借りてきて色々アレしてみる。

 
 コラボ? ばかもんそんないいもん期待すんじゃない(ぇ
 
 というわけで某所の某人物のところから娘さんを借りてきてうちの子たちと混ぜ合わせてみる。
 だいじょーぶ生みの親完全監修だし。てことで↑のリンク先読んでからの精読推奨。
 
 てなわけで短期集中連載でどぞー。第一回。全四回予定。
 
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 それはまだ──四姉妹が完全な自由を手にする前のこと。
 組み手のあとで。さっぱりとシャワーで汗を流した髪の毛を風吹き抜けるまま、自然にクーリングダウンをしていく感覚の気持ちよさといったら、たまらないものがある。
「え。セインたち、まだ着いてないの?」
 少なくとも、空気が髪と髪の間から水分を取り去っていく涼やかなその肌触りが、ノーヴェは好きだった。
 こういうとき、短髪にしていてよかったと思う。相手役を務めてくれた、武術の先生でもある姉、ギンガ・ナカジマはその長い髪ゆえに未だ、シャワールームなのだから。
 ああいう髪型もいいな、と少しは憧れるけれど。正直なところ、自分の性分ではひとつひとつのケアが面倒この上なくなるに決まっている。
 だから当分、姉のように長くなる予定のない自身の赤毛をわしゃわしゃタオルでやりながら。
 待っていた姉妹たちの、その中の一番上の姉──チンクの言葉に、目線を上げる。
「ああ。少し遅れると、先ほど連絡があった。午後になるだろうな、到着は」
「ふうん。そっか」
 午後、ね。──ん? 午後?
「あれ、そういえば」
 そういえば──今日の午後って。
 新任のカウンセラーだとかがちょうど、到着する予定じゃなかったっけ。
  
