というか。

 九十年代ボンボン世代的に言えば「プラモウォーズ」的な武者ガンと1/144の組み換えがやりたい。
 あ、いや好きなんですよプラモウォーズ。リアルゴッド丸とかドラグーンガンダムゼロとかマジ当時孕んだ。御飯三杯いけた。
 
 1/144ダブルオーとか装飾も少ないし武者やBB戦士のパーツと組み合わせやすそうだなあと思いつつ(ダブルオー自体が安価だしね)、作ってる時間もなけりゃMTGにむしろお金つぎ込みたいぶんちょっと無理かなあと手を出せずにいる次第。
 
 ・・・あ、でも近所のビブレのプラモ屋で刀覇大将軍(ほんとは刀の字は刀が三つ)が安売りされてた。ほしい。
 
 
 さ、そんなこんなでカーテンコール更新です。
 あと残すところ数話。今回はディエチの見せ場。
 続きを読むからどうぞ。
 
↓↓↓↓
  
  
 
 
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 深紅が、迸る。強く、眩く。
 それは渾身の力、その発現。立ちはだかる敵を貫くための、全力全開。
「う、おおおおぉぉりゃああああっ!!」
 駆け抜ける紅の描く螺旋が、巨大な鋼を穿ってゆく。
 ノーヴェの放つ破壊力を体現したその一撃──クリムゾンブレイクが、頭上を仰いだ傀儡兵の巨体を、打ち貫く。
 これで、ひとつ!
「はあ……っ! はっ……は……っ」
 安心。しきってはいけないとわかっていながら、撃破により生まれる安堵に、ノーヴェの周囲に散る紅の輝きが一瞬ゆらめき、明滅する。
 だめだ。まだ──まだ、維持しなくては。首を左右に激しく振って、ひとときの後に遅れやってくる疲労感ともども、打ち払う。
「あーらあら……がんばるわねぇ。出し惜しみしないのはけっこうなことだけれどぉ……それじゃあ、ここを破壊するまで、持たなくってよぉ?」
「クア……姉っ!!」
 大きいのがあと、三体。そしてガジェットが無数に。
「ご利用は計画的に、ねぇ」
「うるせえよっ!! 言われなくたって止める!!」
 息つく暇もそこそこに、襲い掛かるガジェットの攻撃を避け、跳躍する。
「戦ってるのが、アタシたちだけだと、思うなっ!!」
『Calibur slash』
 着地点への、斬撃のごとき鋭い振り下ろし。
 ガジェットたちは対応しきれない。無残に斬り裂かれ、ノーヴェの周囲に爆発を花開かせる。
「あぁら? 強気ねえ、でもざーんねん。タイプゼロのコなら、もうじき聖王陛下が……」
「──へん、やっぱ。わかってねぇな」
「……?」
 その熱量の光に照らされながら、ノーヴェは言った。そしてそれ以上の輝きを──放った。
 他になにがあろう、彼女自身の、全身から。
 アタシは、ここにいる。それを言葉以上に、まるで何者かへと誇示するかのごとく。燃え盛る炎のようにその光は、強く、強く。
 主張し、輝く。自身に残された力を、クリムゾンビートの火力に換えてゆく。
「あんたの妹は──アタシたちだけじゃ、ねえだろうがっ!!」
 ノーヴェが叫んだ瞬間、三つの巨体がぐらりと傾いだ。
 ある者。──脆弱な各部関節へと、降り注ぐ光の嵐に四肢を断ち分かたれ。またある機体は、自律行動の中枢であるメインコンピュータに深々と、二刀の刃を突き立てられて。
「ここッス!! ディエチ!!」
 零距離射撃に頭部を吹っ飛ばされた最後の一機が、崩れていく。そこにノーヴェではない、赤毛の少女の声が重なった。
「……っ!?」
 ウェンディの、叫び。
 直後、クアットロの手元にあるコンソールが発した警告は、ふたつ。
 ひとつは、艦の外から。
 もうひとつは──艦内。たった今クアットロが間もなくの制圧を宣言したその、玉座の間においてだった。
「まさかっ!? そんな、無茶苦茶を!?」
 激震はそして、遅れてやってくる。
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
 
