ユーなのやカーテンコールはしばしお待ちを。

 
シリアスだったり重苦しかったりするもの書ける体力じゃなかったんで(汗
てわけで今回はfearlesshawkさんとのリレー、アストラとノーヴェの第八回目ですよー。
……いや、この話基本的に、馬鹿やることしか書いてる二人の頭にないので(ぉ
 
ケインさんのところに掲載の前回分はこちら
うち掲載の過去分は短編保管庫からどうぞ。
 
 
web拍手レスー
 
>おおお、年が明けてから更新が速くなった!?(・∀・)いいね温泉……いいなぁ…
風邪引いてまたペースばっちしダウンしてますが。早まったのは今現在追い込まれてる原稿がないというのもあったり。
 
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てわけで以下よりどうぞー
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 起動を促す一声は、呟くように小さくぶっきらぼうで。
 たぶん、相手となる魔導師と騎士のペアが黙ってみていなければ、その場にいる皆にはけっして聞こえはしなかっただろう。
 
「……いくぞ」
『Anytime(いつでもどうぞ)』
 
 セット、アップ。たった言葉一つ、そう少女の発した声とともに光が生まれる。
 彼女から。彼女の手にした、漆黒の宝石を中心に。それは彼女自身の全身を包み込んでいく。
 その輝きは、両足の愛機を変化させ。体躯を覆っていた着衣の形をも、あますことなく異なる姿へと移ろわせる。
 
『Combat jacket, type-“N2R”』
「えぬ?」
 上半身は、あまりその意匠を変えることなく。かつての彼女の象徴だった戦闘服と、今しがたまで袖を通していた、姉たちの戦闘服に類似したデザインとを混ぜ合わせた微細な異動を見せていく。
「ああ、あの子たちの施設の」
「──っていうか、四人でのチーム名でしょ」
 ただし下半身は動きやすさに主眼を置いていた以前のものに比べ、より重装備に。
 一旦腰周りで途切れた、両腿の露出する布地を更に外側からもう一層の防護服が重なりその両脚を覆っていく。
「マリーさんが言うには、『連携』を重視して彼女たちに同デザインのジャケットを用意したらしいです」
 愛機の重厚さも、遥かに増していた。──いや、かつてに戻ったというべきだろうか。
「もちろんデザインは一緒でも各部の微調整はノーヴェちゃんにあわせて最適化されてるあたり、さすがだと思いますけど」
 つまり、装甲と、追従性と。大型化した愛機の性能に、十二分に対応できるようそれは組み上げられている。
 紺色の戦闘服。それがノーヴェの新たな戦装束。そして。
 
「お前……これ、ジェットエッジじゃ……!!」
 
 身に着けたノーヴェもまた、驚いていた。
 己が姿に。愛機の、形状に。
 その、かつての愛機とひとつになった、新たな愛機の姿。愛機の名。その呼称は両脚の『彼女』自身曰く。
 
「call me,『Cyclone Calibur J.E』,please.」
 
 
〜アストラとノーヴェ アンスウェラーとサイクロンキャリバー〜 その8
 
 
「……へえ」
 とん、と。ヴィータはアイゼンを肩に置き呟く。
 なかなか、様になっているじゃないか。当の本人は変化したジャケットや、かつての形状を取り戻した──いや、取り入れた愛機に、困惑しているようだけれども。
 
「面白くなりそうだな」
 
 その一言に、自身の姿をあちらこちら見回していたノーヴェも他の面々同様、目線を前に向ける。
 そうやって、拳を交える相手を改めて確認する。それでいい。しっかり、相手を観察しろ。つい頷いてしまいそうになるのは、ヴィータ自身が教導官という、ひとつひとつを教える立場にあるからなのかもしれない。
 尤も同じ前方注意であっても彼女と相対するヴィータたちや、彼女のやや後方に位置するスバルの目線がその角度にあるのは、当然といえば当然であるが。もう少し自己の状況確認と敵の配置確認は縮められるはずだ。その辺がやや、減点か。
「サイクロン」
『……I only compromised so that it to was easy treat more because master was immature.(肝心のマスターそのものが未熟ですから。私が──デバイスのほうが妥協して、歩み寄るしかないでしょう?)』
 
 ただ、今のところ減点はそのくらいだ。
 まるきり素直でないサイクロンキャリバーの言い草に、おそらくは今までの──ヴィータ自身、詳しく知っているわけではないが──この模擬戦をはじめる前のノーヴェであったなら真っ向からつっかかり、険悪そのものな主従の関係の醜態を見せていたはずだ。
 
 しかし、今のノーヴェは。
「……はん。こっちもデバイスがオンボロのポンコツだかんな──マリーのねーちゃんも改修に苦労するくらいのな。……だから壊しちまわねーようこっちからあわせてやんねーと」
 そう、切り返す。あくまでも顔はぷいと、そっぽを向いたままではあるけれど。言葉はお互い、まったくもって正直からかけ離れたものであったけれど。
 
 少女は、暴風の剣を投げ捨てない。
 剣は、赤毛の少女を見捨てない。
 
 術者と愛機が、お互いのために譲り合い、補い合うためのそれは、一種宣誓であった。
 
「ふん」
『……』
 
 ただし契りと呼ぶにはそれはあまりにも、お互いに対する素直さというものが欠けていたが。
 こういうやつらのことを、なんていうんだっけ。前に海鳴に少し遊びに行った際、なのはに対する自分もそうだとか旧知の面々に言われたような。
 ……話題の対象外のはずのアリサ・バニングスがなぜか微妙な、渋い表情をしていたような。ええと。
 
