41話ができました。

 
とゆーわけでweb拍手レスの下の続きを読むからどうぞ。
 
>お久しぶりです、神楽風香です。カーテンコール、とうとうあの方の登場ですか!? っていうか熱いよ、展開が。続きが楽しみです。それと遅れましたが、日誌3の作品も読みました…というより読み砕くのに時間がかかってしまった上に『死』は一時期私の身近で何回も見たので色々と考えてしまって。ぁ、今回の日誌4も参加します。また、640さんの作品が読めると思うと楽しみです。よろしくお願いします。
どもですー。今回の日誌はかなり文体とかを趣味や実験に走ってしまいまして(汗
ひょっとすると期待されてるような出来に添えてないかもしれないですー。こちらも楽しみにしてますよー。
 
 
んだばカーテンコール最新話、どうぞー
↓↓↓↓
 
 
 
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 その眩しさに覆い尽くされた視界は、いつしか黄金の雷光色すらを通り越し、真っ白にホワイトアウトをしていて。
 膝の上に抱いたディードもまた、起こった状況の変化に息を呑み戸惑っているのがわかる。
「これ──一体……」
 落雷。そうとしか、表現のしようがない。
 決着のため歩みをこちらに向けていた姉はどうなった。同じく姉に追い詰められていた、ノーヴェは。そして彼女や自分たちを取り囲んでいた、ガジェットの群れは。
「……っ!?」
 視覚情報による答えは、回復せず与えられることもなく。
 かわりにただ、音が。ウェンディとディード、戦闘機人たる二人の姉妹が鼓膜へと届くそれらのみが、更に移りゆく状況を、憶測に導く程度に伝えていく。
 それは、爆音。
 なにかが砕け、なにかが破裂し。なにかが──撃ち落されていく。戦闘に身を置く者ゆえわかる、そんな撃墜音が、二人の耳を叩き一層に戸惑わせていく。
「なにが、どうなって──」
 呟きの瞬間、光が瞬いた。
 微かに、だけれど見落としはしないほどにははっきりと。白の中に鮮やかな、緑が。──緑?
 その色をした輝きが、舞い。直線や曲線を描き。おぼろに、白一色のキャンバスに浮かび上がっている。
「ひゃっ!?」
 光の色と存在とにひっかかりを覚えた直後、ウェンディは思わず声を上げていた。
 なにかが、肩に触れた。そのために。
 動揺は、一瞬。すぐに思考はここまでの接近を何者かにゆるしてしまったという、警戒に塗り潰されていく。
 ぽんぽんと、二回。気のせいではない。今、ウェンディの肩には、何者かが載っている──あるいは、触れている。
 恐る恐る、首を捻じり振り返りかけたそのとき、『それ』は声を発した。
「大丈夫、二人とも」
 姉妹の声で、話した。
「オットー……?」
 眩さも、視界のなさもこれほどまでに近付いてしまえば意味はない。
 ともに見上げたディードの呟きが、全てを物語る。
 そうか、あの光は……彼女の、彼の得意技のIS──……。
「ちょうど、タイミングが重なったみたいだ」
 ナンバーズの、8。ディードの双子の、姉。オットーは言って視線を、徐々に晴れ始めた霧のような眩さの向こうへと投げた。
「僕も、姉さまたちも。──たぶん、どこの誰よりも頼りになる助っ人と」
 妹の状況を瞬時に判断したがゆえにであろう、淡い癒しの輝きをその指先に宿し、傷ついたディードへと屈みこみながら。
 やがて輪郭をなしつつある影、その雷神が後ろ姿へと、虹彩の焦点を向けていた。
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
 
