いやマジすんません。

 
 あけまして・・・その皆様すいませんorz
 えとですね、冬コミにて『真夏の夜の夢』さまより発行の機動六課勤務日誌4に参加していたのですが。
 その告知をすっかり忘れていた&年末で更新できなかったものでorz
 とうわけで主催の風原さんや知らなかった、というコミケ参加者の方々申し訳ありませんですはいorz
 
 とりいそぎ今朝書き上げたカーテンコール最新話だけうpしておきます(汗
 
↓↓↓↓
 
 
 
− − − −
 
 引き摺り起こしたのは、嬲るためではない。けっして。
 そのために掴んだ先が、蒼い髪であったのもまた、いたぶるためであったわけではない。
「……っ」
 それは、繰り返しの勧告をするために。それはまた、宣告でもあり。
「ここで、終わりにしなさい。王の名に恥じぬ、敗者への寛大さは心得ているつもりです」
 隻腕となった蒼き戦闘機人への、ノアからの、だ。
 お前は、負けたのだ。これ以上戦う力は、残ってはいまい。その、通達。
「ぐ……ああっ!!」
「!!」
 しかしその認識はノアのものであって、当の彼女にとってはそうではなく。
 焼け焦げた戦闘服の下、あちこちに裂傷を刻み込まれた肉体を、その敗者はふるう。
 防護のための着衣がもはや、原型すら留めていないほど、ずたずたでも。
 四肢のひとつが肉体から遠く、離れ転がっていたとしても。
エクセリオンんんんんっ!!」
『『Buster』』
 聖王が腕を、振り払う。ほぼ、零距離。
 彼女の強靭な肉体が限界を迎えつつある中での一撃だというのは、十分にそれを受ける側となったノアにもわかった。
 無理矢理に魔力の最大値を引き上げる、ブラスターシステム。その三段階目の反動はもはや、本来の使用者では──人間の。生身の身体では、もはや耐え切れぬほどであろう時間を刻み、この蒼き反抗者の全身を襲っているはずだ。
 いかな鋼の骨格持つ戦闘機人とはいえ、いつまでも続くわけがない。
 エクセリオンバスター、そう彼女とその戦いを支える二機のデバイスの発した名の砲撃自体、過剰な負荷のかかるものであるはず。
 放った際の衝撃を、自身殺しきれていないのがいい証拠だ──『その衝撃』の真っ只中に破壊力の噴流に飲み込まれながらも冷静に、聖王・ノアはそう評する。
 蒼き閃光の向こうでは、踏ん張りがきかず自分自身の砲撃の墳出力に上下を失い、風に巻かれた枯葉のごとく床面を転げる戦闘機人の姿があった。
「そのひたむきさ、不屈さは好ましい」
 だけれど──無様。ノアの目にはそう映る。
エクセリオンバスター。撃ててあと一撃ですか」
 それ以上は、あなた自身の身体がもたない。
「繰り返します」
「……っ、く……あああっ!!」
 そして、もう一撃。しかしそう連発のきくものではない。こちらはもはや、先ほどのものとは破壊力も射程も、程遠い。砲撃とすら、呼べるかどうか。
 遮二無二──無理矢理に。連射している。だがそれほどやっても、その砲撃はノアには届かないのだ。……残念ながら、と思うのは、憐憫だろうか。もしかすると傲慢、なのかもしれない。
 模造品でない。正当なる王として生まれ王として育った、聖王がカイゼル・ファルベは、通しはしない。
 ただ、持っているのではない。自分はそれを、使いこなしているのだから。
 虹色の風に守られ、ノアは前に出る。痛痒も、ありはしない。
 魔力の噴流を──それだけであるならばたしかにその一撃は噴流、激流というにふさわしい──割って。ダイムを手にした腕の、反対側。革手袋に包まれた、空いた掌で、閃光の発信源たる敵対者の拳を包み込む。
「まだだっ!! エクセリオ……」
 出し惜しみをしない。
 そのひたむきさを好ましく思っても。そのために譲れる道は、持ち得ていないから。
「降伏を」
 ごきりと、やがて音がした。あらぬ方向を、向いた。
 ──絶叫。無論、『スバル・ナカジマの』だ。
 折っては、いない。しかし、のた打ち回る。『スバル・ナカジマが』だ。
「ゆりかごも。もうすぐ、エネルギーの受信可能ポイントへ到達します」
 火傷と裂傷に塗れた背中が、何度も痙攣をしている。
 そのたび床面を舐め、擦り付けられる俯きの頭部の下には、血交じりの唾液が滴り落ち。
 静かにノアは、そんな『スバル・ナカジマへ』。ダイムの切っ先をつきつけ、それを見下ろしていた。
 彼女が引き下がることを、願いながら。
 彼女が引き下がらぬであろうことを、予測しながら。
「……っ」
 その拳が激痛に耐え、小刻みの痙攣を震わせながらも刃先を掴み、握りしめるのを、見た。


魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜

第四十四話 対話(1)


 ちっ、と。短い音がたしかに聴覚の片隅に聞こえていった。
「──苛立って、きていますね。ナンバー3。……トーレ」
 視覚を失ったおかげで、聞き間違えようもない。聴覚が、研ぎ澄まされている。鼓膜に刻まれていったその音は、たしかに舌打ちだった。
 そう──音、だ。
 後方。斜め上へと、バルディッシュを打ち払う。鈍い衝撃と、甲高い激突音。迎撃、成功。その手ごたえが返ってくる。
 二撃、三撃と。防ぎきる。
 音をたよりに、防ぎ続ける。もとより互い、到底目などでは追いきれぬ速度だ。むしろ、集中できる。
「……手負いの分際でっ!!」
 幾度目かの、鍔迫り合い。二者真逆の方向に分かたれて、着地する。
「あなたには、これで十分っ!!」
 正直言ってしまえば、ボロボロだ。クリーンヒット以外は放っているし、対応していては捌ききれるものでもない。重傷によるだましだましの状態でフェイト自身、どうにか攻められる一方というのは避けられている、防戦一方でないという程度のこと。
 また一条、真ソニックフォームのバリアジャケットに裂け目が刻まれる。
 それもやむないこと。割り切らなければ、肉を斬らせなければ今の自分の状態で──どうにかなる相手じゃない。
 ノーヴェが。ウェンディが。ディードが、頑張ってくれたのだ。あの子らの奮闘を、無駄には出来ない。大人である自分が継がなくてはいけない。
「プラズマバレット、ランダムファイア」
『Yes,sir』
 彼女たちだけでなく。他にも、まだ。
 電撃の弾丸をフルオートで撃ち放つフェイトにはまたもう一人。継がなくてはならない想いを、言葉を託された相手がいる──その、少女のためにも。
「──聴くか聴かないかは、あなたに任せます」
「!?」
「響くか、響かないか。それは私にはわからない」
 攻勢に、転じる。
 今までは守り、反撃するにとどまっていたこの一対一の戦闘において、はじめて。バルディッシュが脳へと直接伝えてくる、後方でのギンガの勝利を知覚した、このタイミングで。
 乱れ撃ちは、そのための目くらまし。光量は最大に設定してある、こちらには眩む視界がないのだから、気にする必要もない。
『Riot form』
 双剣の生成は、無理。そしておそらくライオットスティンガーの一振りでも今のフェイトの肉体には消耗が激しすぎる。せいぜい保たせたとして戦えるのは一分がいいところ。それをここで、使う。
 ──この、一分で!!
「あなたに預かってきた言葉がある……だからっ!!」
 たとえ、力づくであったとしても。
 ディードたちの想いと。その言葉とを、ぶつける。この刃に、ほんの僅かな時間であっても、発揮できるかぎり渾身とともに載せて。
 そうだ、友の言葉を借りるならば──……、
「それが、あなたにとって悪魔のようなやり方だったとしても!! 伝えるのが私の義務だっ!!」
 情に訴え帰順を促す。けっしてそういうつもりはない。しかし。
 悪魔でも、いい。止め、伝える。それがフェイトにとって眼前にある責任であり、至近の使命に他ならない。打ち倒してでも、聞かせなくてはならない。
「何を、戯言をォっ!!」
 視界開けていたならば互いの刃がフルパワーに交差するその光景は、まさに目も眩むばかりの輝きを放っていたことだろう。
 ライオットブレードが、閃く。
 インパルスセイバーが、軌跡を描く。
 気合とともに、音速の戦士二人は咆哮する。
「今更!! 言葉などと!!」
「それでも!! 聞いてもらう!! 聞かせる──……!!」
 残された、少女の言葉を。
 それはノーヴェからでも、ウェンディのものでも、ディードより言伝られたものでもなく。
 しかし脳裏へと再生される、車椅子のままに聞いたその声はたしかに、今刃を交えているその相手の、妹の舌から刻まれたものであり。
「あなたの信じた誇りを!! 今もなお信じている──あなたの、妹の!! 彼女の声を!!」
 そこから容易に、桜色をした長い髪と切れ長の瞳を思い浮かべることが出来る。
 フェイトにとってはかつて逮捕した相手であり、呼びかけを繰り返し人の生へと誘い続けた相手。そして拒絶を繰り返され続けている、少女。
 獄中から。フェイトへと言葉託したその少女の名は、セッテと言った。
 間違いなく彼女もまた、今現在フェイトとの戦闘の真っ只中にある戦闘機人にとってこの世に少ない、妹と呼ぶべき存在にたりえる者であった。

