はやっぱり。

 
予告が神がかってますな。
特撮板の本スレで予告が全て持っていくというのもわかる。
 
ああもう来週が待ち遠しくてたまんねえ。
 
 
web拍手レスです。
 
>設定GJ!ってかビリーいましたね。もう合体した後の名前もパワーアップした後の名前も忘れましたが………
合体後はブラストグリフォンですな。
フェニックスが三代目になったあたりで自分はコロコロから離れたので強化後はよく知りませんが。
 
 
 
さて。喪失辞書(しつこいね)の第四話でございます。
普段年上のクールキャラな人を誰かの目下に書くのって結構難しいですね。
 
てわけでどうぞ
 
↓↓↓↓
 
 
 
  

 
『───やての魔力により、魔導書は起動。魔導書から現れた騎士と現在、シグナムが交戦中です』
 
ノイズ交じりのシャッハからの通信は切迫していた。
ブリッジにも緊張が伝播し、空気が張り詰めていく。
計器類は既に聖王教会周辺に張られた結界と、その内部で戦闘を続ける二つの魔力反応を捉えていた。
 
『並びに、フェイト執務官が負傷を』
「わかった。すぐ医療班と増援を送る」
「いえ、増援は」
 
フェイトやはやてが動けないというのなら、戦力が必要なはずだ。
だが戦闘と聞いて武装隊の派遣を命じようとしたクロノに、彼女は首を振る。
 
増援はいらない、と。
 
『……中途半端な戦力は、無意味です』
「何?」
 
訝しむクロノから視線を外し、シャッハはモニター外で起こっている戦闘のほうへと顔を向け、言った。
 
『敵は……シグナムでも一騎討ちで互角がやっとの相手です』
 
つまるところ、足手まといにしかならないというわけだ。
 
 
魔法少女リリカルなのは 〜the lost encyclopedia〜
 
第四話 烈火の将を越えるもの(下)
 
 
酷似した二つのシルエットが、重なり。
交差しあっては離れ、距離をとっては接近を繰り返す。
 
色も形もそっくりなそれらは、互いの存在を否定するがごとく、
激しくぶつかり合い互いを攻め立てる。
 
「できるならば、戦いたくはない!!どうか武器を納めてください!!」
 
刃を振るう一方は、烈火の将・シグナム。
愛機・レヴァンティンを手に舞い戦う彼女は戸惑い、迷っていた。
戦わねばならぬ相手。そして戦いたくはない相手と、今こうして刃を交えるということに。
 
「……温い」
「!!」
 
呟きとともに繰り出された一撃は、あまりに疾く。
とても目で追えるものではなかった。
 
間一髪、体勢を崩しながらも上体を仰け反らせてかわす。
実戦の中で培われた勘と経験がなければ、上半身と下半身は分かたれていたことだろう。
肝を冷やしつつも、シグナムは着地する。
 
