これで完結ですぞー

 
まずweb拍手レスーてか局ラジじゃないか今日はー
あ、とらでのこみトレ新刊委託決まったよー
んじゃいくよー
 
>エリオが・・・(涙目) とびかかってきたってことは、仲直りはできたってことだと思うので、よかったと思います。が・・・まあ、エリオガンバレとエールだけ送ります^^;
おー、久々のエリキャロ話へのレスですな。どうもでーす。
 
>次回が待遠しいです。
ありがとございます、週一・・・くらいでがんばりまする。 
 
 
 
− − − −
 
はい、んで羽根の光最終話。
今回かなりフリーダムに趣味に走ってまーす。
かなり好き勝手やってまーす。
 
それでも読みたいという方ぜひいらっしゃいませ。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
駆けていく。ワンピースの白い制服のスカートが、翻るのも気にしない。
 
階段もひと足跳びで、長い金色の髪の二房を大きく振り乱しながら。
遅刻には程遠い、朝の廊下を疎らに歩く生徒たちの間を潜り抜けて、少女はひた走る。
 
辿り着いた教室の引き戸を一気に引き開けて喉からあふれ出たおはようの四文字は、自分でもびっくりするくらい、冷たい空気を切り裂いてまっすぐに伸びていった。
クラスメートの皆の登校時間帯から言えば、ほぼ間違いなく一番乗り。がらんとした教室が、彼女を迎え入れる。
 
──ただひとり。二本の両足でしっかりとリノリウムの床を踏みしめた、親友とともに。
 
「フェイトちゃん」
 
そう、再び名前を呼んでくれた。そして、小さく。それでいてはっきりと彼女は頷いた。
 
意図を伝えるには、それだけで十分。
彼女の言わんとしていることは、フェイトに明確に伝達される。
 
「フェイトちゃんは、どうだった?」
「あ……」
 
一歩。また一歩、少女はこちらへと歩み寄ってくる。ほんの少しまだ、片方の足をひきずるようにしながらも。
お互いの顔と顔だけが、双方の視界に溢れ。少女は、微笑んだ。
 
「わたしは、ちゃんと勝ったよ。大変だったけど……空戦ランク、昇級試験。無事に合格」
 
フェイトが返すのも、殆ど同じ言葉だ。差し出された彼女の両手を自分の手にとって、しっかりと握る。
右手も──もちろん左手さえもが温かく、そして確かな力で握り返してくる。
 
「わたしも。執務官試験、ちゃんと合格した。なのはに負けないように──勝ったよ」
 
つまり、この勝負はどちらも勝者。負けた者はいない。フェイトも、なのはも。
 
だから──……。
 
「そっか。じゃあこの勝負、引き分けだね」
 
だから、微笑みだけでは物足りない。心からの溢れるよう笑顔で、どちらともなく。
二人はおもいきり、笑いあった。絶交? そんなものもそういえばあったな、と思えるくらい、それがごく当たり前であると実感し、その当たり前が戻ってきたことを噛み締めて。
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers another9th −羽根の光−
 
第十三話 羽根の光
 
 
「ほんと、今考えれば無茶の上に滅茶苦茶だったよね」
 
そして、現在の二人もまた。その日までにあったこと、その日笑いあったことを懐かしい、かつての記憶として語らいあえる場所にともにいる。
 
「滅茶苦茶とは酷いなぁ。あれでも昇級試験に間に合わせるのに、必死だったんだよ?」
「だから。それが滅茶苦茶だって言ってるの」
 
コーヒーの入った、湯気の立つマグカップが二つ。
適宜砂糖とミルクを加えられ、ほのかに和らいだ棘の丸い香ばしさを漂わせているそれを彼女の右手から片方受け取って、フェイトは口を尖らせるなのはに笑う。
 
「ちゃんとユーノから全部、あのあと聞いてるんだからね。なのはがどれだけやりすぎなメニュー組んでたかとか、リハビリだけじゃなくしっかり休ませるのがどれだけ大変だったかとか」
「うー……で、でも」
 
ずずず、とコーヒーを口にし一旦言葉を切る。甘味と苦味の混じりあった濃い目の茶色い液体が、口の中に広がっていく。
流石は、喫茶店の娘というべきか。わざわざ豆を地球から送ってもらいなのはが直接一人分ずつドリップして抽出したそれは、苦すぎず薄すぎず、フェイトの味覚に非常に合ったものに仕上がっている。
 
