色々あって

 社員なみに連勤モードの640です。
 気がつけばホールもキッチンもいつの間にかリーダー的ポジションになっていた不思議。大抵のフードとドリンクは気がついたら作れるようになってました(汗
 
 
 とまあ、そんな中でちまちま一次も二次も進めてます。
 今日はダブルオーを更新ー。web拍手へのレスのあとに、続きを読むから読めますので。
 
>…状況がこれでもかという位に絶望的で希望の一片も見当たらない…正直、スバルがノアに勝てる確率がマイナス10000%に思えてなりません…い、胃が痛い…
なんとかなるなる。……はず。うん、たぶん。きっと。なると……いいな(ぉ
 
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 浮揚感がぎこちないのは、それが乗機自体の推進力によるものではないからだ。
「すまない」
 動力に異常をきたし、自行能力を一時的に止めたダブルオーの両脇を、緑と白、二機のガンダムがそれぞれに抱え海面より引き上げていく。
 ケルディム。そして、セラヴィーだ。
『気にするな。それより、急ぐぞ』
「……?」
 戦闘は既に、終局を迎えている。だがしかし、そうとは思えぬトーンでどこか、重量級のセラヴィーを駆るガンダムマイスターの声は硬く。
「どうした? なにか──……」
アレルヤの反応をロストした』
「──なっ」
 アレルヤが。長身の温和な同僚の姿を頭に思い描き、刹那は息を呑む。
 彼が、落とされた? まさか、そんな。
『それだけじゃない』
 愕然とする刹那の耳に、今度はケルディムからの通信が、その操縦席に座る男の声を届けてくる。ライル・ディランディ……いや、ロックオン・ストラトスの、焦りと怒気とをともに孕んだ肉声を、だ。
「ロックオン?」
『──ってより、こっちのがやばいかもしれねえ。奴らのオートマトンが、プトレマイオスに侵入しやがった』
 再び、息を呑まざるを得なかった。
 あの殺戮兵器が、トレミー内部に入り込んだ。今、そう言ったのか。トレミーに限らず航行中の艦内は一種の密閉空間。逃げ場などない、一種の監獄に近い状態だというのに。その中にあんなものを放り込まれたら。
 いくら予備のガンダムマイスターラッセが残っているとはいえ。一人で相手しきれるのか。艦を無事に保ちつつという、条件つきで。
『あるいはライル・ディランディ。きみや刹那が見たという、その実力を『彼女たち』が貸してくれたら』
『──はっ、どうだかね。アテにはできんだろ』
 同乗中の民間人に過ぎない沙慈は無論のこと。
 イアンや、スメラギや、ミレイナや。そしてフェルトや──非戦闘員である彼ら彼女らで果たして、抵抗しきれるかどうかもわからない。
ティエリア
『わかっている』
 急ぐ。ただ、それだけだ。そして、祈るしかない。間に合うことを。
 トレミーと。アレルヤへの、順序を折るより他にない、ふたつの救援がともに。
 
 
Strikers −the number of OO−
 
Act.5 帰還と離脱と(上)
 