「甘くなったわね、あなた」
 
彼女と向き合い降り立った女騎士は、無為。
構えもしなければ、呆れたようにシグナムに向かい呟く。
 
「昔の……私が教えたままのあなたならば、躊躇なく刃を向けてきたでしょうに」
「レクサス……姉様」
 
女性は、シグナムにとって師だった。
悠久の時が過ぎ去るその前、失われた遠い過去において。
 
「どうして、あなたがこんな」
「話は私を止めてからじゃなかったの?」
 
それでも、かつての自分であったならば躊躇なく、刃を向けていたことだろう。
師であろうと、敬愛すべき相手であろうと。立ちはだかり、仇なす者であるならば。
 
「刃を引けぬ理由が、おありなのですか!!」
 
打ち下ろされる剣をレヴァンティンで受け止め、必死の思いで問い質す。
ただ斬ることしか知らなかった、それは過去のこと。
今の自分は、違う。
 
話す。伝えるという手段を知っている。しかし。
 
「そうね。でも甘ったれた子に言う必要性はないわ」
「っが……!!」
 
脇腹に、回し蹴りが叩き込まれ。
シグナムは大地を転がっていく。
 
大振りのモーション。見切れたはずの動きを、動揺と躊躇からか避け切れなかった。
 
「戦いなさい、全力で。どんな相手であろうと敵は敵。そう教えたはずよ」
「ぐっ」
 
騎士甲冑越しだというのに、蹴られた脇腹は激しく痛む。
左手で蹴られた場所を押さえながら、片膝をついて女騎士を見上げるシグナム。
 
「情は、刃を鈍らせる。古今東西、戦いに臨む者の常識としてね」
 
切った口の中に血の味が広がる。
やはり、この人には全力でかからねば敵わない。
あちこちに切り傷の入った騎士甲冑と肌が、その証拠。
 
迷いを。躊躇を押さえつけ、シグナムは再び前面に構えなおす。
 
「───レヴァンティン」
『Explosion!!』
 
カートリッジをロード、全身に魔力を漲らせる。やるしか、ない。
 
「それでいいのよ。……ファフニール、カートリッジ・ロード」
『−Explosion−』
 
相対する側もまた、剣の銘を呼び電子音声とともに魔力の弾丸を炸裂させ。
双方の臨戦態勢は整う。
 
緋色と、紅蓮。二つの色を刃に宿らせ、二人の騎士は相手を見据える。
 
「全力で、きなさい」
「っ!!はあああああっ!!」
 
烈火と烈火、二つの燃え上がる炎は、たった二人の観衆の視界さえも、
真っ赤に照らし出していく。
 
*   *   *
 
気が、遠くなっていきそうだった。
はやく帰って横になりたい。ただそれ以外なにも考えられない。
 
「お疲れ様です、高町隊長」
「う、うん。お疲れ様。気をつけて帰ってね」
 
演習の時間をこんなに長く感じたことがあっただろうか。
最後の隊員が分隊室を辞していったのを見送って、なのはは倒れるように自身の執務机へとへたりこむ。
 
キャスターつきの椅子の背が、ぎしりと鳴った。
 
「なんなの……一体、これ……?」
 
机のひんやりとした表面に顔を預けて、自分で感覚を奪っている左手を見つめる。
感覚を奪ってもやはり、吐き気すら感じるほどの不快感は消えなかった。
 
むしろ、時が経つにつれて増してくるようにさえ感じる。
不快感は、次第に不安へと変わり。
どうにも気持ちが落ち着かない。なにか、嫌な事が起こっているような気がする。
 
───と。
 
「ん……ヴィータちゃん?」
 
小さな赤毛の頭が、机に積まれた書類の隙間から見えた気がした。
頭を持ち上げてみると、やっぱりそこには足音を忍ばせてこちらにやってくる、少女の姿があって。
 
「げ、なのは」
「どうしたの?なにかご用?」
 
なのはに声をかけられたヴィータは、まるで悪戯を親に見つけられた子供の表情で、
びくりと後ずさった。そして、だまりこむ。
 
「?」
「べ、別にこれといって用はないけどよ!!シャマルに左腕診てもらってたし……。
 あたしもちょうど仕事早く終わったしさ、どうしてっかなって思って、なんとなく」
「心配してきてくれたんだ?」
「してねーよ!!心配なんて」
 
頬を膨らませてつんとそっぽを向く仕草が、可愛らしい。
つい左腕の痺れも不快感も、忘れてしまう。
 
手を伸ばして頭を撫でてやると、顔を真っ赤にして振りほどき後ずさる辺りも、
その慌てぶりが微笑ましくて頬が緩む。
 
「やめろよっ!!撫でんじゃ……っておい!?」
「へ」
 
首を振り乱す度に三つ編みのお下げが揺れるのが、面白かった。
けれど、当のヴィータはなのはの顔を覗き込むなり、急に不安げな顔つきになり、駆け寄ってきて。
 
「お前、顔真っ青だぞ!?ほんとに大丈夫なのかよっ!?」
「あー……これね」
 
ヴィータのリアクションを見ているのが楽しくて、ついつい気分の悪さも忘れてしまっていた。
ということは、別のことに集中していれば紛れるということか?となのはは心中で首を傾げてみる。
 
