なんか執筆調子○
てなわけでカーテンコール42話ー。これで多分双方戦力出揃ったはず。
あとはつきすすむだけ。
web拍手レスー
>座頭市フェイトにはじまり、瀕死スバルに終わった・・・か。次はいつだろう?
思ったよりはやかったです。(ぇ
んであ続きを読むからどぞー。
↓↓↓↓
− − − −
「──この」
声が、響いた。直後には、爆音が続く。
「なにだらしないことやってんのよっ!! 馬鹿スバルっ!!」
破片と粒子とに砕き散らされた構造材の煙が、高い天井より舞う。
現れたのは長く伸びた砲身であり、その銃口。クロスミラージュ、第三形態の砲撃仕様──ブレイズモード・カノンシフト。
最大出力をこめた愛機を手に、赤毛の魔導師が叫び躍り出る。
照準は無論、直下。追放されし王家の聖王、ノア。
「とっとと、起きなさいよっ!!」
はっきりと、認識できたわけじゃない。けれどたしかに、スバルはその声を聞いた。だから、動いた。動けた、のだ。
「!!」
全身を挟み込んでいた瓦礫を、押しのけて。
常態化した激痛にその痛覚すら感じることなく、破片を踏み砕き、両腕を引き抜きながら。半ばそれは、無意識のままに。
「う、おおおおぉぉぉっ!!」
爆ぜる鮮血を散らし、スバルは跳ぶ。襤褸布同然にずたずたとなった外套を、振り乱し一心に。
血の流れ込む視線の先には、聖王がいる──……!!
「まだ、まだあぁっ!!」
亀裂刻まれし右腕のリボルバーナックルへ、エネルギーを集約する。渾身を、たたきこむ。
「挟み撃つわよっ!! スバルッ!!」
ティアナは上から。自分は、正面から。金色の瞳に、その意を固く宿らせる。この一撃、けっして外すものかとばかりに。
「振動ぅぅっ!! 破砕っ!! パワー、最大ぃっ!!」
「ブレイズ……っ!!」
拳を届かせる。砲撃を命中させる。踏み込みとともに、降下とともに。
これがスターズの二人の、全力全開の同時攻撃。
もう、聖王の姿はすぐそこに。拳を伸ばしきれば、命中する。──当ててみせる!!
「──振動拳んんんっ!!」
「スマッシャァァァーッ!!」
タイミングを、外したりなんてしない。
スバルとティアナ、ふたり。ぴたり同じに、スターズ3と4は、その全力を倒すべき敵めがけ、解き放った。
挑む二人の顔が、聖王の握りし漆黒の双刃、その上下にそれぞれ鏡のごとく映し出されていた。
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
第四十二話 救援者たち
まだ、痛みは残っている。
「ディード」
それでも、ディードは立った。ウェンディに、オットーに支えられて。幸い傷口の出血だけはどうにか、遅れかけつけてくれた双子の姉の手によって、塞がれている。……甘えてばかりはいられない。
苦悶が表情に出て。それを心配する声をオットーが脇からかけてくれても、だ。
「……大丈夫よ。ありがとう、オットー。それより」
自分のことよりも、大事なことが目の前にあるのだから。
「お嬢さま……ううん。フェイトお姉さまは、あんな身体で」
あんな、傷だらけの身体で。姉と戦おうというのか。
果たして──勝てるのか。痛みの中にあってそれを強く思わずにはいられない。加勢しなくては、と。
「──わからない」
しかし、問いを向けた双子よりの応えは、にべにもなく。だがしかし、そこにある意はけっして、否定するものでもあらず。
「僕はまだ、フェイト執務官とそれほど多くの時間を共有したことは、ないから。──でも」
それはディードに、促すために。
「でも、ディードは違う」
信頼の二文字で表される、その行為を。
「ディードはティアナと一緒に、少なからずの時間をフェイト執務官の側にいたはずだ。この中の誰よりも。だったら」
今までに見てきた、強く疾い執務官を信じること。
傷ついた身体での加勢なんか必要ない。そのくらい彼女が強いことを、側で見てきたディードなら、信じられるのではないか。その問いかけゆえの、曖昧な返事。
「ディードなら、頼りに出来る。信じられるんじゃないかな。執務官のことを」
「それ、は」
それは──その通りだ。そうだとも。
ほんの数ヶ月に満たない期間でもその中で幾度となく、模擬戦で打ち負かされてきた。
