いやさ、この『羽根の光』ってタイトルさ。

 
とあるバンドのとある曲からとってるんだけどね。
話の流れとは正反対に無茶苦茶能天気な曲だったりします。…うん、ただそんだけ。
 
拍手のお礼も更新しましたー。
ではWeb拍手レスから。あ、4の422氏への感想は送られていた分確実に氏へと届けましたので。
 
>PCが復活されたようで何よりです。喪失辞書最新話、なのはのエクシードにクロノのブレイクインパルス、シグナムの復活!と熱い展開の連続で燃えさせて頂きました。プロットを修正されたているとのことですが個人的には直球でもスローカーブでもフォークでも大歓迎ですので(笑)お好きなように書いて頂ければ、と思います。
えー、んじゃチェンジアップで(ぉ
 
>フェイトって、苦労したり悩んだりしてる姿がやけにはまってますよね…。それにしてもティアナが結構鋭い。
六課フォワード陣での空気読める度はティアナ>ちびっこ二名>スバルだと思うのですよ。
だがスバルのそんなとこも私は好きです。
 
>もしや以前から言われていたフェイロッサ!?痛む胸を押さえつつ続きお待ちしてます。フェイト切ないよ……
うちでフェイトにスポットが当たると大抵悩んでる気がしますね(汗
そのうちハゲるんじゃないか、この子は(ライオットでみじん切り
 
>nocturneアフターの続きフェイトさんがどういった決断をするのか楽しみです。
うん、俺も楽しみ。……ごめん嘘、ちゃんと最後まで考えてあるから。
 
>胸が締め付けられるようなフェイトさんも良いですが、幸せなフェイトさんも見てみたいですね
ある意味今回の話はうちのフェイトに対する救済・・・になるのかなぁ?微妙。
 
>フェイトを第二婦人にしちゃってください。
ロリアルフも入れたら第三じゃね?(ぉ
 
>nocturne新章読みました、面白かったです。更新が待ちどうしいです。がんばってください。
多分同じ人だろうということでまとめて。
頑張らせていただきますー。ちまちま更新していきますよー。
 
>nocturne新章いい滑り出しですね。フェイトはカミングアウトしてしまうんでしょうか。
ヴィ「しゅらばだ、しゅらばだー」
ユー「ヴィヴィオ!?どこでそんな言葉を・・・」
ヴィ「がっこーで、聖王教会のカリムさんが教えてくれたのー」
ユー「騎士カリム……」
・・・え?カリムとクロノって不倫してるんじゃないんですか?(ぉ
 
− − − −
 
さて、羽根の光更新ー。
なのはのほうは徐々に気流に乗りつつ。例によってあの方が悩む悩む。
てかほんとうちのあの子は悩みまくりだなおい。
けっこう時間が経ってたりします。
 
↓↓↓↓
 
 
 

 
「……ぐ、ううううぅぅっ!!」
 
何度目だったろうか。
 
精一杯の力が込められ──込めようとされているであろうなのはの左手が、体重を預ける両サイドの手すりから滑り落ちるのは。
 
「なの……っ」
 
床に崩れ落ち、蹲るなのはへとフェイトが思わず駆け寄ろうとする。
駄目だ、とばかりにユーノはその右手を掴み、彼女をその場へと押し留める。
 
どうして、という顔が目尻に浮かんだ涙とともにそこにはあった。
飛び出していきたい気持ちはユーノにだってわかる。けれどそれでは意味がない。
なのはの、立ち向かう意志に反する。そのことは、フェイトにも理解できているはずだ。
 
「っ!!」
 
床を舐める身体を持ち上げようと突き出された両腕が崩れ落ち、再びなのはの身体は地を這う。
その音にフェイトは顔を背け、ヴィータは無言で彼女の己自身の肉体との格闘を見守っていた。
 
「もう……いっか、い……っ!!」
 
そして彼女の口から漏れ聞こえてきた言葉に、きつく瞑っていた瞼をフェイトは見開く。
本来補助に入るべき、看護師たちさえもが息を呑んで見入っていた。
震える身体で、起き上がらんと必死になのははもがき続けていたのだ。
 
「まだ……っあと、すこ、し……っ」
 
硬く強張ったままであった彼女の左の指先が、ほんの僅かばかり、動いたような気がした。
 
直後、ハッとしたようにフェイトは胸元を押さえ足早にその場を立ち去っていった。
──任務だろうか。
見るのが辛いのならば、彼女にとってそれはむしろタイミング的によかったのかもしれないとユーノは思った。
 
通信のコールを伝えるバルディッシュを懐から取り出しリハビリテーションルームをあとにする、彼女の後姿に目を遣りながら。
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers another9th −羽根の光−
 
