魔法少女育てますって

 
ヴィヴィオのことも含んでたのかと気付くのは今更すぎに遅すぎますねorz
 
局ラジ24時間スペシャル聞きながら更新ですよわっほい。
 
まずはWeb拍手レスー。
 
>ヴェロッサ×フェイト良いと思いますよ。 個人的に「やられたー、その発想はなかった」って思いました。いつか書いて下さい。 コレを書けるのは多分640さんだけですよ。
裏道けもの道を行かせていただきまする。
 
>今回は珍しく過去シーンだけでしたね。そして遂に鷹h…じゃなくてバカは舞い降りた。(笑) なのは達の生涯を通して恐らく最も下らない戦闘。そしてクロノがなのは達の間で一気に株を落とした戦闘。(爆笑) でも、実は一番気になるのは今回の加筆部分。描写からすると「アレ」っぽいですけど、ユーノの「アレ」はなのはからのプレゼントのはず…はて?
多分エイミィと結婚してからも基本シスコンは変わってません、クロノ。
てかうちだとそう。
 
>シスコンお兄ちゃんが最高すぎる!この後どう正気に戻るかな?
多分実力行使?
 
>ユーノ・・デバイス無しでよく防げてますよね。その気になればエターナルコフィンも…流石に無理か。
防御はけっこう鬼だと思うんですよ、ユーノ。氷とか状態変化系がやばいかな?
 
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んで、喪失辞書更新ですー。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
──変わらない。言っても多分、意味がない。
 
金髪の少女は、冷たくそう言った。
対峙する自分を、貫き通すような冷え切った、それでいてどこか寂しげな目で。
 
自分は、何かをしようとしていた気がする。
彼女のいるこの場所で。
 
彼女に?
彼女と?
……それとも彼女と、競って?
 
「!!」
 
木々の生い茂る森の中で、少女は自分を見下ろしていた。
 
そして、腕の中の黒い斧が、こちらに向けられていた。
 
「いやああああぁぁあぁっ!!!」
 
斧が金色の光を帯びた直後、なのははベッド上で叫んでいた。
暗闇が視界一面に広がるそこは、帰ってきた自室。
 
汗みずくになった身体を、少女は荒い息とともに夜の室内へと持ち上げる。
 
「だれ……なの……?」
 
夢の中の、自分を撃った少女。その顔はまぎれもなく、あの病院で出会った少女のそれであった。
彼女に自分はなぜ、撃たれねばならない。
どうして彼女は、自分を知っていた。またなぜ自分はあそこにいたのだ。
 
疑問ばかりがなのはの心を満たす。自分が知らぬ間に、一体何があったというのだろう。
 
フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。
いつの間にか運び込まれたあの場所に現れた、あの少女と自分の間には。
 
なのはが少女に対し憶える感情は、疑念と。そして肉体の記憶する痛みへの「恐怖」であった。
今の彼女は、魔導師ではなく。
 
記憶を失った力なき、一人の少女でしかなかった。
 
 
魔法少女リリカルなのは 〜the lost encyclopedia〜
 
第十六話 日常
 
 
「ちょっと、それってどういうことよ」
 
自分が伝えるべきだ、と思った。
 
なのはが登校してくる前の、朝の屋上。
数日ぶりに袖を通した制服に身を包み、昨日のうちに携帯で呼び出しをかけていたアリサとすずかを、フェイトは迎えた。
 
「なのはが……あんたのこと、知らないって」
 
中学入学以来短くしたアリサの髪が、高所ゆえの強い風に揺られる。
すずかのロングヘアーも、フェイト自身のそれも然り。
 
「言ったとおりの意味……なんだ。なのはは、もう私を覚えてなくって」
 
記憶喪失、というものらしい。
 
三日前の顛末と、なのはに起こった出来事をかいつまんで話す。
彼女の記憶の中に、自分がいないこと。
ただあるのは頭による記憶ではなく、肉体が無意識下に刻み付けている、かつて二人がぶつかりあった痛みとしての記憶。
 
自分が彼女に対し振るった刃であり、向けた敵意。
痛みは丸裸になった少女の心に恐怖としてのみ残り、拒絶を生んだ。
 
「魔法も、全部。『こわいもの』として心のどこかに封じられちゃったんだって」
 
おそらくは、戦闘におけるダメージに対して肉体が、精神が働かせた心身を守るための防衛機制によって。
かつての重傷の記憶を残している身体が、再びその身を襲った『魔法』という名の暴力に対し過剰に障壁を作ってしまった。
己が身体を守るため。その根源となるものから精一杯に離れようとしたのだ。
 
痛みの──瞬間と継続、二つの苦痛を、憶えているが故に。
 
「はやては!?まさかあのコのことまで──……」
「……はやては、大丈夫。初対面が病院だったから」
 
直接、矛を交えたことはなかったから。
彼女がどうして見ず知らずの場所にいる自分を迎えに来たのか疑問に思っていたから、彼女に関しても魔導騎士についての記憶は失っているようだが。
 
