見たんですが。

 
閉鎖問題の持ち上がってる某ssサイトさんがあっちこちで話題になってますね。
ちょっと覗いてみましたが、うーん。なんか水掛け論というかなんというか。
とりあえず自分は原作やってませんし、とらハとなのはは雰囲気的に食い合わせが悪いと思ってる人間なんでそこの作品は読んでないんですが。良質なssサイトさんが閉鎖されるなら、それは残念なことだと思います。月並み意見ですまん。
 
気をとりなおしてWeb拍手レスっ。
 
>ユーノくんのことはなんでかすりもしないのですか?うううなんか百合に見えるのですよ。ユーノくんのことふれてくださいよ、640さん!お願いですよお・・・・・・orz
え・・・いや、なんでと申されましても。そうプロット立てちゃった・・・というか特にユーなの作品として書いてるわけでもないですし・・・。ダメですか?
 
アリシアをキチンと復活させるハッピーエンド、いいですねー。後日談、楽しみにしてます!
she&meもそろそろ続編かきたいですねー。とりあえずこの前Web拍手お礼(先々月分くらい?)に書いた奴をこっちに移そうかしら。
 
>ユーなののssがかなり面白かったです
ありがとうございますー。さあみんな、なのは×ユーノステーションに応募待ってますぞ。
 
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んでわ、羽根の光を更新しまーす。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
俄かに、慌しくなったなのはの病室。そのときはまだ、私は母さんの胸で泣いていて。
次々と駆け込んでくる士郎さんや、桃子さんや。
なのはの家族たちを、母さん共々目で追うしかできなかった。
 
けれど、だからこそ気付いたのだ。皆が病室に消えた少し後で母に支えられて立ち上がり、ドアに手をかっけたところで。
放心したように虚空に目を泳がせながら、とぼとぼと廊下の向こうから現れた少年の姿が近付いてくることに。
 
彼は前後すら覚束なく思えるほど、ひどくのろまな歩みで──おそらく、士郎さんたちを追いかけてきたのであろう。
けれどユーノは、彼らの後に続くでもなく、こちらのことにすら気付く素振りもなく。
ただ病室の前まで辿り着き、やってくると入るでもなくじっと立ち尽くしていた。
 
「……ユー、ノ……?」
 
呼びかけるんじゃ、なかった。
 
「……どう、した、の……?」
 
訊くんじゃ、なかった。立ち上がり部屋に入ろうともすべきではなかった。
素直にただ、母さんに縋って泣いていればよかったのだ。
 
彼の首は油の切れかけた機械のようにぎこちなくこちらを向き、ぱくぱくとなかば掠れて声になりきれぬ声を、ようやくに紡ぎ出した。
 
「……の、は、が……」
 
彼は、確かにそう言った。そして彼を追うように曲がり角を折れてきたヴィータもまたその言葉を、聞いていた。
彼の声を、聞き取ったのか。それとも唇の動きでわかったのか。そんなことは、どうでもいい。
 
──なのはが、もう飛べない。歩けない。二度と……永遠に。
 
自分が彼の言った意味を理解したというだけで、十分。ヴィータのついた尻餅の音も、内側から開かれた扉も、意識の範囲外。
……いや。それ以上のことなんてできはしない。少なくとも、私には無理だった。
扉の前、床、母さんの腕の中。三つの場所で一様に放心する、蒼褪めた三人の姿がそこにあった。
なのはが目覚めたなんて報せ、耳に入るわけもなかった。そんなもの、気休めにもならない。
 
「……ふぇい、と、ちゃん……?」
 
ただ、白いベッドから向けられた弱々しい声が私の耳を打つ。
 
「どう、したの……?執務官、試験、いかなくていいの……?」
 
答えられなかった。事故の日から止まっていた時計がやっと動き出した彼女はまだ、なにも知らないのだ。
私が放棄した試験など、とうの昔に終わっていることも。
 
「……ごめん、なさい」
 
私もいつしか、背後で蹲るヴィータと同じように膝を折っていた。
もう、いいんだ。執務官試験なんて、どうだっていい。どうだっていいんだ。
 
「ごめん……なさい……っ」
 
私のその声は、なのはに聞こえていただろうか。
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers another9th −羽根の光−
 