彼女の強さは、圧倒的で。
得意の二刀剣術でも、マンツーマンでは圧倒されるばかり。フルドライブをあちらが禁じ手としたところで、やはり足元にも及ばず。ティアナと組んでの二対一で、ようやく互角。そんな、相手。
シスター・シャッハとの試合を眼前で繰り広げられた際にはなにからなにまで、自分にとって必要と思えない部分はなかったほどの、上司のその実力を。
そうだ──自分が信じなくて、どうするというのだろう。
「それは一体、なんのつもりですか」
と、耳を打ったトーレが声に、ディードは我へと返る。
同時、がしゅん、という機械音。……もっと正確には、可変音が続きまた耳を打つ。
「ザンバーを解いた……? フルドライブじゃなくて、通常形態で?」
オットーの反対側、ディードにとっての右脇からのウェンディの呟きも、然り。高速戦闘仕様の真ソニックフォーム、その薄い装甲を身に纏った金髪執務官のとった行動に、疑問を呈している。
「リミットブレイクのライオットならともかく──……」
「──いえ」
トーレとウェンディ。当事者と傍観者の思考が疑問の一点に重なったというならば、直後また、別の形で別の二者が意図を重ねていく。
──あれで、いいんです。心中にてそう呟いた教え子の、ディードと。
「あなたが、強く疾いから。だからこうするんです」
侮っているわけではないと言いつつ、けれど不敵に口許を歪めてみせる執務官のうちにおいて。
漆黒の戦斧を、金髪の執務官はゆっくりと相対する敵へと向けた。
そして瞬く間もなく、あっけないほどごく自然に、両者の姿はもとあった場所より、消えていた。──動いていた。
どちらが先に動いたかまでを追えた者は、いない。それは、ディードにさえも。
* * *
「お前にしては、周到ではない。改修型くらい、用意してくるんだったな──どうせ見ているのだろう? クアットロ」
言いながら姉は、両手に広げた無数のナイフを投げていく。
縦横無尽に。ありとあらゆる方角へ、まるでどの方位に対しても目が、ついているかのように。
投げナイフ、『スティンガー』が空を舞い、命中し。群がるガジェットたちを火球へと変えていく。
姉自身が言っていたとおりだ。能力限定なんてもはやかけらもない。
百パーセント。かつてのナンバーズ、ナンバー5の能力、そのフルパフォーマンスが、そこにある。
「ノーヴェにはこれ以上。指一本、触れさせん」
同時に、六機。ナイフがガジェットの中心へと突き刺さる。くるりと、隻眼の姉は振り返りそして、指先を打ち鳴らす。
──爆散。その熱量が光源となり、逆光のもと小柄な姉の姿を照らし出す。
やっぱり、すごい。そう思った。けれど、それ以上に。
「心配するな、ノーヴェ。やはり私たちの姉上は──強いよ」
こちらの呆然を見て取ったのであろう、微笑とともに発せられる言葉がノーヴェの心を埋め尽くす感情を代弁する。
「二年前。私たちが三人がかりでなければ止められなかったのも頷ける。そうだろう?」
爆発の向こう側。もう一人、姉がそこで戦っている。
動けぬ自分にかわり。ナカジマ家の長姉が、ナンバーズの次女とその拳を交えている。
蹴りと蹴りが交差し、拳が、鉤爪が双方の頬をかすめていく。
ともに瞳を金色へと染めた二人の繰り広げるそれらはまさしく、互角。両者がなにひとつ、譲ることなく。
とん、と踵を鳴らしチンクがノーヴェのすぐ側に降り立つ。押えた脇腹、その患部へと差し出される手には、治癒魔法を載せて。すまんな、先にある程度敵を減らす必要があった。そう、陳謝をしながらに。
「驚いているのか?」
「え。いや──……その」
電光の剣。その銘持つデバイスにてギンガは疾駆し、ドゥーエへと一打一撃を重ねていく。
「おそらくは、単純な一撃の重みならスバルが。スピードと敏捷性なら、お前のほうが上だろうな。しかし」
互角に見えてその実──口許に、笑みさえ浮かべながら。
そう。それは互角ではなく、圧倒。
「あれで姉上は。ギンガはまだ、ISすら使っていない」
「っ? チンク姉、ギン姉のISを見たこと」
「ああ、一度だけな。施設を出てすぐだったか」
あくまで用いているのは、戦闘機人としてのそのパワー、出力のみ。
