第一話でございます。

 
やや短めになって、一応全十一話の予定。
 
ひとまずはWeb拍手レスから。
 
>遂にエリキャロSS開始ーッ!しかも早速ヴィヴィオも登場!?流石ッ!これからの更新に期待してます!14話は「高町なのは19歳。母親(見習い)始めました!」とか言うキャッチコピーが頭に浮かびました。(笑)フェイト師匠から母親の何たるかを学んでいただきたいものです。…それはそれとして、ロッサが普通に良い人だ。ロッサ…疑っててごめん。公式ページとか初登場時とかの君の顔があまりに胡散臭かったから。(爆笑)
俺の脳内ではクロノと親友と言う段階でヴェロッサに憧れるフェイトという異端極まりない妄想ができあがっちゃってますが。ひとまずうん、ヴィヴィオのかわいさは反則だと思うんだ。
 
>なんだろう、やっぱり赤ん坊関連?クロノが困るのってそれくらいな気がする。
わかんないぞ!!意外と痔が切れたとかかも!!(ぉ
 
>エリキャロはいいものです。13話は良い親子話でした。私もSS書きの端くれですが、やはり新事実が不安ですね。頑張ってください
ぶっちゃけ13話でヴィヴィオの世話してる二人見て本編にやられちゃった感満載でした(汗
でも書くのが俺のジャスティス。
 
 
んでわ、九話補完話参ります。
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
部下の居場所を聞いた親友は先に行くとだけ一言言い置くと、その場にいる他のメンバーを残し駆け出した。
 
とるものもとりあえず、一目散といった表現が相応しい。
不本意な形で残してきた問題を一分一秒でも早く解決し、部下であり教え子たる少女と和解をするために。
 
「……あたし、余計なことしちゃったんでしょうか?」
 
残された六人は、それを見送る。
ヴァイスが肩を竦め、シグナムが溜息をつき。
シャマルヴィータは顔を見合わせていた。
 
「大丈夫。見てられなかったんでしょ?シャーリーは」
 
フェイトもまた友の後姿が消えた扉の向こうに目をやりながら、頭ひとつ低い数年来の部下の頭を撫でてやる。
ほんの少し、乱暴に。
 
「フェイトさん……」
「だったら、しょうがないよ。間違ったことはしてないよ」
 
ただ本人にとって急だったというだけで。
遅かれ早かれティアナの態度が変わらなければ、誰かが──なのは自身か、あるいは自分が話すことになっていただろうし。
 
六課設立以前から彼女と親しくしている者にとっては、あの事件は忘れようもないものだから。
 
「ただちょっと、なのはに確認してからのほうがよかったかもね。又聞きを人に聞かせるのはあまりよくないよ」
「……はい」
 
八年前の、出来事。
多分それは自分たち三人──フェイトとなのはとはやてが局入りしてからはじめての、そしてもっとも大きな出来事だった。
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers another9th −羽根の光−
 
第一話 八年前の、あの日まで
  
 
訓練場には、人影がひとつ。
黒いマントを身に纏い、同じく漆黒の戦斧を手に、じっと時を待つ少女がいた。
 
時にして、八年前のことである。
バリアジャケット・ライトニングフォーム……当時まだフェイトの使用していた魔法戦闘用の防護服の名が、それであった。
 
「……そこっ!!」
 
詠唱に要した時間は、瞬きするほど。
生成された雷の槍が五基、それぞれのターゲットに向けて放たれる。
いずれも、フェイトの立つその位置からは視認不可能な場所へと。
 
直後、爆音、爆風が五つの場所から吹き上がり木霊する。
 
己の放った射撃の着弾に、二房の長い金髪が揺らめいた。
 
「……」
 
手ごたえ、あり。バルディッシュ、オペレータールームからも共に全ターゲット撃破の報告が入ってくる。
だがしかし満足すべきはずのその結果にも、フェイトはこぼれる溜息を自らに禁じ得ない。
 
