更新でーす。

 
拍手のお礼ssも更新してまーす。
 
↓↓↓↓
 
 
 
− − − −
 
 
 目の前に、苦しんでいる人たちがいて。燃え盛る町の風景が、そこに生まれている。
 だったら、自分のやるべきことはたったひとつだ。
 ここが、どこであろうと。一体どういった経緯があろうとも。
 自分は、自分なのだから。すべきことを。できることを。やらなくてはならない。
「大丈夫? 怪我、してない?」
 蒼の髪を揺らして。白い鉢巻を靡かせて。少女は、その場所にあってもあり方を変えなかった。
 瓦礫の山。苦痛にうめく人々の惨状。そこに身を置いた彼女が手を差し出した先にあるのは、煤だらけの頬の、幼い少女。
 ──なんとなく、重なる。悠久の眠りについた、大切な幼い友達に。出会いの場も、その俯きすすり泣く、様子にも、だ。
「泣かないで。大丈夫、お姉ちゃんが安全なところまで一直線に、連れて行ってあげるから」
 幼子は、呆けたように目を見開いて。やがて静かに顔を上げる。
 そして差し出された手をとるまでには、また幾ばくかの時間が必要だった。
「いい子だ。ちゃんと生きようとしてる。えらいよ、すっごく」
 幼子がそうしてくれたから、彼女もまたその体躯を抱え上げることができた。
 しっかりとした、重み。それはまさしく、命という名の重みだ。
 両腕にそれを実感しながら、ふと少女は空を見上げる。
「……? あれ、は?」
 紅が、宙に舞っていた。凶々しい流血の色に等しいそれは、ゆっくりと空中を旋回し、地上へと近づいては離れていく。
「ロボ、ット?」
 紅の中心に、そうやって形容できる姿をしたものを、彼女の左右の瞳は捉え、そして口走っていた。さらに、見つけた。
 その深紅の輝きに接近していく、鈍重な存在を。
 前述のとおりだ。ここがどこかも、今がどういう状況下なのかも、彼女にはわからない。
 しかし光に近づいていくそれは彼女の持つ知識、常識の中にあって間違いなく、『飛行機』と呼んでさしつかえのないものであった。
 
 
  Strikers −the number of OO−
  Act.1 daybreak’s bell (下)
 
