好きですか?
俺は好きです(即答)。
てことで四月にはstrikers本編がもう始まろうかというこの時期に見切り発車でレッツ執筆。
時間軸としてはstrikers本編後です(ぉ
ぶっちゃけ月末の漫画版とかで早速矛盾点とか出てきそうでびくびくしてます(ぉ
最悪このssの本編との整合期間、二週間少々という恐れも(死
おまけに今度は本編、2クールときたもんだ。
時間に余裕があるわけです。
ラブやってる余裕も十分に。
本編でユーなのをくっつけられるとその時点でアウトですこの話orz
・・・まあ、strikers本編でユーなのがくっつかなかったらこうなりました、という
仮定、前提の上で読んでいただければ幸いです。
注文多くてごめんなさいorz←最低のss書き
というわけで、どうぞ。
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魔法少女リリカルなのはStrikers −nocturne−
第一話 二人の距離
なのはが、任務中の事故で重傷を負った。
はじめに聞いたときは、信じられなかった。
そんな馬鹿な、とか。まさか、そんな。なのはに限ってそんなことが起こるはずはない、とか。
飛び込んできたその報せを、フェイトは信じることができなかった。
また、信じたくなかった。
けれど、その報せが入ってきたということは紛れもなく事実で。
クロノに言われ、エイミィに付き添われ。
詳しい状況もよくわからぬまま、フェイトは航行中だったアースラから本局に戻った。
というよりも“戻っていた”。気がつくと、エイミィに手を引かれそこにいたのだ。
それくらい、動揺していたのだろう。
まるで夢の中にいるような、ぼんやりとした焦燥と疑問の混じった中たどりついた
医療局の処置室には、よく見知った人たちがいて。
本局までは滅多に来るはずのない、なのはの家族が来ていた。
はやての胸の中で、ヴィータが、声を震わせて泣いていた。
シグナムが、ザフィーラが、沈痛な面持ちでそれを見守っていた。
アリサやすずかにも、連絡はとってあるという。
摩りガラスと金属で構成された自動ドアの向こうを皆が思い思いに、待っていた。
───フェイトはようやく、これが現実なのだと理解した。
と、そのとき。何かに気付いたシグナムが、曲がり角の向こうに顔を向けた。
他の面々も、もちろんフェイトもつられて、そちらを見る。
そこには、一人の少年が怒らせた肩を上下させながら、立っていて。
「ユーノ」
落ち着いた、知的なイメージは見る影もなく。明らかに取り乱した様子の彼は、服装も乱れていた。
「なのははっ!?」
詰め寄ってくる彼に握られた両肩が、痛んだ。
その握力は、温和な少年のそれとは思えぬほど、強く、激しくフェイトの身体を握り揺すっていく。
「ごめん……」
この両肩の痛みは、ユーノの痛みだ。ユーノとなのはの、絆の深さゆえの痛み。
彼にとっての彼女だからこそ、痛い。この痛みを、ユーノは身体でなく心で感じている。
フェイトは、彼の痛みをそう理解する。
「───わから、ない……」
そうとしか答えられぬ自分が、歯痒かった。
誰よりも、自分などよりも遥かに彼女のことを想っているであろうユーノに、
たった一言の答えも与えてやれぬことが、苦しい。
揺すられ続けるフェイトの目にはただぼんやりと、彼の掛け違った服のボタンが映っていた。
「ごめん……」
彼に伝えられないことを、フェイトはただ謝った。
彼だから、謝った。
それが、短いような長いような、数年前のこと。
* * *
それから。
彼と彼女の絆はなにひとつ、変わっていない。
よくも悪くも、まったく。
「なのはさんとスクライア司書長って、お付き合いされてるんですよね?」
あれからもう何年経とうかというのに、彼らはずっと、彼らのまま。
だから、訊かれた質問の返答に詰まる。
ニュアンス的には、確認に近かったにも関わらず。
