本日届いてました。

 
 目を通したところ、自分で思っていたよりかはけちょんけちょんではなくそれなりに評価していただけていた模様。まあだからといって一次通過程度でどうこうもないですが。次につなげていかんとね。
 
 あ、お仕事のほう一本新しいシナリオガイド公開されてます→こちらまだ参加受付中のようなのでよかったら参加してみていただければ。
 
 さて、それではまどマギss第九話。
 
 第九話です(強調)
 
 あくまでただの九話です(頑なに)
 
 つ、次でさ、最終話だから! フレキシブルな対応だから!(しろめ
 へ、編集した結果終わらなかったのをバキっと柔軟に「じゃあただの九話」と対応して見せたところにどうでしょう魂を発揮したとぼかあ言っておくぞぉ←計画へたくそな男
 
 てわけで続きを読むからどうぞ。
 
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 こんなの、嘘だ。そう、あり得ない。だって、あの子はもう。この世のどこにだって、最初から「存在していない」のだから。
 
 この世界の、どこにだっている。けれど、誰にも知られず、見られることもない。どこにも、いない。いるのに、いない。そういう存在に、彼女はなったはずなのに。
 こんなことって、ありえない。──ほむらの中の理性が、そう言っている。
 だけれど、目の前には実際に見えている現実が、そこにはあって。
 
「まど……か……?」
 
 おかしい。こんなの、絶対。心が、そう否定している。
 涙流し喜ぶべきはずの、その光景を。
 膝を折り、見上げる自分の前にあるもの。そこにいる、存在を。
 嘘。嘘でしょう、こんなの。思っている、自分がいる。
 
 ──大丈夫。嘘じゃない。ちゃんと、わたしだよ。
 
 柔らかく、きれいな桜色の光を纏って。白い羽根を翻して。
 あの日、別れを告げた少女が、そこに立っている。
  
「ほんとうに、まどか……なの……?」
 
 桜の、長い髪。長い白の衣。少女は、微笑んでいる。
 土埃と、血に汚れたほむらとは対照的にその姿は神々しく、美しく。
 自失としたまま、震える指先を彼女へと向かい、ほむらは伸ばす。そこにあるものがホンモノでなく、幻想にすぎないもの、その指を透過してしまうモノと証明されることを、恐れるように。
 膝立ちに、彼女の確かな存在をそれでも求める。
「!?」
 瞬間、消える。白んだ世界の中、彼女の姿が眼前から。
 
 ──ごめんね。やっぱり、長くはこうしていられないみたいだね。
 
「!!」
 そっと肩に置かれた掌に、振り返る。
 透き通りそうなくらい淡く薄い色素の身体で、少女は──『円環の理』と呼ばれる存在となった友は、困ったように笑っている。
 その腕が、ほむらの肩と首とに回り。ぎゅっと、ほむらは包み込まれる。
「……まど、……かっ……」
 記憶に舞い戻ってくるのは、彼女に別れを告げたあの日。彼女が、消えなくてはならなかった日。
 その消え失せそうな両腕のぬくもりと、忘れもしない彼女の匂いとが、ほむらにすべてを伝える。
 けっして幻なんかじゃ、ない。ここにいるまどかは、本物。ああ、──鹿目まどかなのだ、と。
 
「まどか……、まどか……っ」
 
 彼女が、今ここにいる。いてくれる。けっして夢なんかじゃあない。ほんとうに、まどかがここにいる。
 約束し、願ったとおりに。
 まるで別れのあの日、いつか起こることを祈った、奇跡の通りに。
 ああ……まどかと、また会えた!
  
