なんですか?

 
ミクシィやってないマイノリティだから紹介のあてがないぜフゥーハハハーorz
 
超気になるのに見れない件orz
 
ひとまず、the day更新しまっす。
前回の、八話でしたね。今回九話。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
 
 
 
物音ひとつしない廃墟へと、少女は降り立った。
 
純白の衣に身を包み、手には愛機。
彼女をこの場に送り届けた転送装置の魔力の残滓が、空気中に散らばっていく。
 
「また、ここに来るなんて……ね」
 
親友が生まれ育ち、また自分を知った場所。
三年前も少女は、今と同じようにここにいた。
 
一人の女性の身勝手を、止めるために。
そんな自分が今度は逆に、勝手をするためにこの場所にいる。
大した立場の変化に、少女は自嘲の意味を大分に含んだ笑みを漏らす。
 
(でも、わたしは違う。誰も巻き込まない。誰にも迷惑はかけない)
 
これは、私の願い。私の勝手。だから一人でやる。やらなければならない。
わたしは、あの人とは違う。
 
決意を胸に、少女は足を踏み出す。
踏み出した先に何があろうとも、止まるという選択肢はない。
 
 
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
 
第九話 明日を落としても
 
 
「最近ね、夢をみるんだ」
 
ぽつりとつぶやいたフェイトの言葉に、はやての手にした包丁が止まる。
三分の二ほど皮の剥き終わった林檎は固く、程よくみずみずしい。
 
膝掛けに敷いたチラシの上に、赤く細長い皮の帯が重なる。
 
「……え?」
「夢。アリシアと……生みの親、プレシア母さんの夢」
 
眉を顰め彼女のほうを向いたはやてへと、フェイトは目を細める。
 
細みを増した、ミルクのように白い左腕が、点滴のためシーツの上に露出していた。
 
「なにか、言いたいことがあるのかな。よく、夢に二人が出てくるようになったんだ」
「ん、そか。そうかもしれんな」
 
穏やかに言うフェイトに生返事に近い返事を返し、はやては再び手元へと目を落とす。
 
アリシアテスタロッサとプレシア・テスタロッサ。この二人の人物を、はやてはよくは知らない。
ここ数日のうちで彼女自身や家族達から聞き知った程度のことだけだ。
それでも、彼女にとってその二人が重要な位置を占めている存在であることは想像に難くない。
 
フェイトの、今は亡き血を分けた家族。
このような事態でなければ、その存在はただうすぼんやりと認識されるだけのものでしかなかったろう。
彼女達はあくまで、過去の人間。
フェイトには今は別の家族がいて、はやてにとってはそちらこそが彼女の家族であるという意識のほうが強いのだから。
 
はやてからすれば、フェイトの家族とはクロノやリンディのことだ。
 
まるで過去の亡霊が彼女を連れて行ってしまうように思えて、はやてはフェイトの微笑と告白を歓迎することができなかった。
 
「……なのはは?仕事?」
「せやね。色々武装隊は立て込んどるらしくて。あとクロノくんたちも」
「そっか。はやてのほうは大丈夫?」
「こっちは平気や。気にせんでええ」
 
加えて、ついた嘘が表情を強張らせる。
このところ、こんな役目ばかりでほとほと自分が嫌になってくる。
自然、顔をあげることができない。
 
「……そう」
 
気付かれてはいないだろうか、と疑心暗鬼になってしまう己を嫌悪する。
本当はなのはもクロノも、ただ仕事などでいないのではない。
 
(シグナム……クロノくん、頼むで)
 
有休をとったなのはが、フェイトを助けるべくなにかを企んでいる。
おそらくは、管理局の定めた規則に触れるようなことを。
 
ユーノから連絡を受け、クロノはシグナムと共に、そんな彼女を止めるべく動いている。
なのはが、はやまったことをしでかす前に。
 
詳細もわからず事情はかいつまんでしか聞くことが出来なかったが、友人思いで責任感の強いなのはならばやりかねないことだ。
 
(なのはちゃん……変な風に思いつめたら、あかんで)
 
