いや、マジで。

 
んー、ケインさんのとこでなんか、持ち上げられとりますが。
 
全然自分の書く話なんて大したことないっすよ?ガチで。
大体それ言ったら自分はあの人の筆力文章力に到底敵いませんって。
 
現に保管庫にある長編でこっちに未収録の
「買い物に行こう」と「変わりゆく二人の絆」も今読み返すと
加筆したかったり書き直したい部分がちらほら……まあ、当分やりませんが。
 
余裕的にも、忙しい中保管庫に収録して下さっている549氏に対する筋としても。
 
んで、代わりというかなんというか。
今日同人活動やってる友人と会って話し合った結果、なのフェスに向けては
今連載中のなのユー話『−nocturne−』のほうで行こうと思ってます。
いきなりオフセ本でオリキャラが大きい話は少々リスキーだろう、と。
第一話から、五話もしくは六話くらいまでを収録する予定。
場合によっては加えて短編を一話ないし二話程度収録。
 
そんな方向で行きたいと思います。
 
ひとまず今日はthe dayの続きを。
第四話になります。以前のweb拍手レスで全十三話と言いましたが、確認してみたら十四話でした。
勘違いしとりました、申し訳ない。
 
てなわけで、どうぞ
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
 
 
 
話を聞いた人間の反応は、主に二つのパターンに分かれた。
 
「……うそ、やろ」
 
呆然と硬直し、弾かれたように頭を振り、否定して。
 
嘘だ。ありえない。
 
そのような声を絞り出して信じるのを拒絶することがやっとである場合と。
 
「は?またまたぁ。何言ってんの?冗談にしても笑えないよ、それー」
 
あまりに唐突かつ現実離れした事実それ自体を冗談と捉え、笑い飛ばすケースの二つにそれぞれ。
 
だが、ごく少数の事実を知った人間が、どちらの反応をしようとも。
それは避けえぬ、限られた時間の後近くにやってくる現実なのだ。
 
一人の少女に残された時間は、あまりに少ない。
信じようと、信じまいと。たとえ信じたくなくとも、それは変わらない。
 
 
魔法少女リリカルなのはA’s −the day−
 
第四話 残光
 
 
「うそだろう」
 
──彼の反応は、前者だった。
 
もちろん、嘘などではない。
言いながらも、なのはがこのような嘘をつく人間でないということを十二分に知る彼は、彼女の悲痛な表情を読み取り愕然と立ち尽くす。
 
「そんな、フェイトが」
 
何か、支えを欲するように彼の両腕はなのはの両肩を掴んでいた。
なのはは力なく首を振り、立ち尽くすユーノの胸に、逆にその頭部を預ける。
 
全ての体重を彼に委ねた時、雫が瞳から零れ落ちた。
 
「わたし、だって……」
 
もう、堪え切れなかった。誰かに縋っていないと、いられない。
本当に痛いのは、握られた両肩ではなく胸の奥にある、心。
自分が事故に遭ったときも、こんな風に皆は痛む心を抱えていたのだろうか。
 
「うそだって……言いたい、よ……っ」
 
フェイトは学校でもクラスで人気者で。
 
アリサたちならずとも、一番の親友であるなのはに彼女の欠席のことを尋ねてくるクラスメイトたちは少なくなく。
言えるはずもない真実に重ねた虚偽が彼女の心にいくつもの傷を刻んでいった。
 
皆に、心配させないよう。皆の心を傷つけてしまわぬよう、なのはの心は傷ついていった。
 
それは、リンディとシャマル同席のもと事実を知らされたはやての見せた取り乱した様子と相まって、耐えることのない鈍痛を少女へ与え続けている。
 
どうにかしたい。どうしようもできない。嘘を言うしかない。
その焦りと罪悪感が痛くて、痛くてたまらない。
 
「フェイトちゃんが……フェイト、ちゃんが……」
「なのは……」
 
親友が、いなくなる。シャマルから告げられた宣告は、辛くて、苦しくて。
一人で立っていられない。いたくない。
その思いが、ユーノに向かったことで、決壊した。
 
「わたし……わかんない……どう、したら……わたし……」
「なのは」
 
この最近になって、二人の身長には随分と差ができていた。
ユーノがけっして大柄というわけではないのだが、出会った頃にはそれなりにしかなかった、今は開いたその目線の差で、ユーノは自分の胸に埋もれたなのはの表情を窺い知ることはできない。
 