 ──違うんだよ、ほむらちゃん。
 
 実感。それが心に染み渡るほどに、ほむらの心が抑えようのない歓喜に染まっていく。
 もう、離れない。離さない。絶対に。どんな困難があったって、もう彼女をひとりになんてしない。
 後ろから自らを抱きしめる少女の両腕にほむらもまた、掌を添えようとする。
 
 ──これから、はじめるの。奇跡を、待てるように。その希望のためにわたしは、やり残したことをやらなきゃいけないんだ。
 
 だがそこにもまた、まどかの姿はなく。感触は、消える。
 
「まどか? ……まどか、どこ?」
 ほむらは、彼女を探す。たった今、自身を包んでいた少女を求め、周囲に瞳を惑わせる。
 いつしか、傷も痛みも消え失せていたことに気付くことなく。
 ただ、少女を探して腰を浮かす。
 
 ──やらなくちゃいけないこと。まだ、残ってたから。
 
 探すまでもなかったかのように、目の前に立っていた友が、言った。
 手をこちらに差しのべながら、彼女は屈託なく、笑っていた。
 
 
魔法少女まどか☆マギカ 〜everyman,everywhere〜
  
第九話 また、「またね」

 
 
 やらなければ、ならないこと? ──まどかの手を取り、膝立ちから知らず知らず、ほむらは立ち上がっていた。
「そう。最後にひとつだけ、あったんだ」
 まどかの微笑み。それを向けられ、脳裏にイメージが流れ込んでくる。
 上空に聳えるワルプルギスの夜と、そしてあの生き物を胸に抱いた琥珀色の魔法少女と。
「あの子」
「うん、そう。あの子の抱いてる子……いろんな世界を。いろんな時間を、見て。そのときに、気付いたんだ」
 あの子の身体の中にあるもの。ほむらちゃんの、持っていたものと、同じもの。
 つまり。まどかが自分自身の因果を使ったそのとき、それとともにすべての世界と時間とに散らばった、ほむら自身の因果。
 更に流れ込んでくるイメージは、夢に見た黒い翼。敵を殺戮し続ける、ほむらの姿。
「ほむらちゃんに、ああなってほしくないから。ワルプルギスの夜が──ほむらちゃんの因果と、繋がっている限りそれは、避けられないことだって、わかったから」
 たとえ、消し去って。絶望を取り除いたとしても。イレギュラーであるほむらのもとにそれは時間をかけ、戻ってくる。
「そのために、待たなきゃいけなかったの」
 因果が再び、あの砂時計に満ちる時を。それがまどかにとっての、蜘蛛の糸であったから。
 少しずつ、少しずつ。
 ほむらとともに、最後に残った絶望の闇を振り払って未来へと、進むために。この帰還がたったひとときで、けっしてふたりの世界の交わった結果とは程遠いものだとしても。
「まどか……それじゃあ。あなたは」
「……うん」
 感動の再会は、また今度。だから、言ったんだ。これはまだ、奇跡ですらない。これからやっと、はじめるんだ、って。
 今度はまどかは、困ったように笑う。そんな彼女の身体を、表情を。周囲を包む光が、透過する。
 彼女の身体を通して──彼女の向こう側が、見えてしまう。
  
 ──わたしがこうしてられるのは、ほんの少しだけ。砂時計の砂が、尽きるまでの、ちょっとの時間。
  
 それは彼女がやはり、違う世界の住人であることの証明。
 友に残された時間がごく限られたものであることを、ほむらの前に直接的に示している。
「大丈夫だよ、ほむらちゃん」
 もう、ひとりじゃないんだよ。
 今は、わたしも。ほむらちゃんも、一緒にいる。この時間はけっして、ひとりで背負うことなんてない。ふたり、分け合える。ふたりで力を、合わせられる。
 
「だから……ね?」
 
 差し出したほむらの掌を、まどかは両手に握った。
 おでこ同士を突き合わせて、囁くように、言う。
 そのリボン、つけてくれてるんだね。うれしい、ありがとう。その、感謝の言葉たちとともに、だ。
 ほむらの手から、リボンを取り。本来の持ち主である彼女の指先が、ほむらの髪にそれを結んでくれる。
「力を貸して、ほしいんだ。これはわたしと、ほむらちゃん自身にしかできないことだから」
 そのために、みんなが頑張ってくれてる。
 そう、まどかは呟く。その声がまた、ほむらの脳裏に映像を直接、送り込む。
「わたしたちが、それをやれるように──頑張って、くれてるんだよ」
 蒼と、紅と。そして黄の色。
 ふたりにとって馴染み深き、今このときにはまさしくかけがえのない、仲間たちの姿が、そこにはあって。
 

