って大事なのかなあ、と

 
まんが道を読みつつ思ったそんな夜。
いや、就職とか、目指す道とか・・・ね。
 
閑話休題
 
本日はカーテンコールの更新でおまー。
続きを読むからどうぞー。
 
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 流石は、あの人の。エースオブエースの愛機というだけのことはあると思う。
 自分と。マッハキャリバーと。二人のコンビがてんで駄目だなんて思わないし、思うつもりもないけれど。
 こと、砲撃にかけてはものが違う。
 右腕から、握るスフィアへの魔力の集約の密度も。
 そこに至るまで、全身より集められていくエネルギーの整流される、淀みなき度合いも。
 十年以上の蓄積は伊達ではない。砲撃のため。砲撃を得意とする主のために常にともにあり続けた『彼女』のそれら処理能力は、まさしく専任者というより他にない、プロの仕事。ベルカ式の近接戦闘術の中に強引に組み込んで運用しているスバルたちのものとは、雲泥の差だ。
「突入ポイント……!! あそこ……っ!!」
 そのぶん、プロテクションを、トライシールドを起動し自らの身を守るのはスバルたちの役目。
 この肉体とゆりかごとを一本に繋ぐ天空の道を疾駆しながら、自分に出来る最高のパフォーマンスで、突き進む。
 けっして、振り向かない。
 振り向く必要なんて、あるものか。後続の四人だってしっかりあとに続いてきてくれている。もう一本の天空の道の上を。あるいは、音速の機動を自在に操る騎士の身のこなしを以って。
「マッハキャリバー!! ギアエクセリオン……最大出力で!!」
『Ok, buddy』
レイジングハート!! 行くよっ!! 発射準備!!」
『All right』
 後ろの四人を信頼するように、我が身を包む二機もスバルは信じ、自らの魔力を託す。
「三発リミットの一発目……っ!!」
 出し惜しみなんて、しない。
 目前に迫ったゆりかごへ、余所よりも幾分は脆くなっているはずのその外壁の一部分に向け、加速する。
 魔力の輝きを飽和させながら、けっして衝突など恐れず、前進は一切を止めることなく。
 すべてをその一撃に、注ぎ込んで。
 蓄えた力に引いた鋼鉄拳の右腕を、躊躇なく解き放つ。
 蒼き閃光に、埋め尽くす。
「エェクセリオンンンンッ!! バァァスタアアアァァァーッ!!」
 その先には必ず、師の待つ場所へと続く道が、開けているはずだから。
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
 
第三十三話 星は散って、降り注ぐ
 
  
武装を解除し、投降してください。マイア・セドリック准尉。五対一のこの状況が、わかるはずです」
 だから、ここにいる。
 外壁を突き破り、外の喧騒状態からすれば不自然なほどに素通りの許された通路を通り抜けて、第一の戦場とおそらくはなるであろう、この場所に。
 なのはさんをその計略に嵌めた張本人であるところの一人──この男の、前に、だ。
「んんー? 投降ぅ?」
 返される態度が倣岸であるのは挑発を由とするからというのが明白すぎる。
 師を騙し。当初より自分たちを裏切ることを念頭に動いていた男は嘲りの色濃い声と表情のもと、スバルよりの勧告を意に介す風もなく手元にいくつものモニターを開きしきりに頷いている。
「ふむふむ……右腕部の熱量、平常時の約212パーセントオーバー……放熱・冷却未だ継続中……なるほど、なるほど」
 男の嘲りは一段、その歩を進め。哄笑へと変化する。
「あの『化け物』……いわゆるエースのデバイスを使いましたか。んー……実に陳腐。所詮化け物の教え子もまた化け物、インテリジェンスが足りないといったところ……負荷の大きさも換算せずに」
「返答を」
 自分自身を分析される。それは無論いい気分ではない。
 だが、スバルは抑える。
 感情を。不快に溢れそうな、飛び掛り組み伏せたくなる衝動。そして、師を奪われた怒りに、ともすれば一も二もなく完膚なきまでに打ち砕き目の前の相手を再起不能へと叩き落したくなる、黒い願望を。
「つまるところ、野蛮な化け物にしかすぎないということだ。ええ? 化け物の教え子の、また化け物さんたち?」
「黙りなさい」
 しかし──我慢の二文字を捨てた者もいた。
「とっとと投降してなのはさんのとこまで案内しなさいって言ってんのよ。……次は当てるわよ、お望みなら殺傷設定で」
 橙色の光弾が閃いた。
 男が、防御の姿勢を構える暇すらまるでない速度に。
 周囲に巡らされていたオートガードと思しき薄い魔力の膜を貫き、相対するその者の頬を熱量に焦がしながら。
 壁面に到達し弾痕を刻んだそれは、銃口より放たれていた。
「ティア……」
「こちとら、世話になった先生を連れて行かれて悠長にその相手の講釈に付き合ってやれるほど、人間できちゃいないのよ、悪いけど」
 あるいはその眼光に偲ばされた激情は、ひょっとするとスバルのうちにあるそれよりも一層、男に対し猛然さを以って注ぎ込まれていたのかもしれない。
 
