だが更新。

 
それが正義。きっとそう多分そう。
急に高校時代の友人が京都に遊びに来たおかげで
シフト→あがって合流後QMAめぐり→明け方まで騒ぐ、の二日間。
そのおかげで大魔導師4級まできたけどね。もう少しで賢者だ。
なのフェス原稿はやめに仕上げておいてよかった・・・。
 
以下、web拍手レスです。
 
>「The Day」は「She & Me」と連動していそうな具合だなぁ。
はい、ぶっちゃけるとこの二作品は連動(ていうのかな?)してます。
執筆時期の問題もあり原作設定とかけはなれてしまったshe&meを、もう一度原作の設定に合わせた形に再構成し直してできたのがこのthe dayという話ですので。
なのはシリーズ本編に沿った形で物語が進んだ場合→the dayに。
forget-me-notの事件が起こったなのは世界→she&meに、といったところでしょうか。
 
>お姉ちゃん・・・アリシアァァーー良い子だーーああ涙で前が見えないー
この「お姉ちゃん」という言葉は、she&meを書き終えての心残りだったんです。
きちんと劇中でフェイトに呼ばせてあげたかったな、と。
A’s本編でもアリシアはフェイトからはあくまでも名前でしか呼ばれていませんでしたし、余計に。二次創作でくらいはせめて呼ばせて、呼ばれさせてあげたいなと思ったんです。
これだけは絶対に入れる、とはじめから決めていた部分のひとつです。
 
 
はい、というわけでthe day、最終話を更新します。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
わずかに開けた目に、光が差し込んでくる。
それと同時に聞えてくる、大切な人たちの歓喜の声。
ゆっくりと視線を向けると、自分のことを待っていてくれた人たちがいた。
 
なのは。はやて。
母に兄、それにエイミィ。
アリサと、すずか。
シグナムをはじめとする、ヴォルケンリッターの面々。
先に目が覚めたのだろう、アルフもちゃんといる。
 
──ああ、帰ってきたんだな。アリシアが、言っていた通りだ。
 
この場所に。
みんながいる世界に、帰ってきたんだ。
そう思うと、不思議な感慨が湧いてくる。
 
ほっとしたような、嬉しいような。
それでいて鼻の奥につんと沁み入るような、なんとも形容しがたい気持ちが。
 
「……ぁ……ぅ……」
 
まだちょっと、声は出せそうになかった。
自分のものでないかのような唇の重たさが、可笑しい。
 
それでも、いつの間にか頬を伝っていた涙と。
兄のひどく珍しい、潤んだ瞳が、彼女に己が生きていることを実感させてくれた。
 
ただいま。
 
心の中でそっと一言、世界に向かい彼女は言った。
背中を押してくれた姉と、今は亡き者たちへの感謝もけっして忘れることなく。
 
自分は、帰ってきたのだ。
 
 
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
 
最終話 きみの温度が、残っているから
 
 
−一ヶ月後−
 
黄金の刃が、少女の手には握られていた。
黒手袋と鋼の手甲に包まれた両腕は、震えもせずしっかりと閃光の大剣を保持し構える。
 
「────ふっ!!」
 
広い訓練場に木霊するのは、振られた刃が空を切り裂く音と、少女の凛々しい声。
それらはどこまでも力強く、また鋭かった。
 
見守る人々も、物音一つ立てはしない。
そんな無粋な真似を、誰がするものか。
それぞれに微笑を浮かべ、少女の振るう太刀筋をじっと見届けている。
 
「はああっ!!」
 
少女の渾身で振り下ろされた大剣が、岩盤へと組成を組みかえられた床を穿つ。
立ち昇った土煙が晴れると、彼女は肩の力を抜いた。
 
「……ふう」
 
小さく、息をつく。
真剣そのものだった彼女は、親友がタオル片手に駆け寄ってくるのを見て、相好を崩す。
 
「お疲れ様っ!!」
「ありがとう、なのは」
「リハビリは順調なようだな」
「ええ、まあ。はやく復帰したいですし」
 
なのはの後ろに歩いてきたシグナムの言葉に、フェイトは頷いた。
自分自身、順調に仕上がってきていると思う。
彼女のお墨付きが得られるのならば、その感覚は間違ってはいまい。
 
