を書きたくなるときがあるんです。衝動的に。

 
 
てなわけでこの日書いた設定を実際に文章にしてみた。
 
 
つまり、これ(一応反転)ね。
 
 <テンペストキャリバー>

 サイクロンキャリバーとほぼ同時期に開発されていた、双子の『妹』。

 デバイスの運用や魔力の扱いに不慣れな戦闘機人であるノーヴェとサイクロンのマッチングがうまくいかなかった場合に備え平行して開発が進んでいた。

 ……が、AIの成長がサイクロンに比べて遅れ、また存外にサイクロンとノーヴェが(型にはまれば)高い同調率、親和性(口はもちろん罵りあいだが)を示したためノーヴェにはサイクロンが支給されることになった。

 よって、装着型デバイスとしての機体は現在存在せず、開発者であるマリーのデスクコンピュータにAIのみを搭載している。ただしおかげで実戦投入の必要がなくなったためそれをいいことにマリー(とかシャーリーとかリインとか)の好き放題にカスタマイズが進んでおり、リイン用のプロトタイプボディを改造した肉体を借りて出歩くこともある。戦闘能力は殆どないものの、情緒面は(実戦投入見送りの経緯からすれば皮肉なことに)融合機並みの言語回路を保持している。

 ただし性格は超引っ込み事案であり、超泣き虫。外を出歩くときはマリーの肩に隠れるようにしてかリインに手を引かれて。ノーヴェとサイクロン両方大好きなので二人が喧嘩しだすとあわあわ。ナンバーズのみんなも大好き。


完全に、衝動的にですが、やっちゃいました(ぉ
 
 
てなわけで、うちのオリ設定などが嫌いでない方はどうぞー。
オリ設定、オリキャラが苦手な方はご注意ください。
 
↓↓↓↓
 
 
 
− − − −
 
 
 
三でなく、四。〜暴風と、嵐と〜
 

 なんでも、使用者とデバイス、揃っての定期健康診断のようなもの……らしい。
「ったく、めんどくせえなぁ」
 普段世話になっている技術者──マリエル技官がわざわざ赴いてくれているのだから、そりゃあ無視するわけにはいかないのだけれども。
 せっかく、社会勉強や実地研修の名目で仮出所を許され身を寄せている特別救助隊の宿舎から、さほど離れていないとはいえ父の108部隊までその度に移動を強いられるのは面倒であることに違いはない。
「あたしはともかく、なんでてめーまでわざわざ診せに行ってやんなきゃいけないんだか。毎回毎回」
 ……まあ、それを口実に父の元に顔を出せるのは──会えるのは、ひそかな楽しみではあるのだけれども。なんて、けっして口には出せないことも、思いつつ。
 ノーヴェはほぼ勝手知りつつある程度には訪れ、構造を把握している父の部隊の隊舎廊下を歩く。
『Really? I think that this is necessary. Anyway, because my master is an immature user. Routine health checkups are important. (そうですか? 私は必要なことだと思いますが。なにしろ、使い手が未熟千万ですからね。こまめに異状がないか診てもらうのは大切なことです)』
「お前、なぁ……っ」
 胸元に輝く愛機──サイクロンキャリバー、改修を受け現在では正式名称、サイクロンキャリバーJ.Eという彼女からの、たっぷりの皮肉を浴びながら。
「こんなときに限ってスバルのやつも、ギン姉やチンク姉たちもとっとと済ませちまうんだもんなぁ」
 装備について心配のないタイプゼロの二人や、それらにチェックを必要としないスタイルのチンク、オットーは、体内の機械部品調整を兼ねた健康診断を。局に保護されて以降に武装の改修を受けたほかの面々については、ノーヴェと同じくその装備とのマッチングテストも同時に。
 少し不精をしていただけではあったものの、気がつけば、今回のこのチェックについては残すところ姉妹内において、ノーヴェ一人という状況になっていた。
 理由は、先述のとおり単純に面倒であったから、というのがひとつと。
 あと、もうひとつ。
「ちわーす。マリーさん、あたし、到着ー」
 たどり着いたメンテナンスルームのスライドドアが、開いて。
 すぐに直面したそれが答え。
「とっとと終わらせて──……」
 見えるはずのものが、見えないから。
「……また、か」
 けっして悪いわけではない、むしろ人並みはずれているはずの戦闘機人としての視力が一面、真っ黒に染まったそこに、ノーヴェが渋る理由がある。
 