……相変わらずアースラで半保護状態が続く彼女だから、今この場にはいないものの。少なくとも、友としてのはやてのことを、なのはは忘れてはいない。
 
「……じゃあ、フェイトちゃんだけ……?」
「……うん。なのはが知らないのは、私のことだけだから」
 
この、仲良し五人組だったメンバーのうちで。
なのはの記憶から消去されたのは自分だけ。
 
管理局と、魔法と。守護騎士の皆の記憶とともに欠けてしまっただけだ。
 
「だけだからって……戻る可能性はあるの?」
「わからない」
 
一時的なショックによるものだとは、医師たちも言っていた。
けれどそのショックによる封印がどれほど強固で、どの程度解除に時間を要するのかは誰にも判らない。
記憶を閉ざしてしまった、なのは本人にすら。
 
きっかけが必要だ、とも聞いた。
 
「私も……もう行かなきゃいけないんだ。はやてやクロノたちが待ってるから」
「そんな!!そんな、なんでもないみたいに言うことじゃないでしょ!?」
 
自分に出来るのは、待つことだけじゃない。
事件をはやく終わらせること。待つ以外に、やれることがある。
 
「あんただって怪我したんでしょ!?なら……」
「あ、いたいた。アリサちゃん、すずかちゃーん……?」
 
なのはのことでは待っているしかできなくとも、はやてのためにやれることはまだあるのだ。
二人とも、フェイトにとっては大切な友達だから。
 
たとえ片方の記憶から自分がいなくなっていたとしても、どちらもフェイト自身にとっては変わることのない。
 
「な、なのは……?」
「探したよー、鞄あるのに二人ともいない……っ!?」
 
向けられたのが、笑顔でなく。
怯えと嫌悪を含んだそれであっても、けっして変わらない。
 
面と向かうこともできず。とっさにブロンドの友人の背後に隠れるようにして、様子を窺われるだけであってもだ。
なのはは自分にとって、大事な友達だから。
はやてのために事件を終わらせて、なのはのために待つ。
 
「行っていいよ、アリサ」
「フェイト、けど」
「いいの。私もどうせいかなくちゃ」
 
彼女が、自分のことを思い出してくれるまで。
泣いてなんていられない。沈んでいるなんて、まして。
必ずなのはは、帰ってくるんだから。
 
他のなによりそうやって、自分に言い聞かせている必要があった。
絶えず何度も、何度も。
少しでも間を置いたら、積み上げた理屈の積み木が崩れてしまいそうだったから。
 
半分なのはに引っ張られるようにして屋上から校舎内へと戻っていく友人たちの姿を、フェイトは見ないようにしていた。
 
足音が扉の向こう、廊下の先に消えてからも暫く彼女は、風に吹かれている必要があった。
自分でも気付かぬうちに、心臓が嫌というほどに暴れだしていた。
激しい鼓動に落ち着かない胸は、それでいて何故か正反対に氷のように冷たい。
 
深呼吸を繰り返し、金網に手をかけて身体の震えが治まるのを待ち。
青空から影を落とす白い雲をぼんやりと見上げる。
 
「……あ」
 
ポケットの携帯電話が、鳴っていた。
 
相手も見ずに開いたそこに、文字が踊る。
 
──“あんたを泣かせてやれるくらいの胸の広さは、あるつもりだから。あたしも、すずかも。 アリサ”
 
晴れ渡った空だというのに、雨が液晶を打った。
不思議なほど熱を持った、雨だった。
 
*   *   *
 
−次元間空間内、航行艦L級・アースラ−
 
こちらの撤退、追撃の弱体化の影響は明らかな数字となって現れている。
 
魔導書完成に向けて、敵は行動を予想以上の早さにて再開し。
なおも犠牲者を、増やし続けている。
 
「本気か?はやて」
 
捜査会議も、紛糾したものになるだろうと思われていた。
ほぼ身内ばかりとはいえ、これからどうすべきか。
敵の動きが動きであるだけに対応・対策についての意見は割れると思われていたからだ。
 
それを纏める立場にあるクロノ自身、このまま事件が長引けばはやてを責める声が局内から出てこないとも限らないと、ナーバスになっていたのも事実である。
ただでさえ闇の書について非難を受けることの多い立場にあるのだ。
上を目指すはやてにとって、将来的に大きな障害とならないとも限らない。
 
