あらかじめ公言しておこう。
えー、カーテンコールですが
全五十五話、つまり今回の五十二話を除いて、あと三話で完結します・・・っていうかさせます、はい。
あと少しですし、だらだら引き延ばさないよう自分に発破かける意味もこめて全五十五話厳守の方向で。
んで・・・ただいま同人誌化に向けてちょこちょこ動いてますー。
これも完結と前後して、正式に発表したいとおもいますので。出す時期、そのほか諸々含めて。たぶんこの時期で同人誌化って時点で絵師さんについてはほぼ「ああ、あの人か」ってわかる人はわかる気もしますけれども。
きちっと目処つける前にあれもこれも、っていうのは自分自身だらだらしちゃいそうなのでもうしばしお待ちを。
さ、そんなわけでweb拍手レスー
>なのはさんついに来ますか!
英雄は遅れてやってくる。・・・いや、大丈夫。もうすぐだから。
んでわカーテンコール52話ー。
今回、かなり640の趣味が出てる部分があったりしますー。
具体的に言うと
RPGマガジンやゲームぎゃざ読んでたり、某TCG好きって人にしかわからんネタがちらほら。
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誰かのために、か。
よくもまあ言ったものだと──顔に浮かぶのはきっと自分自身への、失笑だろう。
ダイムの残していった光に巻かれ、なのはは笑う。
頭によぎるのは、人々の顔。近しくそして、いとおしい。
「フェイトちゃん」
光が、瞬くほどから次第広がり、身を包んでいく。
それと時を同じに、映像と認識が脳裏へと流れ込んでくる。
その行為がダイムによるものであることをわからずとも、なのはは理解していく。また等しく、自身が少女へと投げかけた言葉を反芻していく。
「はやてちゃん」
誰かのために、できること。やりたいと、思うこと。
こんなときに、というのが滑稽で。今になってけれど思う──自分は、どうだったろう?
この手に魔法を得てから、これまで。自分は果たして、どう生きてきただろうか?
「……ふふっ」
自分に魔法を使う、戦う力があると知った。
だから単純に、向いていると思った部分もきっとどこか、ある。
でも、それ以上に。──その力で自分は、どこかの誰かのためになりたかった。そういう、外界に向いたエゴが多分、心にはあったはずだ。
「──ヴィヴィオ」
わがままだったんだな、と思う。
自分の、やりたいこと。願ったこと。それをけっして後悔したことはないし、きっとそれは、これからも。
魔導師となって戦い、時にはこうやって傷つくこともそれはあくまで、自分の意志だから。
自分の力で。他の誰かのために、なにかをしたい。それが高町なのはの願望であり、自分自身そのものの幹だった。その立脚点は間違いなく、自分自身のためでもあったはずだ。
人のためになにかする。そういう外側に発せられた、自分のための欲求。
「ユーノ、くん」
だったら。その方向を──内側にもそろそろ、向けてみるべきなのかもしれない。自分自身、そのものを、自分の中へと。
無意識においての、他者のためが、自分のため。それもいいけれど。
自分のためが、自分のため。多少それを、意識しながら。
世界に対してのわがままもいいけれど、自分自身に対してのわがままも、うんと、して。
人に、じゃなく。
自分自身をわがままに、付き合わせよう。
「……あ……」
そう思った瞬間、身を包む輝きの中にひとつ、眩い光をなのはは見た。
光源は、周囲からでなく、なのは自身の身体──薬指、から。
それは形を成して、指の周囲に輪を描き。
大切な人からの、「なのはがなのは自身のためになにより」、側にいたいと欲した相手よりの贈り物を、紡ぎ出す。
そうだ──行こう。
「やりたいことが、待ってるんだから」
白銀のリングを煌かせた指先を抱きしめ、なのはは瞼を下ろしていく。
行こう。まだまだたくさん、やるべきこともやりたいこともあるんだ。
この光の、向こうに。
スバルたちの戦う、その先に。
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜Curtain call〜
第五十二話 間違いじゃない、きみが信じてたこと
「……っ!? この、爆発は……!?」
玉座の間が、揺れる。
スバルと聖王との、激突によるものではない。もっと遠く、けれどゆりかごのどこか、内側からの地響きにも似た、その振動。
『The sending source of the shake was specified. It is guessed the one from distance 1000 and the power reactor. Reactive confirmation. Nove, Wendy, Otto, Deed. And team,lightning.(揺れの発信源を特定しました。距離1000、動力炉からのものと推測されます。エネルギー反応確認。ノーヴェ、ウェンディ、ディード、オットー。そしてライトニングの二人に相違なし)』
「あの、四人が……エリオと、キャロと。やった、のね」
おそらく。クロスミラージュも、同意を示す。
動力炉を抑えた──だったら、あとは。
「いけるかも、しれない」
あと残っているのが、聖王だけだというならば。
*
激痛。──身に纏った黒衣から、血が滴り落ちていく。そのぬらりとした冷たくもぬるいあたたかさを、実感する。
「う、おおおおぉぉっ!!」
「はあああぁぁっ!!」
王が、腰の装甲を引き剥がし、投擲する。
ひとつ。ふたつ。これまでの戦術には見られなかったそのやりかたに、避けながらあちらも余裕ではなくなっていることをスバルも理解する。
もう、少し。もう少しなんだ。
あとちょっとで──手が届く!!