けれどユーノは、なのはが泣いているのだろうとごく自然に理解した。
 
ショックを心に隠し、誰のためでもない、皆のための嘘をつき続け。
純粋な彼女の心はきっと、潰れてしまいそうになっているのだ、と。
 
「……」
「わた、し」
 
彼女を、包み込むがごとく抱きしめるユーノ。
彼の手はいつしか、肩からその背中に回っていた。
 
それはユーノにとって、不思議なほどごく自然な動きとして行動に移された。
移したというよりも、身体が流れるように、そのように動いた。
 
少しでも安らいで、心の均衡を取り戻してほしかったから。
抱きしめてやりながら、実感のない彼女の言葉を心の中にリピート再生する。
 
──フェイトが、あと一ヶ月しか生きられない。治す方法は、ない。
 
彼女の告げた言葉のもつ意味は、あまりに残酷だ。
 
自身の胸の中で肩を震わせるなのはの姿が痛々しくて、ユーノにはかける言葉が見つからなかった。
というよりも、彼もまた自分の心中の整理がついていない。
今はただ、なのはが少しでも落ち着いてくれれば、としか。
 
スクライア司書長』
「っ?はい」
 
内線の通信が入り、ユーノはびくりと反応し応答した。
 
『高町隊長はそちらにおいででしょうか』
「え……っあ、えと、はい」
『第五小隊に、出動要請が出ています。至急お戻りになられますよう』
「あ……任務……?」
 
出動?こんな状態のなのはを?
 
とてもそんなことはさせられないととっさに思い、ユーノは映像のむこうの担当官へと返す返答に窮する。
だが彼が窮しているうち、なのはが抱きしめられていた身体をそっと、ユーノの両腕から離した。
 
「なのは?」
「……今、行きます。すぐに出られるよう各員に準備を」
『はっ』
 
涙交じりの声だったけれど、通信越しの担当官には顔も見えず短い言葉であったこともあり、気付かれなかったろう。
 
白い士官服の袖で一直線に、涙を拭う。
そのまま踵を返し何も言わず、ふらりと出て行こうとするなのはを、ユーノは呼び止める。
 
「なのはっ」
「……ごめん。ありがとう。……でも、仕事している間は忘れられるから……大丈夫」
「けどっ」
 
なのはが足を踏み出し、なにかユーノが言う前に、音を立てて閉まった自動ドアが二人を隔てた。
やりきれない思いで、彼はグレーの無機質なドアを見つめるしかなかった。
 
フェイトのことと同じくらい、彼女のことが心配だった。
 
*    *    *
 
「どういうこと、これは」
 
頼みであったクロノも、リンディも。
昔の……養子となる以前のフェイトについて尋ねられると、気まずそうに口を噤み、何一つ有益な証言となる答えを与えてはくれなかった。
 
彼女を──家族を救いたくはないのか、と。
 
医療に携わる者として、彼女の主治医として叫びたくなるのを堪えいくらシャマルが尋ねようとも
返ってくるのはたった一言、決まった言葉。
 
───「あの子は、人間ですから」───
 
たったこれだけを繰り返すのみで、なにも得るものはなかった。
まるで、諦めたきったような言葉。
人間だから病気にだってなる、だから仕方ないとでも言うのだろうか、あの親子は。
それは確かに真理ではあるだろうが、自分達の家族に対してあまりに薄情ではなかろうか。
 
あんなに仲の良い、忙しくも理想的な家族であるというのに。
 
「これ……一体?」
 
故に、周辺調査を独自に、自らの手で行おうとシャマルは決めた。
クロノやリンディでさえああいう対応なのだ。
なのはやユーノ、エイミィといった面々も、積極的な協力は望めまい。
通常のフェイトに対する治療の仕事の合間を縫っての、孤軍での作業である。
手の空いているときはシグナムも手伝ってくれたが、基本的にはひとりでの戦いになる。
 
