の傷を押さえ、二人を見比べながら呻くように呟くフェイト。
彼女の呻きは、問いかけだ。シグナムに対し、この女のことを知っているのかという。
そしてその上で、彼女は激昂しそうになるシグナムを止めようとしている。
「あなたと話す邪魔をしそうだったから、退いてもらっただけよ。暫く動けないように」
「なっ……!!」
高々、そんなことで。
彼女のことを斬ったというのか。
レヴァンティンを握る右腕に、力がこもりぎりぎりと音を立てる。
一方で視界の隅で額に苦痛の汗を浮かべ首を振るフェイトの警告も理解している。
この女騎士とは戦うな、と。
少女は傷ついた身体で言っている。
カートリッジはまだ充分にあるとはいえ、既にシュツルムファルケンを。
ブレイブフェニックスを練り上げるために、使用しているのだ。
多大な魔力放出と連携のための調節とで多かれ少なかれ、彼女自身にもレヴァンティンにも消耗はある。
それでは、万全で臨まなければこの騎士には勝てないと。
(……わかっている。そのくらい)
お前よりも、遥かに。
この人のことは、だれよりもよく。
それは見えなかった太刀筋が、そして彼女の存在が何者であるかを示す魔力が証明している。
「……私も、あなたに言うことはこの子──テスタロッサと変わりありません」
「ふむ」
「武装を解除し、我々に同行を。その魔導書も渡してください」
向けるのは、剣ではなく掌。
しかしその手を、女騎士がとることはなく。
「嫌だ、といったら?」
「……実力に、訴えることになります」
言った本人が、一番緊張していたのかもしれない。
言われた相手や、見守る二人よりもずっと。
手袋に包まれた両掌はじっとりと汗をかいていた。
「あなた、憶えてないのかしら?実力で、なんて」
「憶えています」
というよりも、彼女の出現で魔導書の、ロストロギアの正体ははっきりした。
そして彼女の実力を、忘れるわけがない。忘れていないからこそ、野放しには出来ない。
「憶えているから、私はあなたを止めねばならない」
「できるかしら、あなたに。私もそれなりに目的がある以上、退けないわよ?」
「止めます」
主たるはやての魔力を奪い。戦友にして好敵手のフェイトを彼女は既に傷つけている。
二人の局員に対して危害を加えた、それだけで武力行使の理由としては充分だ。
その上に彼女は、危険なロストロギアを保持している。
このままにしておくわけにはいかない。
「目的は止めてから、ゆっくり聞かせていただきます……っ!!」
レヴァンティンを、正眼に。
構えたシグナムを見た女騎士は、唇の隅を歪めて微笑んだ。
「そう……いいわ。あなたがどれくらい強くなったか、試験してあげる」
彼女もまた、剣を引き抜いた。
立ち塞がる烈火の将と、相対するべく。
「きなさい」
「……!!」
何百年ぶり、だろうか。
彼女の名を呼ぶのは。
飛び掛り戦端が開かれる中、シグナムは叫んだ。
「わが師……いや、わが姉。レクサス姉様……っ!!」
ぶつかりあった二つの刃が、火花を散らした。
(つづく)
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