わざとじゃなかったんだけども。

 
突発的にわが身に発生した水曜どうでしょう見たさに、
ニコニコ動画に張り付いていたらですね。
 
strikers三話見ちゃった(一応反転)
 
そりゃー放送を心待ちにしてる不安いっぱいな人間としては
明け方の妙なテンション状態でぽっと出されたら見ちゃうじゃないですか(言い訳)
感想などはきちんと火曜に放送見てから、バレありの感想は土曜になってからしかしないけど。
 
以下、web拍手レスです。
 
>え? アレ、妊娠フラグじゃなかったんですか?(マテ
それならむしろそっちで(ぉ
……でもそーするとSSMとの矛盾があーあ。
 
>逆に考えるんだ。これは【ユーノがなのはを助ける為に活躍するフラグ】だと考えるんだ。
>一度ならず二度までもなのはのピンチを救い損ねるなんて、ユーノ君の男が廃る事態にはなるはずないと。

既に二度以上ユーノはポカやらかしてる気も……。
無印十二話とか含めると。
 
>何を甘ったれた事を言っている! なのはが簡単に死ぬ訳がない! きっとアギトのギルスやカブトの天道
>の最終回みたいに、死にそうな目にあってもひょっこり戻って来るさ! …いや、あれはすでにギャグ
>だったんですけどねorz まぁ大丈夫でしょう。なのはは意識して「死」を隔絶してますから、大怪我
>とかは普通にするでしょうけど。へこむ暇があるなら書くんです。不安な気持ちをぶつけるのです。
>ガンガ。byケイン

シュリケンジャー(vsアバレ時)並みに何の脈絡もなく死亡拒否してくれたらある意味神。
まあ、確かに死にはしないとは思います。ただエンディング見るたびにやっぱし
曲調と映像とで不安になってくるなぁ・・・。
 
 
はい、というわけでケインさんの指摘通りへこむ暇に書いたのですよ。
へこみながら書いたとも言う。
テンポ悪くなるの承知で関係ないやりとり挟んで和もうとしてる話書く辺り、
病んでるなぁ俺、と読み返して思いつつ。
 
てわけで、どうぞー。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 

シグナムは、戦っていた。
緋色の騎士甲冑に身を包み、炎の魔剣をその手に握って。
己の持てる力すべてを以って、敵へと挑み続ける。
 
自身によく似た、顔と髪を持つ一人の騎士を相手に。
 
「っ……!!」
 
だがその戦いは常に、ひとつの結末にしか終着しない。
 
最上段から断ち割られる自分。
神速の刺突により、身体の中心を貫き通される自分。
 
瞼の裏に閃光のように駆け抜けるのは、常に炎の中に消える己が姿。
 
「……くそっ!!」
 
──まただ。また、勝てなかった。
 
開いた瞳に映るのは戦場でもなんでもない、ただの無味乾燥な病棟の一室だった。
苛立ちに任せ振り上げた拳の、その包帯に包まれた様相に我に返り、舌打ちとともに毛布の上に投げ出す。
 
それは敗北の証だった。
現実において破れ、イメージの世界においてもまた彼女は打ち勝たねばならぬ相手へと、敗北を繰り返すばかり。
何度やっても結果は同じ、自分の敗北に戦闘は終わってしまうのだ。
こんなことで、主を護るべき騎士が務まろうはずもない。
たかがイメージ上の仮想戦績だと言ってしまうことができれば、どんなに楽か。
自責と歯痒さに、シグナムは自由な右腕を握り締め、強く固める。
 