第九話 上昇気流と、下降線
 
 
瞼を覆う、冷たく濡れたタオルが心地よかった。
 
「ここんとこ、ちょっと張り切りすぎなんじゃねーか?そんなに慌てなくてもいいんだぞ?」
 
身体はもう、全身がくたくた。
ヴィータの押してくれる車椅子の揺れにただ身を任せ、タオルのひんやりとした感触を存分に味わう。
 
「……っあー……」
 
ちょっと、年寄りくさい声が出てしまったかなとも思う。
けれど目一杯に筋肉が疲れきり火照った身体に、この冷たさのなんと心地よいことか。
 
「……でも、少しずつ希望は見えてきた」
 
そう言って、なのはは目元を覆う濡れタオルへと手を伸ばす。
遅い。一秒、二秒。ゆっくりと時間をかけて。
 
それが限界のスピードだった。小刻みな震えを未だ残しながらも、彼女の“左腕”は確かにタオルを摘み上げ、持ち上げた。
もっともやれたのはそこまでで、指先からすぐにタオルは膝の上へと滑り落ちてしまったけれど。
自分の利き腕が見せた確かな進歩に、まだ落ち着いていない呼吸でなのはは笑みを漏らす。
 
「念話のほうももうすぐ解禁だっけ?」
「うん、来週の検査次第で、魔力の行使も許可が出るって。シャマルさんが言ってた」
「そっか。復帰まであともうひと踏んばりだな」
 
──やっとお前の世話から解放されるわけだ。まだもう少し先だろうけどな。
軽口交じりに素直な喜びの表情を見せるヴィータへと、なのはは視線を向ける。
 
「あのね、ヴィータちゃん」
「あん?」
「……ありがとう」
「へ」
 
なのはがぶつけたのは、正直な感謝の言葉だった。
 
この入院中、同じ五文字の言葉は何度も言ってきたけれど、それらとはまた意味合いが違う言葉として彼女は赤毛の少女へと感謝を言い表したのだ。
自分の不安を包み隠し誤魔化した、ただ相手を安心させるためだけの「ありがとう」ではなく。
ただ純粋に、自分を支え続けてくれている彼女に対する感謝、それだけのために。
 
「な、何言ってンだよ!!急に……っ」
 
まあ、直球過ぎて案の定というか、三つ編みお下げの彼女は激しくうろたえる姿を見せてくれたのだが。
 
ヴィータちゃんが今言ったように、もうちょっとだけ迷惑かけちゃうと思うけど……わたし、がんばるから」
「あ、さっきのは別にそういう意味で言ったんじゃ……」
「また、一緒に歩いて。飛べるようになるから」
 
自分の意志を伝えながら。
あの日、二人きりの病室でユーノと交わしたやりとりをなのはは噛み締める。
 
“支えるから”。そう言った彼の腕は暖かくて、心が安らいで。
彼だけではない、みんなが支えてくれている。自分は支えられている。
そんな当たり前のことが、ごく自然に再認識させられた。
 
頑張るんだ。そう、思えた。
 
「なのは?ユーノがどうかしたか?」
「うにゃっ!?わ、わたしなにか言ってた!?」
「いや、唇読んだだけだけど。ユーノがどうとかって呟いてなかったか?」
 
──と、考えていたら意識がどこかに飛んでいたらしい。
覗き込むヴィータの顔が間近にいつのまにかあり、どきりとするなのは。
 
「そ、そんなことないよ……多分」
 
でも、ひょっとしたらユーノくんのこと呟いてたかもしれない。
バウンド音が高いまま鳴りやまない心臓の辺りを押さえ、大袈裟に苦笑いする。
ユーノくんが言ってくれた言葉とか、ユーノくんのぬくもりとか。……ユーノくんの匂いとか。
思い出して悦に入りきっていたわけではないと思う。
 
多分。きっと。──おそらく……うん。
 
「ん?顔赤いぞ。無理して熱出したりは……」
「ち、違うってばぁ」
 
ユーノとの出来事を思い出す度にむやみと熱くなる頬に動揺しながらも、ヴィータの気遣いはありがたい。
具合が悪いとかそういうことではないから、首は横に振るけれど。
もっとも傍から見ればあそこの二人は廊下の真ん中で車椅子を止めて何をやっているのだ、となるのだろうが。
 
「なのは、ヴィータ
「ん」
「あ、シグナムさん」
 
そんなやりとりが中断したのは、廊下の向こうから歩いてきた女性が声をかけてくれたおかげ。
 
首都を護る航空武装隊の制服に身を包んだシグナムが紙袋片手にこちらへとやってくる。
 
「ちょうどリハビリメニューが終わった頃だと聞いたんだが……病室にも戻らずお前たち二人は何をやっているんだ」
 
……そうでした。
 
二人が今他愛のないやりとりをしていたその場所は、なのはの病室からほんの数メートルとない距離。
とっとと病室に戻ったほうが人目も気にせず話したいだけ話せたのである。
 
