数の子なんです。
くろのとくろえのぺーじさんのWeb拍手絵を見ていたらふと書きたくなったので了承とって書いちゃった。反省はしていない。
チャイナセインと給仕服ディエチ、よきかなよきかな。
(追記:リンク集うっかり全消去というポカやらかしたので現在ついでに整理中につき数減ってます)
とりあえず、まずはWeb拍手レスっ
− − − −
>なのはさん……生死がどうとか以前に原型留めてるのかどうかが怪しい状態に……((( ;゚Д゚)))
だいじょーぶ、一応生きてます、これからあと精神的に落とします。
>スバルゥゥ!カーテンコールはピンチに次ぐ大ピンチが多くてドキドキするぜ…。確かに聖王様からみたら、ゆりかご落としたなのはは大罪人か
その辺のメンタリティがヴィヴィオとちと違ううちの聖王さま。
− − − −
んだば短編のほうに行きまする。完全に衝動的に書いてるんでヤマもオチも意味もございません。
いーんです、セインとディエチが今回は書ければ(ぉ
↓↓↓↓
− − − −
〜なんということもない、若葉の頃の出来事〜
その日。──とある春の一日、である。
先の……三年前の事件において多大なる損害を出した時空管理局地上本部は、三年という月日がまったくそれ以前同様に巻き戻していったごく当たり前の、日常の喧騒とはまたひとつ違った意味で、大いなる賑わいを見せていた。
主に、その建造物の眼前に望まれる、広くゆるりとした面積の設けられた、パーキング・スペース内を中心として。
理由は簡単。人というものは概ね、イベントというものが好きだということだ。参加者としても、観客としても。あるいは、野次馬としても。
「それにしても、考えたね。『管理外世界の文化に触れてみよう』、結構、盛り上がってるみたいだ」
行き交う人の波を、本部テントから眺める影は三つ。順に企画主催、来賓、現場監督。人物を表す固有名詞をそれぞれに挙げるならば──八神はやて二等陸佐、フェイト・T・ハラオウン執務官、首都防衛隊隊長・シグナムということになる。
更に付け加えると、真ん中の一人を除いたペアはそれぞれの傍らに己が愛機たる融合騎の少女たちを連れている。
何ゆえなのか、揃いも揃って五人。
皆互いに色違い、模様の異なったチャイナドレスに袖を通して。
もちろんそれは中心のパイプイスに腰掛ける二等陸佐の立てた、今日この日の企画のために、だ。
「えー考えやろー。中華に和食、どっちもミッドやと一部の移住者が出してる店くらいしかないからなぁ。異文化交流も大事ってもんや」
「……私としては、少々この服装については不本意ではあるのですが」
一堂に会する面々が等しく着飾っているその光景は、周囲から見れば華やかの一言。
ぼやくシグナムも、からからと笑い飛ばすはやても、パーキングに特設された会場の出店を移ろう人々の視線の止まる的のひとつであるのに変わりはない。
料理に、美女。人を惹きつけるのに、これほどわかりやすい記号というものもないだろう。
企画担当者の独断と偏見が大いに入ったイベントであるとはいえ、管理局主催の行事に人が集まらないでは話にならない。彼女たちの──というよりも、この会場で仕事中の女性局員たちのこの扮装は、宣伝効果として成功といえるだろう。
ただし。今回はそれ以上にはやてとしては個人的に、なるべく多くの人出を集めたいという思惑があったのだけれど。
知り合いたちに、ちょっとした入り用な事情があるからこそ。
「スバルたちのほうは、うまくやっとるやろか?」
かつての部下たちと。かつては敵であった、その姉妹たちのために。
* * *
「だーもう!! いやだっつってんだろ!! 離れろ、くんなこのバカスバルっ!!」
ノーヴェが、逃げる。会議室のひとつを借りて設営された、更衣室の中を。
格好はほぼ半裸。シンプルな、白い下着の上下だけという姿で逃げ回る。
「えー。だめだってば、会場内ではどっちか着るのが規則、ルールなんだからー」
「ぜってーいやだ!!」
追いかけるスバルのほうはというと、浅葱色の和装──フリルのエプロンを前に結んだ、いわゆる給仕服を振り乱す。
片手には自分と同じデザインのものを、もう一方にははやてたちの身に着けていたチャイナドレスの、色違いを手にして。追いついて、壁に赤毛の妹を押さえつける。
「チンク姉っ!! ギン姉!! こいつ止めてくれよっ!!」
「よいではないか、よいではないかぁ〜」
セクハラは、いけません。そんな一般社会における基本事項など知ったことかとばかりに黒く笑いながら、スバルは捕獲した赤毛の己が妹へと迫っていく。
「ほどほどにね、スバルも、ノーヴェも」
