てわけで二次。

 
カーテンコールの28話でおま。前回分はこちら
web拍手レスのあとの「続きを読む」からどうぞ。
あ、んでアンケートの結果ですが入稿すませたことからもわかるとおり、電撃に以前投稿したものとなりました。
 
>流石640さん!!テンペストの可愛さはボルテッカ級です!!もっとやって下さい!!
リイン先輩風吹かす→テンペスト興味津々でこくこく頷いて話し聞いてる→話半分で聞いとけー、とアギト、とこんな人間関係。
そしてユニゾンにあこがれてノーヴェにダイブ→みぞおち→ノーヴェ悶絶。
 
>長髪メガネにワンピでしかもノーヴェ似………はうッ(吐血して失神)
いやさ、メインどころ女性陣に眼鏡いないじゃないですか、なのは。シャーリーとマリーとクア姉さんくらいで。
なんでメガネー。
 
テンペストの話、読ませていただきました。このシリーズ大好きです。
いやほんと、衝動的だったんですけどね(汗
楽しんでいただけてよかったよかった。
 
 
んじゃ、続きを読むからどうぞー
↓↓↓↓
 
 
 
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 時刻は、少し巻き戻ることになる。
 
 話を聞くべき人員、そのすべてがそこにはいる。
 部隊員。姉妹。旧友。その他、いずれもが力を貸してくれる皆と呼べる者たちであり。
 ただいないのは不屈の心に呼ばれ彼女の元を訪れている妹、スバル一人。
「まず、これから話す作戦内容はあくまでも最悪の事態に備えての、本来であればこの任務を遂行しなければならない状況が起きないに越したことはないこと。それを念頭において聞いてください」
 
 それらを前にして、ギンガはいる。
 
 出航した、艦の中。ブリーフィングルームにて。
 直接に──あるいはモニター越しに、あるいは、音声のみで彼ら彼女らと向き合い通じ合い。
「すべては、転ばぬ先の杖。その上で、現場指揮代行として部隊員皆に、作戦内容を伝えます」
 指揮官としての重責を背負い、ギンガは臨む。
「聖王教会の会見に合わせ動き出すであろう、真なる聖王を名乗る軍勢からの、ゆりかごの奪還。ならびに、迎撃。そしてなにより──」
 
 そう、なによりも。
 
「本来指揮権を預かるべき身である、高町なのは一尉の救出。そのための作戦内容を、聞いてください」
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
 
第二十八話 ストライク・アゲイン
 
  
 そして、ギンガと同じように大勢へと、向かい合う者がまた、一人。
「──信仰とは。そして王とは。一体何のために存在すべきものでしょうか」
 正装──すなわち、時空管理局理事としての制服に身を包んだ金髪は、カリム・グラシアその人。
 彼女が今、やっていること。そして最後まで成し遂げるべきこと。
 
 それは、食い止めるという行為に繋がっていくもの、すべて。
 
 ゆえに彼女は否定する。本来、彼女が敬い信仰すべき対象であるはずの、神聖なる王を。その軍勢の要求を、拒絶する。
「王は、王自身がために君臨するのではなく。信仰はそれ自体を行為の目的とするものではない。そう、我々は考えます」
 すなわち、布告に対する敵対の意思表明といって、いい。
「王も、信仰も。すべては民のために。民あってのものです。その意を問わずして、なにが信仰の対象たる聖王と呼べるでしょうか?」
 そうは理解していながらも、やはり長年の畏敬の対象であった『聖王』を名乗る者が相手だ。
 これが、正しいのか。はたまた、間違っているのか。侍女や、義弟や。あるいはそれぞれに任務中であることを承知で、自らが後見する双子の戦闘機人の少女らに連絡をとってまで意見を求めたのはカリム自身、十割の自信がそこになかったからこそといえるだろう。
 だが、それでも否定する。それが教会の決定である以上。そう、せざるを得ない。
「ゆえに我々は、武力を拠り所とし聖王を名乗るかの勢力を、否認します。聖王教会の、名において」
 それが、十中八九以上の確率をして、戦いの引き金となることがわかっていようとも。
 あくまでそれが自分のなすべき、役割だから。
 
