ばれんたいん。

 
らしいですよ?てわけでバレンタインssなぞ書いてみましたよ?
まったく甘くないけどね!!(ぉ
 
んで、まずは拍手レスっ。
 
>お礼ss第三回はもう見れないんですか?
見れますよー。まだ、第三回のままですので。第四回はもう少し待っていただければ。
 
>the day所望者です、催促したみたいですいませんーでも読めて嬉しい。ピンチが多いなフェイトさん。
いえいえ。こちらも年表に書いておいたくせに至りませんで、申し訳ないです。
フェイトに関しては……まあ、はい。気がつくとピンチになってることが(ぉ
 
 
以下、バレンタインss(シュガーレス&99%カカオ並みに甘さゼロ)。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 二月十四日、バレンタインデー。
 
それは女性が大切な者たちに、主に異性に、贈り物を渡す日のことである。
ごくごく一部の世界、辺境の次元たる第97管理外世界、地球においては。
 
「はーい、みんなチョコレートですよー」
「あ、高町教導官。今年もありがとうございます」
 
だが。
 
「はい、お兄ちゃん。それにみんなの分も」
「ああ、すまないな」
「いやー、毎度のことながらこの人数分作るのは結構骨がおれますなー」
「あ、今日はエリオたちのところにも届けなきゃいけないし、早上がりさせてもらうね」
 
その、ほんの辺境に位置する次元の、ほんの一地方に存在する
一風変わった風習は、この時空管理局という巨大な組織において。
 
「はいはーい、押さんと押さんと。ぎょーさん作ってきたからそうそうなくならへんって」
 
その風習を持ち込んだ一握りの人間達の手によって、確かに浸透をはじめていた。
 
 
魔法少女リリカルなのはA’s to strikers
  
〜管理局のセント・バレンタイン〜
 
 
机上に山と積まれたチョコレートの包みに、男達が群がっていく。
時折、甘いものの好きな女性局員が脇からこっそり手を伸ばして包みをひとつ失敬していくけれど、
それはごく疎らな、散発的なものでしかない。
 