命を一時は失うほどの事態から、早一ヶ月。
 
無事退院したフェイトは執務官任務への早期復帰を目指すべく、こうしてリハビリに励んでいる。
もっとも本人としてはもうどこにも悪いところはないつもりだし、検査等でも魔力やリンカーコアは入院前と同等、いやそれ以上の高い数値を安定して示しているのだけれど。
シャマルからのドクターストップと家族からの願いもあり、まだゆっくりと勘を戻すのに専念している状態だ。
どちらも心配性の域を出ないものであったが、フェイトはおとなしく素直に従った。
 
「どうだ?今日は軽く手合わせでもしてみるか?」
「うーんと……そうですね──……」
 
受け取ったタオルで首周りの汗を拭きながら、上目遣いに思案する。
一応、きちんと許可はとったほうがいいかもしれない。
なのはに目を遣ると、彼女は笑って頷いた。連絡なら任せておけ、と。
 
ならば、迷うこともない。
彼女たちの心遣いに、存分に甘えるとしよう。
 
「……やりますか」
 
*   *   *
 
シャマルやユーノが言うには、今こうしてフェイトが無事に生きているのは、
いくつもの偶然が重なり合って生まれた、奇跡のようなものらしい。
 
あの日、あの時。庭園のあの場所で、クロノとなのはが戦ったこと。
(そのためなのはは数ヶ月の減俸処分を受けたそうだ。ヴィータはなのはが最後まで庇ったおかげで、特にお咎めはなし)
 
なのはのエクセリオンバスターとシグナムのフレイムザンバーとのぶつかりあいで、クロノの張った結界に一部破損が生じ、ごく微量ながら彼女らの魔力が漏れ出していたこと。
 
その魔力がカートリッジシステムを使用した高密度のもので、虚数空間内に散らばりながらも、完全に消滅しきることなく最下層に眠るジュエルシードの元へと届いたこと。
(後の調査で、機能を停止し庭園中枢部に転がるものが発見された)
 
他にも、外部ではなくジュエルシード内部で魔力が作用したことや、そのタイミングなど。
大きなものから小さなものまで、数え上げればきりがないとのことだ。

奇跡。そう言ってしまうのは、確かに簡単だ。
 
けれどフェイトは、きっとアリシアや生みの親であるプレシア。
それにかつての師であるリニスといった大切な人たちが助けてくれたのだと思っている。
 
だって、たった二文字の奇跡だと思うよりも、今は亡き母と姉が。彼女達の魂が。
なのは達との消えかけた絆を結びなおしてくれたと思うほうが、ずっとやさしい気持ちになれるから。
傲慢で勝手な考えかもしれないけれど、フェイトはそれでいいと考えている。
 
「ふうっ」
 
なのはへとタオルを返し、頷いてみせる。ありがとう、と。
親友は、以前大怪我で心配をかけたお返しだとばかりに、入院中も退院後も、以前以上になにくれとなくフェイトの世話を焼いてくれている。
 
「がんばってね」
「うん、ありがと。なのは」
 
なにより、単なる偶然がそれほど繰り返し続くほど、この世はうまくいくものだろうか。
なのはとフェイトが微笑みあう中、訓練室の扉がスライドし開く。
 
「おー、やっとるなーフェイトちゃん。調子はどうやー?」
「はやて」
「新しいバリアジャケット、似合うとるやん」
 
入ってきたはやては、退院祝いに母や兄、エイミィから贈られた新しいデザインの防護服を見て素直に褒め称えた。
今までとは少し趣の違う、クロノの戦闘服にも似た落ち着いた感じの着衣の上に、白マントを羽織るといういでたち。
スピードを重視していた以前のものに比べ、防御にも満遍なくバランスがとられている。
 