 
「……とりあえず、何度目かってのは置いとくぞ。無言で顔面にダイブしてきて視界を奪うのはやめろ、『テンペスト』」
『……ふえっ?』
 そう。これがあるから──だ。
「おー、ノーヴェ。おそかったじゃなーい。いらっしゃーい」
「いらっしゃいじゃねーだろ。ほら、しっかりこいつのこと見ててやってくれよ」
「んー? ああ、テンペストね。いいじゃない、あなたに懐いてるんだし」
 手探りで、顔面に張り付いたそれを摘み上げて。出迎えた技官の緊張感のない声に返しつつ指先に揺れているその物体を見る。
 そこには、ノーヴェと同じ色をした赤い、けれど長い髪を背中に流した少女の姿がある。
 無論、ノーヴェの指先にぶらさがっているくらいだからサイズは人間大ではない。むしろ、超ミニマム。
「よかないっての」
『……はわ? マイマスター、なぜわたしを遠ざけたですか?』
 その少女は、やはりノーヴェと同色の金色の瞳を、ぱちくりさせる。
 鼻の頭にかけた、こちらは創造主であるマリエルとおそろいの眼鏡の奥で。身に着けた可愛らしいワンピースの首裏を摘まれているおかげで、ぷらぷらと肩からかけたポシェットが、その両手足が揺れる。
テンペストキャリバー』──そう、一見、上の姉たちとは似ても似つかない容姿、形状ではあるが、彼女もまたデバイスであり、ナカジマ姉妹たちの愛機として開発された自立思考型デバイス、キャリバーズの、本当の意味での末っ子、四女であった。
『After a long time, tempest Calibur.Did you keep energetic?(久しぶりですね、テンペストキャリバー。元気にしていましたか?)』
『あ、サイクロンねーさまー』
「いや、挨拶はいーから。とにかくまず、離れろこの馬鹿」
 ぺしり。
 姉直伝、でこぴん一発。もちろん、相手のサイズがサイズであるだけに手加減をして。
 そのまま、手近なデスクの上に放り出す。
『ひゃん!』
「毎度毎度、歓迎してくれるのはいーけどよ、顔にへばりつかれたらうざったいことこの上ないんだよ、ったく」
『う、あうぅー……』
 少女は、打たれた額と、打った尻とを押さえて、擦りながら唸る。
「大体、マスターもなにもねーだろ。あたしはお前を装備したことなんか一度もねーぞ」
『で、でもぉー……』
「あーもー、うっさい!! うざい!! いいからどいてろ!! あたしはとっとと済ませなきゃなんない用事があんだよ!!」
 懐かれていること自体についてはノーヴェもけっしてまんざらでもないのだが。
 正直言ってこのデバイス、本当にデバイスか? と首を傾げたくなるほど、その──色々、あちこち抜けている。
『Nove,The expression is awful.and, against my younger sister. (ノーヴェ。その言い方はあんまりではありませんか。しかも、この私の妹に対して)』
 それは性能的というよりも、性格的なものといったほうがいい。
 なにしろその人工知能は元々、ノーヴェとサイクロンのシンパレートがうまくいかなかった際に備えて、デバイスとの連携に不慣れな彼女にそういった可能性が現実のものとなった場合のために並行して開発されていた最新型。
 そして今現在、結局製作されず搭載されることのなかったローラーブーツとしての機体のかわりにその意識を包んでいるボディはかの元機動六課部隊長・八神はやてが愛機、リインフォース用に用意されていたプロトタイプボディをマリーの手によって改修したものだ。高性能でこそあれ、処理能力や挙動に支障をきたすものではない。
 ただ。テンペストの教育を担当したリインや、AI調整を行った張本人のマリーらの手によって高性能を通り越して逆に非常にオーバースペックかつ物騒な性能がその小さな体に持たされていることそれ自体が問題とも呼べなくはないが。
「いーんだよ、事実だろうが」
『but……(しかし……)』
「んだよ。いっちょまえに姉バカか?」
 とにかく。そういった期待性能とは別のところで。
 我慢弱いノーヴェとしては少々見ていていらついてくるほどに、この眼鏡のデバイス少女──とろい。というか、どんくさい。
『ふえ……』
「あ」
 例えば、はじめて顔を合わせた日。気を利かせて姉妹水入らずをと渡してやった待機状態のサイクロンキャリバーを、開けっぱなしだった窓から飛び込んできたカラスにさらわれかける。
 またあるときは、さほどの距離をまだ飛行できない、おまけに飛行時の燃費がとにかく悪いにもかかわらず、迷い込んできた蝶に見とれ誘われて、普段暮らすマリーの研究室のある陸上本部で迷子アンド遭難し廊下の隅でバッテリー切れ寸前のところを、すすり泣いている様で保護される。
 他にも、挙げていけば枚挙に暇がなくって。
「あ、あー、ノーヴェ? そろそろそのくらいにしておいたほうがいい……んじゃないか、なぁ……?」
「へ」
 おまけに、とにかく泣き虫ときたもんだ。
 あー、もう。泣くな。金色の瞳に涙を潤ませて、今にも決壊せんばかりにしゃくりあげだしたテンペストキャリバーを見下ろし、鼻息荒くやれやれと肩を落としたノーヴェは、恐る恐るといった風情に声をかけてくるマリーに首を傾げる。
「いやね、ちょっとこの間スバルの健康診断したときに振動破砕の周波数やら発動出力やら色々教えてもらって……ね?」
「スバル?」
『う……うぐ……ひくっ……おこられ、ちゃった、です……っ、マイ、マスター、に……テンペストは、ダメな子、です……っ、っく……』
 その間にも、泣き虫は加速していく。崩壊と、洪水発生のその瞬間に向かって。
テンペストにテストしてもらって、うまくいくようならサイクロンに積もうかなー、なんて思ってたんだけど……だけど」
「へえ。すごいじゃん」
「いやうん、すごいよ? すごくって……だから、ね?」
「?」
 そして、発動する。
 その、『すごい力』が。
テンペストを泣かせるのは、危険かなぁ……、って」
 そういえば。実際に振動破砕のクリーンヒットを受けたことがあるのは姉妹の中で、チンク姉だけだっけ。
『ふえ……っ!!』
 少しは、同じ時に体験したけれども。その意味で言うなら、あたしが二番目か。
 その瞬間、ノーヴェはそう思った。
 死ぬほど痛かったぞ、と。何故だか胸を張る小柄な姉の姿が、脳裏に浮かび上がった気がした。
 直後。噴き出した泣き声が、破壊力の波に変わった。
 聞こえたのが少女の叫びであったのか、破壊音だったのか。砕けショートする設備の音だったのかまでは、判別はもはやできない。
 すべてを震わせ、捩じ切り、破砕する波動が。少女からの泣き声として、暗がりの室内に解き放たれた。
 