第五話 僕にできること
 
 
──それから、数日が経った。
 
変わらずなのははベッドから動くことの出来ない重傷患者であったものの、目覚めて以来その傷から考えれば驚くほど元気な姿を見せていた。
食欲も十分、包帯と絆創膏で半分近くが覆われたその顔には笑顔を覘かせて。
クロノたちの奔走で面会許可の下りたすずかとアリサの訪問に、談笑を交わしている。
 
「でもよかった。思ったよりなのはちゃん、元気そうで」
 
その光景が、逆に心に痛い。
三人が三人とも──本人さえもが、もう元に戻らない彼女の身体のことを知らされていないのだ。
知らないからこそ皆、無邪気に笑っていられる。
 
「まだ全然どこも動かないんだけどねー。でも元気は元気だよ」
「怪我人が元気っていうのも変な話ね……」
 
だから、知っている自分はその輪の中に入っていけない。
彼女達のように笑うことはできない。
 
三人の他愛のないやりとりが、眩しすぎる。
包帯に覆われた彼女の身体のその内側が一体どういう状況なのか知っている自分には、とても同じことはできなかった。
できることなら、その場から目を背け逃げ出してしまいたかった。
けれどそんな不自然な行動をとってしまえば、説明しなければならなくなる。
 
なのはの家族さえもがもう少し落ち着くまではと伏せていることを、そのように発覚させるわけにはいかない。
 
彼女たちが知ったら一体、どんな顔をするのだろうか。
 
「はーい、笑って笑って。運気が下がってまうよー」
 
と。
 
「何起き上がってんだよ、なのは!!寝てるよーにシャマルや医者から言われただろうが!!」
「わ、ヴィータちゃん。ごめん」
 
後頭部を軽く、ぺたりと叩かれると同時に、赤毛の少女の怒声が部屋に響く。
ヴィータがベッドのなのはへとずかずかと迫っていき、振り向いたそこにははやてが微笑む。
 
「はやて」
「なのはちゃんにお届けものやで。やー、とっといてよかったわ、これ」
 
そしてはやては、背後に看護婦が押してきた大きな物体を示す。
それは一同にとって、ひどく懐かしいものだった。
 
ほんの一年少し前まで、はやてがその車体と共にあるのは、五人にとって当たり前の風景であったもの。
 
足が不自由だった頃のはやてが愛用していた、紺色の車椅子。
埃ひとつなくぴかぴかに磨かれたそれを、はやてはベッドの横につける。
 
「……リハビリ終わって歩けるようになるまで、必要になるやろうし。よかったら使ってもらえんかな思て」
「……え?」
「うん。ありがとう、助かるよ」
 
なのはに対してそう言ったはやての目は、彼女ではなくフェイトを見ていた。
ちょっと、いいかな。念話でもなく、目でそう問いかけている。
ぎこちなく、フェイトは言われるまま小さく頷いた。
 
「あーもう!!返事はいいから横んなってろ!!世話焼ける!!」
「ごめーん、ヴィータちゃん」
 
*   *   *
 
「あかんで、フェイトちゃん。あんな顔しとったらなんもかんも、ばれてまう」
「でもっ……はやては心配じゃないの?なのはの体のこと」
 
白いシーツが風にいくつもたなびく屋上。
はやての言葉は、案の定釘をさす調子を含んでいて。
 
冷静な彼女の様子に、我慢できず思わずフェイトも食ってかかる口調になってしまう。
 
「そりゃ、もちろん心配や。やけど他の皆やなのはちゃん自身まで不安にさせたらあかんやろ」
「けどっ!!」
「可能性は、ゼロやないんや」
 
だが、どこまでもはやての諌める口調は変わらない。
聞き分けのない子を諭すようにゆっくりと、フェイトに語りかけてくる。
 
「まだ決まったわけやない。シャマルから聞いた。リハビリ次第ではまた歩けるようになる可能性もゼロやないって」
「……え」
「やから……って、フェイトちゃん?なんか勘違いしとらへん?」
 