第四十九話 風の中に
 
 
「OK、ウェンディ」
 念話では、ない。
 ディエチが、ディエチだから。聞こえる。返せる。受けるウェンディとともに、姉妹が、戦闘機人だからこそ。
 高濃度のAMF、その中でも、言葉を通じ合える。ノーヴェの反応をしっかりと、認識できるのだ。
「あたしには、こういうことしかできないから、ね」
 だから、狙いもつけられる。
 寸分の狂いなく正確に、ゆりかごの中枢たるその動力炉へ。
 カノンの銃口を、向けることができる。
「IS、『ヘビィバレル』」
 スバルのように前に出ていけなくとも、自分にもそうすることで戦う手段がある。
 なのはさんを、助けるため。
 まだ、全然追いつけない。ずっとずっと至らない。なのはさんのそれに比べたら遥かに未熟な砲撃だけれど。
「エネルギー、収束開始」
 それを補って。届かせて、みせる。
 自分ひとりでは不可能なら、多くの力を借りて。砲撃を、到達させる。
なのはさんどころか、まだまだティアナ以下の精度でも……っ!!」
 周囲からかき集めた、戦場じゅうの魔力たちと。
 カノンの後部より伸びたケーブルにより接続した、艦の動力炉からのエネルギーで、それをやってみせる。
 大丈夫。きっと、やれる。なのはさんを失ったあの闘いで、そのなのはさんの助けを受けてもう既に、やったじゃないか。
 今度はそれに少し、毛が生えただけ。狙いをつけてくれるなのはさんがいなくて、艦からだけだったエネルギーの供給を、更に範囲を広げ収束させる、たったそれだけの違い。
 その、ほんのちょっとの違いが。両腕に、それらを制御するディエチとカノンへと直接に、負担としてずんと重くのしかかる。
「ぐ……っ」
 一瞬、目の前が霞んだ。
 だめだ。見ろ、しっかり見るんだ。自分自身の容量を越えた、大きすぎるエネルギー。……そんなの、上等じゃないか。なんのために今まで、砲撃のスペシャリストであるエースオブエースに、自分の戦闘技術を教わり、磨いてきたんだ。あの人は──どうして、手を差し伸べてくれた?
「……決まってる」
 きっと、いつかくる『エースオブエースの不在』を託すために。
 希少な、スタンドアロン戦闘可能な砲撃戦術──慣れ親しんだ闘いの技を、絶やさぬため。
 まだまだ自分がそれに応えられるほど修めたとは思えはしないが、それでも。それでも、だからこそまさに今、不在のエースに代わって撃たなくてはならない。
 無茶は危険。これもあの人から、教わったこと。だけど。
「今だけは……この一撃だけはっ!!」
 艦動力炉より供給されるエネルギーが、砲口に集まってゆく。
 それを取り囲むように、周囲の戦場に散った魔力の残滓たちが、空中に四つの巨大な光を形作る。次第に、そしてそれは周と周とを一体と成して、より一層に大きな、大きな輝きとなり。
「保って!! カノン!! そして──あたし自身っ!!」
 トリガーを引くべく、ディエチは指先に力を込めた。
 瞬間、反動に備えようとして──気付いた。
 両脇から、自分を支える腕が二組あることに。
 左右を振り返り、それがだれかを知る。そこにいたのは消耗し前線を後退した、フェイトと、ギンガと。
 なのはさんの一番の親友と、スバルにとって一番、姉妹の中で縁深き姉。その二人が、ディエチを支えている。
 アブゾーブグリップが三人を固定し、ディフェンサープラスが三人を覆う。
 バルディッシュが、ブリッツキャリバーが、コアの宝石を瞬かせる。
 さあ。頷く二人に、ディエチも頷いた。そして──引き金を指先にて、押し込んだ。
 噴流が直後、溢れた。
 両腕。両脚が、悲鳴をあげる。光の中に、イノーメスカノンの先端が融解していく。あとはもう、必死。あわせた照準を外さぬよう、砲撃の進む先をぶれさせぬよう。急激な反動のGと、全身にかけめぐる疲労感との格闘に歯を食いしばる。
「い……っけえええぇぇぇっっっ!!」
 眩しさで、視界がいっぱいで。もうなにも見えなかった。
 激痛。軋みを上げた両腕の内部フレームが、焦げ臭い嫌な匂いの煙を鼻腔に運んでくる。
 それでもディエチは、己の砲撃を支え続けた。
 寸分たりとも、狙いを外さぬよう。
 そしてその太い光の柱は、ゆりかごの中心へと彼女の見えぬその先で、たしかに突き刺さっていた。
 

