夏コミの時期もおわり。

 
なのはpartyやリリマジの申し込みしとかなきゃ。
前者で出すものについてはちょっとした企画を現在水面下で進めてます。
 
また、夏コミで委託しました新刊につきましては印刷所から発注分の残りが到着しだいとらのあなさんにて委託販売することになっております。こちらも状況が整い次第追って連絡をしたいと思います。
 
で、web拍手にレスを。
 
>日の目をみることのなかったファントムブレイザーをティアナが選ぶくだりはいいっすね!でもあの魔法、本編では狙撃ぽいというか、威力的にはショボそうに見えたのですが…
当初はもっと他のものを使うことも考えていたんですけども。
砲撃魔法なんで威力としてはティアナのなかでもかなり高い部類なんじゃないですかねぇ。
 
>一人分の戦力差か…さて、裏切りの魔導師はここをどう攻略するか…?
現在そのへん含めてせかせか書いてます。基本的に戦闘力の低い子なので、あの人。
 
>間に合った…!思わず手をグッと握りました。ここから怒涛の反撃に期待してます。
最初のプロット段階ではスバルたちのバリア破壊、もう少しかかってたのですよ。勝手に動いたってのはその部分。
 
 
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で。どうでしょうを更新するつもりだったんですが、ちと支部ラジに間に合わない感じなので今回は夏コミでの管理局通信に寄稿した作品を載せておきます。もちろん縦書きから横書きにするにあたって加筆・改稿はしてありますが。
昨日SSXを聞いたのもたぶんこれで更新する気になった原因の一つ。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
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『Eyes』
 
 
 腰周りも、胸元も。さすがはきちんと採寸をして仕立て上げられたものであるというべきか、袖を通した黒一色のそれは身体に吸い付くようにしてぴったりのサイズに出来上がっていた。
 
 それはいわゆる、カソックと呼ばれる黒い修道服。
 
「シスタぁー、サイズはぴったりだけどせまっくるしくて息が詰まりそうだよこの服ー。せめて半袖にするとかさぁ」
 
 姿見の大きな鏡の中に映った、自分自身の虚像を見つめる。自分を見つめ返す、自分がそこにはいる。
 更に耳へは後方でで世話役のシスター・シャッハへとぼやく、鮮やかな翡翠色の髪をした姉の声が届いていた。不満を漏らす姉も、自分も。身に着けているのは同じ服装。
 
 黒く、裾の長いゆったりとしたロングスカート。長袖も手首のところでほどよく口を開け、掌をわずかに隠す程度。赤いリボン留めの白ケープも、着用する前に思っていたほど動きにくくはない。
 
 活動の容易さを服装でまず気にしてしまうのは、近接戦闘を主だった行動の目的とし続けてきた悪い癖なのかもしれない。
 更正施設にいた頃、はじめて外出許可が出た際に姉であり教官でもあったギンガ・ナカジマ陸曹長──もうまもなく准陸尉へ昇進予定──は各々の服を選びながら言っていたではないか。
 
 普段着用する服というのは、似合うことが大事なのだと。
 
「あら、似合ってるじゃないですか、セイン。その服装がここでは正装なのですから、ちゃんと着こなしてもらいますよ」
「えー、教会の外に出るときもぉ?」
「出るときもです」
 
 そんなぁ、と。姉の情けない声が再度耳を打った。同時に、ふいに姿見の背後に映った金髪の女性が、ぽんとディードの両肩を叩く。
 
「まあまあ。彼女たちはまだ子供よ? 外出時くらいは私服も許可してあげましょう、シャッハ。夏服を取り入れるというのも悪くないわ」
「騎士カリム・グラシア
 
 後方へと言葉を投げながら、後見人たるその女性はディードの身体を点検するようにあちこち、服の上から撫でていく。丈は合っているか、ほつれはないか。時折、ケープの皺を見つけてはそこをぴんと伸ばしたり。
 あらかた終える頃に、耳元でフルネームで呼ぶ必要はないと囁き、もう一度今度は背中を叩く。
 