「あ、はは」
「? ……まあいい、ほら」
 
先に病室の扉へと辿り着いたシグナムが、扉を開いてくれる。
彼女が開け放してくれたそこをヴィータに押され、なのはの車椅子はくぐった。
 
「もうお仕事、今日はあがりで?」
「いや、今からだ。出がけに恭也と会ってな、明日美由希と見舞いにくるそうだ」
「そうですか、ありがとうございます」
 
いくら航空武装隊員の家族とはいえ、管理外世界の住人である恭也たち高町家の面々が本局へとやってくるのはそうほいほいできるものではない。
それでもクロノやリンディ、八神家の面々の尽力のおかげで週に一度程度の面会は可能なようスケジュールはセッティングされている。
確か前回は母が先週の土曜にこちらに来たはずだ。
 
「さて、と」
 
サイドテーブルに持ってきた紙袋を置くと、シグナムはベッド脇につけられた車椅子からなのはを抱き上げる。
まだ身体機能の戻っていないなのはは、一人ではベッドには戻れない。それゆえ誰かが運んである必要があるのだ。
 
「すいません」
「気にするな、昔何度もやったことだ」
 
シグナムは慣れた手つきで、膝裏から抱えあげたなのはをベッド上に降ろす。
さりげない動作であったが、痛みも殆どなくなのははその身を横たえることが出来た。
 
「……で、テスタロッサは?」
「え?」
「てっきりこちらにいると思ったのだが」
 
云われて、ヴィータと二人顔を見合わせる。
 
「えと、リハビリの途中で出て行ったみたいでしたけど?」
「ああ、あたしも見た。任務じゃなかったのか?」
「なに?」
 
三者三様。疑問の表情をつきあわせた。
 
「いや……私はアースラのポートを使ってこっちに来たんだが。普段使っているポートがメンテナンス中だったのでな」
 
二人と一人の間には、情報と認識にどうやら齟齬が生じているらしい。
 
「クロノ提督たちとは会ったが……妙に慌しそうではあったが、テスタロッサはいなかったぞ?」
 
*   *   *
 
その食い違いは、同じ頃別の場所でも生まれていて。
 
「ユーノ君」
 
病棟待合室のロビーで自販機から購入した缶ジュースを取り出そうとしていたユーノは、かけられた声に身をかがめつつ、声のした方向に顔の角度をずらした。
 
「リンディさん?」
なのはさんの付き添い、大変そうね。頑張ってるみたいじゃない」
 
友人の母にして、なのはやユーノ、八神家の面々にとっては局員としての生活を続けていく上での後見人でもある。
翡翠色という特徴的な色の髪をゆるく背中でまとめた女性は私服で、彼の背後に立っていた。
 
「なのはの見舞いに来てくれたんですか?」
「ええ……クロノやエイミィがなかなかこれないものだから、代わりにね。それと、フェイトのことで少し」
「フェイトって……まさかフェイトの身体、どこか具合でも?」
「ああ、いや。そうじゃなくて。ちょっと……ね?」
 
ユーノの問いに、難儀の文字を意味の中に含んだ苦笑をかつての女艦長は浮かべた。
 
「次の執務官試験まで、もう三ヶ月切ってるでしょう?それでフェイト、クロノと昨日喧嘩してしまって」
「フェイトが?クロノと?」
 
ちょっと、想像のし辛い光景だった。
なにしろクロノとフェイトはこれまで、義理の兄妹としても上司と部下としても実につつがなく、うまくやってきた二人であったから。
 
ただ、執務官試験を巡って言い争うというのもわからなくはない。
不測の事態であったとはいえ、フェイトは一度不合格を経験している。
 
同じ経験のあるクロノがなのはの看護へどうしても意識を傾けがちな彼女に少々厳しい物言いをするという可能性は十分、ありえることだ。
 
「昨日の夜は双方頭を冷やしなさい、で治まったのだけれど……。さっき、そのことでクロノが呼び出したらしいのね、フェイトをアースラに。そこでまたもめてしまって」
「はあ」
「それであの子、アースラを飛び出したらしくて」
「えっ!?」
 
クロノの言い方が少しまずかったし、転送ポートの設定から行き先がここだっていうのはすぐわかったのだけれど、と。
自らの子供たちが起こしたちょっとしたすれ違いに、リンディは肩を竦めていた。
 
「──で。フェイト、戻ってきてる?」
 
そんな彼女から尋ねられたのは、ユーノにとっても与り知らぬことであった。
 
なにしろユーノはリハビリの最中に出て行くフェイトの姿しか、この日見ていない。
知るわけがないのだ。
本局の商業区画を眼下に望む、病棟の屋上から。
フェイトが今一人でただ、行き交う人々の流れを見下ろし思索に耽っていることなど。
 
言われて、探して。初めて知ることであったのだ。
 
(つづく)
 
− − − −
 
Web拍手にて、感想などありましたらどぞー。つWeb拍手