自分ことで、なのはに何かがあったら。
フェイトは自分の身に起こりつつある終焉よりも深く悲しみ、嘆くことだろう。
 
「はやて?その、林檎」
「へ?わとと、ごめん」
 
考えながら作業をしていると、とうの昔に赤い皮はなくなり、林檎の黄色い果実の部分に包丁が進んでいた。
幸いそこまで形が歪になったり、小さくなったりすることはない程度でフェイトが気付いてくれた。
 
「どうしたの?」
「んん。別に、ちぃとぼけっとしとっただけ」
 
林檎のことはいい。
だが、なのはのことは気付かれるわけにはいかない。
そのために自分がこの場に残ったのだ。
なのはと、それを追うクロノのことを誤魔化し、勘ぐられないためにも。
 
今は彼女にはただ、心穏やかであってほしいから。
 
「さ、できたで」
 
透明なガラスの皿に、切りそろえられた林檎が並ぶ。
その形は料理の得意なはやてにしては珍しく、わずかながら不揃いなものであった。
 
*   *   *
 
「───おそかったな」
 
庭園内には、予想だにしない二人の先客がいた。
 
隠し通せると、思っていた。
大丈夫だと、思っていた。
なのに。
 
彼らは、いた。
 
「っな」
「こんなことを、隠し通せるとでも思っていたのか?僕らや局を甘く見るな」
 
漆黒の戦闘服に、白銀の杖。長身に黒髪の青年は、『彼女』の兄。
前線に立つ姿をこのところ見る機会も少なくなった、歴戦の魔導師。
 
「クロノ……くん……」
 
時空管理局提督、クロノ・ハラオウン
そして、彼の側で目を伏せる緋色の女騎士、それは──……、
 
「シグナムさん……」
「……」
 
同じく時空管理局所属、通称『烈火の将』・シグナム。
 
なのはにとっても帰りを待つフェイトにとっても旧知、親しい間柄である
一組の男女が、彼女の行く手を阻むがごとく、立ち塞がっていた。
 
「どうして……?」
「ユーノが気付いてくれてな。それでこっちに連絡がきた」
「そんな」
「あれであいつはよく君のことを見ている。君だって知っているだろう?」
 
彼は自身の肩を二度ほどデュランダルで叩くと、下ろした。
 
「止めに……来たの?」
「あたりまえだ。この場所へは立ち入りは禁じられているはずだ。服務規程に反するぞ」
「……知ってる、それくらい。でも、そう」
 
言わずもがな。
質問したなのは自身、それはわかりきった答えだった。
他にどのような意図があって二人が、ここにくるというのか。
 
「今なら僕らの間だけで済ませることもできる。君の経歴に傷をつけたくはない。戻れ」
「……」
「フェイトが、待ってる。あの子を悲しませるな」
 
きつい目で、クロノははっきりといった。
隣のシグナムはこの間、一切口を開くことはなかった。
ただ、やりきれない面持ちで目を閉じているだけ。
 
「さあ、来るんだ」
「……」
 
また、なのはも応えなかった。
彼のほうがきっと正しいのだろう。そのことも承知している。
けれど意志は既に、決まっているから。今更、変えることなどできはしない。
 
「なのは」
「……ごめん、クロノくん」
 
こんなところで、立ち止まっていられない。
たとえ相手が、クロノやシグナムであっても。
時間がないのだ。その要求は、聞けない。
 
なのはは左手のレイジングハートをかかげ、クロノへと頭を振った。
交渉は決裂。はじめからわかっていた結果だ。
 
「そこを、通して。わたしはいかなくちゃいけない」
「馬鹿を言え。たかだか一週間勉強して得た生兵法の知識で、何をする?停止はしているが、ここの動力炉はまだ生きているんだ。動かして暴走すれば何が起こるか」
「わかってる、よ。そのくらい」
「だったらなおさらだ。刺激を与えるべきではないだろう。君のような高出力の魔導師の魔力なんて、もってのほかだ」
 
