投稿作の追い込み中。

 
 一応規定の最低枚数は既に突破してるのでもう少しで目処立ちそうな感じです。たぶん最終的には90ページちょっとかな。テリー・ファンクの言葉じゃないですが「ひとつひとつをより、スイート(よりよく)に」。忘れないように最後まで気を引き締めていきませう。
 
 web拍手レスです。
  
>初投稿で失礼します。今更ですが新刊のなのは小説を読ませていただきました。・・・涙が止まりませんでした。本を読んで泣いたのは久しぶりです。本当に感動しました。これからも応援させていただきます。
ありがとうございますー。と同時に更新遅れがちですんませんorz応募予定の新人賞の〆切りが過ぎればもうすこし更新頻度増えると思いますのでorz
 
 
さてさて、でわ続きを読むから、今日はOOの更新です。お待たせいたしました。
さー、今回登場した機体がいくつあなたにはわかるかな?(ぇ
前回分はこちら。 
 
 
↓↓↓↓
 
 
 
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「きみ、は」
「あなたは……?」
 青年の声と、スバルの声が交差する。
 スバルにとっては、それはほぼ初対面に近かった。少なくとも印象の上では限りなく、それに等しく。
 一方で青年の声音には、再会に思いを馳せたときの、その色が載せられていた。
 スバルからは一見して、「この艦のクルーではないな」という認識ができただけ。彼の名すら、あるいは刹那たちからかいつまんでは知らされてはいたかもしれないが──知らず、記憶にはなく。
「!!」
 それよりも、視線の隅に現れた黒い機影への、対処の意識のほうが圧倒的に勝った。
 オートマトン……この世界の人々がそう呼ぶ、殺戮兵器。
「伏せてっ!!」
 その銃口が火を吹く直前、スバルは青年と敵機とを結ぶ射線上に身を躍らせていた。
 シールド展開。防ぎきって、即座反撃に移る。──移ろうとした。
「──ルイスッ!!」
「!?」
 瞬間、右手を青年が引いた。スバルは防御から攻撃に、そのときでは移れなかった。
 間が、ずれたのだ。ゆえの、タイムラグ。生じればそこにはつけいる隙と、思考の時間が差し挟まれてしまう。
「あれ、は──……」
 無論すぐに、スバルは敵機へと向き直った。
 心の中に疑問を──『ルイス』とは誰だ? と、抱きながらも。
「どうして、あれが」
 生まれた空白の時間ゆえに視界に映った「それ」によって得た、「なぜ」という問いを自問自答するがゆえ、その疑問は塗り潰されていく。
 黒い機体の向こう。濃紺の、楕円形をしたまったく異なる機体がこちらに狙いを定めていたから。
「!!」
 閃光を放つそれは、ガジェット。ガジェットドローン。
 放たれた光はスバルの前面に張られたシールドへと直撃し、爆発を生んでいく。
 爆風に包み込まれたスバルと、その背後の青年とを尻目に。
 この世界には存在しないはずの兵器の単眼は光を反射し、照り返してはその炎の花を、見つめていた。
 
 
Strikers −the number of OO−
 
Act.6 帰還と離脱と (下)
 
