本家並みのペースだよおい。

 
 どうでしょう最新作撮影開始の報を聞いて「よし書こう」と思って一次創作・連載の合い間にちょこちょこ書いてました。
 前の記事見たら一年半以上前だったんですね、八神家どうでしょうの更新(汗
 
 
 そんなわけで八神家どうでしょう、最終夜でございますー。
 
 
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 ──機動六課隊舎ガレージ、資材置き場にて。
「はい、どーもー八神家どうでしょうでーす一年ぶり以上でーす」
 カメラは、モノトーンのフィルターを通して白黒の、資材の山を映している。
 そこにウn……もといヤンキー座りで作業着を着込んでいる姿が四人。
 全員グラサン。あとちっこい赤毛はマスク。
「……まだやるんスねこの企画」
「私たちに訊くな」
 つまり、シグナム。
「たぶんこの辺りだけカラーなんでしょうね」
 床に置かれた福助人形だけを指差す、シャマル。──あと、ヴィータであるのはいうまでもない。
 あ、カメラの側から話しかけてるのはヴァイスな。
「ただ、なんでも一応今回で最終夜らしいですよ?」
「そうしてくれ」
「私たちだってヒマじゃないんですから」
 新キャラの噛ませ犬やらされたり、同人誌出したり。軽音部のTシャツつくったり。後者ふたつは中の人的な意味で。
「そもそも読者はこの企画見たがってるのか? 読みたがってるのか?」
「作者は『どうでしょう新作製作はじまったし完結させないとねー』とか軽い気持ちで書くけれど、やらされてるほうは辛いんですよぉ、これ」
「これでHIT数増えなかったら怒るぞ!」
 残念ながらこのHPにはアクセスカウンターがそもそもございません。
 
  
魔法少女リリカルなのはstrikers 〜八神家どうでしょう・ミッド北部横断1200キロカブの旅〜
 
最終夜 ラスト・ラン
 
 
「──とまあ、たぶんサブタイのテロップあたりには『ラスト・ラン』なんてたいそーなこと書いてると思うんですが」
 ミッドチルダ新暦75年・六月六日 午後二十時三十分。
 街にはもう、日暮れがとうに訪れている。
 カメラのフレーム外で説明台詞を映像へと重ねるはやてと、ツナギ姿のふたりと、そして一行と。
 突っ立っているのはクラナガンほどではないにしろそれなりに賑わいに満ちた繁華街に隣接した、交通のターミナルビルの前であった。
「お二人さん、随分とグロッキーなご様子で」
「……しまいには怒りますよ、主はやて」
「まー、まー。ようやっと行程も半分を超えたところなんやから」
「まだあと半分もあるんですか……」
 すっかりやられている二人を尻目にお約束の、地図のフリップ。消化した道のりにはきっちり赤マジックでうねうねとラインがあって。
「なんでまあ、そろそろこの旅も決着つけよかなと」
「──はい?」
 いや、だって。もう十分すぎるくらい画も撮ったし。
「ここらでいっちょ、大勝負! お二人さんやってみんか!?」
「ええと」
 はやてのフリに、ヨレヨレの騎士ふたりはついてこれていない。
 ハイテンションにはやてがまくしたてればたてるほど、騎士たちはむしろ目を瞬かせる。
 はやてがあがるほど、あちらはさがる。
「まあ……ふたりがどうこうより」
 一応、はやての意図を既に知っているヴィータが脇で、ぽつりと呟く。
「なのはがその前に、熱中症で死ぬな、きっと」
 その脇には、中のエアーもバッテリーが切れて、中は蒸し風呂、しかも見た目しわしわにしなびたピンク色の干し柿がぐったりとしていた。
 ──とにかく。
「もうカブに乗らなくてもいいんですね?」
 いえす。ちゃっちゃとゴールしちゃいましょう。
「本当に?」
 もちろん。
 疑いの視線を向けてくる二人に、はやてはサムズアップで応える。
「……まあ、なのはを助けねばならんし」
「魔導師とか関係ない、あれしんじゃいますよ……」
 不承不承、というか半ば疑わしいという猜疑心を隠さぬまま、そしてシグナムとシャマルは頷いた。
 ──頷いちゃった。
「お二人とも、よろしいですね?」
「だから何が」
「では、こちらをお願いします」
 だから、はやては渡す。
 ほんのごく、ごく小さなそれを。
 赤地に白丸の並んだ、軽いその、立方体を。
 つまり──サイコロ。
 