純粋な体術、それだけでギンガはあのドゥーエと渡り合っている。自分に果たして、同じ真似ができるかどうか。
パワーでも。機動力でもない。卓越したそのシューティングアーツの技量がそれを成し得ているのを、ノーヴェは理解する。
これが。普段捜査官をその活動の主体に置いている姉の、本来の実力。
「さあ。ギンガは、強いぞ。『あのIS』は、特に」
打ち下ろした拳が、空を切る。
砕くのは回避したドゥーエではなく、足元のゆりかごが装甲材。
ただ破壊し、割るのともそれは違っていて。直撃を受けたその箇所を中心に──奇妙な傷跡がそこに刻まれる。
周囲へと飛び散るはずの破片が、不思議に虚空を漂うように緩やかな動きを見せ。拳持ち上げたあとには螺旋状に穴が穿たれる。
そして、一瞬ののち。その外周が、異変を生じるのだ。
微かに。それでいて確かに。押し潰されたように、一段低く圧壊する。
「『私たちには』、な。スバルの振動破砕に、勝るとも劣らない」
だからこそ、リボルバーナックルを外しているんだ。言うチンクの頬には、微かな汗が浮いていた。
──外さなければ、壊してしまうから。そう、付け加えた。
* * *
浮揚感のあとで、一瞬視界を失った。……気付けば、失っていた。
キャロへと迫る危機に気付いて、叫んで。どうしようもなくただ、手を伸ばした直後に。暗い色をした『なにか』が目線の先を覆い、かわりに浮揚感を与えていった。
手放していたはずのストラーダもまた、いつの間にか手のうちへと戻っていた。
ただしかし、感覚はあまりに、身に染み付いたものと同種であり。
それは、ソニックムーブなどといった高速戦闘の真っ最中、全身を襲うものとまったくの瓜二つ。
急加速と。それに引き寄せられる肉体とをエリオは、そこに感じる。幾度となく、脳裏と神経とに、刻み込まれてきたものだから。
しかし確かなのは、その出所。
すなわち、その感覚を与えているのは。挙動をもたらしているのは──エリオ自身では、ない。
「あ……っ」
やがて感覚が止まったとき、エリオは把握した。
すべてのガジェットたちが、鉄屑へと変わっている。
自分の攻撃は、完全に竜を止めるには至らなかった──未だ白き竜は巨体より血を流しながらも、空を舞っている。
そして、自分に肩を貸し。キャロを抱えた存在が、そこにいる。
窮地を救ったのはその相手。暗色の装甲に身を包んだ、疾風の速度持つ戦士。
「……ガリュー!!」
それはかつて、矛を交えた人ならざる強敵。遠き世界に生きる友を守り続ける守護者であり。
彼が、そこに立っている。膝を曲げてキャロをそっと、降ろしている。
その事実が、意味すること。エリオの理解へと同意するかのごとく、甲殻に身を包みし召喚の獣は、こくりと頷いた。
* * *
朋。遠方よりきたる。管理外世界の故事のごとく、まさしく。
「──やれやれ。ちっとばかし時間かかりすぎ、はやて」
エリオとキャロとがともに脳裏へと浮かべた『彼女』は、戦場へ。愛する肉親と力分け合い、手と手とりあって。夜天が王の依頼に、応えて。
「まったくだ。だが、これで」
やってきたのだ。音速の戦士と、白き王とを従え赴いた。
彼らの手助けとならんがため、その大切な者たちの、一助に加わらんがために。シグナムとヴィータが目にしているのは、それゆえに生まれ出でることのできた光景といっていい。
「これでヴォルテールを抑える布陣は整った」
大地踏みしめる巨大な一対の足。それがまた、ひとつ。
漆黒へ向き合う純白が、その証だから。
光り輝く魔法陣──フローターフィールド上にて手と手繋いだ長髪の親子、その交差した掌にはブーストデバイス・アスクレピオスの煌きが宿り。
親子の輝きのもと、二体はそこにいる。
すなわち。
ゆりかご艦内、エリオとキャロを救った装甲虫・ガリューと。
「あてにしています……アルピーノ准尉。ルーテシア・アルピーノ」
ヴォルテールへの防戦の最中、見つめるシグナムとヴィータの前に現れた白亜の昆虫王。
召喚魔導師の親子にいざなわれたその名は、白天王といった。
白と黒の拳が、互いを打った。まさしく──「目には目を」。挙動は鏡に映るようですらあり。
竜の王と蟲の王。それは二度目の、激突だった。
(つづく)
− − − −