もっとも、お互い忙しい毎日を送る機動六課の隊長職という身だ、なのはもフェイトも。
けっしていつもこうやって手間をかけたコーヒーを淹れるわけでもないし、飲めるわけでもない。
オフィスにいるときなど、大体はルキノたちの淹れるインスタントコーヒーを飲用するのが常である。自室でも、作り手が違うだけで基本的には同じだ。
 
ただ、ふとしたとき。ちょっとしたとき、思い出したようになのはは自分でキッチンに立ち、実家から送ってもらっている特製のココアや、コーヒーや。
あるいはもうひと手間かけてキャラメルミルクなどを丹精こめて、フェイトへとご馳走してくれるのだ。
 
「私やヴィータもそうだったけど、やっぱり一番心配してやきもきしてたのはユーノなんじゃないかなぁ」
 
今日こうしてコーヒーを差し出してきたのも、部下との間にその「ふとしたこと」があったからだろう。
その程度の言葉で片付けてしまうには、傍から見ていてもけっして軽いことではなかったけれども。
 
「たまには会いに行ってコーヒーのひとつ、ご飯のひとつでも作ってあげたら? アグスタでも見てたけど、随分会ってなかったんでしょ。きっと喜ぶよ、ユーノ」
 
なのはが自分の椅子に座ったのを見計らって、自分の言ったユーノという名前からやはり、ふと思いついた話題を振ってみる。
 
まずは、思わせぶりに。ここが大事。
 
「あ、え? そ、そう……? でも、まだみんなの訓練とかで忙しいし、それにユーノくんだって……」
「ほら、独り身の男の人の食生活って偏りがちっていうし」
 
そして食いついたところですっとぼける。──いわゆる「持ち上げておいて落とす」話術。
あまりに期待通りの反応で当初うっすらと頬を一瞬赤らめたなのはは、きっと今自分はシグナムのような意地の悪い笑みを浮かべているんだろうなぁと自覚しつつコーヒーをすするフェイトへと、恨めしげな視線を向けた。
 
「……フェイトちゃん」
「ん? 何?」
 
もちろん、いくら睨まれたところで何食わぬ顔で誤魔化して流すけれど。
この辺はまるきり、自分を弄ってくる際のシグナムの仕草を真似させてもらう。

しかし、そういう目でこちらを見てくるくらい彼のことを意識をしているなら、どうして自分の気持ちがわからないのだろう。
わかっていて、見ないふりをしている?……いやいや、そんなに彼女は器用ではないはずだ。
むしろ、自分が意識していることそのものに気付いていない可能性のほうが高いだろう。
 
「もう。……あ、ところでね。随分先の話になっちゃうんだけど」
 
気持ちを切り替えるように一息ついて、なのはは話題を変えた。
さあなんだろうと軽く視線を返したフェイトに、彼女は上目遣いに頬を掻いて。
 
「ひとつ、お願いしとこうかなって」
「お願い?」
 
そして部下の名を、紡いだ。彼女の夢。彼女の歩みたいという、道を示す言葉とともに。
 
それはかつてフェイトが目指しそして今、歩んでいる一本の道。
 
「ティアナのこと。機動六課が無事運用期間を終えて、解散したら。よかったらフェイトちゃんのとこに声かけてあげてくれないかな。補佐官でも、研修生でも、なんでもいいから」
「……そう、だね」
「執務官を目指すなら、実物の近くにいてそこから学んでいくのが一番いいと思うんだ」
 
例えば自分が、クロノから教わり、学んだように──か。
 
彼女の言葉に想像してみて、それはけっして悪くない未来であるような気がした。
シャーリーに助けられてばかりの執務官である自分に、兄と同じ先導者としての器が勤まるかどうかは分からないけれど。
 
ティアナの能力は、きっとまだまだ伸びていく。それこそ、なのはの元を離れてからもずっと。
それを最も近い場所から見守り続けていくというのは、実に心躍る素晴らしいことだと思う。
 