もちろんそれを見守る姉たちは、スバルの愛情表現であるということを知っている。ゆえにそう軽く諌めるばかり。
一番下の妹──ディードへと二人、異世界のとある大陸で生まれたドレスを着付けてやりながら。
「せっかく、八神二佐が我々に復帰前の社会勉強の機会を与えてくださったのだ、あまりそうわがままを言うんじゃない、ノーヴェ」
もちろん二人も、先のルール……会場スタッフ細則に照らし合わせて合致した格好。濃紺と、灰色と。それぞれにチャイナドレスに袖を通して。
「すいません、チンク姉さま、ギンガ姉さま」
「気にするな。オットーも来れればよかったのだがな」
「騎士カリムの補佐のお仕事がありますから。シスター・シャッハも出張でいませんし」
私とセイン姉さまがこうして、お手伝いに出てきてしまいましたから。
末の妹は、スバルとノーヴェの作り出す喧騒とはまるで正反対に、静かに言った。違いない。頷く、この場で一番上の姉二人。
「セインとディエチか? 先に店のほうに出ているのは」
「そうッスねー」
既に給仕服へと着替えたウェンディが、椅子を揺らしながら頷く。
──というか、サボるな。着替えたならお前もとっとと行け。おそらく、気付いた誰かにそう言われるまではこの更衣室に居座ってだらける気だろう。
「よし、いいわよ。ディード」
「ありがとう、ございます」
姿見の前で、長姉二人が末の子の身体をくるりと回して、全体を彼女に確かめさせてやる。
ふわりと、彼女の長い栗色に近い、黒髪が揺れた。
自分自身へと赤いカチューシャの少女が遠慮気味に微笑んだとき、ちょうどノーヴェはウェンディの出した爪先にひっかかり、スバルに押し倒されたところだった。
「ん?」
ふと、ギンガは机上の小道具類を納めた箱の中に見知らぬ何かがあることに気付く。
チンク用。そう取り付けられたタグに書かれた筆跡はそう──前に一度、在りし日の機動六課に世話になっていた際見たその部隊の部隊長のもの。
「カチューシャ、ですか?」
ノーヴェたちのほうに行った彼女ではなく、ギンガに声をかけたのはやはりカチューシャを日常的に身に着けている、自分の服装の具合をひとつひとつ確認していたディードだった。
ただ、末妹の彼女が今頭に載せているそれと違う点が色以外にギンガの手にしたものにあるとするならば。
「そう、みたいね」
猫のような耳が、そこから一対ふさふさと生えているという点だった。
二人は腕組みした体勢で妹たちに少々の注意を促す銀髪の小柄な後姿を、猫耳の生えたカチューシャと交互に見遣った。
つけてみる?
つけてみますか?
互いが互いに無言のまま投げた質問は、ほぼ同義同語であった。
* * *
チャーシューメン三つに、ギョウザひとつ。注文は、二十番のテーブル。
「よっこいせ、っと。んじゃおっちゃん、もってくかんねー!!」
白い調理服の、テント下の厨房に立つ料理長へと声をかけ、セインはそれらの載った盆を持ち上げる。けっこうな量ではあるけれど、戦闘機人の筋力だ、このくらい何の問題もない。
チャイナドレスとかいう、管理外世界の民族衣装というやつもこうして着てみると、ひらひらはしているものの、思っていたより動きにくくはなかった。
時空管理局地上本部主催・管理外世界異文化体験フェア。そう銘打たれたこのイベントの盛り上がりは、上々。もっとも中身はといえば要は単なるデパートの物産展と殆ど変わりのないものではあるのだけれど。
こういう賑やかなお祭り騒ぎは、その一角にあるフードコートの接客を他の姉妹たちとともに、ディードと二人で教会からの助っ人派遣という形で任されたセインの性分としては大いに嫌いではない。
和食(と言うらしい)部門と、中華(やっぱり、と言うらしい)部門をそれぞれ姉妹で半々に。セインは、後者。
「今度はこっち、お願いします」
「おー、ディエチ。どおー? そっちは」
「セイン」
一方で、目の前を姉妹の、背中でリボンに結ばれた栗毛の髪が横切っていく。
「わりと順調……かな。他のみんなが出てこないのが少し、気になるけど」
「そっかそっか。しっかし、おもしろいもんだね、管理外世界の文化ってのはさ。同じ世界のものでも、アタシのとディエチが着てるやつとじゃ全然違うし」
「そ、そんなにじろじろ見ないでよ……。これ、下が短いんだから」
空の食器を厨房の係へと受け渡したディエチは、空になった盆を抱えた両手の指先で、給仕服の下半身の、短いスカートの裾を目一杯に伸ばして頬を赤らめる。
「えー、かわいいじゃん。ほら、アタシのだって」
「やめなったら」