 
 ゆえにその結果が、差し出されたこのフリップである。
「あの、おっしゃる意味がよく」
 ──1.ヴァイスの操縦するヘリ直行便で隊舎。
「え? これを振れ? 出た目に従え?」
 2.アルトの操縦するヘリ直行便で隊舎。
「またまた。なんかとんでもないこと書いてる目、あるじゃないですか? 行ってたら休暇終わりまでに帰ってくるなんて──……」
 3.地獄の深夜バスくらながん号で首都クラナガン九時間半(ハイウェーは通りません)。
「行くよ」
「……は?」
「だから行くよ。どれ出ても」
 4.地獄の深夜バスヒュドラ号でアルトセイム十二時間(やっぱりハイウェーはありません)。
「深夜バスはなー、なのはちゃんが死んじゃうからやめてほしいなあ」
「え、乗せる気なの?」
「乗ってもらうよー、そのかっこで」
 5.次元航行艦クラウディアで無人世界カルナージ。
「クロノ提督に送ってもらうから」
 6.次元航行艦クラウディアで地球。
 ──って。
「帰るんでしょう!? なんで地球とか選択肢が入っているんですか!?」
「いややなー、お遊びやってお遊び」
「だったら7とか8とか、サイコロにない目に書いておいてくださいよ!」
 ダメ。それにお遊びの目だろうとなんだろうと、出れば行くから。
 たとえそれがルーテシアの家だろうと、金髪美人執務官の故郷だろうと、里帰りであろうと。
「ちなみに6の場合、地球のどこに行くかは私も知らんからそこんとこヨロシクな」
 と、いうわけで。
「お願いします」
「……いや、シャマル振ってくれ」
「いえいえ、シグナムどうぞ」
 責任を押し付けあう二人。
 ヘタをすればこのへとへとの状態のまま、ベッドで夜眠ることもできないかもしれない。それどころか、地球や無人世界に拉致される羽目になるかもしれないわけで。
 そうなったとき、ボヤく側とボヤかれる側どっちになったほうがましか。
 ──そりゃ、前者だろう。失敗の責任を泥として被りたくなんてなかろうよ。ただでさえ、その状況になったイコール、悲惨な目が待っているんだから。誰だって捌け口にぶつけたい。捌け口になりたくない。
「将、おねがいします」
「なんで私なんですか!?」
「ええやんか、リーダーなんやし」
「よくないでしょう!?」
「またまたー、ミスター八神家」
 八神家唯一の男のはずのザフィーラの立場がねえなあ。
「だいじょーぶだいじょーぶ、少なくとも二分の一の確率で帰れるんやから。出る出る」
 はやては強引に、不承不承差し出したシグナムの手にサイコロを載せ握らせる。
 主じゃなかったらこれは訴えているところだぞ? 相手取ってるぞ? そんな烈火の将のジト目もまったく、意に介さない。
「さあ、それでは八神家どうでしょう、運命の一投です」
 ではでは、皆さんご一緒に。──シグナムが、大きく振りかぶる。
 
 なにがでるかな。
 なにがでるかな。
 それはサイコロまかせ、よ。
 

 
 叢では、虫たちが絶え間なく鳴いている。
 光源なんて殆どない田舎道の脇へと入ったそんな場所での、そんな夜更け。
「なあ」
 Q、ここはどこでしょう?
「この……ダメ武将っ!!」
 A、地球はヨーロッパ、ドイツの片田舎です。
 車道の、少し入ったところ。小さな駐車場に、人影がいくつもあって。
 シグナムが、正座をさせられている。
「ええかぁ、よく聞けー」
 そして6の目を出してしまった騎士のその脇に──テントが、あった。
 すうと、はやてが息を吸い込む。そうして彼女は高らかに宣言をする。
 
「ここをキャンプ地とする」
 
 どうみたって道端の、この場所で。
 八神家軍団の野宿がこれからはじまる。
「せっかくきたんやからすぐには帰らんよ! 思う存分美しい国々に人間破壊してもらっていくよ! カヌーにも乗ってもらうよ!」
 これ、まさしく。生き地獄ツアー。
「……生きて帰ろう……」
 呟きがnanoちゃんの中から北欧の寒空の下に、空しく響いた。
 
                          End.
 
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僕は一生どうでしょうさせます(ぉ