  
 アロウズは去った──少なくとも、一時的には。
 現状は、小康状態といえるだろう。たとえそれがひとときの仮初めであったとしても、反政府組織の基地であったその場所の周辺に、敵機の気配はない。
「……無惨な、ものだな」
 これが、敵のやり方。
 わかりきったことではあった。もしも『五年前の』自分がかの組織に籍を置いていたならば、なにより効率を重んじ同じやり方をとっていたかもしれない、とも思う。だが。
 このようにされて。今の自分は憤りを覚えずにおられないほど、人間でない存在ではなくなっている。
 言いようのない不快感と、やり場のないふつふつとした継続する苛立ちとを感じながら、ティエリアは愛機・セラヴィーを徐々に下降させる。
 俯瞰していた風景は、近付くほどに惨憺たる様をより克明に見せていく。
 MSの残骸や、瓦礫は言うに及ばず。当然のごとくその中には、オートマトンの襲撃による犠牲者たち──一方的な虐殺に対し果たしてそれが戦死と呼べるのかどうかすらわからない、死体の数々も含まれる。
「ケルディムは間に合わなかったか……。すべてオートマトンは撃破したにしろ……」
 完全には、守りきれなかった。それはもはや、揺るがすことはけっしてできない事実として現に目の前にある。
 あの男は、どう思うのだろう。僕に人間というものを教えてくれた彼の、彼よりどこか生臭く、演技がかっていながらも気付けばその不自然さを忘れさせる軽薄さを持つ、同じコードネームの弟であるあの男は。
 ロックオン・ストラトス。未だ数回の出撃をこなしただけのガンダムマイスターに対し、ティエリアは思う。
「些か、妙な動きをしていたようだが──……?」
 その男の駆るモスグリーンのガンダムが襲撃を受ける基地へと先行していったのは、ティエリアも見ている。カスタムタイプのアヘッドを追い払って。それからなぜか、とうに侵入者の殲滅を終えた、守るべき基地に対しビームガンの銃口を向けていたことも。戦闘の最中ではあったが、視界の端に捉えていたから、知っている。もうそれが、終わっていることも。
 だからティエリアがやっているのは、その基地周辺の哨戒だ。しかしこうも異常がなくては、思考のほうにむしろ意識がいこうというものだ。
 撃ちもらしたオートマトンでもいたか。あるいはスパイでも見つけたか? 後者ならばいささか感情的がすぎる行動ではあるが。たとえコードネーム通りとはいっても、捕縛ではなく『狙い撃つ』など。
 そのような思考に意識を傾けていると、近付いてくる砂漠の大地に、センサーがなにかを発見する。撃破した敵機のパイロットか。カタロンの生存者か。顔をあげてそちらに目を向け、表示される反応を拡大する。
「あれは……佐慈・クロスロード、か?」
 疑問調で独り呟きながらも、それは間違いなく、今彼の言ったとおりの人物であった。服装からも、彼に他ならないと断定できる。
 刹那の、旧知。たしかに、この基地に身柄を預けたはずの──。
 その青年が四輪駆動車の横に、崩折れている。伏せられた顔は、上空からでは判別できない。……一体、何があった?
「こっちも? 今度は、なんだ?」
 不自然だ、と思った。奇妙に、映った。
 直後、再びセンサー音。ひととき視線を男から離し、今度の発信源へと焦点を移す。
「──女、か?」
 そしてそれは佐慈・クロスロードの姿以上に、その場にあっては不自然な光景だった。
 一歩、一歩近付いてくる。砂漠の乾いた風がそのたびに、揺らしていく。
 その、ひとつに結われた栗毛の髪を。襤褸のように擦り切れた、マントのように羽織った砂色の外套を。
 千鳥足に。今にも倒れそうに。碌な装備も見受けられず、果たして行く手にカタロン基地があることすら認識しているのか定かではない、それでも砂漠を行くその姿は紛れもない。女だ。
「……!! おい!!」
 やがて、女は倒れた。砂塵が、微かに舞った。
 何者かもわからぬその女に対し。思わずティエリアは操縦桿を傾け、愛機・セラヴィーガンダムを飛ばしていた。
 その影が、膝を折る佐慈・クロスロードへと上空から落ちる。
 それでもなお、青年はティエリアと重装甲のガンダムのほうを見上げようとは、しなかった。
 