*   *   *
 
 なのはさんを陥れた男。そして──ひょっとすると、いや、おそらくは高確率で、兄の死になんらかの関わりを持っているかもしれない存在。
 そのもしもというべき事象に、この一年半ほどの間捜査官、執務官補佐として補助の相手たる上司から夢に向かうための手習いを受けてきた、多様な事件に接してきた自分の勘が告げている。
 これは。このもしも、は。ほぼ十中八九と呼べるものだと。
「ほう? これはこれは、元『機動六課のお荷物』さん? 凡人なりになかなかいい射撃ができるようになったようですねぇ」
「なにを……っ」
「……どういう意味かしら?」
 挑発だ、これも。自分以上に激昂しかかるスバルを制し、問い返す。
 本来なら──このような時間すら惜しい。
「言ったとおりの意味ですが? 化け物ばかりの隊長陣に、戦闘機人。人外の竜を従える畜生術師に、もはや独自のヒトとしてすら生まれ得なかった人間モドキ。いや、けっして悪い事ではありませんとも。そのような魔窟の中にあってたった一度『まぐれで三機もの戦闘機人を撃破した』、それだけで評価される凡人というものは」
「セドリック准尉……あなたって人は……!!」
 指揮官としてあるはずのギンガまでもが、声を荒げその表情に抑えきれぬ憤激を増していく中、あくまでもティアナは自分を律し続ける。
 気にしないで。大丈夫。目線だけで、仲間たちにそう伝え挑発を無効のものとするよう促す。
「いやはや、私ほどの才能もない中で十分によくやったと思いますよ、ええ」
「……戯言はそのくらいにして口を閉じたら? それとも──」
 そう。自分は冷静だ。ティアナは、冷静なのだ。
 冷静に。冷静に──怒りを、漲らせている。
「それとも、力ずくで閉じさせて欲しい?」
 話をするために、ではなく。これ以上話をさせないために。
 そのために銃口から新たな炎を放つのも、けっして吝かではない。
 かのエースオブエースの教え子として。局員としては、些か失格ではあるかもしれないが。
 しかし。理由はあるのだ。教え子として。疑惑の中に死した兄を持つ、妹として。
「……力ずく? あなたたちが、ですか? それとも、あなたが? 凡人執務官補どの?」
「前者でも、後者でもいいわよ。好きなほうを選びなさい」
 どちらにしろ。黙らせる。
 これ以上愚弄はさせない。自らが、自分たちが侮られるということはすなわち、力を伝え与えてくれた師が同じく睥睨されるということに他ならないのだから。
「──ふむ」
 そこではじめて、男はしばし考えるような仕草を見せる。
 長考に付き合っているような暇はない。いっそ、一気に。一同の間にはそれぞれ、そんな想いがあったはずだ。しかし。
「化け物には化け物をぶつける──というのが、得策でしょうねぇ」
 男は。自らで彼女らの相手になるという選択をはずした。
 ぱちん、と鳴らされる指先が合図。あまりにも陳腐な、一音。
「……フリード……!!」
 風が起こる。羽ばたきのその音が、鼓膜をけたたましく震わせていく。
 忘れていたわけではなかった。しかし明確に提示されれば、それは脅威という二文字でしか語れない。
 白き竜の、その姿は。
「化け物同士の仲間意識というものを、活用させてもらいますよ?」
「あんた……!!」
 毒づく瞬間も、あろうものか。
 五人は散る。問答無用と放たれた火炎が白竜の口蓋から距離もなきがごとく瞬間的に彼女らの固まっていた空間を焼き尽くしたのだから。
 そして、ティアナは見た。方々に散った五人。それぞれの方向はばらばらに。
 ゆえに──それぞれの落着の位置は違う。
 その、五つの方角。五つの場所に。
 いつの間にその姿を見せたか、またそれほどの影をどのように寄り集まらせたか。
 無数に蠢き、刃煌かせ這う多脚の戦闘機械の群れを。
 