──目前に迫った執務官試験当日まで、あと一週間。果たしてこんなことをやっていて、合格することが出来るのだろうか。
 
本局の実施している資格試験の中でも最難関に分類される、執務官資格取得試験。
受験資格に規定された勤続日数に半年前は、僅かに三日足りなかった。
今度はそのようなことはありえない。この半年間、やってきたことが試される。
 
言い換えれば、半年間やってきたことはまだ全然、足りないのかもしれないのだ。
この訓練を終えた後にすべき法務関係の試験勉強や面接の練習の予定が、びっしりと頭の中を埋め尽くしていく。
 
(……クロノや母さんは大丈夫だって言ってくれてるけど……)
 
正直言って、自信はない。
やるだけのことはやってこの追い込みの期間に入ったつもりだし、なおも自分を高めたいからこうして訓練に励んでいるけれど。
人に言われるほど自分が試験に向かって十分な力を付けたかどうかというと、不安でならなかった。
 
「……?」
 
いくら試験経験者や自分のことをよく知る人物に太鼓判を押されようと、不安なものは不安なのだ。
ナーバスな気持ちを抱えた彼女は、背後に人の気配を感じ俯き気味だった顔をあげる。
 
馴染みの深い幼い声が直後、土埃の向こうから放たれた。
 
「おー、流石。視認不可ターゲットへの全弾命中たぁな。ま、こんくらいお前なら当たり前か」
ヴィータ
 
訓練場の空調が土煙を吹き抜けさせ、その先の様子が露わになる。
 
声の主もまた、己の紅い衣を風に任せていた。
愛用の鉄槌型アームドデバイスを肩に、笑みを浮かべている。
 
「仕事、終わったの?来てたんだ」
「機械相手とはいえ、調子よさそーじゃん」
 
紅い衣といっても平時の今は見慣れた騎士甲冑ではない。
ロングコートにも似た武装隊の深紅のアンダースーツ……つい最近までシグナムも愛用していた緋色のものとおそろいのものである。
かっちりとした局本来の制服を嫌い、武装隊所属という身分を利用し動きやすいこの服装を彼女は好んで着用していた。
 
食堂で顔をあわせて以来、一週間ぶりになる友人の顔に、フェイトは思わず顔を綻ばせる。
 
「なのはとシグナムから頼まれてよ。手が空いてんなら模擬戦の相手してやってくれって」
 
もっともさして時は置かずその色はそのままに、身を包む動きやすさを重視した服は光に消え、可愛らしい装飾をあしらったスカートへと変化する。
着飾るためでも、私服でもない。本来の紅の鉄騎としての戦闘態勢、前述の騎士甲冑へと。
 
「ありがとう。助かるよ」
「ま、あたしだってそこまで暇じゃねーけど。こんな自動制御のターゲット相手にしてるよか有意義だろ、そっちも」
 
なのはもシグナムも、このところ忙しくしている。
二人のことだから訓練に付き合ってくれるつもりだったのだろうがそうもいかず、代わりにと彼女をよこしたのだろう。
 
確かにヴィータ相手なら、密度の濃い模擬戦ができるだろう。
単調で容易な訓練を繰り返すより、よっぽどいい。
 
「んじゃまー、行くぜ。試験前にポカやらかして怪我すんじゃねーぞ」
「わかってる。気をつけるよ」
 
*   *   *
 
──そんなやりとりに安心してしまうくらい、当時の私は余裕がなかった。
 
自分のことに必死で、他にまで気が回らなくて。
一番の親友にすら、注意を向けてやることが出来なかったんだ。
 
「……あんま、思い出したくないことではあるんやけどなぁ」
 
なのはがティアナのもとに行ってしまった以上、必然的に部隊長への報告はフェイトの役目となった。
詳しい報告書は明日でいい、とのことなので口頭でのごく簡単なものであったが。
 
昼間の一件に加え出撃前のやりとりも含め聞き終えたはやては、椅子の背をぎしりと鳴らして天井を仰いだ。
 
「けど、出撃のときのはともかく、昼間のことについてはもーちょいはよ言って欲しかったかなぁ?」
「すいません、八神部隊長」
「あーいやいや、指揮官としてではなく、友達としてな?」
 