口に出して賞賛されて、フェイトとしては少し気恥かしかったけれど、やっぱり家族からの贈り物を親友に褒められているのだから、嬉しく思う。
 
そして。
 
『フェイトさん、かっこいいですー!!』
「ありがと、リインフォース
 
はやての肩口から顔を出した掌サイズの少女が目を輝かせているのを見て、殊更に頬が緩む。
 
小さな少女の名は、リインフォース
会いたかったと思い、会えないと無念に思ったはやての新しいデバイスと、ちゃんとこうして彼女は会話を交わしている。
 
今ここに命ある存在として、フェイトが生きているから。
 
新たな命が、リインフォースが芽吹き生まれてきたから。
 
「なんや、これから二人とも模擬戦か?」
「ええ、軽くですが」
シャマルさんに一応許可とらないとね」
「あー、ええって。あとでわたしが言うとくから」
 
──アリシアが。母さんたちがくれた命で、私は生きている。
 
その命は、何にも代えがたいものだと思う。
 
「ありがと、はやて」
 
シグナムがこちらに頷き、フェイトも準備完了の旨を頷き返す。
なのはやはやて達が、邪魔にならないようにと下がったのを見届けて、互いに武器を構える。
 
口元に浮かぶのは双方、不敵の笑み。
 
「安心しろ。病み上がりの相手にいきなり本気を出すような真似はせん」
「そうですか?まだ完全じゃないと思って甘くみてると、痛い目に遭いますよ」
 
目の前には、好敵手……戦友がいて。
見守っているのは親友で。
新しい命とも出会うことができる。
 
帰りを待つ家族や、笑いあえる友もいる。
アルフも、死なせずに済んだ。
 
それは、かつてあったなにげない日常。
だけれど、喪われた者たちがフェイトに与えてくれた、戻ってきた時間。
 
喪われた者たちとは、まだ会うことはできない。
だが、彼女達の与えてくれたこの時間を、フェイトは大切に生きようと思っている。
 
この命を、全力で。精一杯全うしよう。
生きている近しい人々、死んだ家族。みんなに恩返しをしたいから。
 
「いきなりプラズマザンバーか?そこまでやらなくてもいいんだぞ?」
「あなたこそ……。ファルケンなんて。全力でくる気、まんまんじゃないですか」
 
そう、この大切な日々を過ごしていくことで。
 
大剣を振りかぶった少女と、弓矢を向ける女性。
二人は可笑しそうに吹き出し、笑いあう。
認め合う者同士だからこそ、できるコミュニケーションだ。
 
「結局」
「こうなるってことやね」
『マイスター、防御フィールド構築終わりましたー』
 
訓練場の隅で、はやてとなのはがさっさと防護服を展開し衝撃に備えていた。
 
「いくよ、バルディッシュ
『yes,sir』
 
彼女の言葉に応じる黄金の大剣も、心なしか嬉しそうだ。
主の弾む気持ちを彼も感じ取っているのだろうか。
 
ほとばしる魔力が、猛く吼える。
 
「雷光、一閃」
 
カートリッジロード。全力、全開。
 
「プラズマザンバーッ!!」
 
轟く雷鳴。その斬撃と同時に対角から放たれる、一閃の矢。
ぶつかり合う二つの衝撃。
 
その衝撃こそが、生の確かな実感だった。
 
フェイトは今、生きている。
アリシアたちと再会するのは、もう少し先のことになりそうだった。
 
今はまだ、大切な人たちとの日々が目の前にあるから。
それを与えてくれたのは、取り戻してくれたのは、彼女達なのだから。
 
喪われた者たちに、誇れる自分であろう。
 
 
───完
 
 
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