「私に、できるかな? 先生役なんて」
「またまた」
 
フェイトの冗談めかした自嘲に、なのはが吹きだした。
ちびちび飲み進めていたコーヒーは、そろそろ一気に飲み干しても問題のない、程よい人肌の温度へと変わっていた。
 
*   *   *
 
そろそろ、明日の会議用の書類に軽く目を通して寝るかな。
 
二つのマグカップが空になり、洗い物へとなのはが席を立ったのを見て、フェイトはうーんとひとつ、伸びをする。
 
「あ、そうだ」
「うん?」
 
と、流しに水を出し始めたなのはがなにか思い出したように声をあげ、伸びの勢いに両手を天高く伸ばしたままそちらへフェイトは首を捻じる。
 
洗い物と言ってもカップ二つ、ソーサー二つ。五分とかからない。
泡をスポンジに握り出しつつ、彼女のほうへ視線を向けたフェイトに尋ねる。
 
「この前出張任務で海鳴に戻ったとき、アリサちゃんからなにかもらってたよね? あれ何だったの?」
「ああ」
 
そういえば、そんなこともあったな。……というか、忙しさにかまけてもらったきりしまいっぱなしにしていた。ごめん、アリサ。
 
席を立ち、自分のデスクの引き出しを開くと、それはそこにあった。
茶色い包みと、その中に収められた一枚のCDケース。
 
たまにはこれ聴いて、こっちの世界のことも思い出しなさいよ、なんて言ってたっけ。
 
「アリサ、最近大学でバンドやってるんだって。その関係でいろんな曲を練習がてら聴いてるとかで、くれたんだっけ」
「ふうん」
「どうする? 聴いてみる?」
「うーん。それもいいけど……ちょっと、飛んでこようかな。訓練場の上を軽く」
 
ケースを開き人差し指を中心の穴に差し込んで取り出したCDを見せると、洗い終えたカップを拭きながらなのはは考えるような顔になった。
壁に目をやって時計を見ているあたり、どちらかといえば自分の意志のほうが強いようではあるけれど。
 
にしても、少々なのはの言葉は唐突だった。
 
「飛ぶって……訓練? こんな時間に?」
「ああ、いや。そういうのじゃなくて、ただ単純に軽く夜風の中を飛んできたいなぁって思ったの。ただそれだけ」
 
この時間ならグリフィスが司令室には詰めているはずだ。少々融通の利かない面もある青年だが、それでも訓練場内だけならば飛行許可ももらえるだろう。
教導官が訓練場を使いたいといっているのだ、何の問題もあるまい。
 
「羽根を伸ばしてきたい、ってこと?」
「うーん、どうかなぁ。それもそうかもね。ティアナの必死さに何か、感化されちゃったのかも」
 
両手の水気を拭い、エプロンを外してなのはは首を傾げる。
 
「ああいう風にただひたむきだった頃のことを思い出しつつ、夜空の空気を感じるのも悪くないかな、って」
 
なるほど。フェイトがプレーヤーのトレイにCDのディスクを挿入したのと時を同じくして、ジーンズにジャージをひっかけたなのはは出て行った。
彼女の持ち込み品である高性能なCDプレーヤーは恙無く、フェイトから受け取った異世界からのデータの結晶を読み込み始めた。
 
……本当に、空の好きな彼女らしい言い分だ。ドアの後ろ手に閉まる音に、フェイトは微笑む。 
 
流れ始めた曲は、甲高くて、変わった声の男性ボーカルが歌っている曲だった。
アリサ直筆の筆跡でご丁寧に添えられたタイトルとアーティストの名前リストに記載された曲名は、『羽根の光』。
 
妙な符号に思わず微笑が失笑へと変わり、ついフェイトは吹き出した。
彼女は両足の燐光を纏った桜色の翼で、天を翔る。その彼女を送り出したと思ったら、これか。
窓の外を見れば、ぽつんと小さな光が夜空を不規則な動きに飛翔している。無事に飛行許可は下りたらしい。
 
飛ぶ、舞い上がる。
消えることなく、羽根の光は飛び続ける。
 
ティアナもスバルも、自分たちの先生の光が、こんなにも夜空にきれいだとは知らなかっただろう。
憧れとか、敬意とか。そういう理屈を抜きにして、彼女たちの目からも飛ぶ光は美しいと感じるはずだ。
見ていればきっと、そう思う。見ていなかったのならば、残念でした。
 
放物線や、急なカーブを描いて。桜色の光は空の波間に糸を引いては伸び落ちる。
舞い上がった羽根の光が、飛んでいく。
 
羽根の光が、飛んでいく。
 
 
−end−
 
special thanks to BGM, VOLA & THE ORIENTAL MACHINE “羽根の光”
 
− − − −
 
いやうん、一度こういうことやってみたかったのよ。つweb拍手