ひとまず
よくできた総集編だったんじゃないでしょうか。
ただまあ、総集編の常として「どうせやるんなら新しいのが見たかったなぁ」という感覚が生まれるのは仕方ないといえば仕方ない、といったところですかね。なのは方式とは言わずとも、おもいきって構成いじるのもアリだったように思う。
まあ、個人的には「ここでコネクト入ってほしいなー、入ったら最高なのになー」と思った瞬間まさにドンピシャでコネクトがかかってやべえwwww俺の読みすげえwwwwそれにスタッフわかってらっしゃるwwwwと思うと同時に鳥肌だったりでなんだかんだで大いに楽しめたんですけどね。
ただ、うん。予告が全部持ってった感はある。
あとあれだ、重箱の隅つつくと、
大画面で見るとやっぱり上条さんのヴァイオリン演奏は色々間違っている。←ヴァイオリン経験者
E線を引いてもあんな低い音は出ない。
というか、ギター演奏の場面とかはハルヒなんかですさまじいの作られるようになったけどヴァイオリン演奏シーンできちんと演奏している作品を見た記憶がない。なんかあったかなぁ?
さて、そんなわけで来年の映画と自己設定とがどこまで被るか矛盾するかわかりませんが、まどマギss第八話でございます。続きを読むからどうぞ。
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「あれは」
ふたつの、光の柱が空へと昇っていた。
そして、光の描き出す粒子の流れがそこに向かっていた。
否。正確には──その噴流が辿る軌道は、三つ。
それら、立ち昇る光へ。そのふたつ。木影の、腕の中へ。それで、三つ。
あまりに巨大な肉体を受肉していた、サイカの全身から光の粒となって、それぞれに降り注ぐ。
木影の掌に抱えられて、粒子は光の球を形成していく。もとの、小さなサイカの形へ。
──ごめんね。ありがとう。
そのあたたかみを、身体で受け止めて。消えゆくサイカの巨体を木影は見下ろす。
耳の奥に聞こえる声は、以前にもまして鮮明だった。
少しあどけない、少女の声は木影へと感謝をし、そして謝る。……なぜ?
「これが、わたしとサイカの。今生の別れというわけでは、ないのでしょう?」
謝る必要なんて、なにも。どこにも、ないはず。
──なんだか、事情も伝えずに利用するようなことになっちゃって。だから、ごめんなさい。
あなたと、その子の力がどうしても必要だった。
因果を失った存在が、かつての世界と因果を再び結ぶために。
因果に満ちた最後の魔女を、どうにかするには。僅かな因果をかき集めるしかなかった。
魔女の持つそれと、等価となるよう。集まるそのときを、ずっと待たざるを得なかった。
「そう、ですか。……ならば、行くのでしょう?」
──うん。待ってる子が、いるから。
円環の理の、その向こう。物理的でない、感覚的なものでしかないそこに感じていた存在が、消えていくのがわかる。
声も、気配ももうそこにはない。
行ったのだな──木影が、そう理解する。
彼女の、友だちのところへと行ったのだ。空に昇る光の柱の、どちらかへ。
「たった一度の奇跡であっても、願わずにはいられない……友だち、か」
奇跡は、起こることだってあるだろう。
けれど、そう何度もあるわけじゃあない。そう……それが「奇跡」ならば。
木影は、ぽつりと呟いた。
腕の中を、見下ろした。そこにはやっぱり、崩れた醜い様相の獣、サイカが──木影の友だちが、両腕に抱かれて、存在していた。
魔法少女まどか☆マギカ 〜everyman,everywhere〜
第八話 ただいま
これでもう、おしまいだと思った。
いきなり、光に包まれて。円環の理……だっけ。それに導かれて、あたしも消えるんだな、って。きっと迎えがやってきたのだと、わりと観念して、そう思った。
きっと、あのとき。消えたさやかも同じだったんだって──思って、どこか安心している自分がいた。
勝手かな。
勝手、だよな。ごめん、マミ。ゆまのこと、頼む。
光の中、杏子が思うのはただ、そんなことばかり。
不思議なくらい、光は暖かかった。天に召されるなんて、昔の人はよく思いついて、よく言ったもんだ。……これでも一応宗教家の娘なんだけどな。そんなやつが言うことじゃあないか。
──なーに、言ってんだか。天国にでも、行くつもり?