セインはセインで、その身に着けたチャイナドレスは下半身のスリットが腰のあたりまで大きく切れ込んでいて、自分の格好に恥ずかしそうにしているディエチへとそれを振ってみせる。
正直、教会でいつも着ているカソックよりずっと動きやすいし、あちこちの刺繍も着飾るという意味ではデザイン的に凝っていると思う。
軽装が好きで修道服も半袖を日ごろ着用している身としては、大きく開いた胸元も、一足ごとに流れるゆったりとした裾も、さほど気にする点はなかった。
「なんていうか……その、視線感じちゃって」
「視線?」
「そう。セインは、感じない?」
セインも、ディエチも。本来の形とはその着こなしが違っていることを知らない。もちろん──そのアレンジを加えたのが、主催者であるどこぞの二等陸佐であるということも。
「どうかなー。アタシは特に不満はないけど」
「いや、それは……こっちも不満があるとかじゃ、ないんだけどね」
「ふうん。ま、いーや。ほんじゃま、あとでね」
「うん、お互いに」
ともかく。
話題があるとはいっても、互いに仕事中の身だ。そう話してばかりいるというわけにもいかない。
セインは、料理を運びに。ディエチは、注文をとりに、それぞれ分かれる。
* * *
やっほー、の声と。小さく振られる掌はもちろんいずれも聞き覚えと見覚えの中に存在するものと同じだった。
「陛下? それになのはさんも。いらしてたんですか?」
それぞれ、ゆったりとしたワンピースと、ミニスカートの親子。その、母親のほうが、ディエチへと小さく頷く。
ほんとに、たまたまだけどね。通りかかったら賑やかでなんだか懐かしい匂いがしたから、きてみたんだ。言って、娘の向かい側の席から微笑を向ける。
「なんだか、面白いことやってるみたいだね」
高町なのは一等空尉。現代に生きる聖王にして、彼女の娘──ヴィヴィオ。注文をとりに向かった先に、二人がいた。
「お休みですか?」
「うん、今日明日と。ヴィヴィオにどこか遊びに行こうって連れ出されて、ね」
「むー、だってママ、二週間ぶりのお休みなんだもん。一緒に遊びたいよー」
ごめん、ごめん。むくれるヴィヴィオに、なだめるなのは。
すっかり注文をとることを忘れていたことに気付いて、ディエチは彼女たちの前に水の入ったコップを二つ置く。
「今日は、ディエチだけ? みんなで?」
「あ、はい。セインとディード、スバルとギン姉にも手伝ってもらって、みんなで社会勉強です。八神二佐がとりはからってくれて」
「はやてちゃんが?」
なるほどと意外の両面を含んだ表情で、なのははきょとんとした顔をディエチに見せる。
「呼んできましょうか。たしかフェイト執務官も来賓で一緒に」
「いや、いいよ。お仕事大変でしょう? あとでヴィヴィオと一緒に顔だけ出してくるから」
そして、テーブル上のメニュー表を手にする。
ヴィヴィオとともに、しばし並んだ文字とにらめっこ。
「──じゃあ、これかな。ヴィヴィオは?」
「ママと同じのー」
……だって。無邪気に言ったヴィヴィオに、なのはとディエチは思わず苦笑しあった。
頷いて、ディエチは踵を返す。
「ああ、そうだ。ディエチ」
「はい?」
その背中に、なのはの声が投げられた。ディエチは、振り返った。
「その服。かわいいよ。とってもよく似合ってる」
「……あ」
少し、そこからは時間がかかった。
喉の奥にひっかかった、待っていてくださいの一言目と、すぐに持ってきますからの二言目は、すぐには出てきてくれなかったから。
気恥ずかしさと、こそばゆさが。
それら、似通ったふたつの感情が熱を持たせた頬を、人差し指で掻きながら、ディエチはワンテンポ遅れて、小走りの足を踏み出した。
* * *
なるほど。云われてみれば。
たしかに、視線は感じる。あちこちから。──というか、四方八方から。
「おねーちゃん、こっちにあのエビの入ったやつ、ふたつー!!」
「あいよー、エビシューマイねー!! もーちょっと待ってねー!!」
両腕いっぱいに蒸篭を抱えながら、飛んでくる注文の声に応対する。
もちろんそれも、ひとつやふたつではきかない。幸いペリスコープ・アイの録画機能がこういうときには役に立つ。記録して、巻き戻して。メモる。憶える必要、なし。見えないところで楽をする。これ、客商売の鉄則。そりゃあ、見えないところでの努力だって大事だけども。
勢いよく振り返ると、身に纏ったチャイナドレスが深いスリットで燕尾のごとく大きく翻る。
視線。──ああ、たしかに。殆ど付け根あたりまで露になった太腿だとか、蒸篭で塞がった両腕の、腋だとかに特に。あと、胸。
(……ここまで見事にない胸が、そんなに気になるもんかね?)