 
「く……なんて、強引な……」
 この砲撃は──そうか、ディエチか。
 前面に最大出力のシールドを張り巡らせながら、クアットロは思わず舌打ちをする。
 まさかゆりかごの深くに位置する、この動力炉を直接、最大火力をもって砲撃、狙撃しようとするなんて。土埃に咳き込みながら、心の中で毒づく。
 見えず、狙えぬ場所にあるなら、その位置を伝えればいい。
 ノーヴェの最大火力と、戦闘機人同士でのみ繋がる会話をその狼煙として、彼女たちそのものを目印に砲撃を撃ち込む。
 理論上は理にかなっている、かなっているが……それをまさか、実行に移すなんて。
「でも、残念。いくらディエチちゃんとはいえ、この距離とゆりかごの装甲を完全に貫いて動力炉を破壊することは」
 生きているコンソールが、動力の健在を表示し、示している。
 さすがはあの子もドクターの最高傑作のひとり。この動力部まで到達できる砲撃を放てるとは大したものだが──それも、そこまでのことだ。
 あの大火力、エネルギーの熱量。おそらくは一度きりの大技だったろう。
「どうみてもあの子のスペック以上……もう、撃てない」
 焦りに跳ね上がった鼓動が、徐々に静まりゆく。
 そうだ、もうこれであの子たちにここを破壊する手段も、余力もない。
 阻止限界点到達までにゆりかごが止まることは、もうあり得ない。
「──って、思ってんだろ」
「!!」
 そして落ち着こうとした脈動が、どきりとまた跳ね上がる。
 目を向けた先に、舞い上がっていた土煙が割れる。姿を見せるのはガジェットの残骸を組み敷いた赤毛の二人に、互いを支えあう双子。
「そりゃまあ、あわよくばこれでぶっ壊せれば、だったッスけどね」
「──なんで、すって?」
 その、四人の向こうに。大穴がある。
 ディエチの砲撃の到達によって、それは『開きかけて』いる。大きいけれど──まだまだ『大きくなりそうな』周囲にいくつものヒビを刻んだ穴。
「ここまで、直線距離の穴を作ることができれば。それだけで最低限、十分だったってことさ」
 その奥で、なにかが響いた。
 音。いや、それは、声。地の底から臓腑に浸透するような深さが、ぞくりと鳥肌を呼び起こすのはそれが黒々と空いた穴の向こうからの得体の知れぬものであるという、心理的要因によるものか。
 その、唸りは声で。そして、雄叫び。
「さあ……行けっ!! エリオ、キャロっ!!」
 やがて、穴が『広がった』。
 明色の劫火によってそれ自体を破壊され、砕かれて。更に大きな口を空けた。そこから──巨大な影が、広間へと飛び込んだ。
 それは、竜。雄々しき翼持つ、白亜の飛竜、フリード。
 背には一組の竜使い。召喚師と竜騎士と──つまりライトニング3、ライトニング4。
 エリオ・モンディアル
 キャロ・ル・ルシエ。傷つきながらも二人は、竜の背にいる。二人を乗せた竜の瞳は既にもう、濁ってはいない。
アルザスの竜……そんな、コントロールが!? いつの間にっ!?」
 竜の吐き出す炎に、クアットロの周囲にある防護システムがシールドを作動させる。間一髪、その防壁にとって炎は遮断され防がれる。
「……『力ずく』」
「っ!?」
 オットーの呟き。彼の言葉を、ディードが引き継ぐ。ウェンディも、ノーヴェもまた。
「非論理的だと思いますか? でも……そうすることで、実際にできているんです」
「──ま、どっちかっていうとエリオたちがフリードを取り戻すのが間に合うかどうか、こっちのほうがむしろ賭けだったッスけどね」
「エリオの電気が術式遮断向きで幸いだった、ってとこだな」
 まだ残っていたガジェットたちが、四人の周囲に蠢く。
 直後、それらを瞬く間もなく撃破し現れるのは、もうひとりのフリード奪還への功労者。
「おっと、お前もな。ガリュー」
「それと、お二人に作戦を伝えてくれたルーお嬢さまのインゼクトにも」
 フリードが、動力炉へと首を擡げる。
 さあ、これで──……!!
「フリード……ブラストレイ!! フル……フォース!!」
 ただの炎でなく、閃光をフリードが放った。そこに込められるのは竜というヒトには比べるべくもない強きものの全力と、召喚師渾身の、ブースト。
そして竜騎士もまた全霊の雷を愛機に込め、投擲する。それはまるで雷光。フリードからの閃光と一体化するように雷の槍は同じ軌道で、動力炉を覆う装甲へと飛翔し。
 同じ場所に、砲火を皆集める。
 ウェンディが。オットーが。エリアルキャノンを、レイストームを、残された力の限りに。
「ありえ、ない。ありえない、わ……この動力炉の装甲は、あの紅の鉄騎すら……」
 ディードの二刃が、クアットロの前面を──フリードの火炎を受け、それはショートしかかっていた──覆う防壁を切り裂く。飛び込んだガリューが、クアットロを押さえ込む。
「!!」
「これで」
 同時。クアットロは見た。
「──これ、でぇっ!!」
 ノーヴェが、跳ぶ。瞬時全身を深紅に染めて、まっすぐに伸ばした蹴り足の先に紅の螺旋を描き生み出す。
『Crimzon break』
 目標は防壁へと突き立った、雷の突撃槍。その石突へと紅の輝きを見に纏ったノーヴェが、跳び上がる。最後のひと押しに。かつてその先にある動力炉を破壊した、紅の鉄騎と同等の破壊力をそこに生むため。
「こいつで、終わりだああぁぁっ!!」
 