「どっか、左腕とか、痛むのか!?」
「そんなんじゃないよ。ほんのちょっと気分が悪いだけだから」
 
それも、ヴィータの顔を見たおかげで大分楽になった。
 
ありがとう、とくしゃくしゃになるくらい頭を撫でてやる。
今度は飛び退くこともなく、顔を赤くして俯くだけだった。
 
「ほんとに……なんでもないんだな?」
「うん。ごめんね?心配かけちゃって」
「だから心配なんてしてないって───……」
 
デスク上の通信機が鳴った。
びくり、と二人揃って突然のことに驚き、顔を見合わせて苦笑する。
 
「はい、こちら第五小隊」
 
通話機を持ち上げて、応対。
既に定時を越えた時間だというのに、何事だろう。
今日の当直は第四小隊のはずだが。
 
発注していた装備でも、届いたのだろうか。
 
『あ、なのはちゃんかい?よかった、まだいてくれたか!!』
「……アレックスさん?どうしました?」
 
しかし予測に反して相手は、親友の乗り組んでいる艦のオペレーターだった。
武装隊に配属されてからはアースラに乗り組むことも少なくなったから、
久々に彼の声を聞いたように思う。
 
『すぐ、来てほしい!!増援が必要なんだ!!』
「───え?」
 
さっと、目の色が変わる。増援?
なのはの様子に、側で見ていたヴィータも、表情を厳しくする。
 
「フェイトちゃんたちになにかあったんですか!?」
 
椅子を跳ね上げ、なのはは立ち上がった。
左腕の不快感、違和感もいつの間にか消えていた。
 
*   *   *
 
力は、互角だった。
 
魔力も、互角。
身体能力においても、それは同じ。
 
「はあああああっ!!」
「おそい」
 
だが、実力が違った。
明らかに小手先であしらわれているというのが戦っている自分自身、よくわかる。
 
「く!!紫電!!」
 
カートリッジを炸裂させ、必殺の一撃を振りかぶる。
 
紫電、一閃」
「一閃ッ!!」
 
───だが、それも眉一つ動かすことなく目の前の騎士は読んでいて。
 
まったく同じ技を以って、迎撃してくる。
 
「ぐ……う、ぅ!!」
 
刃は彼女の頭上で受け止められ、それ以上一ミリたりとも動きはしなかった。
渾身の力を込めようとも、びくともしない。
 
「この程度、なのね」
 
それどころか、押し切られ、打ち払われ。
地面を踵で削りながら、強引に後退させられる。
 
「く……やはり」
「そう思うなら、使わないこと。紫電一閃は私が教えた技。通用すると思った?」
 
シグナムの脳裏に、幼き日々の訓練の様子が、思い出される。
彼女と自分は、同じ目的のために創られ、生まれた。
 
それぞれの主の行く手を切り拓く、剣となるがために。
 
彼女は強く。いつも自分の先を走り。
自分がその刃となるための、目標であり壁であった。
 
「……弱くなったわね、シグナム。どれだけ成長してるかと思ったけれど」
「な……?」
 
剣を肩に乗せ、目を伏せて首を振る女騎士。
まるで、シグナムに失望したかのように。
 
「私と本気でやりあう覚悟はよし。でもそれでは足りない」
 
いや、正確に。失望、しているのだろう。
 
細く開いた冷たい目に射抜かれ、シグナムは息を呑む。
 
「私を斬る、覚悟。それがあなたにはない」
「それは……っ!!」
「だが、私にはある」
 
騎士は、またしても捉え得ぬ速度を以ってシグナムの視界から消える。
 
「レヴァンティン!!」
『Schlangeform』
 
とっさに、身体が反応した。
連接刃形態に剣を可変させ、竜巻のように巻き上げて自身の周囲を守る。
 
後方から横薙ぎに放たれた一刀が、刃の渦に弾かれた。
 
「───というよりも、それが私の目的」
「!?」
 
振り向き、レヴァンティンをシュベルトフォルムに戻す。
たった一撃弾いただけのはずの刀身に、わずかなヒビが入っているのに気付き、
シグナムは目を見開いた。
 
「我が主の望み。それは最後の夜天の王の抹殺。すなわち、あなたたちもその対象」