 
「これは……この規模は……。テロなどでは、とても……っ」
 刹那の。刹那・F・セイエイの瞳には、紅が映っている。──いや、彼だけではない。隣席のシートで口元を押さえ、小刻みにその身体を震わせている、『彼女』の。『この国の元首』たるマリナ・イスマイールの、大きく見開かれた双眸にも、等しくそれはある。
「アザディスタンが……!!」
 そう。燃えている。
 刹那の。マリナのやってきた。厳密にはどうあれ、二人の、母国が。
 視界一面に、炎の紅で煌々とゆらめく惨状を晒している。
 マリナは無論、刹那もまた、いかに冷静さを是とするその性質、ガンダムマイスターとしての本分があるとはいえけっして動揺を、抑えきれるものではない。
「一体、なにが……!?」
 驚愕の二文字の向かう先が、それぞれ異なるだけだ。
 マリナは、戦慄と悲嘆に。刹那の場合はそれが、行動に。答えを求め、目の前の光景に対する理由を探す行動に繋がっていく。
 両目はモニターの上を絶え間なく走り、指先は様々にコンソールキーを叩いては映像を切り替える。
 ほぼ、同じ時。彼のやってきたその場所で同志──ティエリアがまるで同じ動作をガンダムのコックピット内においてやっていたことも、知る由もなく。
「!?」
 彼は、見つける。
 広がる紅の中にある、異なった『紅』を。そして押し込む。操縦桿を、その『紅』より撃ち放たれし絶命の光から、逃れるべき方向へと。
「あの、機体は……っ!!」
 粒子ビームが、輸送機の機体を掠めては揺らす。
 有無などない。まさしく問答無用にそれは、深紅に染め上げられた機体の構えた銃口より、迸っては顕現する。
 そう、機体。背部よりGN粒子の光煌かせるそれがそこにある以上、答えはもはや明白すぎた。
 この国は。この、惨状は。間違いない、奴がやったのだ。一見、どこかスローネにも似た──かつて国連軍に鹵獲された際のデータでも用いたか、と刹那は推察する──その新型が。旧式のMSしか持たぬこの国を、焼き払った。
 外見どおりのスペックならばけっして、不可能なことではない。そして今その赤のガンダムは、刹那の操縦するこの輸送機を見つけ、次なる獲物と定め銃火の照準を向けている。
「刹那!!」
「掴まっていろ!! 揺れるぞ!!」
 無論それをただ、手をこまねいて受け入れるわけにはいかない。
 紅色のビームが直撃すれば、待っているのは刹那にも、隣席のマリナにも死、ただそれだけなのだから。
 だが。いかに巧みに操ろうとも、回避行動を重ねようとも。かたやMS、かたや戦闘能力などかけらもない鈍重な輸送機に過ぎないのだ。
 至近弾は、増える。それを楽しんでさえいるかのような動きで、赤のMSは徐々に距離をつめてくる。
 銃口が、閉じられる。そこに現れるのは剣だ。斬るというよりはたたき割る。そのような用途が容易に想像できる、MSの身の丈ほどはあろうかという、巨大な実体剣。
 振り下ろされる瞬間にはもう、逃げ場は残されていなかった。愛機であるMS、ダブルオーがそのコックピットの外側を包む機体であったのならばともかく、輸送機の機動性では、逃れようもなく。
「く……!!」
「刹那!!」
 マリナの、悲鳴じみた声を聞き。絶句のままに、両目を見開き。
 鮮血の色がモニターすべてを埋め尽くさんとしている様を、刹那は見上げる。
 あと一瞬で、それすら見ることかなわなくなることを、理解しながら。
 