刺激を与えれば、いつ暴走するかもしれない。
クロノの冷たい声──ついぞ、そのように思ったことのない感想をなのはは持った──が廃墟に響き、なのはに帰順を促す。彼だって、無駄だとわかっているはずなのに。
 
「それでも、行く。行かせて。終わったらちゃんと責任はとるから」
「だめだ……と言うぞ、無論僕は」
「なら、力ずくでも通る」
「よせ。同程度の実力の魔導師と騎士、二対一だぞ。それに君の戦術を僕らはよく知っている」
 
説得は、ここに至っては無意味。
 
「……レイジングハートエクセリオンモード」
「なのは、やめろ」
 
それ以上は、水掛け論でしかなかった。
 
なのはは、時の庭園内部に向かいたい。
クロノたちは彼女を連れ戻したい。
望みが正反対である以上、対立を避けることは不可能であった。
 
なのはは話を打ち切り、レイジングハートのフルドライブを起動させる。
退かぬならば、押し通る。全力全開、どんな手をつかってでも。
 
「わたし……フェイトちゃんを助けたい……!!そのためにも、いかなくちゃならないの……!!」
「よせと言っているだろう。それに君がここで何かしたとして、フェイトが助かるわけじゃ……」
「でも!!信じたいの!!たとえ少しでも、可能性があるなら!!」
 
この場所なら、あるいは。
フェイトの生まれ故郷たるこの場所ならば、代わりのリンカーコアを生成できるかもしれない。
 
「誰にも迷惑かけないよ!!だから邪魔しないで!!」
「そういう問題じゃない!!君は……」
 
たとえそれが、ほんのわずかな、儚いものであったとしても。
助けると、決めたのだ。そのためなら、なんだってすると。
 
「……シグナムさん」
「……高町」
 
ほんのわずかばかり、騎士と目があった。
 
デュランダルを構え警戒を強めるクロノとは対照的に、シグナムはレヴァンティンの起動すらせずに、無言で立っていた。
彼女の好敵手たる女性に、なのははわずかに目尻を潤ませながら目を遣り、言葉を投げかける。
 
「今なら、少しシグナムさんたちの気持ち、わかります」
「……え」
「だれかを、どんなことをしてでも助けたいっていう気持ち。はじめて会った頃のシグナムさんやヴィータちゃんもきっと、こんな気持ちだったんだろう、って」
「……」
 
はやてを助けたいと願い、幾度となくぶつかりあったあの日々。
かつての彼女達の想いも、今なら前よりも深く理解できる。
 
今の自分も、きっと同じ気持ちだから。
 
「だから」
 
長槍の持つ、黄金の穂先を対峙する男女へと向ける。
相手が誰であろうとかまわない。自分はただ、この想いを貫き通すだけ。
 
「だから……押し通ります。あなたや、クロノくんが相手であっても」
 
自分がどうなろうと構わない。まかり通る、ただそれだけ。
止めるならば、実力行使で。
黄金の槍に桜色の翼が生えるに至り、彼女もそのことを認識したらしい。
 
「……わかった」
「はい」
「ならば、私もあの子のためにお前を止めよう。全力で────」
 
覇気のなかったシグナムの雰囲気が変わる。
横にいるクロノの殺気、魔力に飲み込まれようとしていた存在感が一気に増し、二人はほぼ同じ大きさの気配を発散しはじめる。彼女の意識が戦闘へと切り替わった証拠だ。
 
「────あの子から託された力で……お前を止める。高町なのは
 
フェイトを救うため。
あるいは、フェイトを悲しませないため。
互いは、大切な一人の少女のために、ぶつかりあう。
その覚悟をなのはも、シグナムも。もちろんクロノも、固めていた。
 
「今私があの子にしてやれるのは、これくらいだから……な」
 
想う対象は、三人とも同じであるはずなのに。
三人は、戦わざるをえなかった。
 
(つづく)
 
 
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