「なに、お前らどこまでもツンデレコンビなわけ? お前らそれでいいわけ?」
 
 ああ、それだ。──じゃなくて。
 
「って、おい。アストラ、お前つっこむところが──……」
「んだとお!? じゃあアレか、あの太腿か、ハイレグか!! 明らかに煽情的なあのスタイルをナカジマ三佐に変わってお父さんそんな破廉恥な格好許しません!! と教育的指導すればいいのか!!」
「なっ」
 そういえば徹夜明けだったか、と。いやいや、大体いつでもこの男は基本的にこういう奴だったろう、と。ハイテンションでまくしたてるアストラに顔を押さえ覆いながらヴィータは思う。
 一瞬声をあげて赤面し縮こまったノーヴェが小刻みに肩を震わせる様に、彼がもう逃れられようもないということを把握する。そして呆れる。
 
 ──こいつ。この場にいる女全員、敵にまわしやがった。
 
 もちろん、ヴィータ自身もその女性陣の中には含まれる。
 
*   *   *
 
 さほどの時もおかず。とりあえず二対二だし適当にスバルと平和に組み手をしつつ流れ弾を(もちろんアストラに)ぶつけるかとヴィータがおぼろげに決めかけた頃。
 
「──……サイクロンっ!!」
『I also recognize it. That is an enemy.(私も認めます、あれは敵です)』
 ジェットエッジの機体を得たが故に可能となった、暴風の剣の大型化した外装、その膝部装甲が涙目で先手を取ったノーヴェの跳躍一番突き刺さり、アストラの顔面を捉えていた。
「こんのっ、変態やろおおおぉぉっ!!」
 そのまま地面に叩きつけ、両腕を左右の足で押さえ込みながら拳を連発。もちろん、これも顔面。
 なかなかに食らう側にはえぐいことこの上ないその一連の力強い技の流れは、威力十分といっていいだろう。
 傍観者たちのうちでギンガなどは、胸の前で軽く──大分に私怨のこもった──ガッツポーズをつくってみせていたくらいだ。
「この……っ」
「ほ、お……」
「!? ……こいつ!?」
 
 だが、ノーヴェの眼下に横たわるアストラは、顔面を既に変形させ鼻血を噴き出しながらも、笑っていた。
 それどころか。
 
「いい蹴りに突き、やれんじゃねえか……ようやく本領発揮か……?」
 
 ふてぶてしく、言ってのける。あくまで(位置は下だが)上から目線で。
「この……っ!!」
 対して、再び右腕を振りかぶる。
しかし、直後ノーヴェの身体はもとあった場所を離れ浮揚感に包まれる。
足だ。アストラの足が身体全体のバネをつかって大きく振り上げられ、ノーヴェの小柄な肉体はその勢いに乗せられ、宙を舞ったのだ。
もちろんノーヴェも、無様に尻餅をついて悲鳴を上げたりなどしない。空中で体勢を整え、見事に着地。
「最初っからそーいう攻撃してりゃいいんだよ、ハナタレその3」
「るっせえ!! えらそーにしてるわりにおもいっきり足にきてんじゃねえかよ!!」
 よろめき立ち上がった槍魔導師と、相対する。
 こめかみのあたりを何度か叩いて、首をごきごき鳴らして。やがてあちらも愛機の突撃槍を構えるに至る。
「……うし!! 準備完了!!」
「うし、じゃねえ!! なんとか言えよ!! 応えろよ!!」
 こういった点で(アストラが意識してそうしているわけではないにしろ)ノーヴェが間を外され、手玉にとられてしまうのは、生臭い意味での人としての埋めようのない人生経験の差によるものである以上、当然といえば当然であるのだけれども。
 
「相変わらず頑丈さとしぶとさだけはすさまじいな、お前」
「それほどでもない」
 
 だがしかし、この男の無軌道さとむやみやたらな破天荒さは、経験云々とはまた違ったところで勝ってはいけないものであるようにも、ノーヴェのみならずその場の面々一同に感じさせる。
「徹夜明けの運動といくぜぇ、アンスウェラー」
『After it stays up all night,you are wrong in the method of the tension's rising,my master(徹夜明けでテンションの上げ方がおかしくなってますね、我がマスター)』
「何を言うか!! 俺ァいつも通りだぞ!!」
『As said.……well,Trainee Nove(それもそうですね。……さて、ノーヴェ訓練生)』
 そしてそうやって愛機に呆れられ納得されてしまう辺りも、またアストラがアストラたる所以であり。
「お、おう」
『I apologize for the impoliteness of my master. And compensation makes it later slowly.……Please show us your true ability.(マスターの非礼は私が詫びておきます。埋め合わせものちほどゆっくりと。……ですから是非、あなたたちの真の実力を我々に見せてください)』
 彼のフォローや尻拭いを引き受けるのもまた、アンスウェラーがアンスウェラーであるからこそ、である。
ヴィータ!! てめーはスバルの相手だけしてろ!! 邪魔すんなよ、いーな!!」
「へいへい」
『I pray for the fortune of war. Please challenge with mind, Nove.and Cyclone Calibur .(武運を祈ります。望むまま、挑んできてください。ノーヴェ、サイクロン)』
「……ああっ!!」
 ──早朝訓練、その模擬戦。第2ラウンドにして一対一、かつ二対二の再戦が、はじまる。
 
 
(その9につづく)
 
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