第四十一話 thunder and bliz
 
 
 すぐそこには、敵がいる。見ずとも。見えなくとも、わかる。
 黄金の閃光剣をまっすぐに突き立てた、ゆりかご上部甲板上。己が進行方向に、それはいる。
「よく頑張ったね、ディード」
 強い風は、高空ゆえに。自身持つ金色の髪が煽られなびいていく。その風が軽装のバリアジャケット……真ソニックフォーム越しに、肌で感じ取れる。
 倒すべき相手も、自分自身も。背中にある、守るべき者たちもすべて、わかる。そう、この目が見えていなくても、だ。
「フェイト、お嬢──いや、お姉さま──、その、身体は」
 心中で繰り返す中聴こえてくるのは、シスター・シャッハより預けられた教え子の声。
 背後には傷ついた彼女たちがいる。
「そんな、身体で」
 きっと彼女たちは、見ている。なにも風に揺れるのは長い金髪だけではない。たなびくのは──この両目を覆う、それらすらさえも然り。
「──やはり現れましたか、フェイトお嬢さま。……いえ。ディードに倣って変えるわけではないが──フェイト・テスタロッサ
「……ナンバー3、トーレ」
 機動拘置所へと続く別次元での、戦闘。ヴォルテールと彼女との、多勢に無勢の戦いにおいて負った傷は、未だ癒えてはいない。
 光もまた、瞳には宿らず。急加速によって端を解れさせた白が、今なお双眸を覆い隠しているのだから。
「手負いのその身で。再び私と刃を交えるおつもりですか」
「当然です」
 それでも、戦う。そのために自分はやってきた。訊くだけそんなこと、野暮というもの。
「怪我人だからといって手心を加えるほど、私は生臭い感情は持ち合わせていない。それを、承知の上で」
「ええ」
 教え子たちの手助けとなるため。なのはを救い出す力とならんがために。
 ヴィヴィオを。フェイト自身にとっても『娘』である少女を悲しませるような結果を、生み出してしまってはいけない。
「……いいでしょう。ならば今度は、光を失うだけでは済まさない。よろしいですね」
「──やれるものなら」
 もちろん、やらせたりなんてしない。
 過信でも、驕りでもなく。この程度の負傷で一息に抜かれるほど、甘いつもりは毛頭、こちらにはない。
 ──たとえ両目が塞がれようと。傷癒えぬ身体といえど。
 教え子たちが頑張っているこの状況で、自分ひとりが不甲斐なくあることなど、己に対して許可できるものではないのだから。むしろ──……、
「むしろ、妹たちの声にすら耳を塞いでいるあなたの相手には。こちらも目が塞がってるくらいが上等です」
 これで対等というほど、たりえなくては。
 
*   *   *
 
そしてここでも。あまりに似通った状況が生まれている。
「どういうことかしらね、これは」
 ──ほんとうに、そうだ。ノーヴェは、思う。敵の言葉に同調するのはまったくもって悔しいことではあるがまさしく、そのとおりに。
「──なんで、いるんだよ」
 どうして、ここにいるのだ。
 姉が。しかもひとりならず、ふたり。相対したナンバー2、ドゥーエに立ちはだかり、ノーヴェを庇うように。
「チンク姉。限定解除は」
「どうにかな。許可が間に合って、よかった。八神二佐から聞いていなかったか?」
 そりゃ、申請を出しているとは。可能なら派遣するとは聞いていたけれど。
 まさかこんなタイミング、こんな状況でだなんて、思ってもみなかったわけであって。
 軽く振り向いて微笑む姉に、ノーヴェは呆然と目を瞬かせる。
 周囲より狙いを定めていたガジェットたちは、既にスクラップ。それぞれに中心へと大穴を穿たれ、あるいは爆散し、残骸と化している。
 本来の性能を開放されたチンクのIS、ランブルデトネイターによって、一瞬にして。
 フェイト・T・ハラオウン執務官の登場と、ほぼ時を同じく。
 もうひとりの姉の、浮上とともに。
「ギン姉……中の制圧は……っ」
 チンクの隣に、ローラーブーツ型デバイスを装着したその姉は仁王立ちしていた。その左手に、本来あるはずのリボルバーナックルは──ない。
 黒の指抜きグローブのみが、覆っている素手。そこにぱちぱちと残滓がまとわりついている。魔力じゃない。あのエネルギーは、戦闘機人としての。
 ギンガが、戦闘機人の力を。そんな光景、今までノーヴェは姉妹になって以来、見たこともなく。
 彼女が目の前にいること。それが、金髪の執務官が到着と同時であったこと。チンクとともに立っていること。力を使っていること。そのひとつひとつ全てが、ノーヴェに驚きの二文字を与えていく。
「気になったから、戻ってきた。──指揮官として、ね。それだけよ。あとは──」
 ぽつりと、ギンガは返す。振り向くこともなく。ノーヴェへと背を向けたまま。
「──あとは、そう。姉として、放ってはおけなかったから」
 ナンバー2のとった戦術を。私にさせた行為を。そう呟いた声まではノーヴェには、聞き取れず。
 ただ怒気に似た感情を、姉の後ろ姿へと感じ取る。
 向き合う戦闘機人、ドゥーエに対する、ふつふつと奥底に滾る怒り。それを、微かに彼女は発散させているから。
「チンク。ノーヴェをお願い」
「無論だ。ガジェットたちは一機も見逃さん」
「無視しないでほしいわね──チンク。タイプゼロ・ファースト」
 諜報専門とはいえ、初期ロットゆえに幾度もの改修を経ているはずの相手が口を開く。
 この相手と、戦う気だ。長姉は。
「どういうこと? ゼロファースト。けっして最深部ではなかったとはいえ、あなたの破壊力ではあの位置から上部ハッチまで貫通して外周まで到達するなど、不可能なはず」
 勝てるのだろうか、姉は。ギンガは。
「──そう。知らないのね」
「知らない?」
 危惧は、あくまでノーヴェの内に存在するもの。
 ドゥーエの問いへと言葉を返すギンガのその声はむしろ、不敵だった。
「私が、戦闘機人としては半端だったこと。結果的にそれを解消したのがあなたたちを産んだ──ドクター。ジェイル・スカリエッティだってこと」
 足元に、テンプレートが輝く。三角形のベルカ式魔法陣でなく、円形をした戦闘機人特有の力場が、下から姉を照らし出す。
「ギン姉──ギンガの、IS……?」
「私の力は、魔導師相手には意味を成さないものだったのだから」
 ドゥーエへと。ギンガが挑みかかっていく。ノーヴェの呟きは、その背中からの風に消えた。
 エネルギーの粒子、光る中へ。
 