 
 アレルヤ・ハプティズムは、困惑していた。
 端的に理由を言えば、すぐ目の前にいる赤毛の少女を、同僚から預けられたから。そのワンフレーズに尽きる。
「ウチの、白兵戦闘員ってことにでもしといてくれ」──……そう言って少女を預けた狙撃手は、自身が両の腕に抱えた幼い子供を、重軽傷者で溢れる急造の治療区画の中へ連れ、消えた。「気をつけろよ」とも、付け加えて。
「……あの」
 件の、その少女の格好はといえば奇妙なものだった。
 全身を、パイロットスーツとも防護服とも曖昧な、濃紺色の、所々に地肌を露出させたぴったりとした着衣が覆い包んでいる。
 右腕には、金属製と思しき、その小柄な体躯には不釣合いな手甲。見て明らかに闘争のため、戦闘に勝利するために与えられているとわかるそれに加えて、両足に履いているローラースケートのブーツも随分と大型だ。
 ただ、ローラーが足の裏に配されているのではない。それだけでもアレルヤの顎の辺りまで身長を嵩増ししているそのブーツには、タービンのようにも見える長いレガース部があった。
ロックオンの言った、「気をつけろ」。その意を素直に解釈するならば、それらはやはり武装として使われる──敵という可能性が、あるということ、か?
だからロックオン・ストラトスは超兵である、通常の人間より遥かに強靭な肉体と運動神経を持つアレルヤに、彼女の監視を頼んだということか。
「きみは、一体」
 ──アレルヤがそんな風に思い心中で立ててみた推察は、一応の筋は通っている。少なくとも彼自身にはそう思えた。まるきり、少女の小柄で華奢な体格から導き出される説得力というものを、度外視すればの話だが。
 なにより、そういった行為に訴えようとする気配は、今のところ感じられない。当の彼女はといえば先ほどから数度にわたって呼びかけているアレルヤからの声に、返事もせずただ、ロックオンの──彼の連れて行った幼子の消えた幌の先を、一心不乱に見つめ続けるばかりなのである。
「……」
 まあ、すぐ傍にいるのが無口なのは、慣れてるけどね。緊張感もどこへやら、アレルヤは五十歩百歩である自身の性格や口数も棚に上げてそのように心で独言する。
 刹那とか。ティエリアとか。尤もティエリアについてはいくぶん、柔らかく、口も多少はこの五年で軽くなったようではあるけれど──。
「よう。待たせたな」
「!!」
「ロックオン」
 やがて暖簾のように幌を押し上げて。かつてリーダー格であったマイスターの弟である男はひょっこりと顔を出す。迎えるアレルヤは、ごく自然に。もう一方、少女は食い入るようにその彼へと、視線を向けて。
「心配しなさんな。かすり傷だよ、あのガキンチョ。バンソーコー一枚でぴんぴんしてる」
「本当かっ!?」
「嘘ついてどーすんだよ」
 実際、食らいついた。ロックオン・ストラトスの吐いた言葉に対し、少女は敏感に。
 それをいなすように、眼前のガンダムマイスターは軽口で返す。
 確認と、応答と。やりとりの後に少女の強張っていた両肩から力が抜け、続けて安堵の息が吐き出される音が、アレルヤの耳にも届いた。
 よかった、という短く小さなその、呟きもだ。
「……どういうことだい?」
 子供が、怪我をしていた。少女がその心配をしていた。ロックオンが、子供を運んでいった。アレルヤが把握しているのはしかし、たったこれだけである。いまいち、詳しい事情は心得ていない。それらの行動の、状況の起因となった理由というデータが今、アレルヤのもとにはない。
「それに、この子は?」
 だから訊ねる。より問い易い、同僚へ。だが一瞬、アレルヤの質問に彼は沈黙し、そして、
「……さあ、な」
 曖昧な首の傾け加減を返してくる。その上で──手に取る。
 マイスターのパイロットスーツに常備されている、後背部の自動拳銃。それを外して、少女の赤毛へと、向けたのだ。
「!!」
「ロックオン?」
「こっちのほうが訊きたいくらいだ、ってこった。この、お嬢ちゃんにな」
 狙いを定めたまま彼が語ったのは、アレルヤにとってはようやく知らされた形の、それまでの経緯。
 オートマトンに、先ほどの子供が狙われようとしていたこと。
 そのとき、ロックオンの銃口は目の前にいるこの少女へと、向けられていたこと。
 ぴたりと外すことなく、必中を期していたそれを利用して、少女がオートマトンを粒子ビームの噴流に巻き込み、そして幼子を救って見せたこと。
 ──それ以前に。彼の見つけたその際に少女は、素手で。生身でオートマトンを破壊していたこと、など。
「それだけじゃねえ。こいつは、突然現れた。何もなかったその場所に、当たり前にいたように」
 すべてが、俄かには信じられない事象の数々だった。
 だが、冗談などではない。引き金に指を置くロックオン・ストラトスの目は紛れもなく、本気そのもの。場合によっては迷わず撃ちはなつであろう狙撃手のそれだ。
「この場で、もう一度訊くぜ」
 冷厳と、その口からまず、言葉が放たれる。
「お前、何者だ。どこから来た」
 