「うん、かわいい。よく似合ってるわ、ディード」
「そう……でしょうか」
 
 その、似合っているかどうかというのが、ディードにとっては最もよくわからないことだった。
 機能性のことならば自分の戦い方にどういったものが合致しているかは、よく熟知しているけれど。
 日常を過ごすための服、自分に似合った服装はと問われれば、口ごもり返答に窮するというのが実際のところである。
 
 と。こんこん、と、木製の分厚い扉が外からノックされる。数秒の後、もう一度同じ回数、音が室内へと伝導する。
 
「僕だよ。オットーが着替え終わったっていうから連れてきたんだ。開けてもいいかい?」
 
 それはカリムの弟、ヴェロッサ・アコースの声だ。部屋を見渡してからカリムが返したどうぞに、大小二つの影が扉を開き入ってくる。
 
「オットー」
 
 ケープを揺らし、ディードは振り返った。大切な、かけがえのない相手──双子の片割れが、十分ほど前に別れて以来の姿を見せたことに。
 
 彼は……いや、彼女は、一同からの視線が注がれていることに目を逸らしつつ、ほんの少し頬を上気させていた。その肉体の持つちょっとした──ほんとうにちょっとした特別な事情ゆえか、ディードにとっての双子の片割れは、あまり人の視線に晒されるというのが得意ではない。
 だが、スラックスも。それと同じ黒いベストも、緑色のネクタイも。ディードの目から見ても贔屓なしによく──……、
 
「へえ。よく似合ってるじゃん、オットー」
 
 そう、双方にとっての共通の姉であるセインの言うようによく似合っていると思えた。服飾に疎いことを自覚する、ディードをして。
 
「でもちょっと、フォーマルすぎない? それで一日じゅう過ごすのって肩こるぞー、きっと」
「セイン」
 
 更正施設の中での生活でも、姉妹中最も日常生活や生活習慣といったものに溶け込んでいた一人であるセインは、そう言って自分の肩に手を当てその腕をぐるぐると回して大げさに言った。……直後、シスター・シャッハに冷たい声で窘められたけれども。
 
「ディード。その……どう、かな」
 
 俯き気味の上目遣いに、オットーはディードを呼んだ。そして、訊ねた。
 
 ディードは一瞬、吐く言葉に迷い、室内の面々へと顔を移し──移してはだめだと最初に見たカリムの目に告げられ、中断して──そして、応えた。
 自信があったわけでもなく。けれど、素直に思ったように。
 
「とても。……とてもよく、似合っていると思う」
 
 瞬間、姉妹の──きょうだいの感情の起伏が少ない表情が、綻んだような気がした。それから、声が返ってきた。
 
「ディードも、よく似合ってる」
 
 彼がそう言ってくれるのなら、そうなのだろうと思えた。
 彼女が似合っていると言ってくれたのなら、それでいいと思うことが出来た。
 
 オットーはそう、きっと思ってくれた。少なくとも、ディードにとって彼からの言葉に勝る後押しはなかった。
 
「カチューシャ、赤にしたんだね。その……うまくいえないんだけど、すごく合ってると思う」
 
 オットーが、そう言ってくれるのだから。きっと自分にこの服装は似合っている。
 そう思って、いいのだ。
 
「綺麗だし、かわいいよ」
 
 一番好きな色──赤のカチューシャを、ケープの胸元を飾るリボンの色とあわせてつけていてよかった。言ってくれたオットーの胸元のネクタイの色も、ディードは好きだった。
 
 カチューシャの色が、自分の瞳と同じ赤であるように。
 彼の首筋を彩るネクタイの緑色もまた、ディードにとって大切なオットーの、その左右の瞳の色と同じであったから。
 オットーに、その色は似合っている。同じく自分にも、この色は似合っているのだ。
 
 それがいま、なにより嬉しい。
 
 抱いたその思いを、万感にこめて。カソック姿のディードは、執事服のオットーに微笑んだ。
 
 
  End.
 
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