*   *   *

「エクセ、リ、オ……っ」
 痛い。
「……っく、ああああぁぁっ!!」
 どこが、じゃない。もはや、身体中が。
 痛くて、痛くて──しかたない。それでも、放つ。
「バス……タアアアァァッ!!」
 三発目なんてもはや、過ぎ去っている。
 そこまでが限界だとレイジングハートより伝えられた、その矢はとうに撃ち尽くしてしまった。
「……」
 踏ん張れない。アブゾーブグリップで無理矢理両脚を固定しても、関節そのものが悲鳴をあげている。
 撃って。その反動に飛ばされて。壁に叩きつけられる。
『(スバル。これ以上は、あなたの身体が)』
 滑らかになんて、動けない。軋み摩擦音を響かせる自分自身の内部骨格を感じながら、大きく息を吐く。
 顔を上げて。歯を食いしばり立ち上がる。──直後。世界がぐらりと傾いた。受身も取れず、前のめりに床へと転倒をする。右足に、激痛。そして焦げ付いた異臭。見るとそこには、ばちばちと青白いショートの火花を散らし、剥き出しになった金属フレームが人工筋肉を焦げ付かせ、煙をあげていた。
「ま、だ……っ。ブラスター3……出力最大、続けて……っ」
 いや。右足だけじゃない。残された片腕も、だ。
 リボルバーナックルは一面に亀裂を刻み、同じくスパークを時折表面に散らし。包まれた拳は感覚そのものが麻痺しかかっている。
 それら。死にかけている身体機能を、強引に気合いという名のカンフル剤を打ち込みたたき起こす。
 激痛に耐え。両脚でようやく、大地を踏みしめる。
 降伏なんて。冗談じゃない。
 なのはさんを、助ける。そして、この聖王を、ゆりかごを止める。
 自分の、最初の失敗がなければというのは詮無きロジックかもしれない、それでも。それだけの責任が今、自分の両肩にかかっているのだから。
 ──それに。
「好ましい、って。言って、くれたね」
 無傷で佇む聖王──その立場に生まれた少女は、ほんとうに、「それでいい」のだろうか?
 観測基地での一件、そこで交わした短い言葉のひとつひとつからのそれは、推測でしかないものだけれども。
 自分と永き血脈と。どちらが重いかは明白であると、少女は言った。
 今はスバルより大柄ではあってもその実、ヴィヴィオとさして変わることのない、まだ幼き少女が、だ。そう、価値観を吐いた。
 ……本当に? 本当に、そうなのだろうか?
「だからといって、ゆずれない、って。なら」
 あの時感じたこと。少女のその価値観は、果たして自発か。
 奇妙なものだと、思う。ボロボロで。身体中痛くて。考えをやっている余裕なんてないはずなのに、抱きどこかで燻り続けていたその疑問が、再び表に出てくるだなんて。
 ヴィヴィオを、少女は贋物と言った。けれど。
 その実、思考を奪われ操られたかつてのヴィヴィオと彼女とは本質的には、何も変わらないのではないか?
「それがあなたの意志なら、いい。いいよ。でも……っく」
 スフィアを、形成する。痛みすらもはや通り越した拳に、それを握り締める。一瞬、意識が遠くなった。
「なら全部。全部まとめて。あたしが叩き潰す」
 そして、急加速。マッハキャリバーを発進させ、突き進む。
 相手が言ってきかない駄々っ子なら。真正面からそれを、押し切る。スバルの疑念と、少女の意志と。それらが異なっているのか、噛みあっているのか。間違いがないのは少女の、このやり方が──様々に犠牲と、彼女以外の思惑とに満ち溢れているということだ。
 スバルは、思った。
 なのはさんを奪われ、傷つけられ命まで取り去ろうとしている。その恨みはきっと自分のどこかにある。けれど。
 本質的にこの少女を自分は、好ましく思っている。そして、憐れんでいる。
 たかだか一戦闘機人が、聖王を憐憫するなど、おこがましすぎるだろうか?
 しかし、一人の人間としてたしかに。大人としてスバルはこの幼い少女に対し思っている。
「う、おおおおおおおぉぉっ!!」
 純粋である、と。彼女がスバルを評したように彼女もまた、ひたむきである、と。
 そしてそのひたむきさから──ひたむきであらねばならぬ状況から。年齢相応の少女たりえる世界へと、解き放ってやりたい、と。
 ヴィヴィオの笑顔を知っている者として、そう思う。
「……やれるものなら」
 見返した聖王の瞳が、光を反射させ揺れていた。
 六発目のエクセリオンバスターを、スバルは撃ち放つ。
 ちぎれかかっていた鉢巻が、噴流に煽られ吹き飛んでいく。
 それでもまだ、王はゆらがない。スバルの砲撃は通らない。毛筋ほども。王は動じず、ただ漆黒のデバイスの、眼のごとき宝玉とともに、スバルの自ら受けていくダメージを見つめている。
 
(つづく)
 
− − − −