はやての言葉はしかし、フェイトにとっては意外なもの。
あちらもこちらの表情が変わったのに気付いたか、顔を覗き込むようにして訊いてくる。
 
ひょっとして、という希望が、フェイトの中に湧いた。
 
「だって……なのははもう……歩けない、んじゃないの……?」
「ちゃう、全然ちゃう。あくまでそれは可能性の問題や」
 
可能性……?
呆然と、フェイトははやての言うことに耳を傾け、聞き入っていた。
 
なのはの負った怪我が、非常に重いものであること。
管理局の医療技術を以ってしても完全治癒そのものが困難であるほど、骨も神経もひどく傷ついているということ。
最悪の場合、二度と歩けなくなるかもしれない──いや、その可能性のほうが高いということ。
 
まして、魔導師として再び空を舞い復帰するなどということは今の段階では考えも及ばないほどだということ。
まずそれらが、なのはと自分達の前にある絶望的な状況。
はやては順を追って説明していく。
 
けれど、希望がないわけではない。
リハビリさえ十分に行い、彼女の身体がついてくることができたなら。
彼女の再起はけっして不可能なことではないのだ。
 
たとえそれが、あまりに分の悪い賭けであったとしても。
可能性はまったくゼロではない。1パーセントであっても絶対ということはありえない、回復の可能性は残されている。
そのためには、長く苦しい──心さえ折れてしまいそうなリハビリが待っているけれど。
 
「それ……じゃあ……?」
 
彼女の魔導師としての道は、決して立たれてはいないのである。
はやてが言っているのはつまりは、そういうことであった。
 
「なのは……また……歩ける、の……?」
「だからそう、言うとるやん。……なのはちゃんの頑張り次第、って限定はあるけど。なのはちゃんが頑張り屋さんなんは、フェイトちゃんもよく知っとるやろ?」
 
なのはが、また歩ける。
空を、飛べる。
 
その言葉を瞬間、体の中から何か重いものが抜け出ていくようだった。
ふらりと、全身が脱力した。安心に腰が抜けたフェイトを、はやてが慌てて支えて、手近なベンチに座らせてくれる。
 
「よか……た……っ、わた、し……てっきり、ユーノが言ってた、から……っ」
「多分、ユーノくんは最初の検査結果を聞いたんやと思う」
 
なのはと一番深い絆の結ばれたユーノであるからこそなおさら、その話を重く受け止め、捉えたことだろう。
でも、何回か検査をやっていくにつれて可能性があることがわかってきた。
ごく僅かなものであっても、なのはの身体機能は戻る可能性があるということが。
 
絶対に「戻らない」のと高い確率で「戻らないかもしれない」のは違う。
 
希望はまだ、閉ざされてはいない。
 
「あーほら、泣かんの。まだ治るって決まったわけやないんやし。でも気休めかもしれんけど、少しでも可能性があるなら信じてみたほうがええやろ?」
 
うん、うん。
首を激しく揺り動かして、両手で覆った顔のまま何度も頷く。
 
「同じことヴィータにも言ったら、あの通り世話焼き女房さんに大変身や」
 
なのはがまた歩けるようになるまではあたしが代わりに守ってやるんだ、って。あんなに張り切って。
そのときのことを思い出したのか、はやての言葉には若干の苦笑が混じっていた。
フェイトも、彼女がそう言って拳を握っている様子を想像するのはさほど難しくはなかった。
 
泣き笑いのような顔になっていることを、フェイトは自覚する。
 
ヴィータに負けてられんで。私らにやれること、まだまだあるんやから」
「う……んっ」
 
ユーノにも伝えなくちゃ、と思った。
彼にも、この進む道に僅かであっても光る希望の火を、報せないと。
 
どんな困難があっても、前途が苦しくても。
なのはならきっと乗り切れる。きっと私たちと同じ場所に戻ってこれる。
そこに、希望がある限り。
フェイトはそう、強く思った。
 
自分たちにできるのは、それを支えていくこと。
彼女が二本の足でもう一度立ち上がることのできるその日まで、彼女の手となり足となって、助けていくことだ。
 
希望があるなら、自分たちもそれを信じよう。
 
白き砲撃魔導師が、再び空に羽ばたく日のことを。
たとえ指先の爪ほどの希望でもいい。信じなければ、はじまらない。
言うは易く、現実は困難そのもの。
僅かな可能性にばかり、彼女たちは目が行っていた──いや、見ないようにしていたのかもしれない。
 
けれど、今は。それに縋るしかなかった。
 
(つづく)
 
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