その声を聞きさえしなければ、きっとそのまま目を閉じていた。
そのまま──たぶん、やられてた。
「そんなとこに、あたしはいないんだけど?」
眼を開いたのは、聞こえてきたその声が「あいつ」のものだったから。
空耳とか、幻聴だとか。くだらないそういったものにしては、あまりに鮮明で。
「……?」
「なに、やってんのよ。ほら、とっとと起きる!」
開けた視界の中。そいつは、そこにいた。
頭上で、例の魔女とかいう化け物が。杏子自身であったはずの異形が、切り刻まれ、四散していた。
「ただいま」
白マントが、眼前で大きく広がって、舞っていた。
──いつの間にか、身体の痛みは消えていた。
嘘だろ。そう、率直にまず、思った。
「さ……や、か……?」
治してくれたのはきっと、こちらを振り返り笑っている、そいつだった。
*
夢を、見ているのだろうか? ゆまを抱いて呆然と、マミは自分自身の意識をまず、疑う。
これまで見ていたのが悪夢だというのなら、今目の前にあるのは──なんて都合のいい、帳尻合わせなのだろう。
「さく、ら……さん……?」
マミ自身意識してそう呼ぶようにしていた、年下の少女の呼び名が知らず知らず、もとに戻ってしまっていた。
慣れようとしていた、そう呼ぶよう心掛けていた下の名前から、呼びなれた苗字へと。
それほど、マミは呆然に包み込まれていた。
今にも息絶えようとしていた少女は、光の中に消えた。
何が起こったのか、わからなかった。マミだけでなく、無数に周囲へと群がっていた怪物たちもまた、突如立ち昇った光の柱に目を奪われ、その動きを止めていた。
そしてやがて、気付く。
そいつらの姿が、見えなくなっていること。
マミもまた、光の柱に呑み込まれていたこと。周囲が、白んでいること。
徐々にその光が、薄れ始めていることを。
光のカーテンの向こうに、影があった。──ふたつ。その片方は、よく見知ったシルエットをしていた。だから、マミは思わず呼んだのだ。
そのシルエットの彼女を抱きかかえている、マントをなびかせた影のもう一方が果たして誰なのかも意識せぬまま。
それ故、眼を疑った。
光の晴れたそこに広がった、光景を。見たものが、信じられなかった。
「久しぶりです、マミさん」
屠り去った者たちの墓標の如く、瓦礫へと突き刺さる夥しい数の剣。
悉くが切り裂かれ、ばらばらと地面に落下していく異形たちの破片。
それらより、なにより。
いるはずのない少女が、そこでマミとゆまとを、待っていたから。マミ同様、呆然と目を瞬かせる杏子を白手袋に包まれたその両腕にしっかりと、抱きあげて。
「み、き──さ……ん……?」
それは、消えたはずの少女。失われたはずの、同胞。
白いマントを翻して。蒼い衣に、身を包んで。ただ一点、以前と違うのはそう、ショートカットのその髪に、楽譜記号を模した髪飾りを彩っていることだけ。
杏子へと落とした視線。マミに向けた視線。マミの抱き寄せる幼子に向けた優しい視線──あとはすべて、かつて現実のものとしてマミたちの前にあったものと同じだった。
「はい。あたしです」
微笑んだ少女の名前は、美樹さやかといった。
*
「お、おろせよっ! は、恥かしいだろっ!」
ずっと、見惚れていた。あっけにとられていたと、いっていい。
杏子が我に返ったのは、こちらを見上げる不思議そうなゆまの目を見て、自分の置かれている状況に改めて気付いたから。
「ゆまが見てるだろっ! 恥、かかせんなよっ!!」
子どもみたいに、抱き上げられている。その認識をした瞬間、思わず杏子はじたばたと暴れていた。