「……あれ?あたし、なんかまずいこと訊きました?」
フェイトと、隣の女性の浮かべた曖昧かつ微妙な表情に、
短めの髪を二つに束ねた、ちょうど昔の「彼女」のような髪型の少女は
交互に彼女たちの顔を見比べて訊いてくる。
「……いや。別にまずくはないんだけど……」
隣のシグナムが向けてきた視線ににちらりと目をあわせて、フェイトは応える。
夕食の時間にもそろそろいい頃合の食堂は、少しずつ人の波が増えてきていた。
早めに訪れた彼女たちのテーブルの上はもう空になり、食後のコーヒーと紅茶が並んでいる。
「やっぱり、そうみえるよね」
親友の部下の少女たちに、そういってフェイトは苦笑する。
というか、苦笑せざるをえなかった。他の選択肢が思いつかず。
「───って、違ったんですか?お似合いのカップルだとばかり、てっきり」
苦笑して、直後肩を落とし小さく溜息をつく。
そう、彼女たちが勘違いするのも無理もないのだ。
ティアナ・ランスターに、スバル・ナカジマ。
二人の少女たちはきょとんと、フェイトのその仕草に目を丸くしている。
(……エリオやキャロがいなくてよかった)
彼らにはまだ、少々早い話だ。
今はヴィータとリインが連れて遊びに出かけている。
話の対象になっている当の本人も、当然のごとく出張のためこの場にはいない。
いや、いないからこそこんなことが話せるのだけれども。
「えっと?つまり───」
「ああ、ごめん。だからね」
上官たちの反応に戸惑っているティアナに微笑を向け、頬を掻くシグナムと顔を見合わせ。
自分が彼女達に向けた微笑がやはり苦笑以外のなにものでもないことを
再認識しつつ、明確に正確な情報を、少女たちに与える。
スバルはあまりよく、状況が飲み込めていないのかもしれない。
性質的には、なのはに近いものがある。
「なのはとユーノは、幼馴染みなんだ。十年前からずっと」
親友と、男友達。
高町なのはとユーノ・スクライア。二人の顔を思い浮かべながら。
「見てるこっちが、困っちゃうくらいに……ね」
* * *
「ユーノ、これはこっちで?」
「ああ、うん。そこでいいよ。いつも悪いね、アルフ」
同じ頃、噂をされている片割れは自身の職場、無限書庫に詰めていた。
レリック事件後の喧騒からひと段落、調査以来の波が途絶えた今のうちに、資料の整理をしておかねばならない。
眼鏡の青年は、獣のような耳と尻尾の生えた少女の抱える何冊もの分厚い書物を見て、頷く。
せっかく何年もかけて整理した無限書庫だ。
きちんと収納すべき場所にしまわなければ、元の木阿弥になってしまっては元も子もない。
「いーんだよ。こっちも散々クロノが無茶言ってんだし。それに……」
司書室のほうへと目を向ける。
「託児所としても使わせてもらってんだしね」
クロノと、エイミィの子の。
一旦は退職し主婦となっていたエイミィがレリック事件後の混乱のために復帰を請われ、非常勤かつ本局内勤、期限付きながら職場に戻ってからは本局内としては静かなこの場所に、家に誰もいない場合などには二人の幼子を預け二人は仕事に行っていた。
ユーノ自身子供は嫌いではなかったから、保父さん役を拒否する理由もなく。
「ははっ。……あ、そろそろご飯の時間か」
割と楽しんでやっていた。
腕時計とにらめっこをして、そろそろ子供たちの目覚めの時間だと気付く。
「あ、ならあたしが」
「いいよ、僕が行こう」
温めるものは、温めなおして。
工程はもう既に、完全に頭に入っている。
司書室に、ユーノの後ろ姿は消えていった。
「うーむ」
何度か、彼が散らかしがちな子供たちの食事の世話をするのに、アルフも同席したことがある。というより、アルフが教えたのだが。
「ユーノとなのはがそうなるのは、いつのことかねえ」
その姿は誰がどう見ても、良い父親にしか見えなくて。
それは仲間内でのここ数年における一番の懸念事項を、より一層際立たせる光景であった。
「どうなってんだろうねぇ、ユーノも……なのはも?」