 
 力漲らせていた。それは、ほんの一瞬前までのこと。
「──……!?」
 今、そのMSはのけぞっている。振り下ろそうとしていた刃も、見当違いの方向に大きく煽られている。
 すぐ至近にあってまさに、迫っていた紅いガンダムは、その意を遂げられなかった。だから刹那たちは生きている。二人を乗せた輸送機は墜とされることもなく、そこにある。
「蒼い……道……?」
 本来、目をつけるべきはそこではなかったのかもしれない。だが、刹那の意識には空をまっすぐに伸びるその色が強く、強く第一の印象として残った。
 そして──その先。MSがおおきくのけぞった、その理由。MSの顔面に吸い込まれているその一撃は紛れもなく、人間の。生身のそれであって。
 やがて、その光景が印象の次に認識として追いついてくる。
 間違いなく、それは人間。……人間が、空を? MSを、素手で?
 自分は夢でも見たのではないか──らしくないことだと自覚しつつ、一瞬にして視界の外に消えた蒼の閃光に、思わざるを得なかった。
 だが。
『今のうちです!! はやく!! あのでっかいの、この飛行機を狙ってますっ!!』
「っ!!」
 そこに、思考は留めない。通信機に割り込んできた声が、その引き金となった。
 操縦桿を捻り、機体を反転させる。脇目も振らない。ひたすらにただ、逃げる、逃げる。この場を離脱すること、それだけを第一にエンジンを咆哮させ機体を飛ばす。
「一体何者だ? どこにいる?」
応答があるとも知れぬ問いを投げて、それでも一直線に輸送機の進路をとって。
 

 
 そして。彼女は『上』にいた。
 そう。様々な意味でのまさしく──『上』に。
「機体の真上です。要救助者を一人抱えてて、すいません。お邪魔してます」
 足元には既に蒼の道は無い。自らが先ほど救ったばかりの輸送機の、その上部装甲板の固い感触が、足裏に返ってくる。
「たぶん目くらまし程度ですけど、あたしが牽制します。このまま全速力で逃げてください」
 それで、振り切れるはず。
 返事が返ってくるまでに間が空いたのは、算段のための思考時間だろう。
 こちらが、信用できるのか。ここを脱するには、ほかに選択肢はないか。どちらのほうがリスクは低いか、など。
「幼い子供を、一人背負ってます。この子を安全なところまで届けたいんです。お願いです、協力してください」
 信じてもらえることを祈るしかない。つい、助けに入った以上。背中の子供と、機内の人間、どちらにとってもよい結果を残すためには、それだけが自分に今できること。
『……わかった』
 やがて聞こえた信頼の意の回答に、彼女は安堵する。そして、意識を目前へと向ける。
 足元に、飛行機ひとつ。背中に、命ひとつ。どちらも、守る。救うのが本分。そう──『特別救助隊員』としては。
「いくよ!! 相棒!!」
 破壊力は二の次。今はただ、強く。ひたすらに光り輝く。そんな一撃が必要。だから、命じる。依頼する。愛機に。数年来の付き合いの──相棒に。
『all right,buddy』
 アブゾーブグリップ。その名で呼ばれる『魔法』が、彼女の両足を固定する。大きく吸い込んだ息は、集中のための予備動作だ。
 相棒、マッハキャリバーとともに、得意の一撃を確実に撃ち放つためにそれは、気持ちの上で必要なこと。
「は、ああああぁぁぁっ!!」
 蒼い髪に、蒼い瞳。その四肢を包む純白の衣が更に足元に輝いた蒼へと、照らし出される。
 暖かな脈動が、全身を漲っていく。
 もう深紅の機体は顔面を蹴り飛ばした衝撃から立ち直り、こちらにまっすぐ距離をつめてきている。もうちょっと。もう、ちょっとだ。
 蒼き光は足元にあっては三角形、そして眼前にはひとつの光球を形成し、収束する。これが、この状況から皆を逃がすのに必要なもの。
 そのための、『魔法』。まさしくこの世界では、『魔法』としか形容できない一手。
 そう、これが。彼女の放つこれこそが。
「ディバインンンッ!! バァスタアアァァァッ!!!」
 スバル・ナカジマにとっての、この世界における始まりの鐘であった。
 
 
(つづく)
 
− − − −