 
 勝ったのは。勝ったのは──どっちだ?
「スバルっ!!」
 手すら伸ばせず、差し出せない自分がもどかしい。
 聖王のデバイスによって捕縛され、壁へと縫い付けられたままティアナは舞い上がる爆風の中へと見入り、友の名を呼ぶ。
 一瞬の前。たしかにそこには激突があった。それをティアナは、見た。
 スバルと、聖王の一騎打ち。ティアナが目にした瞬間、スバルのエクセリオンバスターは、間違いなく──聖王が身を包む虹色の風を、その両脇へと押しやっていた。
 あとに在するのは、双方の破壊力、そして双方自身の耐性。防御力のみ。
 当たった、のか。当てられた、のか。
 また、耐えられたのか。耐えきったのか。それはスバルにも、聖王自身にも等しく言えることであり。
 だからティアナは、結果を求める。
 目を皿のようにして。煙の中に、答えを探す。
「──あれ、は……っ」
 そしてはじめに現れたのは、金色に縁取られた拳だった。
 土煙を突き破るようにそれはまっすぐと伸びて、徐々にそれを断ち割り、全容を露にしていく。
 紅の宝石が指の付け根に並んだそれはそう、スバルの鉄拳。エースオブエースの愛機と一体化した、リボルバーナックル。
「スバ……」
 それがあるということは。支えられまっすぐに屹立しているのはつまり、スバルもまた健在であるということ。
 ティアナはそう認識したし、それはけっして間違いのないことだった。
 その拳を、『スバルが支えている』ならば。
「……っ!?」
 だが、次第にその付け根へと煙を流していく中で、不意に虚空を突く鉄拳が、揺らいだ。
 そして。
 ごとり、と音を立てて、地面へと落ちた。
 直後──虹色の風が、周囲の濁りを吹き飛ばした。
「スバ……ル……?」
 硬直した、友の身体がそこにはあった。
 その中心に吸い込まれるのは、拳。ほぼ身体ごと密着するように──けれどたしかに、全力を以って振り切られた右正拳が、的確に急所を、捉えていて。
 対するスバルの両肩から先は、なかった。
 左は遥か向こうに、忘れられたように転がって。
 残っていた右も、たった今地面に落下し泣き別れた。
「惜しかった、ですね。右肩の関節部が完全だったならば、あるいは自身の砲撃に耐え切れぬということもなかったでしょうに」
 戦闘服の左半身を煤けさせ、ところどころ散らしながら、王がそう呟いた。
「ごめんなさい」
 そして謝った聖王は、スバルを抱いた。
 介抱するためでも、健闘を称えるためでもない。衝撃を。ダメージを一部たりとも、彼女の身体から逃がさぬよう。全力が、両腕を失った戦闘機人の全身を駆け巡るように、だ。
 スバルの膝が、がくりと落ちる。失われたばかりの右肩から微かに、スパークが散った。
「……これまで、です」
 貫いたのは、一瞬。
 細く長い──と、ティアナがその閃光に対して思った次の瞬間にはもう、それは膨大に膨れ上がって。
「スバルっ!!」
 もう、スバル自身は見えなかった。
 その影法師が噴流の中に煽られ、痙攣し。
 まるで強風の中の旗印のように、なされるがままびくびくと波打つのだけが、ティアナの瞳には焼きついた。
 
(つづく)
 
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