「プレシア・テスタロッサ……彼女でフェイトちゃんの実母は、間違いない……なのに」
 
結果として手に入ったものは未だ、ごくごくわずかな資料でしかなかった。
彼女の関わった事件──PT事件にはじまり、つい最近まで担当していた事件、解決してきた事件の数々の報告書の類。
そして、彼女の血縁者とされる人々のおおまかな個人情報程度である。
 
自分のもてる権限と人脈、調査能力とをフルに活用して集めたそれらとて、必要かつ重要なものを精査選別するとけっして多い数は残らない。
 
「どうして……?」
 
だが、シャマルの疑問を増幅するには、それで十分であった。
彼女の目にとまったのは、フェイトの実母たる人物の詳細。
 
その戸籍に明記された、実の娘の名前と略歴が彼女を悩ませる。
 
アリシアテスタロッサ……26年前に、死亡?」
 
そんな、馬鹿な。目を皿のようにして繰り返しその書類、資料に記された文字を追うが、厳然と資料はそこにあり、変化などすることはなく。
 
プレシア・テスタロッサとフェイトの関係性については、なんら言及がなされてはいなかった。
彼女の存在そのものを、プレシア・テスタロッサの情報を扱った資料全てが無視していると言ってもいい。
 
それくらい、一切の資料がフェイトとプレシアの血縁関係を無視している。
 
(フェイトちゃんが生まれる前のもの?ううん、それはない。これには3年前……プレシア女史が死亡したことまで、明記されている)
 
記入漏れとも、考えにくい。
PT事件の報告書には二人の関係についてははっきりと「親子」であるとされている。
ただし欄外に注意書きとして記されている、「別紙資料」とやらの存在は確認できなかったが。
この数年間で散逸したか、あるいは意図的に隠蔽されたか?
 
しかし一方で、ここでもプレシアにはフェイト以外の娘がいたということは認められている。
 
「フェイト」ではなく、「アリシア」という女の子が一人、彼女の娘として明記されているのみだった。
 
これは一体、どういうことなのだ。
当時管理局と関わりのなかったシャマルには、ここにある資料で推測するしかない。
にもかかわらずシャマルには、資料たちが自分に提示する事象の数々について、判断がつきかねていた。
単なるミスによる食い違いか、情報操作によるものか。一体何が真実であるのかさえも。
 
「でも」
 
匂う。なにか、ある。
やはり、フェイトが常人では考えられない症例を発症した原因は、彼女の生い立ちにあるのだ。
 
伊達に数百年もの間、後方支援のエキスパートとして生きてきたわけではない。
現在は無限書庫の司書におさまっている、この分野の専門家たるユーノほどではなくとも、資料を読み取り、なにかがあると思われる部分を嗅ぎ分ける嗅覚にはある程度の自信はある。
 
そのシャマルの勘が、原因はここにあると告げている。
 
「やっぱり……近いところから直接、当たっていくしかないかしら……」
 
何人かの知人の顔を脳内にリストアップし、机上の通話機を手に取る。
よく知った連絡先に繋ぎ、アポイントを確認。
 
艦は今、本局に戻ってきている。会うだけならば、さほど難しくはないのだろうが。
問題は正直に答えてくれるかどうかだ。
 
「ええ、はい。ええ、それで、はい。それじゃあ、お待ちしています」
 
だが報告書の執筆者に問いただすのが、一番はやい。
それに正直な彼女の性格なら、リンディやクロノといった曲者よりは組みやすかろう。
 
時間のない分、多少強行に行かねばならぬところは迷わず行かねばならない。
 
机上のPT事件報告書、その最後に記された署名へと目をやり、応対の声の復唱に頷いた。
 
「では。八時に。リミエッタ管制官にお伝え下さい」
 
エイミィ・リミエッタ。
気のいい彼女からならば、なにか聞けるかもしれない。
これらの資料のもつ矛盾点をつきつければ、どうにか。
 
この報告書を書いたのは他でもない、フェイトの姉のような存在でもある彼女なのだから。
 
 
(つづく)
 
− − − −
 
よかったら、押してやってください。つweb拍手