しかし、紛糾するまでもなく。
現場メンバーによる会議の席上を静まり返らせたのは他でもない、はやて自身だった。
 
「もちろんです、クロノ艦長。これが一番てっとりばやいし、失敗の可能性も少ない」
 
場を和ませようとしてジョークがすべった、というわけではなかった。
関西弁の独特のイントネーションを残しながらも、言葉は上官に対する真剣な敬語。
 
まっすぐにこちらを見据えた視線が、はっきりと彼女の中で意思が固まっていることを示す。
 
「狙いが私なら、乗ったればええ。あっちにとっても渡りに船の状況を作ってやるんです」
 
つまりは、囮。
敵のターゲットたる夜天の王──はやて自らを餌につかった作戦を、彼女はクロノに進言していた。
 
家族の誰にも、その考えは伝えていなかったのだろう。
今朝合流したばかりのヴィータが、シャマルが言葉を失い、寡黙なザフィーラまでもが明らかな動揺の様子を見せている。
リインとはやてのみが真剣な面持ち、覚悟を決めた表情で議長の位置の席に座すクロノに目線を送っている。
 
確かに、現状でもっとも迅速に解決を目指すことのできる方法ではある。
 
一度見失った以上、相手の細かな位置特定には時間がかかる。
今わかっていることといえば次元間転移は行っていないということ、未だミッド北部のどこかに潜伏しつつ、犯行を続けているということ。
はやてを囮に使うことが出来れば、その手間が一気に短縮される。
どちらも同じ夜天。二つの繋がりゆえに、はやてが動けば間違いなく相手も動く。
 
もちろん、問題もある。
囮をつとめるはやてを現在の戦力だけで、守りきれるのかというのがまず一点。
ただしこれは時間をかけても改善できる可能性は低い。
陸上部隊からの部隊派遣は既に断られているし、レヴァンティンの修復は間もなく完了するとはいえ、シグナムは未だふさぎ込んだまま。
しかも現行の保有戦力の殆どが、夜天の守護騎士・ヴォルケンリッターたちなのだ。
ヴィータが操られたのと同じように、彼女らのうちの誰か──あるいは全員が、敵の手に落ちる可能性もある。
 
(……もっとも、そのための対策はマリーに頼んであるんだが)
 
はやての進言に、素直に頷くことができない状況があった。
 
「……一応、作戦の立案を煮詰めてみてくれ。それを見て判断する」
 
それでも、理に適った進言ではあった。
おそらくこの作戦を採用せざるをえないであろうことを感じながら。
クロノはひとつでも多くの判断材料を、欲した。
 
*   *   *
 
システムそのものに、手を加える必要性はなんらないはずだった。
いくらかの破損があるとはいっても、せいぜいが外装周辺。
内部機構に関しては隅々までのチェックの後に、異常がないことは確認している。
 
マッチング調整を終えれば、レイジングハートは完璧な状態へと戻るはずなのに。
「彼女」自身はそれをよしとしなかった。
 
「大丈夫?レイジングハート。結構な突貫工事だけど……」
『no problem』
 
おかげでこの三日、マリーはほぼ不眠不休の作業を強いられていた。
まったくもってメカニックを酷使するデバイスである。
 
だが────……やりがいもある。
 
「思い出すね、闇の書事件のときのこと」
『?』
「あのときもあなたは、自分から願った。ご主人様……なのはちゃんのために」
 
自らを、変えることを。
強くなるための変化を、彼女は望んだ。
バイスたる機械のその身体を、改造することによって。
 
『I thought that the improvement of Exelion Mode was sooner or later necessary.』
「腹案はあの頃からあったんだ?」
『yes』
「偶然だね、私も考えてはいた」
 
二年前の冬。あの事故以来。
けれどプランはあったものの、事故の反省からかなのはがさほど無茶な任務に繰り返し駆りだされ続けるということは少なくなり。
細かい任務やデスクワークの比率も増えていったおかげか、エクセリオンモードの出番もなく。
 
なによりなのはが、自身の魔法に関してもう一度向き直り、改めて細心の注意を払い手加減ができるようになったということが大きかった。
 
「なのはちゃんの身体も成長してきてたし、いらないかとも思ってたんだけどね」
 
モニターには、エクセリオンモードに酷似した長槍状の機体の設計図。
 
細かな数値の設定は完了している。
 
「あとはレイジングハート、この数値に機体を徐々に慣らしていって」
『all right』
 
同時に、横のスロットからデータロムがせり出してくる。
これは別。
クロノから頼まれていたプログラムのおおまかな組み上げが出来上がったのだ。
専門チームのところに持っていけば、一両日中には完成することだろう。
 
主が戻ってくるまでには、間違いなく終わらせます。レイジングハートはそういってデータの読み込みを開始した。
 
メンテナンス装置は彼女の収められているものを含め、いくつか室内に設置されている。
複数班体制で大掛かりな作業も可能なように、広いメンテナンスルームにある程度分散して。
 
彼女と同じく整備を受けながら、主を待つデバイスがやはり、部屋の片隅の整備装置の中に座していた。
修復を間もなく終えるそのAIはアームド・タイプの若干簡易なものでありながらも、己が意志のもと絆深き主の帰還を待ち続ける。
 
──その名は、炎の魔剣・レヴァンティン。
 
二機のデバイスはそれぞれに、主の復活を待ち望んでいた。
 
 
(つづく)
 
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