 
「言えよ。あたしは、何をすればいいのか」
 
 くしゃりと、ゆまの頭を撫でてやる。そして、キュウべえのほうに彼女の背中を押し出す。
「大丈夫だよ。すぐに終わらせて、迎えに行くから。だから、いい子で待ってなって」
 そして、さやかの隣に並び立つ。
 ワルプルギスの夜、無数に飛び交う魔女。そして、立ち昇る光の柱。
 あそこに、ほむらがいる。あそこで、ほむらのやつが戦っている。
「そうなんだろ?」
「ま、そゆこと。あたしらがやることは、すっごく簡単なこと」
 いつもそうしてたのと、同じこと。
 
「片っ端から、魔獣……それに、魔女。やっつけるの。それだけ」
 
 ほむらが、安心して戦えるように──ね。
 OK。頷いて、愛槍を右手に。軽く、左の拳を差し出す。
 透けたりも、消えたりもしない。さやかが自身の右手を、そこに打ち合わせる。それは、もう二度とないと思っていたこと。
「マミさん」
「ええ──任せて」
 その現実が、今ここにある。それだけで、杏子には十分だった。
 
「思う存分、やりなさいっ!」
  
 マミの足元から広がった、黄金色にも似た光。
 ここにいるのは、近接型のふたりに、射撃型がひとり。だったら採るべき選択肢など、きまっている。
 振り返りなど、杏子もさやかもしない。
 それぞれの得物を手に、跳ぶ。
 展開されるは、数え切れないほどの、竜騎兵銃。彼女を象徴するそれを召喚したマミの意図することを、わかっているから。
 
「さあ……派手に乱れ撃っちゃいましょう!」
 
 好きなだけ、暴れてこい。つまりは、そういうこと。先達として、先輩として。彼女は自分たちを送り出そうとしている。
 マミの指先が、無数のリボンが引き金を引く。それこそ、驟雨に他ならぬ弾幕の暴風が魔女を、魔獣を。使い魔たちを引き裂き、貫き。撃ち落していく中。
 蒼と紅もまた、流星となり駆け抜ける。
 
「う、おらあああああっ!!」
  
 マミは、狙い撃ちを乱れ撃つ。けっして二筋の流星を傷つけも、撃墜もすることなく。
 弾丸の嵐の中を紅が奔り、蒼が舞い踊る。
 刃振るい、自らもまた破壊の嵐と化しながら。
 

 
「ね。びっくりじゃない?」
 まどかは、言う。
「やっぱり、ほむらちゃんがずっと続けてきてくれたことは、無駄じゃなかったんだよ」
 ともに見つめるイメージの中の三人に、目を細めながら。
 ほむらの右掌を、左の掌で握り寄せ、すぐ隣に寄り添いながら。
「わたしのすぐ傍には、さやかちゃんがいてくれる。ほむらちゃんといっしょに、杏子ちゃんやマミさんが頑張ってくれる」
 
 もう、誰も。ひとりじゃないんだよ。
 ほむらちゃんがずっと、わたしの友だちでいてくれたみたいに。
 みんなが今、ほむらちゃんのために、頑張ってくれてる。
 
「もう、ひとりで背負わなくって、いいんだよ。この世界のすべてに、わたしはいる。見えないわたしだけじゃない。見えてるみんなも、きっとずっと、いなくなるそのときまでほむらちゃんと一緒に歩いてくれる」
 