「どうすれば……どうすれば勝てる……?あの人に……?」
 
聞く者も、答える者もない問いが、無音の病室の空気に混ざり消えた。
 
 
魔法少女リリカルなのは 〜the lost encyclopedia〜
 
第九話 find it
 
 
『accel shooter』
 
地面すれすれを滑るように駆け抜ける女騎士を、桜色の光弾は息つく間も与えじと狙い撃つ。
濃密な弾幕が形成され、その直撃を受けた大地は土埃を上げては砕けゆく。
 
吹き上がる土煙の中に騎士の姿が隠されようと、光弾の群れが攻撃の手を休めることはない。
少しずつ、少しずつ。獲物を狩るように、追い詰めていく。
 
「……」
 
加えて別方向から迫るのは、白銀に輝く鉄球の雨。
桜色の魔力の光よりも、より直接的な暴力を以って対象を破壊するそれらもまた、騎士の姿を追い空を翔る。
 
「この!!当たれっ!!」
ヴィータちゃん、落ち着いて!!」
 
そう、追い詰めているのは自分たち。敵を捕捉し、戦端が開かれてからその趨勢はまったく変わっていない。
これが最もこちらの損害を抑えられる戦術であり、あちらの有利な間合いを外すことの出来る組み立てであった。
念には念を、用心には用心を重ねた上での。
 
しかし優勢に立っているのはこちらのはずなのに、いまだ相手はクリーンヒットを許していない。
ヴィータは、焦る。
彼女を諌めるなのはも同じく、二対一のこの戦況で押し切れないこの状態に僅かながら、苛立ちを覚えていた。
 
なんとか足を止めるなりなんなりして、一撃でも当てなければ。
このままでは、埒があかない。
 
圧倒的優位に立っていながら、それは遊ばれているが故。そのように感じられてならない。
 
「こいつ……ナメてんのかっ!?」
 
なのはとヴィータ、管理局でもそれなりに名の知られた使い手である自分たち二人の誘導弾を以ってしても、決めきれない。
それどころか、むしろ──……、
 
「誘導に頼りすぎじゃないかしら?」
「!?」
 
すべての軌道を読みきったが如く一直線に。
騎士は距離を詰め、ヴィータの眼前の間合いへと侵入する。
 
ヴィータちゃん!!」
「騎士としての……あなたの間合いは本来、こっちのはずでしょ?」
 
目が、追いつかない。
おそらくはそのスピードは、フェイトの疾さにすら肉薄する。
間一髪向けたグラーフアイゼンは神速の踏み込みと共に放たれた騎士の蹴りに弾かれ、
大きくのけぞった少女の身体が凶刃へとがら空きとなった防御の隙を晒す。
 
「クロスレンジこそ、騎士の本領!!」
「く!?」
 
剣からの排莢。そして振り下ろされる剣の軌跡が、彼女にはひどくゆっくりとしたものに見える。
ゆっくりと、しかしそれでいて確実にその刃は己が身を切り裂くことだろう。
 
「させないっ!!」
 
だが、やらせはしない。
友の危機を、ただ手をこまねいて見ているものか、とばかりに。
 
半ば反射的も同然に、なのはがカートリッジをロードしていた。
チャージタイムも細かい術式もすっ飛ばして魔力をぶっ放す。
 
ディバインバスターですらない、収束しきれず粒子を散らしながらもただ高速で突き進む魔力の噴流。
 
「ちっ」
 
それでもカートリッジとなのは自身、両方の魔力を用いたその威力は、拡散して減退しようとも十分なもの。
舌打ちして騎士が離れる間に、ヴィータは体勢を立て直した。
 
アクセルフィンをはためかせて、入れ違いになのはが駆け寄る。
 
ヴィータちゃん」
「わり、ちっとばかし今のはやばかった」
 
距離を置いた騎士は、自身の外套にできた小さな焦げ目に目を落としていた。
めぼしいダメージとも思えないその破損が、なのはとヴィータの与えた損害の全て。
しかも突発的なものでありあくまで、狙ってのことではない。
 
共にAAA+ランクを越える使い手である自分たちが二人がかりで、である。
 
「ふうん……誘導弾だけじゃない、か。少し舐めすぎてたかもね」
 
騎士は、少々予想外であったという風に呟いた。
言葉の通り実際、腹立たしくも自分たちは舐められていたということか。
 
「どうする、なのは」
「……フォーメーションを変えよう。ヴィータちゃん、前に出れる?」
「援護さえしっかりしてりゃな。でもお前こそ大丈夫かよ?」
 
なのはの問いはただ単に前衛での戦闘が可能か、といっているだけではない。
あの騎士と。シグナムですら打ち負けた腕を持つあの女性と真っ向からやりあえるか、ということだ。
 