*   *   *
 
 ひとりひとりでは、敵わない。だけど。
「このこのっ!! 当たるッスよ、トーレ姉、いい加減にっ!!」
 敵うための手は、ある。敵うために、やっている。
 でなければ、こんな。姉妹同士戦うなんて──好き好んで戦ったりなんて、するものか。
「……」
 少しは射撃の正確性も増したな、とばかりに小さく頷くのはそれでもなお、あちらの余裕を奪えていないからなのだろうか。
 それとも……。
「は、あああっ!!」
 だが、コンビネーション自体は十分に機能している。だから少なくとも、押してはいられる。たとえ個々の能力が三人それぞれに、攻め立てる一人に劣っているにしても。
 ウェンディが追い込んだ先に、ディードが待ち受ける。
 久々の連携パターン……しかし寸分、狂いはない。インパルスブレードによって防がれた彼女の二刀流もまた、囮であるという点も含めてすべては三人の意図どおりに。
「……セッテは!!」
「!?」
「セッテはあなたと同じ理由で拘置されることを望んだんです!! なのに!!」
 鍔迫り合い。それが崩れるのは、側面のノーヴェより繰り出される顎への蹴りに、トーレが身を引いたから。激突の緊張が一瞬、緩みさえすればもう、音速の機動が屈強なその彼女の肉体を遠く、ディードの間合いから引き離すのはけっして困難なことではない。
「……寡黙な末の子のお前が随分、喋るようになった。無駄口を」
「トーレ姉……っ!!」
 ガンナックルを、乱射。再び、敵対する彼女ほどの速度は得られないにしろ追いすがるノーヴェの両足には、大型化した──いや、新旧の愛機が命をひとつとした重装備が鈍く光沢を放つ。
「サイクロン!!」
『Leg Twister』
 無論、唸りを上げるレッグスピナー、ブレイクギアはただ加速のためだけにあらず。今は彼女の未熟な魔導の力を助する弾丸を内部に炸裂させ、小型の嵐と呼ぶにふさわしい気流の螺旋を巻き起こす。
 ただの風にとどまらない、それは魔力のうねり。
 サイクロンキャリバー・JE。暴風の、その名のごとく。噴出する魔力風に、その機体を巻かせている。
「お前は小細工を!! お前は戦闘中までも甘くなった!! ノーヴェ!! ウェンディ!!」
 激突の先に在るのは、翼だ。
 蒼髪の長躯が四肢より発生されるその光の羽根が、ノーヴェの蹴りを迎撃する。同時に斬りかかったディードの二刀を受け止める。
「インパルスブレードが……!?」
 止めるだけに留まることなく、徐々にそれは押し返していく。輝きを増し。サイズを拡大させて。より、力強く。
「……はあっ!!」
 より猛然と、風が舞う。ゆりかご表面の土埃を、跳ね上げて周囲を包み込む。
「ノーヴェ!! ディード!!」
 その中に近接を行っていた二人の姿はトーレとともに消え、そして。
 やがてウェンディの呼び声の直後、現れる。
 土煙を突き破り、弾き飛ばされて。
 どうにかウェンディの傍へと着地を成功させた二人の戦闘服の胸元にはそれぞれ、肉体への到達こそはないものの、大きく裂けた傷跡が口を開いていた。
 彼女たちがそうやって一瞬消えた視界に戻ってきた。となれば次には彼女らにその傷を刻み、弾き飛ばした張本人が甦るのが道理。
「羽根が……大きく……!?」
 両手両足に一層のまばゆい輝きを放つ、より雄々しき翼を宿らせて。
 その姉は、羽ばたきに風を散らせてゆく。
「装備が二年前のままでないのが、お前たちだけだと思ったか?」
 ジェットエッジを用いたIS、ブレイクライナーがサイクロンキャリバーによるシューティングアーツとなったように。
 あるいはツインブレイズに、魔力刃の発生機構が加えられたように。
 ウェンディのライドボードに様々なペイロード機能を、追加された、そのように、だ。
「科学とは矢張り便利なものだな。たったチップひとつでこれほど、性能を増すものとは」
 戦闘機人たる肉体それ自体を武装として、トーレは聖王の軍勢のもとに強化していた。流麗な鳥類を模すかのようであった手足の光輝する八枚の羽根はそれぞれいずれも、獰猛なる猛禽のそれに挿げ替えられたかのように禍々しくまた、その形状を肥大化させ、そこに存在している。
「わかったか、ディード。いかな多勢に無勢であったとはいえ私が傷ひとつなく、フェイトお嬢様を始末できたその理由が」
 ばさり、と。もはや羽根でない、光の翼がはためいた。
 ──『ライドインパルス』。その、インパルスブレード。いや、『インパルスセイバー』──……。
 呟かれたその声が、鼓膜に到達するより、疾く。
 腕が。足が。
 自分たちの身体に吸い込まれめりこんでいく感触と痛みとを、ノーヴェたちは感じていた。
 