 
 ──こんな、ものっ!!
 通常型ガジェットからの、単なる直射射撃。心中でそう気合いを吐き出しながら、スバルはそれを防ぎきっていた。
 この程度、完全に防御しきれないスバルではない。防いだそのままに、突貫する。
「そこに、伏せてて!! 今、片付けるからっ!!」
 青年に対し抱いた疑問を棚上げし、そう気遣いの言葉を残しつつもスバルはまっすぐに、複数機の敵機へと向かっていく。
「キャリバーショット!! ……乱舞っ!!」
『all right』
 相手は、その眼とも言うべきセンサーやメインカメラの類は、スバルを追い切れてはいない。
 オートマトン。回し蹴りで、その武装である銃身をへし折って。カメラを、四つ足のひとつを、連撃のもとひしゃげさせる。仕上げとばかりに渾身の力で直上から踏みつけて──砕く。ぐしゃりとした感触の実感のもと、擱座させる。これで、ひとつ。
「なんで、こんなとこにいるかは知らないけどっ!!」
 後は、あいつ──ガジェットを。
 うろたえ弾とはいえ、迎撃として放たれる光条を避けるわけにはいかない。後方には、先ほどの青年がいる。
 一発、二発、三発。
 あるいはシールドで防ぎ、あるいは魔力を纏わせたリボルバーナックルで「弾き」。またあるいは、掌中に生成したスフィアで「受け止め」、相殺して距離を一気に詰める。
 もうこれで、勝負は決まったも同然。
「静、まれえッ!!」
 一瞬、視界が黄金色に染まったのは錯覚ではない。
 屈めた膝のバネを開放するとともに振り抜く拳には、スバルがスバルであるがゆえ、スバルのみが持つ力が込められ、放たれているから。
 IS──『振動破砕』。スバルの、戦闘機人としてのその力が容易く、薄紙をそうしているかのように楕円をした機体の装甲を、内部構造材を貫いて。
『──It’s over(終わりです)』
 音速の剣によって告げられたその声とともに、物言わぬ敵は爆散した。

「これは……!?」
 最悪の事態も、覚悟はしていた。
 オートマトンの侵入。プトレマイオスに残った戦闘員は予備ガンダムマイスターでもある、ラッセ・アイオンただひとり。その彼とて、艦内という限られた空間、限られた武装のみでは。
 間に合え。ただ間に合えと、ティエリアは募る苛立ちを愛機・セラヴィーのコックピットで抑え切歯扼腕していたのだ。しかし。
 着艦直後目にしたのはクルーたちの転がる遺体でもなく。また破壊の限りを尽くされた内部ですらなく。
 爪痕はある。それは侵入の証として、たしかに。
 けれどそこに物言わず転がっているのはその侵入者たち、それ自体の残骸に他ならなかった。
 一体なぜ──疑問と戸惑いを彼が抱いたのは、無理もなきこと。
 刹那や、ロックオン──ライル・ディランディと違いティエリアは、目にしていない。
 重火器も、なにもなしに。
 殺戮の機械を容易く撃破することのできる存在を、その光景を。
『これは』
『まさか』
 同僚たちの呟きの真意を、彼は理解し切れなかったのだ。
 言葉では伝えられていても、実際に目にしてはいなかったから。
 その、少女の力を。
『う、おりゃああぁぁっ!!』
 だから、はじめて見る。
 セラヴィーのセンサーとカメラとが拾った、音と映像に。
「あれは……?」
 爆風が、格納庫から伸びる通路より吹き荒れる。
 躍り出たのは、濃紺と漆黒と。後者がふたつ──影がみっつ。
 それらの名は、すぐに頭に浮かんだ。戦っているみっつの陰は、オートマトン。そして、あの少女。ノーヴェ・ナカジマ。
 一瞬それは、錯覚だとティエリアは誤解した。いや……そうすることで納得しようとした。
「蒼い──いや、紅い、道……?」
 あり得ない光景だと、思ったから。
 その両脚に装備したローラーで、少女が走っている。
 なにもないはずの、空中を。そこに、生まれた道を。
 それは蒼く──途中から、深紅へと変化する。まるで少女の、紅をした髪の色と同じように。
リボルバー!! スパイクゥゥッ!!』
 少女は跳ぶ。加速の勢いのままに。
 直下にあったオートマトンをそして、力の乗った膝が砕き押し潰す。
 まるで夢でも、見ているような感覚だった。生身で。徒手空拳の技で鋼の機体をあんな、いとも容易く。
 だがティエリアの呆然と対照的に、少女の躍動は止まらない。もう一機、敵が残っている。
『──『サイクロン』』
 何者かに呼びかけるがごとく、残る一機を振り返った少女は同時に呟いた。
『『Crimson break』』
 そしてそれに返す声を、ティエリアも聞いた。
 少女自身のものではなく、その声がどこからのものかも定かでない。機械的で人間的な部分の希薄な、合成されたような、そんな声。
 その直後、紅の道が螺旋を描いた。
 それはまるで、巨大な鏃だ。ぴたりとオートマトンに照準をあわせた、虚空にある人間ひとりほどもあろうかという巨大な鏃。
 少女が、そこに飛び込んでいく。そしてまっすぐに、蹴り足を伸ばした。
 螺旋は高速で回転し、オートマトンへと直撃をし。
 そしてその機体を爆発させた。