「この子も……ダイムも、あなたを止めたがってる!! あなたに、自由であって、ほしいって!!」
「知った風な口をォっ!! 私は──私は、王としてっ!!」
「義務ばっかりで、それでいいの!? 納得するにはまだあなたは、子供でしょうっ!!」
ここまできたら、あとは我慢比べだ。
王との、ではない。スバルが、スバル自身との。
相対する敵の位にまで、指先をひっかけられるか。それまでに、こちらの体力・精魂が尽き果てるかどうか。
「達観するよりもっと、わがままであっていいんだよっ!!」
マッハキャリバーが、リボルバーナックルが亀裂を刻みながらそれでも耐えてくれているからこそ。スバルもまだ、折れるわけにはいかない。今、ここでは。
「エクセリオン……っ」
一体、何発目だっけ。もう数えることも、やめて久しい。ほんとうなら──三発以上はレイジングハートから、止められていたはずなのに。
けれどスバルは、撃つ。
「バスタアァッ!!」
無茶も。無理も承知で。
かつてなのはさんに教わったこと。そうだ、ここが無茶の、しどころに違いないから。
避けられ、なおも後続のチャージをやめない。その間にも激痛と、出血に歯を食いしばり、聖王と打撃の応酬を交わしていく。
「──『ライトニング』」
「もう、一発……っ!!」
「『ブラスト』っ!!」
雷撃を帯びた砲撃との、交錯。
ぶつかりあった双方の破壊力はともに、相殺しあい。
また、切り刻むような痛みが両肩の傷口から、全身を突き抜けていく。だがまだ──落ちるわけには行かない。このタイトロープの上からは、けっして。
「駄々っ子になれないあなたを……わがままの言える子供に戻してあげる!! あなたの代弁させられてるわがままから、なのはさんを、助け出す、絶対にっ!!」
*
「クア姉さまっ!! ご無事で……っ!?」
ある意味では、末の妹は優しくて。ゆえに──甘すぎた。
動力炉の、破壊。その余波は間近に臨んでいたディードたち、姉妹にも大きくその閃光を頭上輝かせ、吹き飛ばされそうなほどの爆風と、視界の喪失とを生んで。
「クア姉……さ、ま?」
破壊の瞬間に第一に心配をしたのは、口をついて出た叫びは無論、直接にその行為を行った姉・ノーヴェに対して。
けれど次に彼女が気遣ったのは轡を並べし姉妹たちではなく、ディード自身にとっては望まぬことであったとはいえ──敵対をすることとなった、間近に取り押さえていた姉・クアットロ。
末妹から至近にある四番目の姉に対して発せられた、心配だった。
ただ拘束すべき相手と、する側と。その視線で向ける警戒がそこにあったなら、──見失うことを危惧していたならば、もっと異なっていたのかもしれないけれど。
その瞬間、ディードは妹として。姉を案じていた。
「──どこにっ!?」
ゆえに崩れ落ちた動力炉の瓦礫の最中に、喪失していた。
唯一残された──砕け罅割れた眼鏡を、みとめて。取り押さえねばならぬ相手の逃亡を、知る。
「ディードっ?」
「……オットー!! 探索を!! クア姉さまがっ!!」
『問題ない。私が行く。……もう、行ける。お前たちは脱出しろ』
「チンク姉!?」
失態に動揺する末姫に、そして声が語りかける。専用回線での、五番目の姉の声が。
『──こちらも外殻部から内部に突入した。クアットロは姉が押さえる。あの一撃で限界のはずだ、ノーヴェを連れてお前たちは、そこから早く』
「……平気、だよ……っ。チンク、姉」
ゆりかご内部を走る、チンクからの通信。
応じるノーヴェの声に、ディードは振り返る。ウェンディも、オットーも、また。両脚からスパークを散らし、愛機サイクロンキャリバーのコアもまた儚げに瞬かせながら、膝を揺らしよろけ体勢を起立に保とうとする、姉を見る。
「……クア姉は、頼む……チンク姉。──ウェンディ!!」
「う、うっス!!」
そしてノーヴェは、一番近いウェンディを呼ぶ。
「悪りぃ。肩……貸してくれ。行かねーと」
支えきれない。崩れ落ちかけたところを、ウェンディが補助に入りどうにか立たせる。
「い、行くって、どこに? こんな身体で……」
強引な離脱のダメージにゆらぎながらゆりかご内部の通路を行くクアットロと、知らず彼女ら姉妹たちの織り成すその光景は対照的だったといえるのかもしれない。
四番目の姉は、独り姉妹たちから離れゆく。
「スバルんとこに……決まってるだろうが」
一方、姉妹たちは寄り添う。支えられ、ノーヴェはなおも前に、進もうとする。
「行かなきゃ」
もうひとりの、姉のもとへと。
*
──なにもかも、わかったような口ぶりばかり!!