対照的に、杏子を抱えているそいつは「やれやれ」といった感じで苦笑をその顔に浮かべて、要求通りにそっと、杏子を降ろして。
「そっか。ゆま。ゆまちゃんって言うんだ、その子」
「キョーコっ!」
弾かれたように、杏子の腕の中へと飛び込んでくるゆまと、それを迎え入れる杏子自身とを見比べて微笑んでいる。
ひと呼吸、置いて。一瞬、目を伏せて。踵を返し、今度はマミのもとに歩み寄る。
「美樹、さん……なの? ……ほんとうに?」
こちらにも、さやかは苦笑。さっき、言ったじゃないですか、って。そんな感じの表情で、彼女はマミの前に膝を折る。
傷ついたマミの身体に、掌を差し出す。淡い光がそこから、煌めく粒子となってやわらかく広がっていく。
それは以前と変わらぬ、蒼き少女の力。
いや──以前よりずっと強く、精力に満ち溢れた癒しの魔法少女としての能力だった。
「さやか、お前」
「──ふうん。『お前』ね。……あんたよばわりは、しないでくれるんだね」
「ば……っ、茶化すんじゃねーよ! 大体……っ」
なんか、改めて言われると嬉しいね。さやかの言葉に気恥ずかしさを覚え、つい杏子は彼女を直視できず目を背ける。
「美樹さん。……いいえ、さやかちゃん。あなたは、無事──だった、の?」
言いたいことも、訊きたいこともいっぱいあったはずだった。
なのに、言葉が出てこなくて。杏子の心を代弁するようにマミが、彼女へと問いを向ける。
「無事……無事、か。正直、あんまり無事じゃあ、ないです」
ふたりの前から、いなくなったことも。魔法少女としての生を全うし、使い切ったことも。今こうして、ここにいることも。
けっして万事OK、もう大丈夫だから、どこにもいかないからと胸を張れるというわけではない。髪を掻くさやかの見せる苦笑には、そんな意が見え隠れしていて。
「それ、どういう……。っていうか、お前、どうして、どうやって……!!」
杏子の瞳は、潤んでいた。
たぶん、さやかの言った言葉の、言外の意に彼女は気付いてはいない。
失ったはずの友が、今ここにいる。自分と、話している。きっとそれだけで、いっぱいで。
「無事じゃないって、ちゃんとここにいるだろ……っ!! だったらなんで、なんにも……っ!! 無事だったんなら無事って……!!」
「……ごめん、杏子」
さやかは膝を折って、ゆまを抱いた杏子のもとに身を屈める。
手袋に包まれた右の掌を、そっと伸ばして。友の頬を、静かに撫でる。
「あたし──すぐ、いかなくちゃ。言ったでしょ? 無事じゃ、ないの。めでたしめでたしの、感動の再会といかなくって、ごめん。……馬鹿なあたしの、大切な友だち」
その表情は、マミからは覗えない。けれど、向き合った杏子が目を見開いて、眉根を寄せて。──それだけで、一足遅れて彼女が友の置かれた状況をおぼろげながら、察したということがわかる。
同時に──マミは見る。気付く。時折、彼女の身体が揺らぐこと。
それはまるで、蝋燭の炎のように。スクリーンに映し出された、虚像のように。
これは、杏子にだって見えたはず。
「長話をしてる暇は……ないのね?」
「……残念ながら」
「なん、……だよ、それ。そんな、もんなのかよ……馬鹿、野郎っ」
杏子は、俯く。彼女の頬を撫でていたさやかはゆっくりと立ち上がると、深呼吸をひとつ。そして。
「うん、馬鹿なんだ、あたし。だから──さ。助けてほしいんだ。杏子とマミさんに、力、貸してほしい」
キュウべえ、いるんでしょ。……さやかは呼ぶ。ほどなく、白い身体の獣が音もなく、姿を見せる。