*   *   *
 
『聖王陛下ぁ、ちょおっとよろしいでしょうかぁ?』
「──クアットロ」
 その『揺れ』は、王も感じ取っていた。
 けっして動じるでもなく。己が肉体とひとつになったゆりかごに生じた、到達の衝撃と貫通の異変。それらを、おぼろげながらに。
「なにか、あったのですね」
 構えていた拳を、ゆっくりと降ろして。ついた息とともに、確認の言葉を向ける。
『さあっすが、聖王さまぁ。理解がはやくってクアットロ、助かりますわぁ』
「それはどうも」
 軽く念じれば、カイゼル・ファルベと呼ばれる七色の魔力が風となり、そこにあった熱気の残滓を散らしていく。
 して、イレギュラーの内容は。首尾に関してのその、影響は。問うと同時に、行為はいとも容易く。
 邪魔する者なく、滞りなく完遂される。
 熱気に淀んでいた空気を打ち払うように、ノアはそうした。
「問題がないというのであれば、これまでどおり続行を」
『はぁい。失礼しますぅ』
 人を食ったような、戦闘機人の口調。『彼女』とはまるで違う、と聖王は心中にて評した。
 たった今まで、王たるこの身へと刃向けていたそう、『彼女』とは。
「個人的にどちらが好ましいかをいえば明白ですが──ね」
 足元の床は、ひび割れいたるところ、砕けている。激戦の証ゆえ。
 だかそれら破損が微細と言えるほど大きく、くっきりと。傷跡もまたそこに刻まれている。
 浅く。半円上に、長く太く、構造材そのものを切り取り掬い取ったかのように、抉れて。
「残念です」
 月の魔力が中継装置、そのコアたらんと磔の贄となった、エースオブエース埋もれし大壁面へと続く。
 これもまた、ノアがやった。贄なりし女性より記憶し習得した、エクセリオンバスターという一撃を以ってして。
 人ならぬ聖王の手から放たれたその威力が、ゆりかごを削っていったのだ。
 まっすぐ。ぶれることなく。対抗方向よりの同名を帯びた戦技すら、いとも容易く飲み込み蹂躙した上にて。
「あなたを私は、羨ましく。好ましく思えているというのに。タイプゼロ・セカンド──いえ、『スバル』」
 その破壊力はエースオブエースと同じオブジェをもうひとつ、壁へと増やすように、機械の身体持ち挑んできた魔導師をそこに押し流し、叩きつけそして、縫い付けた。
 ゆえに。高町なのは囚われしその直下──その箇所は大きく砕け、魔導師が身体を受け止めている。
 破壊力の前に、白の戦闘服はあるいは焼け焦げ、あるいは焼失し、あるいはずたずたに引き裂かれて。
 皮膚の破損箇所からはところどころ、彼女が人間あらざる者であることを明白とする火花がところどころ散り、鮮血の赤を照らし出している。
 砕けた壁面そのものが、彼女のベッドがわりだった。
「ブラスターシステム──戦闘機人の力。IS。やれるだけのことをよくやったと思います、あなたは」
 苦悶に表情を歪めたまま、両の瞼は落ち。
 縫い付けられた全身を引き抜くどころかその四肢は力なく構造材へと噛み挟まれたまま、ぴくりとも動かなかった。
「ですが。私は王なのです」
 白くぴんと張っていた鉢巻も、擦り切れぼろぼろとなり、額よりの流血を吸い、赤黒くその中心を汚す。
 そして。魔力によって編みこまれた繊維がやがて限界を迎え千切れたか、はらりとその頭部から滑り落ちた。
 ──あなたに、負けてあげるわけにはいきません。
 聖王のその言葉と、その断ち切れた布の落着と。あとは音も、動くものもなく。
 骸のように、焼け焦げたスバルの身体がただそこに転がっていた。
 
 
(つづく)
 
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