「主、だと!?」
 
先程封印から解き放たれたばかりで、何をいっている?
動揺を隠せぬシグナムに、彼女は一冊の魔導書を示す。
 
彼女自身がそこから現れた、失われし魔導の器を。
 
「ええ。我が主は、ここにいる」
 
魔導書をしまった彼女は、続ける。
 
「だから、私はあなたを斬る。あなたもその気できなさい」
 
本気の目。本気のなせる威圧感だった。
間違いなくこの人は、自分を斬る気だ。そしてその後には、主たるはやてまでも。
 
「く!!」
『Bogenform』
 
そんなことは、させない。ここで止めなければ。
彼女のことは、自分がこの手で。
 
鋼の弓と化した愛機を構え、シグナムは一矢の狙いを女騎士に定める。
シグナム単独の魔法としては、最大の威力を誇る技。シュツルムファルケン。
 
「……やっぱり、そうくるか」
 
楽しそうに、女騎士は呟いた。
 
*   *   *
 
戦闘の様子を、シャッハの治療を受けるフェイトも見守っていて。
 
精彩を欠くシグナムと、彼女すら軽くあしらう敵の女騎士の戦闘力。
その二つに、彼女は目を奪われていた。
 
(……あのシグナムが、全然攻め込めてない。おまけに、傷一つ)
 
シグナムはあの女騎士を、姉と呼んだ。旧知の間柄なのだろうか。
彼女の動きに切れがないのは、そのためかもしれない。しかし。
 
(それを差し引いても……強い。でも、シュツルムファルケンならあるいは)
 
やれるかもしれない。シュツルムファルケンの威力ならば、かわされなければ。
 
(そのためにも……)
 
自分が早く、あの戦闘に合流しなければ。
前に出て隙をつくることができれば、その分その可能性は上がる。
最悪通用しなくても、多少の隙は生まれるはず。その間に自分が取り押さえてもいい。
 
「シャッハさん、急いでください」
「ええ」
「シグナムを、助けないと……!!」
 
*   *   *

しかし、フェイトの予想もまた、甘く。
 
「なら、私も本気で応えましょう」
「!?」
 
女騎士は、虚空よりもう一振りの剣を呼び出す。
今もなお彼女がその手にしている片刃の剣と、全く同じ形状をしたものを。
 
「!?」
「……ああ。なにを驚いているのかと思ったら。そういえばあなたには見せたこと、なかったわね」
 
左右の手に、一対の剣。
二刀流となった騎士は、笑う。
 
「竜の翼が一枚しかないわけ、ないでしょう?」
 
左右同時に、カートリッジをロードし。
爆発的に女騎士の魔力が膨れあがっていく。
交差させた刃と刃は、紅蓮の炎を纏い赤熱化していく。
 
「そろそろ、終わらせようと思ったから。……いくわよ、シグナム」
「シグナム、撃って!!」
 
その威容に、シグナムは圧倒された。
この人はやはり、私より上なのか。数百年の、悠久の時を経てなお。
 
何が、魔力は。力は互角、だ。
手加減をされていただけではないか。
 
屈辱と戦慄が、シグナムの身を震わせる。
 
「今までのは全部、全力ではなかった……と?」
「あら?私は『斬る覚悟はある』としか言ってなかったわよ?」
 
フェイトの声を耳にしながらも、番えた矢を引く指が、動かない。
力の差を悟った身体が金縛りにあったようになり、筋肉が硬直しきってしまっている。
 
「それが、あなたの最大の一撃なんでしょう?それなら」
 
二振りの剣を、頭上に。
 
「もういいかな、と思って」
 
炎が、天高く燃え上がる。全てを焼き尽くす、紅蓮の劫火が。
 
「爆炎……一閃」
「シグナム!!」
 
それに目を奪われる彼女は、戦友の声に我に返り。
凝り固まった指先の筋肉を、無理矢理にこじ開けて。
 
「う……ああああぁっ!!」
 
振り下ろされる炎の柱めがけ、隼の名を持った一撃を撃ち放った。
 
けっして届かぬことを、わかっていながら。
 
 
(つづく)
 
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