 
「──状況は……オートマトンが侵入……数は……?」
 薄いブルーの治療着のまま、スメラギ・李・ノリエガもまた急いでいた。
 既に何度か艦が揺れている。このままではいつ、オートマトンと出くわすかもしれない。こんな状況の中呑気に気を失っていた自分を叱責しながら、手にした端末で情報をひとつひとつ確認しながら、それでも無防備な医務室よりはという判断のもと、ブリッジへの道を進む。
 貧血が影響を残しているのか、足どりはまだ若干ふらつく。手にした拳銃が気休めにすらならないものであることも、重々承知。
 どうにか、あの殺戮機械へと遭遇せぬままを維持し、辿り着かなければ。
「……隔壁が降りてる。これは──」
 これはたぶん、フェルトの判断だろう。あるいは、ラッセか。
 侵入者を、閉じ込めてしまう。的確な判断だと思う。少なくともそれで、時間を稼ぐことが出来る。
 ──閉鎖された隔壁を横目で眺め、歩みを進めながらそう思うことができるのは、侵入を許した区画に医務室がなかったおかげか。でなければオートマトンの群れの真っ只中にひとり孤独に、取り残されるところだった。
 ……今のうちに!
「急がないと──……っ」
 動きにくい治療着を翻し、スメラギは床を蹴る。
 瞬間。
「っ!?」
 閃光と、爆風が。背後より直角に噴出して、彼女の肉体を煽った。
 とっさに身を翻し、壁面に身体を預け振り返る。見遣るそこに散らばるのは、砕かれた隔壁の残骸。──まさか。
「破られたっ!? もう!?」
 たったひとりで、拳銃ひとつでどうこうできるような相手じゃない。わかっていて、スメラギは銃口を硝煙吹き込んでくる方向へと向ける。
 全身を緊張に強張らせ。下着すらつけていない背中に、冷や汗が垂れ流れていく。
「こんなところでっ!!」
 気を吐いたところで、結果は目に見えている。オートマトンが相手では。
 どくん、どくんと。心臓の脈動が、大きくなっていくのがわかる。
 そして──オートマトンはたしかに、現れた。ただし、スメラギの想像とは全く異なる様相・状態で。
「!?」
 視界を覆う硝煙が断ち割られ、漆黒の機体が姿を見せる。
 その、『機能を停止させて』。出現するというよりは、隔壁の向こう側から吐き出されたように、慣性のままに。
「う、おおおおおぉぉっ!!」
 直後、今度は。次に姿を見せた少女は間違いなく──現れた。己の意志で、自らの肉体の、力のなすように、だ。
 燃えるような深紅の髪。黄金の瞳、そして鈍色に光沢を放つ手甲を、スメラギの目の前へと露わにする。
「この……機械野郎っ!!」
 壁面へと叩きつけたオートマトンを、更に重装甲の両脚で蹴り砕く。そこまで見てようやく、彼女がロックオン・ストラトスの報告にあった──気を失う前に聞くことが出来ていてよかったと、心から思う──少女であると、呆然とした意識の中でスメラギは思い至ることが出来た。
「これで四つ……次はっ!? ……?」
 でなければ、こちらに気付き向き直った少女に対する反応に、困っていただろう。
「あんた──……病み上がりか?」
「この艦を預かっている、スメラギ・李・ノリエガです。あなた、ロックオンの報告にあった子ね?」
 こちらの着衣がまず目に付いたのだろう、少女の言葉にスメラギは声を返す。同時にちらちらと、彼女とオートマトンの残骸との間を、視線に行き来させる。
 ……なるほど。報告を聞いただけでは俄かには信じられなかったが、これならば、たしかに。
「──ノーヴェ。ノーヴェ・ナカジマ」
 ぶっきらぼうに、少女はそう言った。解いていない警戒はスメラギに対してか、まだ残っているオートマトンについてか。
「ブリッジに行きたいの。協力、お願いできる?」
 組織外の人間にコードネームとはいえ名を明かすリスクは重々承知。
 だが。今は信用してもらわねば。協力が、彼女の力が必要だ。スメラギは、そう判断していた。だから、名乗った。
「はっ、協力もなにも」
 ノーヴェが、跳んだ。隔壁の空いた穴からは死角となる、通路の影に身を寄せる。
「こいつらは見逃しちゃくんねーだろっ!!」
 元いた場所を切り裂く銃撃。床に崩れ落ちていたオートマトンの残骸が、僚機の放つ弾丸によって蜂の巣にされていく。同士討ち、なんて概念が人工知能に入力されているかどうかはわからないが。
「行けよっ!! 少なくともここは面倒見る!!」
「ありがとう!!」
 掃射の間隙を縫い、ノーヴェは通路へ躍り出る。そんな彼女に背を向け、スメラギもまた走り出す。
「──おそいっ!!」
 おそらくはオートマトンに向けて放たれたであろうその声を背に、もう一段強くスメラギは床面を蹴る足に力を込めた。
 
*   *   *
 
 ここにいて、と。栗毛の少女は言い残し、イアン・ヴァスティと沙慈を置いていった。
 何度か既に、爆発のような音も遠くで聞こえている。オートマトンが侵入したとイアンは言っていた……一体、何が起こっているんだ?
「……おい?」
 いや。違う。──思うと同時にふらりと、沙慈は立ち上がっていた。
 何が起こっている、じゃない。
 何をやっているんだ──……僕は!?
「おい、出るな」
 足が出入り口へと向く。夢遊病者のように、はっきりせぬ歩みながらも。
「僕、は」
 刹那たちが、戦っている。
 撃てなかった僕の代わりに引き金を引いた、あの少女だって。
「僕……はっ」
「おいっ!! 聞いてるのか!?」
 皆、自分がすべきと思ったことをやっている。できている。なのに。
 なのに自分には、できなかった。
 その思いは、失意へ。失意はやり場のない衝動となり、沙慈の身体を弾き出す。スライドドアをくぐり、どこかを震源とした艦の揺れに、翻弄されながらも通路へと彼自身を押し出していく。
 その行為が、砲手へと志願した際と同じ、顧みることのない一方通行的な思惟に起因するものであるとも気付かず。
 ふらふらと、歩み出る。そして──出会う。
「あ……?」
 再び。蒼い髪をした、少女に。
 今は遠き想い人とよく似た声のその人物は、はじめ出会ったときと同じ白い服を、身につけていた。
「きみ、は」
「あなた──たしか、基地での」
 ただ会うということであればたしかに、二度目。けれど。
 スバル・ナカジマ沙慈・クロスロードはこうしてはじめて、目と目をあわせ、正面から向き合った。

(つづく)
 
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