そんな畏まらんでええよ、と、背筋を伸ばしたフェイトに苦笑するはやて。
生真面目な部下と砕けた上司。その二人の関係はもとはといえば親友なのだから。
 
威厳を見せねばならない相手が見ているわけでもなし、堅苦しくする必要性はない。
 
「あの、八年前の事故って」
 
二人のやりとりに、そっと手を上げてリインが入り込んでくる。
彼女もかつてのなのはの事故については知っているはずだ。
そういえばあの頃まだこの子は、生まれたばかりだったか。
 
「リインが生まれてすぐの……」
「そやね。リインはまだこーんなちっちゃかったなー」
「……はやてちゃん、それ今も変わってないですよぅ」
 
バイスの化身であるリインの外見はプログラムをいじらないかぎりは成長することはない。
今の身長と変わらぬ大きさを両手で示しておどけてみせるはやてに、リインも口を尖らせ、あきれたようにつっこんでいた。
 
「そうじゃなくてー、リインがいいたいのは……」
「ふふっ、まあまあ。はやてもわかってるよ、リイン」
 
知ってはいてもこの子の記憶には殆ど、事故の前後に起こったことなどは残っていないだろう。
 
なにしろ当時はまだリインは、はやての言う通り生まれたてで、活動と休眠を繰り返しながら世界への適合を続けている状態だった。
はやてとの融合のマッチングや、日常生活における学習。
完成したばかりのその肉体や情緒に過剰な負荷がかからぬよう、彼女の休息とそれらの作業は等しく行われていったのだ。
 
ある意味では、当時のなのはとは、正反対に。
 
「あの頃のなのはちゃんの階級は……確か、准尉。役職としては航空武装隊の一小隊を預かる、副隊長のポジションやった」
 
十一歳という年齢にして准尉という士官の階級を持ち、そのうえに一部隊の副隊長。
陸上部隊に比べ個々の部隊が細分化され小隊、中隊から成る小規模多数編成の航空隊であるが故の人事ではあったが、
当時はまだはやても上級キャリア試験を受験する前であり、フェイトも目前に執務官試験を控えた一介の候補生の身であった頃である。
 
自分達の中でもなのはは、出世頭。全てが、順風満帆であった。
 
その日、事件が起こるまでは。
 
「たまたまや。ほんとに、たまたま。もともとの任務自体は簡単な偵察任務が一件、はいっとるだけのはずやった」
 
必要とされたのは、現場を指揮する能力と、優秀な空戦能力。
 
「戦力的には、別の班が回されてもなんも問題ないはずやったのに」
 
空の若きエース、そして副隊長という部隊のスポークスマン的位置を務める、説明責任を負う立場もあってメディアへの露出が増え始めていたなのはの活躍は、離れていてもフェイトもはやても皆、知っていた。
頑張っているな、自分も負けていられない、頑張らないと。
放送されるなのはの雄姿や、インタビューに慣れ始めたことがわかる彼女の流暢な受け答えは、友である自分達をそういう気分にさせてくれる良い材料であった。
 
だからこそ余計に、気付くことができなかったのかもしれない。友を誇らしく思えるが故の、親友であるからこそ。
 
全力、全開。
今までがそうであったように、常に彼女がそうであることをわかっていながら、自分達は気付けなかったのだ。
 
「事件が起こったのは、忘れもしない。……私の受けた執務官試験、その日だった」
 
明らかに群を抜いて彼女のマスコミへの露出が、多かったということに。
それは即ち、様々な任務へと出ずっぱり、ひっぱりだこであったということ。
更に立ち向かうほぼ全ての任務で彼女が、全力を出しきっていたということに。
 
なにもかも今思えば、後悔でしかない。
過ぎ去った過去に対する、ああすれば、こうすればという惜しむ思い。
それは今なお、皆の胸にしこりとなって残り、こびりついて離れない。
なのはが元気になった、八年と言う歳月が過ぎ去った今もまだ。
 
彼女の翼が折られ、再び立ち上がり羽ばたくまでのあの期間のことを、二人は忘れない。
 
 
(つづく)
 
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