そう、そしてその胸は、セインのちょっとしたコンプレックスのひとつでもある。特に普段一緒に生活している妹──ディードなんかと比べた日には、それはもう。オットー? ……比べてどうする。
人並みの、所帯じみた感覚を知ること。実り多かったあの更生プログラムで憶えた感情の中で唯一、知らぬが仏だったなぁと思う点でもある。
だって、それまでは大きいか小さいか、ただそれだけのことだったんだもの。そこに、敗北感なんてなかった。
「ととっ」
と。思考にかまけて、見知らぬ小さな男の子が目の前を横切ろうとしているのに気付かなかった。
あちらもなにやら携帯ゲームに興じていたらしく、双方ブレーキが間に合わない。さりとてさほど激しくぶつかるというわけでもなく、ソフトな衝突の感触とともに、二人は接触し停止した。
「ゴメンなー、ぼーや。大丈夫―?」
いずれも、転倒することもなく。セインの手から蒸篭が零れ落ちることもなく。
「あー。一機落ちちゃったか」
唯一の実害と言えば、どうやらアクションゲームだったのだろう、少年の手にした携帯ゲーム機から鳴り響くワンプレイミスの撃墜音と思しき電子音だけだった。上から覗き込んだ小さな画面も、それらしき表示をしているのが見える。
ぺこり、とお辞儀をして再び少年はゲーム機に向かい、無言でとっとと立ち去った。
「……あっちからも一言くらいあってもいいんじゃないかなぁ」
恐るべし、ゲームの誘惑。誘惑に負けるちびっ子。
「にしても、ゲーム、ね」
教会じゃシスター・シャッハが許してくれないからなぁ。
ちょっぴり、画面の中で縦横無尽に動き回る赤い姿に、憧れのようなものを感じてしまうセインであり。
『セイン? 聞こえる? 一旦、調理ブースのほうまで戻ってきてくれないかしら』
その耳を打ったのは、ギンガから届いた超近距離通信であった。
* * *
「チ!? チンク姉!?」
そして。指示に従い戻った先。ディエチと合流したそこに、姉妹たちはいた。
「……っ」
「あ!! きたきた、ねえねえ二人ともどお? チンクってばかわいくない?」
姉妹、五人(まあ、正確にはナカジマ家に養子入りしていないセインやディードは、スバルたちとの関係性は微妙に違うのだけれど)。
抱き寄せてはしゃぐスバルと、ちらちらと、お前はどこのむっつりスケベの覗きだとつっこみたくなるほどに視線を向けては外しを繰り返すノーヴェとに挟まれて。
その中心に、チンクが立つ。身に着けた服装は、周囲の姉妹たちの半数と同じくチャイナドレスでありながら、小柄で起伏の少ない肢体の一部を、明らかに他とは一線を画すものとして。
「す、スバル。やめてくれ、その……これはほんとうにつけてなくてはいけないものなのか?」
ぴょこんと、頭の上にふたつ突き出ているもの。
柔らかげな外見のそれは、生物的な、もっといえばネコ科の生物的な──……、
「耳?」
「てゆーか、猫耳?」
つん。つつく。ぴょん。跳ねる。前者はセインが、後者はもちろんチンクが行動の主体。
「さ、さわるな、気になるだろう……」
「いや、感覚繋がってんの?」
まさかぁ。ディエチと二人、向かい合う姉妹たちは全員、一斉に首を横に振る。
「なになに、どうしたのー?」
「あ、フェイトさん。八神二佐」
「うわ、すごい量ッスねそれ」
やがて、その姉妹たちの様子には、気付いた他の面々も集まってくる。
そんなもの売っていたか? と首を捻らざるを得ない、りんご飴片手の金髪執務官とか、これだけは管理外世界の文化として外せんとごり押しして自らねじ込んだやきそばとお好み焼きを口いっぱいに頬張る、某二等陸佐とか。
「フェイトちゃーん、スバルー、はやてちゃーん」
「なのは? ヴィヴィオ? 来てたんだ」
更には休暇中の戦技教導官に、現聖王まで。
給仕服と、チャイナドレス。それぞれに身を包んだ姉妹たちの周囲へと。猫の耳をその頭に生やした、銀髪の小柄な一人を中心として。
「あ、あの、いや、これはだな……」
「いーじゃん、チンク姉かわいいよー」
客を待たせているのは、ご愛嬌。
喧騒の中に出来た塊が解けるまでは、もうしばしの時間が必要であった。
姉妹の残る一人──オットーを連れて。ブロンドの教会騎士が、自身の補佐役の修道騎士とともに会場に姿を見せ、その補佐役が己の後見する相手たるセインの服装に、説教を始めるまでは。
ディードはいいのかと、自分を棚に上げて彼女が後見人に、反論という名の口答えをするまでは。
あと少し、かかる。
……End.
− − − −