 ──同じ頃。アレルヤは、夢を見ていた。
 もともと、夢見をよく覚えているというほどでもないけれども。それはどこか、普段の睡眠とは趣を異にする幻想。
 あるいは超兵同士の戦闘によって傷ついたアリオスの、その純正太陽炉より溢れ散ったGN粒子が毒性のかわりに、それらをアレルヤの脳裏へと運んできたのかもしれない。
 それは、男女のビジョンだった。
 まったく何の説明もなしに。これが夢だからと言ってしまえばそれまでかもしれないが……アレルヤには伝わる。その男女の置かれた状況が。彼ら彼女らが、人にあり人ならざるということが。
 男女がそれぞれ望む望まぬにせよ、人を超えた力をその身にいずれにか、あるいは互いに宿した者であるということをアレルヤはいつの間にか理解していた。
(「──よォ。まるで俺たちと、マリーみてェじゃねえか」)
 ──ハレ、ルヤ。
 喪ったはずの半身ともいうべきもう一人の自分がそう言うのを、呼び返しながら自然にアレルヤは受け容れていた。
 そう、超兵であるアレルヤと、彼の焦がれ続けるひとりの女と。それらを切り取ったかのようにそれらは、対立軸と闘いの中に存在していて。
 また。同じように──……同じように屹立する、鋼の巨人の姿がそこにあった。
(「ご丁寧に、ガンダムまで選り取りみどりときてる。なァ、違うか?」)
 ああ、そうか。そうだとも。
 すべてのビジョンに、やはり。いる。──ある。
 それらは皆、ガンダム
 燃え上がる街の中、疾駆する白き機体とそれを睥睨する黒き巨体も。
 肩から四枚の巨大な盾を纏う、緑色の単眼。その真っ向より全身を発光させ迫るそれも同じ。
 あるいは巨大な甲羅を背負った圧倒的なそのガンダムの前で、蒼き翼の天使とその紅き羽根のガンダムは斬り結び、逃れあう。一方は困惑するように、一方はその黒き威容を、守るかのように。
 絶え絶えの息で、白亜の機体との一騎討ちに臨むガンダムの帰りを待つ者も、いた。
 ──ダメ、だ。
 それぞれの結末を、アレルヤは目にする。
 いずれのガンダムの、その存在した戦場に生きた男と女も。結果をハレルヤの意識に、顕現させていく。
 光の剣に、貫かれる者。
 閃光に、包まれてゆく者。──水面の底へと静かに、横たえられ沈みゆく者。ゆっくりと、待ち人の帰還に安心したようにこときれる者。それら、皆。
 ガンダムが、ともにあった。関わって、いた。そして彼ら彼女らはすべて、常人ではなかった。
 ──ダメだ、繰り返してはいけない。いけないん、だ。
 それは、暗示だというのだろうか。だったら。だったら自分はどうすればいい。夢にアレルヤは懊悩する。
 やはり人ならぬ自分は、マリーは。
 どうすれば、いい?
(「バァカ。離さねぇって決めたんだろうが。ったく」)
 ハレルヤの声が、遠かった。帰って、しまうのか。
 目覚めのときが近いのだと、認識することが自然にできた。
 夢は、それで終わりだった。
 
(つづく)
 
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