*   *   *
 
 天井に、砲撃を。そう念話に聞こえてきたのは、エリオの声だった。
 ダガーモードの刃で、切り刻む。多脚のガジェット四型、呼称はそれであっても実質はすべてのガジェットの根本たる敵の雑兵──が動かなくなるのと同時に、やはりそれらと刃を交える槍騎士のほうに目を向ける。
 スバルも、キャロも。ギンガも同じく、ガジェットたちとやりあっている。
 荒い息を吐き、今にもこの乱戦に加わらんかと上空を旋回する竜の下。
 憎々しいほどに嘲笑を顔へと貼り付けた、裏切りの魔導師の俯瞰のうちに。
「エリオ!!」
 
 ──少しですけど、天井だけはいくぶん構造が脆くなってます、ここ。
 
 年月ゆえか、肉眼でなくデバイスのセンサーを通して見えるレベルで走っているそれらヒビに、エリオがどうやって気付いたのか。それはわからない。
 ガジェットの流れ弾がそちらに行ったのか、はたまた自身のパートナーたる白き竜に思わず目でも向けた際にそうなったのか。だが、今重要なのはそういうことではない。
 
 ──天井を抜いてください。そうしたら僕とキャロとでフリードを。
 
 その隙に、三人でここの突破を。
 天井が崩壊しさえすればそれによってガジェットも大半は押し潰せるはず。混乱に乗じれば相手の男を抑えることも、ここを突破するのもこのまま乱戦の中フリードたちの参戦を警戒し続けるよりずっと楽になる。
 エリオに続きティアナの見たキャロも、目線で頷いた。二人の間にはいつの間にそうしたか──コンセンサスは既に出来ている。
 たしかに。そう、たしかに。時間の浪費は極力、避けなくてはならない状況でその申し出は魅力。
 だから。
 ガジェットの横薙ぎの刃を避け、メインカメラに霊距離で弾を浴びせる。
 スバルを、ギンガを見やって──再び、エリオ。
「……ったく!!」
「……?」
 機能停止したその機体の装甲を斬り裂き、力任せにひっぺがす。ぶちぶちと千切れ抜けるケーブルを掴み引きずり出すのはそれ自体は未だ無事な、機体動力炉。
 仲間たち、だけではない。周囲のガジェットが。上空の魔導師もまた、ティアナのその行動に気付き怪訝な表情をとる。
「砲撃っつってもね、チャージタイムってもんがあるでしょーが。気安く言ってくれて、ほんとに……!!」
 剥き出しになった炉心、そのまだ光を放つ中心部に銃口をつきつける。
「ティア!?」
「スバル!! ギンガさん!! 『アタシが撃ったら』、全開で前だけ目指して突き進んで!!」
「な……ティアナ、あなた!?」
「異論は聞きません!!」
 たとえガジェット一機のものとはいえ、エネルギーを満載した動力炉である。燃え上がるよう、最大限反応するよう調整してやれば、周りの雑魚くらいいくらでも焼き尽くせる破壊力、簡単に生み出せる。
 だから──時間稼ぎには丁度いい。ガジェットに向けた銃口も、チャージがけっして不自然とはならない。
 周囲の四型たちは誘爆を恐れてか、その程度の知能はあるということかまんじりと一定以上は近づいてこない。
「……本気ですか? そんなことをすればあなたも」
「馬鹿ね、自称天才さん? 生憎こっちは──『誰かがゆりかごを』止めればそれでいいのよ」
 術式を、砲撃の種類を選択し無言のうちにクロスミラージュへと命じる。