相手が相手だ。確約ができないのは辛いところだが、自信はある。
なのはが先ほどまでと同程度の誘導弾による援護を維持してくれれば、押し切ることはできずとも、
彼女の砲撃を当てさせる隙をつくるくらいのことはやれるはず。
 
「……うん、術式さえ準備しておけばなんとか。シューターの制御だけに専念することになるけど」
 
けれどそれには、一対一で打ちあうヴィータ以上に援護のなのはへの負担が大きくなる。
今まで二人でやっていた数の誘導弾による攻撃を今度は一人で制御し、
かつ砲撃のためのリソースも残しておかねばならないのだ。
 
それだけの全力作業を要求される戦闘など、二年前のあの事故以来ヴィータの記憶にない。
言ってみればあの事故からの復帰以来、なのはが実戦でフルの実力を発揮するのはこの戦闘がはじめてのこと。
出来ることならば、ヴィータとしては避けたかったことではあったが。
 
体調が完全でないなのはに果たしてそれが可能なのか、心配だった。
 
「つまり、あたしがアイツをちゃんと押さえ込んどけば問題ないんだな?」
「……うん。頼りにしてる」
 
直後、二人の周囲が光り輝いた。
なのはの足元に魔法陣が広がり、眩い光は夥しい数の光弾へと形を成していく。
 
その量は、ヴィータの鉄球と先ほどまでのそれらを併せた数を遥かに越えて膨大。
白服の魔導師の見せる微笑に、一瞬ヴィータは目が点になった。
 
そして次には自ずと、笑みをこぼしていた。
 
──何が頼りにしてる、だか。
 
どうやら自分の心配は、杞憂だったようだ。
エース・オブ・エースの異名はやはり、伊達ではない。
そのことを同じ航空隊で一番よく知っているのは、誰より自分ではなかったか。
 
「……上等っ」
 
自分とこいつなら、高々騎士の一人くらい、どうってことない。
その自信が、胸に戻ってくる。
 
なのはは、砲撃。自分はクロスレンジを得意とする、ベルカの騎士。
きれいに役割の分かれた、これ以上ない取り合わせではないか。
 
「いくぜっ!!」
「うんっ!!」
 
そうだ。自分が前に出てなのはを、護らなくてはいけないのだ。
彼女にはその援護をしてもらえればそれでいい。
そして、最後の一撃を。
 
それまでは、守り通す。
 
もう、あんなことはごめんだ。二年前の、事故のような。
自分は騎士。
護ると決めた相手を護り、仇なす者を共に討つ。
 
実力を認める、彼女だからこそ。
それを発揮できるよう、自分が動かなくては。
 
*   *   *
 
「……ひょっとしてユーノ、怒ってる?」
「別に」
 
嘘ばっかり。
向けられた背中が明らかに怒っている……というよりも、呆れている。
 
「なにか手伝うことが……」
「怪我人の手を借りるようなことはないよ。アルフも下で手伝ってくれてるし」
 
やっぱり、勝手に病室から抜けてきたことを怒ってる。
資料集めで徹夜続きのせいか、対応がぞんざいだ。
 
入院着ののままの自分の格好を見返して、フェイトは肩を竦めた。
 
なのはとヴィータがあの騎士……『レクサス』と戦闘に入ったとの情報が
病室のフェイトのもとに届いてまだ、幾許も経っていない。
 
その報せを聞いていてもたってもいられず、なにか自分にできることはと思い病室を抜け出してきたのだが。
 
「大体、怪我人の仕事は怪我を治すことだろ。なのはだってきっと心配するよ」
「それは……そうかもしれない、けど」
 
まずはきっと、シャマル辺りが見つけて大騒ぎするのだろうが。
これで病室を抜け出すのは累計で二度目なわけだし。
 
「でも。今やれることを、少しでもやっておきたいんだ」
「……知らないよ?無理して傷が開いても」
「その辺の割り当てはユーノが調整してくれるでしょ?」
 
家族やなのはの次に、フェイトはユーノとの付き合いが長い。
これでも彼の扱い方は熟知しているつもりだ。
無論今彼に言ったことは八割以上が本心からの言葉なのだけれども。
 