 また会えるまでみんな、ひとりじゃない。わたしもほむらちゃんもきっと、頑張れるから。
 
 ほむらは、繰り広げられる戦いに目を奪われる。
 ずっと、まどかのため。それだけのために、戦ってきた。彼女がいた頃も、彼女がいなくなってからも。
 それは、彼女のことを覚えている自分一人が成さねばならないことだと思っていた。
 いや、思いこんでいたのだ。きっと。
 もう誰も頼らない、信じないと決めたあの日の心のままに──ずっと。
「もう、わたしのためだけに戦い続けなくて、いいんだよ。わたしが変えた世界だからだとか、そんなのじゃなくって」
 あなたが守りたいっていう、その気持ちでいいんだよ。
 その、気持ちで。守りたい世界を守る。みんなを守る、魔法少女であってほしい。
 みんなに、夢と希望をもたらす。それが、魔法少女なんだから。
 忘れるわけがないその言葉は、別れ際に彼女が言った信念。そして、想い。そうだ。まどかのこの言葉があったからこそ、ほむらは世界に奇跡を信じられた。
 
「まど、か」
 
 友の背中に、白い羽根が羽ばたく。
 ほむらは静かに目を伏せ──そして、その背にもやはり、黒い羽根が広がる。散った花弁のように、舞う。
 あの、砂漠の殺戮を映し出した夢のような禍々しさに満ちたものじゃあない。純白と対であることをそのまま表現したような、美しい光の黒翼が、ほむらの背を飾る。
 白と黒、それぞれの羽根、強く、雄々しく。
 
「……私に」
 
 私に、できるかな?
 絶望のないこの世界で、誰かの希望となることが。
「大丈夫だよ。やれるよ」
 わたしが、できたんだもの。
 杏子ちゃんがいる。マミさんがいる。みんなが、いる。ほむらちゃんなら、きっと大丈夫。
 わたしに希望をくれようとずっと頑張り続けてくれてたのは、他の誰でもない、あなたなんだよ。
「わたしが、保証する。あなたの希望になれた、わたしが」
 ほむらちゃんにも、きっとなれる。
 誰かの。みんなの希望を叶えられる存在に。希望に。
「……って、何言ってるんだろうね。偉そうに」
 肩を竦めて自分自身に苦笑いをしてみせる友はほんとうに、以前となにも変わっていなくて。
 見えなくなっても、この世界のすべてで希望となって、彼女が戦い続けている。笑う、彼女が。
 そしてこの世界のあちこちで、皆が戦っている。
 いつだって、どこでだって。誰かが。見えないまどかとともに。その中のひとりが杏子であり、マミであり。また、ほむらなのだ。
 
 傍にいる者。いなくなった者。かけがえのないもの。誰かの希望でありたいと。誰かのためでありたいと。
 かたちや、経緯は違えどそれは変わらない。
 願ったから──希望を叶えるため。希望と、なるために。
 
「いいえ。私はまどか、あなたを、信じているから」
 
 あなたが私の、希望だった。
 そして今は、この世界を守ることが私の願い。叶えたい希望であり、光。
 あなたとの奇跡を、待つために。
 ……欲張りだろうか? まどかも、世界も。皆を望むということは。
 ふたりの手にはいつしか、弓と矢があった。並び立った黒と白は、それらを番える。射抜かんと狙い定める先は、ただ一点。
「これが終わったら……また、「またね」……なのかな」
 ぽつり、最後にほむらは訊ねた。
「そう、だね。だけどやっとこれで、はじまるんだよ」
 返ってくる声に、一抹の寂しさが混じるのは仕方がない。けれど、そこに悲しみはない。
 これから放つ矢は、閉じきれなかった終わりを、きちんと終わらせるため。奇跡はこれから、いくらだって待てる。信じられる。
 横目を向けあう。そして、微笑みあう。「またね」を自然に言い表せた自分が、なんだか可笑しかった。
 でも、嘘偽りのないそれは本心だった。彼女との、ほんとうの再会を自分は、確信している。これは、そのための一矢。だからこの弓を、引ける。
 
 明けない夜は、ないのだから。
 終わらせよう。絶望という、自分自身の生んだ夜を。
 自分と、世界と。仲間たちと。そして友の繋がりを、信じていこう。
 
「大好きだよ、まどか」
  
 そして矢は、放たれた。ふたりの、手から。
 
(つづく)
 
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