 
 『とある姉妹と、とある医師の挿話』 1
 
 
 辞令を受けたのは、先週の半ばだった。
 内容は、出向。魔導師として、というより──むしろ、医師としての部分が強くて。
 そりゃあ、医務官としてカウンセリングの資格だって持ってはいる。だから産休に入った前任者の後任に、というのはわからないでもないけれど。
 それでも心の中を「よりによって」という感情が占めて仕方ないのは、向かうのが自分でありその向かう先が好ましからざるものであると認識する対象であるがゆえ、納得の境地に到っていないからに他ならない。
 そうだ。よりにもよって──JS事件の犯人たちの、担当だなんて。
 よりにもよって、このわたしが。
『(仕事です、我慢してください)』
「……わかってるわよ。お仕事だからね。お仕事」
 だから。ラナ・フォスターの足どりは重い。
 所属部隊のヘリに送られて、この新たな職場である海上更生施設へと降り立って、幾許かの時が経とうとしていても、だ。
「お仕事、お仕事。──……職場放棄?」
『(管理課に通報しますよ、私が)』
「なによー、ケチ」
 それだけの理由が、彼女にはあったから。
 戦闘機人。冗談じゃない。そのように思えるだけ、彼女にとってそれらは忌むべき相手なのだから。
 言い方は悪いけれど、戦闘機人なんて。一般論としても──ラナ個人の感情としても。
『(この施設にいる戦闘機人たち……通称『ナンバーズ』たちは、前任者よりの資料に拠れば素直で模範的な少女たちと聞いています。各部隊への実地研修も既に許可されている身なのですから、そのような偏見の目は慎むべきです)』
「あーはいはい、そうですね……っと。ん?」
 愛機・スカイトラストの説教を説教以上に聴くことなく、生返事を返しつつ廊下の突き当たりを曲がる。そこにたしか、待合所というか面会の受付というか。そういった場所が設けられているはず。
 そして実際、眼前にはベンチと、受付と。開けた場所がラナの記憶のとおりにあって。従ってラナがきょとんとしたのは、それゆえにというわけではない。
 先客が、そこにいたからだ。
 一人、二人、三人。ラナよりも小柄な、どこか画一的で折り目正しく整った姿が、みっつ。それでもその三人分の服装はそれぞれに若干ずつ、異なっていて。
 こうしてじっくり見るのは、テレビなんかではともかく実物は初めてだと思う。
「シスター。へえ、聖王教会の」
 ええと。カソックだったっけ。白いケープに、黒のロングスカートの女の子が、二人。そして彼女らとともに、カッターシャツにネクタイ、ベストという少年が更に一人。三人ともラナより年下に見える、そんな聖職者と思しき一行が迎えを待っているのか、屯している。
『(マスター?)』
「やだ、かわいー。あなたたち、若いわねー。聖王教会のシスターさんでしょ?」
 犯罪者を収容する更生施設に、シスターとは一見場違いなようにも思えるけれども。慰問とか、そういった用なのだろうか?
 窘める愛機を聞き流し、黒髪ふたつに独特の鮮やかな色ひとつ、立ち並ぶ三つの頭へと歩み寄っていく。
 少年少女──少なくともラナの目には、うちひとつの顔立ちが中性的な少年のものであるように映った──は、気付き振り返る。
 いずれ整った容姿の三人組。
「え、っと。おねーさん、この施設の関係者?」
 ノンスリーブの、こういうデザインもあるのかというカソックを身につけた翡翠色の髪の少女がはじめに、口を開いた。
「見ない顔ってことは、新入りの係官かなにかの人?」
 ラナよりずっとこの場所のことをよく知っているような、そんな口ぶりで。
「あー、まあ。そんなとこ。今日が転勤初日の医者よ、医者。カウンセリング担当」
 不本意ながら、という意識が自分で思っていたより返事の前面に出てこなかったのは、やはり聖職者というその外見衣装が持つ雰囲気に多少なりと、心が漱がれていたからか。
「そっか。ならこれからちょくちょく、顔あわせるかもね。あたしはセイン」
 すんなり受け容れ、返した言葉の後にそう言って少女は自己紹介をし。
「こっちは、うちの妹たちでオットーとディード。双子ね」
 カチューシャで髪が長いのが、ディード。カッターシャツがオットー。うんうんと、確認するようにラナは何度か、両者に目線を移した。
 ぺこりと頭を下げた少年少女はなるほど、双子と言われ頷けるほどによく似た顔のつくりで並び立っていた。
 セインに、オットーに、ディード。聖職者たる、三人の少年少女──いや、少女たち。
 全員が少女であることに、ラナが気付かずとも。
 また、彼女らの経歴をラナが知らずとも。
 ラナと『彼女たち』、つまり『姉妹たち』とのそれが、ファースト・コンタクトであったということには違いない。
 思い至っていれば、意に反したことだと愕然としただろう。
 この邂逅に好ましさを自身が、覚えていたことに。
『あ、いたいた。お待たせしましたですよー、セイン姉さまたちー』
 しかしとりあえず、その感覚は。
「なっ」
「おー、テンペスト。迎えにきてくれたんだ、ひさしぶりー」
 驚きというか、なんというか。さも当然のように現れるその異変によって、塗り潰されていく。
 聴こえてきた声に、振り返って。見た先に蠢く……いやいや、ちょこちょこと走ってくる、小さな小さな、『それ』のために。
 例えるならそれは、旧知の騎士一家、その家長である時空管理局二等陸佐の少女が愛機のその身長と、同じくらい。
 燃えるような紅い髪を大きく揺すって、ぴょんとジャンプして。
 その小さな存在は、セインと名乗った少女シスターの腕へと飛び込んだ。
『チンクねーさまたちに頼んで、お迎えやらせてもらったのです』
 にぱ、と。擬音をつけるならきっと、そんなかんじ。
 少女の掌で、『小さな』少女が笑っている。
「え、っと」
 当然のごとく、だ。けれどあちらにとっては当然であっても、こちらとしては戸惑わざるをえないわけであって。
 結果、行動は周囲に流される。
「ノーヴェ。そんなに心配なら素直についてきてあげればいいのに」
 オットーの投げた、声に。
 つられ、目線を向ける。彼と同じ方向、少女たちが一斉に視線を注いだ先へと。
 通路の曲がり角。そこに隠れていた人物がいそいそと、ばつが悪そうに出てくるのは、それからだった。
『れれ? マイマスター、テンペストの後ろにいたですか?』
「……んなんじゃねーよ」
 この施設規定の、収容者に支給される白の上下。そこから覗くのは小柄な四肢と、テンペストと呼ばれた手乗り少女によく似た顔立ち、赤毛と。
 金色の瞳と。
 さすがに、そのくらいの情報には目を通している。ああ、なるほど。あの手乗り少女。誰かに似ていると思ったら、そうか。
 不本意にも自分がこの施設にやってくる理由となった、戦闘機人の姉妹、そのひとりである彼女と──……。
「姉貴や妹があんましおせーから、見に来ただけだ」
 ったく、おめーら。そう毒舌する、ぎこちない誤魔化しじみた声。
 ──姉? 妹?
「え……?」
 それは、明らかに、三人組の聖職者たちへと向けられた言葉だった。
 彼女ら、彼らが。この戦闘機人と──姉であり、妹? だとしたら。それは、つまり。
 つまり、この子たちも……戦闘機人?
「そこの。新任の医者の先生、迎えに出てくるついでにな」
 その戦闘機人。ノーヴェは、言った。
 まっすぐ見据えられてラナは、目線を彼女から外さざるを得なかった。
 行為の原理としてあったのは戸惑いと、逡巡と。それと、小さな種火のように燈った、嫌悪感と呼ぶべき感情と。
 外した視線でそのままぐるりと、周囲に在する三人の、シスターたちを思わず見回していた。
 しかし見られる側の彼女たちは当然の事ながら、きょとんとするばかりだった。
 掌サイズの少女に至るまで、一様に。目を、瞬かせて。
「フォスター医務官、だっけ?」
 彼女たちはまだ知らないから、そういった対応が出来る。
 ラナは。──ラナ・フォスターが。
 戦闘機人のことが嫌いであると、知っていないからこそ、きっと。
 
(つづく)
 
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