案の定彼は溜息をついて肩を落としつつも、医局のシャマルに通報するようなことはしない。
 
寝癖だらけでぼさぼさの頭を掻き毟り、フェイトに一枚の電子ボードを放ってよこす。
 
「調査済みの資料目録。司書室の机の上に散乱してるから、整理をお願い」
「わかった、頑張るね」
 
ずらりと書名、資料名の並ぶボードのモニターを見ながら、フェイトは満足して踵を返した。
 
*   *   *
 
──返したのだが、これはまた、なんとも。
 
「……聞きしに勝る……というか」
 
机上は──というより、司書室そのものが雑然とし、混沌とした有様をフェイトの眼前に突きつけていた。
 
「忙しいときはほんとに大変とは聞いてたけど……」
 
少々、いや凄く予想を上回る散らかりようだった。
無限書庫の業務のハードさを示すが如く、あまりに。
ひょっとするとここは管理局一過密な業務内容を求められる部署なのではあるまいか。
 
「……っと。いけないいけない」
 
思わず、圧倒されていた。
戦えないぶん、今の自分に出来ることをするために来たというのに。
呆けている場合ではなかった。
 
早速、作業にとりかからないと。
 
『sir』
バルディッシュ?」
 
堆く机に積み上げられた書物の一冊を手にとった彼女を、オーバーホールから返ったばかりの愛機が呼び止める。
 
『Please take care right.』
 
右?とそちらに目をやるとなるほど、そこにある山の一つが一冊の小さな書を基点として屹立していて、今にも崩れそうに揺らめいている。
 
放っておくのは作業を進める上で、後々面倒なことになりそうだ。
 
「バインド……資料を破損させずにやれそう?」
『If power can be suppressed to the minimum』
 
シャマルからはまだ、魔法の行使は止められているけれど。
このくらいなら構うまい。
回復しきっていない身体とはいっても、負担にもならないような魔力で使える魔法なのだから。
 
指先を向け、細い糸のように伸びるバインドで本の山を固定する。
先にこの危なっかしい積み上げ方をされた資料たちを切り崩したほうがいいだろう。
 
「不安定の原因は……この小さいやつか」
 
他の本はバインドで空間そのものに固定されている。
躊躇なく、基部の文庫本ほどのサイズしかない資料本を引き抜く。
 
「わっ!?……うわ、すごい埃」
 
軽く力をこめて動かしただけだというのにひどく埃が舞って、口元を覆いフェイトは顔を背ける。
年代ものの資料らしい。
こんな古いものをぞんざいに積み上げていて、希少価値的に問題はないのだろうか。
 
バルディッシュ、これの配架場所は?」
『The investigation seems not to have ended in the book yet.』(調査の終わっていない本のようです)
「……え?てことは、調査済みに紛れ込んじゃったってこと?」
『Perhaps』(おそらくは)
 
確かに、これだけごみごみとしていれば未調査資料の一冊や二冊、紛れ込んでしまうこともあるだろう。
 
杜撰だなぁ。
フェイトはやれやれと苦笑しながら、本を手近のスペースに置いた。
あとでユーノに届けてやらないと。
そして、作業を続行する。
 
生憎と、資料や考古学に疎いフェイトが知るわけもなかったが。
彼女が置いたその本の、煤けた茶色の表紙に踊る掠れた文字、それは。
 
見えづらくなっても確かに、古代ベルカ言語の使用文字、その字体であった。
 
(つづく)
 
 
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