* * *
そして、もう一方の片割れは。
「っくしゅん」
まるで噂されているのを感じとったように、可愛らしい小さなくしゃみが飛び出した。
報告書に目を通していた初老の女性が顔をあげ、くすりと笑う。
自分の仕出かした粗相に、なのはは白い制服に包まれた身を縮こまらせた。
「す、すいません」
「いいのよ。風邪?」
「そうじゃないとは思うんですが……」
頭を掻き掻き、ごまかし笑いを返す。
柔和な表情の女性はめくっていた報告書を置くと、机上のカップに口をつける。
「本当、今日は助かったわ。ありがとう、高町なのは戦技教導官」
「いえ、そんな。コラード三佐の頼みですし」
ファーン・コラード三等陸佐。
カップを手に軽く頭を下げる彼女に、なのはは恐縮せざるをえない。
陸士訓練校の校長を務めるこの女性は、短い間とはいえ自分も教えを受けた、
管理局における恩師のひとりであるのだから。
きっかけをつくったのがリンディであり、その道を整備したのがレティだというなら、さしずめこの人は入局後の最初の恩師。直接接した期間は短いが、比重は二人と同じくらい、大きい。
「任務中の事故だったら、仕方ないですしね」
きっかけは、本来講師として招かれる予定だった教導官の負傷。
結構な怪我だったらしく、講義や訓練が不可能となり。
予定されていた訓練が宙に浮いた形となり代理が探されていたところを、たまたま復帰手続きのため戦技教導隊の分隊室に顔を出していたなのはが聞き、引き受けたのである。
以前に自分が担当する予定だった講義・訓練を緊急の任務で代わってもらったこともあり、その代わりに今回の訓練が回ってきたとでも思えばよい。
「機動六課、だったかしら?あの子たちも頑張ったみたいで。元気でやってる?」
「はい、スバルもティアナも、それはもうとっても」
元気すぎるくらいで。
なのはにとって、二人共大切な部下である以上にかわいい妹分たちである。もうすぐ、別れねばならないのが名残惜しく感じるほどに──。
彼女と同じく、ここの卒業生でもある。
けっこう、色々な武勇伝を持っているらしいとも聞いている。
「───さて。明日の教導もあることだし、今日はこのくらいにしときましょうか」
「はい」
「夕食、まだでしょう?ご一緒にどうかしら」
「ええ、よろこんで」
といっても、なにもない場所だから訓練校の食堂で我慢してもらうことになるけれど。
コラードの微笑ましい冗談に、なのはも頬を綻ばせる。
「少し、折り入って話したいこともあるし」
「?」
「いえ。さ、行きましょうか」
元教え子の不思議そうな顔をはぐらかしたコラードは立ち上がり、なのはもそれに続く。
机の上に残された空のカップを、少し気にしながら。
先に立って歩く女性の脇に抱えられている白表紙の薄いファイルに目が留まったのは、食堂も近くなった時であった。
一体、なんだろう。
ただ食事をするだけなのに変だな、とは思ったものの、なのはは黙って彼女に従った。
そして、足を踏み入れた食堂で、なのはは首を再度傾げることになる。
不思議なことに、広い訓練校の食堂には人払いでもされたかのように、誰一人としてその場には人影がなかった。
「言ったでしょ?ゆっくり話したいの」
教え子の疑惑の視線に返ってくるのは変わらぬ恩師の微笑み。
柔和な笑顔に促されるまま、なのはは湯気の立つ皿の並ぶテーブルへと、着席した。
ただ、執務室や来客用の応接室に晩餐を構えてもいいはずなのにこんな手間をとるということは、少なくとも局の業務とはさほど関わりのないことなのだろう。
校長の権限(横暴、ともいう)すらつかわず、仕事のための部屋も使用せずに。
公私の区別をきちんとつけるかつての恩師が身銭を切って食堂を借り切ったであろうことを、なのはは容易に想像した。
(つづく)
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