 
「と、まーそんなことがあったらしくてね?」
 眼尻に浮かんだ涙の原因は、悲しみではなく笑い。
 クラナガンの、とある喫茶店の一角にて。そうしてにやつきながら話すのはノーヴェのひとつ上の姉(不本意ながら)、スバル・ナカジマ
「……うるせーよ」
 オフの今日、彼女とノーヴェの向かいに座るのは三人。セインに、オットー、ディード。スバル同様セインは腹を抱えて小刻みに笑いの痙攣に身を震わせ、残る二人はまったくもう、といった様子に肩を竦めている。
 研修期間を終えて教会に身柄を預けるようになった三人と言い合わせての休日の席上、それぞれの注文した飲み物の並ぶテーブルに、その破壊活動の張本人はちょこんと座ってクッキーを齧っていた。
「まさかこいつが振動破砕使えるなんて、思うわけねーだろ。……ったく」
 不機嫌にぼやくノーヴェの頬には、絆創膏が一枚。
「まあ、相手は小さな子ですし……」
「そう、言わずに」
「いれるかよ!! あたしゃ危うく内部フレームまでいかれちまう寸前だったんだぞ!?」
『It is a consequence of your deeds. and,(You from whom the medicine shelf that had fallen was not avoided are bad. 自業自得です、それにそのダメージは倒れてきた薬品棚を避けられなかったあなた自身の未熟に問題があります)』
 Gパンにジャージの、飾り気のない普段着の中で、ひとつだけ残ったそれが先日の珍事の痕跡。
 あくまで冷静に分析し非を責めてくる愛機に、ノーヴェは思わずかちんときて、声を荒げて。
「んだとぉ!? てめー、あたしの装備だろうが!!」
『However, I am her elder sister.(ですが、この子の姉でもあります)』
「お、ま、え、なぁ……っ!!」
 それはある意味、姉妹たちの見るいつも通りのやりとり。
 短気な赤毛の使役者と。皮肉屋な愛機との紡ぐ、ごく見慣れた風景でしかない。
『……ふえ? サイクロンおねーさまとマイマスター、一体どうしたですか?』
 ただ、祝福の風譲りの口調の少女だけは両手に抱えぱくついていたクッキーから顔を上げて、不思議そうに首を捻っていた。
「いーの。あれはね、とっても二人が仲良しさん、ってことなんだから」
『???』
「ね、マッハキャリバー」
『yes, of course.』
そして、しばらく目を瞬かせたあと、彼女はもうひとつ上の姉と、そのマスターからの言葉にもう一度首を傾げて──目の前にある香ばしくて甘いクッキーの誘惑に、意識を再度埋没させていった。
 彼女をこの店までの道中、肩に乗せてくれて。
 かつ、わざわざ彼女のためにこのクッキーを注文してくれたノーヴェはまだ、彼女の姉とやりあっていたけれど。
 それを知っているから、他の皆はなおのこと、笑う。
 
(了)
 
 
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やりたかqったからやった。今は少し反省している。