 同時に、念話も飛ばす。エリオと、キャロに。
『待ってる。だから、フリードと三人で。玉座の間で合流しましょう』──と。
 スバルとギンガにも、だ。
『天井を抜く。フリードはライトニングに任せる』と、手短に。
 さて。
「いいわね、スバルっ!!」
 深呼吸と、投げた言葉と。視線を──スバルへティアナは放つ。
 待っていた返事は、やがて、
「……おおっ!!」──躊躇の時間を彼女なりに設けたであろう、その後に戻ってくる。同時に彼女の拳は、ガジェット四型の一機を貫通し破壊していた。
「本気かっ!?」
「ええ……当たり前でしょっ!! 本気に、決まってる!!」
 義兄の技なんだ、と教えてくれたあの人は言っていた。
 熱量と、破壊力と。選ぶなら今は、これがいい。
 少し会わないうちに遠隔召喚も可能になったか、上空に舞うフリードのさらに上方からキャロがアルケミックチェーンを呼び、白竜を拘束する。先端を魔力刃に肥大化させたストラーダでエリオが、周囲の邪魔者を一掃する。
 タイミングは──今!
「いいわね!! 全速よ!! ……クロスミラージュッ!!」
 銃口を一気に振り上げる。目標はガジェットから、スキャン済みのヒビの中心へと。ツーハンドのもう一方が高速の炸裂反応弾を、天井と上層の床とを隔てる構造材にいくつも撃ち込み、とどめの一撃を待つ。
「何!?」
「ブレイズ……キャノンッ!!」
 幻術使いに、欺くことの是非をどうこう言うなどそれこそナンセンス。
 自らの砲撃の強い光に目を眇めつつ、ホイールのうなりをあげ駆け出すナカジマ姉妹の背に、ティアナはそんな言い訳じみた感情をそっと投げていた。
 
 ──悪いわね、スバル。
 
 また。上空にデューゼンフォルムの噴射で舞い上がり、そしてブレイズキャノンの破壊力に先に道を譲ったライトニング3,4へと、心中で両手をあわせていた。
 後者には、合流するのが彼らだけでないことを告げなかった点について。
 前者には──撃ったあと自分がどうするか。一体何人で玉座の間へと向かうのか説明しなかったことを、それぞれに。
理由は妹としての衝動と……教え子ゆえの戦略と。
元同僚の年下二人、少年少女が分散の意図を伝えたその時に、自らの思考に従うことを彼女は決めた。
 
 ──だって、そうでしょう?
 
「おのれっ!! 凡人のくせに……」
「その凡人に……付き合ってもらうわよっ!!」
 着弾。爆発。轟音。ゆりかごの見せた反応と。
 前進。あるいは、飛翔。仲間たちの見せた動きの中。
「あんたには訊きたいことが、山ほどある!!」
 放つ。
 上空の魔導師へと向けて発射した魔力ワイヤーの先にティアナははっきりと、手ごたえを感じ取っていた。
 聖王のもとへ向かうのは、二人だ。
 合流せねばならないのは、二人だけじゃない。
「──謝らせたいことも、たくさん!!」
 自分は、ここに残る。ここを抑え、背後を確保する。
 自分もまた、後から向かう。追いかける側だ。
 だから。
「行きなさい!! スバルッ!!」
 崩れ降り注ぐ瓦礫の先に、友の背中がある。
 
  
(つづく)
 
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