「タイプゼロ・セカンド!! いや、スバル・ナカジマっ!! あなたは──なにも、知らないでっ!!」
その苛立ちの吐露は、ノア自身止めようもなく、またなぜだろう、どこから湧き上がってきたのかの説明のしようもなくて。
──わがまま。させる。わがまま、だって?
「──『不断の《コンスタント》』」
苛立ちを魔力に乗せ、衝動のまま解き放つ。
虹色の魔力は散り、おぼろげな霧となって、相対する蒼い髪の魔導師の周囲へと、まとわりからみついて。
そうだ──そうだ、とも。わがままなんて、いえない。できるわけがない。自分には王としての責任が。義務があるのだから。
生まれてからずっと、今まで。
この力が。この魔力の色が、あったがゆえ。あったから、こそ。
それゆえ兄・マイアをその居場所から知らぬ間に蹴落とし、彼の行き先を見失わせてしまった。真なる王として忠誠する者たちに、行動へと向かわせる結果を招いた。
「『霞』《ミスト》」
霧が輪を描き、タイプゼロ・セカンドの両腕両脚を空中に縫い付ける。
古代ベルカ・聖王家が血脈に受け継がれし、魔力の流れそのものを利用したそれは、一種のバインドだった。
蒼髪の魔導師はもがき、逃れようとする。けれどそれをものともすることもなくその拘束は強固にして、またつかみ所もなく空気中に螺旋を描き続けて。
「──……『生者滅ぼすもの。其が例えられしは『神の怒り』』」
「っ!?」
それら自分が『歪ませてしまった』者たちに背を向けて投げ出すなんて、できるものか。
振り上げた拳に新たな魔力の流れを集約させ、ノアは詠唱の言葉を紡いでいく。
逃さない。バインドはびくともせず、魔導師をそこに固定する。
徒手空拳、あるいはダイムを用いての単独戦闘をその本分とする王位継承者にとって、裏の裏、数えるほどしかその歴史上紡がれたことのない言葉を、いくつも重ねる。
「『あな、其の光は眩く輝き』」
七色の魔力が、白きうねりを刻んでいく。
「『朗々と、その力群集の前に示す』」
「なに、をっ!?」
「『巨神がごとくただ残酷に、ただ無慈悲にも暴力的に。其が審判を、振るわんがために』」
紅く。蒼く。漆黒に、碧に魔力は交互輝き、鉄拳の上に膨れ上がっていく。
「『王は判決を下す。其、すなわち王君臨せし根本原理の五行』」
更にノアは、学習している。ゆえに、付加する。
エースオブエースが特性──集束。玉座の間に残る魔力の一粒一粒を、そこにかき集めていく。
「──光に、溶けよ」
閃光が、あたりを見えぬほどに埋め尽くし。
「闇に、滅せよ」
スバル・ナカジマが目を見開いている。
だが言った筈だ。詠唱そのものによって告げたはず。
審判はどこまでも無慈悲に──残酷に。王が王たるがために、彼女へと下される、と。
激動するその光、破壊の名は。
「統べてを──……総てを、塵に!! 抹消せよ……『黙示録』っ!!」
そしてゆりかごを、内部からでは二度目の激震が、襲った。
その中心には、スバル・ナカジマが、いた。
瞬間、聖王は咆哮していた。
これまでの戦闘の中で吐き出したそれらすべてさえ、凌駕するほど、強くひたすらに。
念じ、叫んでいたのだ。
咆哮。そして、炸裂。その膨大すぎる音の前にかき消されながら、しかしたしかに──また、ひとつ。
なにかに皹が広がった。その音が、紛れていった。
(つづく)
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