*   *   *
 
 立ち並んだ妹たちの顔に浮かぶ感情は、それぞれ違っていて。
 それにギンガが気づくことができたのは偏に、一通りの訓示を終え、ある程度の荷が下りたことゆえなのだろう。
 無論、これで終わりではないが。負担を軽くしようと名目上の指揮官職を代行すべく、父が赴いてきてくれたとはいえ、この部隊は今、ギンガ自身が支えていかねばならないのだから。
 部隊長であるはやてがあちこち飛び回りそうしやすいようにしてくれ、指揮を本来すべきなのはが敵の手に落ちている以上、自分がやらなくては。
 けっして、いくぶんの分担がなされたとはいえ、軽いものではない。
「……いいかな、ギン姉」
 その、分け合ってくれた父。その背に揺られ合流してくれた赤毛の妹が、静かに挙手をしてみせて、声を発する。
「ええ──不満そうね、ノーヴェ」
 包帯の白との、コントラストを瞳に届けるノーヴェに、ギンガは頷く。
 自分たちのために頑張ってくれた妹は腰をひっかけるように体重を預けたデスクの縁から、逡巡しながらあとに続く言葉を呟く。
「あたしも……突入組に回りたいよ。そのほうがきっと、向いてる」
 その内容はギンガにとって、予測しえたもの。
 任務の内容を決定し、人員を振り分け。それを行ってきたギンガには十分、可能性として考えられた反応だった。
「怪我のことならもう、大したことないって!! ほら、それにゆりかごはもう飛んでるんだろ? だったら飛べないあたしは、中に入ったほうが……」
「ノーヴェ」
 ギンガのやった作業には無論、機械の身体持つ姉妹たちへの任務の振り分けといったものも含まれていた。この場にいるうちで動けるそれら四人のうち、表情が多かれ少なかれ不満の色に冴えないのは、二人。
「それはできないわ。あなたには、ディードやウェンディたちと一緒に外を押さえてもらわないと」
「ほんと、もう大丈夫だって!!  心配とかしなくていいから!! だから……っ」
「違う。違うのよ、ノーヴェ」
「あ……」
 不満げな一方、ディエチはそれでいて納得したような色もその顔に交えている。
 彼女の不満は、師の救出に直接参加が不可能な部署への配置。納得はそれでいて、自身のスキルがこういった閉所への突入戦に向いていないものであることを自覚しているがゆえ。
 両方の感情を内包している、それがどうしようもないことであると認識しているからこそ、ディエチから声は沸きあがらない。自分が行くより、確実な方法が、人員が。存在しているのだ。
「心配ではないの」
 ただしもう一方。ノーヴェのほうは別だ。
 姉の力になりたいという感情と、自身の技能についての客観的な評価と。
 それらが、衝き動かす。だからこそ、ギンガは彼女に対して明確な、納得のいく答えを与えてやらねばならない。
「あなたを外部制圧に割り振ったのはむしろ……姉として失格。きっと、そう言って差し支えないような理由からよ」
 部隊長の八神はやては未だ連絡がつかない。しかし、一方的に送ってきた情報などはここに到るまでにいくつか存在している。
 その彼女が立てた予想。それに備え動くため、ギンガが選んだ妹の配置。それは。
「あなたと、ディードと。ウェンディの三人で。相手側の戦闘機人……トーレを抑えてほしい──いや、抑えてもらわなくちゃ、ならない」
 実の姉妹として育った者同士をぶつけるということ。
 かつての、ナンバーズの三人を以って。その、三番を。
 かの敵は、飛行可能な高機動型の能力の持ち主。指揮官レベルの実力者の少ない聖王の軍勢が、その能力を制限される狭い艦内に彼女を配置するとは考えにくい。事実、先のJS事件において軌道の制限される屋内戦闘において、ナンバー3の彼女は撃破の憂き目を見ているのだから。
「そういう残酷なことを、私はあなたたちに求めようとしているの。……ごめんなさい、ノーヴェ、ウェンディ、ディード」
 生憎、こちらにも彼女を抑えられる戦力はけっして多くない。
 内部に向ける魔導師や騎士は少数精鋭だが──それでも、相手の物量がある。こちらはあくまで、対応するための一部隊でしかないのだ。相手も単艦だが、準備期間と投入された資本とが違う。
 だが裏を返せば、物量差があっても十分にこちらはガジェットや傀儡兵が相手であれば渡り合える人員を擁しているということ。つまり、向こう側のエース格を抑えれば少なくとも膠着はさせることができる。
 それら矛盾をやりくりする上での、ぎりぎりの人数。ノーヴェたち三人が割り当てられたのは、そういった事情による。
「ギン姉……」
 ギンガの言葉に、ノーヴェは残る二人のほうへと振り返り、そして──俯いた。
 百パーセントではないにしろ、それは彼女がそこそこに理解し、納得したという証左。
 妹の仕草に、ギンガは微笑む。それから、伸ばした右手で軽く二回、やさしく彼女の頬を叩いた。聞き分けてくれて、ありがとう──その動作に、感謝にも似た意を込めて。
「──では、内部への突入部隊は先ほどのブリーフィングどおりに」
 振り向き、一同に語りかけるに際しては再び厳しく表情を引き結ぶけれども。
 