まるで砂糖に群がるアリのように我先にとチョコレートに向かっていくのは、大半が男達である。
 
「……やれやれ。毎年毎年、主はやても律儀なことだ」
 
その喧騒を、シグナムも分隊室の隅にある自分の机から眺めていた。
呆れた様子で見つめる彼女だって、しっかりとはやてから渡されたチョコレートを頬張っているのだが。
 
ほどよい甘さで、旨い。
 
「あれ。三尉もチョコレートなんて食べるんですね?」
「ん」
 
丸いトリュフチョコレートを口に放り込んだところで、背中から声をかけられた。
キャスター付きの椅子の背に体重を乗せ、後ろに振り返る。
 
「ああ、ヴァイスか」
「どうも」
 
同僚の男が、そこにいた。
ヴァイス・グランセニック。
既に私服に着替え、スポーツバッグを肩から提げているところからすると、もう帰るところらしい。
 
「はやいな。もう上がりか?」
「ええ、昨日夜勤でしたからね。帰って寝ますよ」
 
夜勤だったという割には元気そうに見えるが。
ヘリのパイロットは身体が資本なわけだから、一日夜勤をこなしたくらいではなんともないのかもしれない。
 
「八神一尉からですか?それ」
「ん?ああ。ひとつ食べてみるか?」
 
箱を差し出してやる。
ヴァイスは、ちょっと考えるそぶりを見せてから、小さく首を横に振った。
遠慮しておく、と。
 
「せっかく三尉が頂いたものなんですから、どうぞ」
「そうか?いいんだぞ、別にひとつくらい」
「いえいえ。それに……」
 
つつつ、と指先を、はやてのチョコレートに群がっている男達の方向に指し示す。
 
「あそこにいる同僚達にも悪いですから」
「なるほどな」
 
律儀なことで。
彼の指差すチョコレート争奪戦の人だかりは、どうやら佳境に突入したようだ。
残りの品を求めて、男達の戦いは一層の激しさを増している。
 
用意したチョコレートがなくなるのも、時間の問題だろう。
 
「でもシグナム三尉、あまり甘いものを食べてるイメージなかったんですがね」
「いや、人並みには食べるさ、私だって甘いものくらい」
 
失礼な。人をなんだと思っている。
 
「むしろヴィータさんやシャマルさんのほうが食べていそうなイメージが」
「ああ、それはそうだろうな」
 
二人とも、甘いものは好きだしな。シグナムもそれには同意する。
ヴィータなどはお菓子の食べすぎでリインフォース共々はやてによく叱られている。
 
あの子たちの場合は加えて、スナック菓子も好物だからというのもあるが。
 
「三尉は作ったりしないんですか?お菓子とか、甘いものとか」
 
そしてふと、ヴァイスが思いついたように言った。
 
一瞬言葉の意味を飲み込めず(それくらいシグナムにとっては意外な言葉であった)、
少し間を置いて言葉を噛み砕いてから、眉を顰めて声を返す。
 
「……するように見えるか?私が」
「まあ、そう返ってくるだろうなとは思いましたけど。なんていうんですか?
ほら、三尉みたいにやらなそうな人ほど、意外とお菓子作りとかが趣味だったり……」
「しない。しないよ、ヴァイス」
 
買い被られているのやら、違うのやら。
そもそもそういうことを言うのなら、「意外」は余計だろう。
少なくとも、食べ物に関しては自分は、食べるほうが専門だ。
 
肩を竦める彼女に、ヴァイスも苦笑いを浮かべる。
頬を掻いて、少々、困った風に。
 
「あー……怒りました?」
「いや。料理できないというのは事実ではあるからな。変えようとも思わんが」
 
家に帰れば、シャマルの……はともかく、はやての旨い食事が待っているのだ。
そんな環境で、自分が覚える必要もあるまい。
 
実感として、シグナムは自分が食事を作るという必要性を感じたことはない。
はやての作ってくれる食事は、十分すぎるくらいに美味しいから。
 
「さて、お前はどうするんだ?」
「そうですねぇ……」
 
チョコレートのバーゲンセール(?)はまだ続いている。
二人が見ていることに気付いたはやてが、手を振ってきた。
返答に、二人揃って軽く手を挙げて返す。
 
「ちょっと頑張ってきますかね」
「おお」
「シグナム三尉が絶賛する、八神一尉のチョコがどんなものか」
 
スポーツバッグを足元に下ろした彼は肩を回し、
首をごきりと鳴らしてストレッチをはじめる。
 
「んじゃ、いってきますわ」
「ああ、武運を祈る」
 
拳骨と拳骨とを合わせて挨拶を交わし、ヴァイスは男達の波の中に消えていった。
 
それを見届けて、シグナムは丸いチョコレートの最後の一つを、口に運んだ。
 
*   *   *
 
「ふう」
 
今日は、いつもとは違った意味で忙しかった。
 
パジャマに着替え、濡れた髪の水分をタオルで拭き取りながらなのははベッドに腰をかける。
 
特に、事件もなく平和ではあったが。
局の勤務時間を終えてなお、今度はバレンタインフェアで大わらわの家の仕事をさっきまで手伝っていたのだ。
前日のチョコ作りによる睡眠不足に加え、
ひたすらレジ打ちと袋詰めを繰り返し、普段あまりやらない作業に随分と疲労している。
 
「今日はもう、はやく寝よう───……あれ?」
 
伸びをしながら言ったところで、机の上にラッピングされたチョコの包みが目に留まる。
 
「なんだろ、これ?なんで残ってるんだろ?」
 
同じ部隊のみんなには、確かに全員分配ったはずなのだけれど。
 
「あれ?」
 
ひとつ、置き忘れていったのだろうか。
かといって今更、どうしよう。
 
「……食べちゃおうかな」
 
リボンをとり、ラッピングをはがす。
ちょうどお風呂から上がって、少しお腹が空いていたのだ。
この時間のカロリー摂取というのが年頃の女の子としてはやや気になるが、
チョコのひとつやふたつなら、許容範囲だろう。
 
「いただきまーす」
 
チョコを口に運ぶ彼女は、きれいさっぱり忘れていた。
 
自分が机の上に置き忘れていたそれは、幼馴染への。
 
今現在、なのはからチョコレートをもらえなかったことに本気で凹んでいる、
とある少年に宛てて製作したものであったということを。
 
「んー、おいしい♪」
 
チョコレートの甘さに頬を綻ばせる彼女は、ユーノのことをすっかり忘れていた。
彼女がそのことを思い出し気付くのは、翌朝のことであった。