「あんたが連れてきたんだから、あんたが責任持って面倒見なさいよ。お望み通り、あたしたちが戦っている間くらい」
「──どうやって、きみは戻って来たんだい?」
白い獣は、じっとさやかのことを見据えていた。彼女の依頼に応じるかどうかも、返答なきまま。
「あんたも、相変わらずね。ま、そりゃそっか。あんたたちのつくった魔法少女のシステム。一度きりの使い切りのはずのその力が再利用できるかも、ってことなんだし、そりゃ気になるか」
でも、残念。
「完全にあたしたちは、イレギュラーだから。たぶん、今回だけ」
あたし自身、詳しく言えって言われたらよくはわかってないから。うまくは説明、できないんだけどね。
さやかがそう言った瞬間、背後でゆまを抱く、杏子の腕にひと際、強い力が籠った。
少し、苦しかったのだろうか。ゆまがきょとんと、自分を肩から抱きしめる杏子を背中越しに見上げて。
「だからさ、ギブアンドテイクでどう? あたしたちはあいつのエネルギーをあんたたちにあげる。あんたは、この子を守る。それでいいでしょ?」
「ふむ──まあ、取引として断る理由はなさそうだ」
なら、交渉成立だ。さやかがマミを、杏子を振り返る。
マミが頷き、立ち上がり。少しの間の後、杏子もまたゆまを離し、俯いたままの顔を手の甲でぐっと拭う。──行けよ。ちゃんと、帰ってくるから。いい子で、待ってろ。そうゆまの耳元で囁くのが、微かに聞こえた。
「杏子」
「言えよ。……あたしたちは、何をすればいい。言わねーと、わかんねーよ。あたしだって、馬鹿なんだから」
見せなかった泪に、濡れた声とともに。ゆらりと、杏子は立ち上がる。こうして、三人の魔法少女はひとところより、上空のワルプルギスの夜を見上げる。
「別に、大したことじゃないよ」
いつも、やってるようにやればいい。
「すごく、簡単なことだから」
さやかは見つめる。空に浮かぶワルプルギスの夜と、その下、未だ消えやらぬ光の柱を。
あそこには、魔法少女がいる。
ひとりではなく、ふたり。
暁美ほむらと、そして。
「あいつらを、やっつける。それだけ」
友が、あそこにいる。
世界から疎外され、放逐を受け。それでもなお、世界とほむらとを願い続けた、さやかの友が。
たとえ、杏子からも。マミからも。誰からも認識されなくとも。
世界の全てが彼女を忘れ去ったとしても。
願いがあったから、彼女はそこにいる。彼女と、彼女の願った世界のために及ばずながら、さやかもここにいる。
杏子とまた会えた、その役得に心から、感謝をしながら。
「いつもやってたことと、おんなじ。出てくるなら出てくるだけ、あいつらみんな、やっつけちゃう。あたしと……杏子と、マミさんで」
同じように、今ほむらもきっと、会えているはず。ううん、きっとじゃない。絶対に。すべてを知っている今だからこそ、ゆるぎなくさやかは、そう思える。ほむらとあの子の、ふたりのことを。信じられる。
「ほむらは、きっと大丈夫だから」
だから、あのふたりの邪魔はさせない。けっして。
数え切れぬ別離を繰り返した、ふたりのなすべきこと。ふたりの、再会を。邪魔など、させるものか。
──だから。きっとわかるよね、ほむら。あの子のこと。
まどかとまた、手を繋げるよね。まどかの声、きっとあんたなら、聞こえるから。あの子と、一緒に。明日を、信じられるよね。
さやかはそう、強く信じた。
信じているから、やるべきことがわかる。
マミと、杏子とともに。
(つづく)
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