「つまり、突入指揮は私、ギンガ・ナカジマ
 彼女の再確認に背筋を伸ばすのは三人。いや、もう一人。
 ちょうど計ったようなタイミングで開くスライドドアと、その先に姿を見せる人物と。即ち。
ティアナ・ランスター執務官補」
 燈色の髪を揺らした、射手。
エリオ・モンディアル陸士」
 包帯の内側の拳を、槍騎士は握り締め。
「同じく、キャロ・ル・ルシエ陸士」
 竜の巫女が強く頷き、三人それぞれに目線を向けたそこに、赤と青、甲と球、ふたつの宝石を胸に煌かせた彼女から、その突入隊は形成される。
スバル・ナカジマ防災士
 さながら、そのメンバーは──……、
「元機動六課フォワード陣、再結成だね。三人とも」
 そう。スバルの言葉どおり、かつての奇跡の部隊を肌で感じまた、そこに身を置いた者たち、そのものであった。
 
*   *   *
 
「『彼女たち』が到着なさいました」
 シャッハでは、ない。
 彼女の代行として秘書官を勤める教会騎士の言葉に、カリムは水の入ったグラスを手にしたまま俯けていた顔を、ゆっくりと持ち上げた。
「──そう。わかったわ、すべて、手はず通りに」
「はい」
「悟られないように、ね」
「御意に」
 演説は、終わった。彼女は、やり遂げた。
 脇に控えるヴェロッサが、部屋を退出していく秘書官に目線を注いでいる。
「ヴェロッサ」
「ああ……いや。どうしても、ね」
「あなた自身の力でしょう。信じなさい」
「ま、それもそうだ」
 要求を、つっぱねる。身もふたもない言い方をすれば、カリムが呈する行為を代わった教会の意志とはつまり、そういうことになる。
 それは。やり終えたのだ。問題は、これからなのだ。
「もちろん、はやての予想も……ね」
 これから、起こるであろうこと。それらに対し動いていかねばならない。
 そのために布石は打ってある。
 カリムも、ヴェロッサも。そして──ここにはいない、はやても。
「そうそう。義姉さんの演説中に、短い文章ではやてから連絡がありました」
 聖王が、どう動くか。軍勢を、どう動かすか。被害を最小限に食い止めるべく。
「『接触に成功。許可と同意はとれた』」
 簡潔なその言葉も、そういった目的があればこその、行動を報せるために。
 いくつもの予想と──たったひとつ、これだけはという確信が、あるから。
「ゆりかごは──かならず、ここ。聖王教会にやってくる」
 妹同然の魔導騎士と、自分たちの不手際ゆえにゆりかごに囚われの身となったままの、その親友たるエースオブエースとに想いを馳せて。
 推測と確率論とが交じり合い水掛け論を繰り返す思考ごと、呷ったグラスの水とともに、カリムはそれを飲み下した。
 
 けっして、旨くはなかった。無論のことながら。
 
(つづく)
 
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